郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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酒田市決算2016年度
基金頼み、硬直化が一段と進む
税源確保と税収増、経費削減が課題

 酒田市の2016年度普通会計歳入歳出決算は、地方債現在高が13年度をピークに減少傾向にあるものの、積立金が10億0600万円と15年度から半減し、一方で積立金取り崩し額が同4億4800万円増えた。マイナスとなった実質単年度収支や悪化した経常収支比率からは、基金頼みの財政運営が進み、財政の硬直化が深刻さの度合いを深めていることも浮き彫りになっている。将来に向け不安要素が多い中、安定した財政運営を実現していくために解決するべき課題は多い。(編集主幹・菅原宏之)

実質収支、類似団体の平均下回る

表1・2
 酒田市の16年度普通会計決算(一般会計に診療所事業特別会計と駐車場事業特別会計を加えたもの)の主な財政統計指標と健全化判断比率は表1、2の通り。
 歳入総額は553億1200万円で、15年度比13億9800万円2・5%、歳出総額は535億6600万円で、同15億7100万円2・8%それぞれ減額となり、決算規模は15年度に比べ縮小した。
 社会資本の整備に要する投資的経費のうち、災害復旧事業費と失業対策事業費を除いた普通建設事業費が48億0800万円と、15年度比12億8300万円21・1%の大幅減額となったことが主な要因。とりわけ新庁舎整備関連事業費が同25億0300万円減額となった影響が大きかった。
 決算収支を見ると、歳入総額から歳出総額を差し引いた形式収支は17億4500万円の黒字となり、15年度に比べ1億7200万円10・9%増額となった。形式収支から事業が進まないため翌年度に繰り越すべき財源2億7100万円を除いた実質収支は14億7500万円の黒字となり、同年度に比べ4700万円3・3%増額となっている。
 実質収支が増額となった主な要因は、歳出で普通建設事業費が15年度から大幅減となったものの、市税が同年度比2億5800万円2・0%、寄付金がふるさと納税寄付金の増額で同7億2900万円288・2%、国庫支出金が6億1400万円11・4%それぞれ増えたことなどによる。
 黒字分のうち4億円は17年度当初予算の繰越金として計上し、7400万円は今年6月と9月に組んだ補正予算の一般財源に充てた。17年度内にこれ以上の補正予算を組まなければ、残りは全て3月補正で単年度の収支をやり繰りするのに使う財政調整基金への積立金などとして使うか、市の借入金に当たる市債の繰り上げ償還に使う予定。
 実質収支は15年度を上回る黒字額を確保したが、人口規模や産業構造が似ている全国の類似団体と比べると、決して楽観できる状況にないことが分かる。
 酒田市が今年8月15日時点の類似団体85自治体のうち、特に似通っている26自治体を対象に実施した独自調査の結果によると、16年度の実質収支の平均額は17億9400万円の黒字となっており、同市はこれを3億1900万円下回っているのが実情だ。

財政指標は悪化傾向が鮮明

 主な財政統計指標からは、酒田市の財政運営上の課題が浮かび上がってくる。
 決算収支では、過去からの蓄えの積み上げ額と見ることができる実質単年度収支がマイナス6億2300万円と、プラス6億4200万円だった15年度に比べ12億6500万円も減っているのが目立つ。
 その内訳は、単年度収支の4700万円に、積立金10億0600万円と繰上償還金1400万円を加えた黒字要素は計10億6700万円。これに対し赤字要素の積立金取り崩し額は計16億9千万円。積立金は15年度の21億0700万円から半減した一方、積立金取り崩し額は同年度の12億4200万円から4億4800万円も増えている。
 同市では、基金を取り崩して財源に充てないと予算を編成できない状況が常態化しているが、基金頼みの財政運営は一段と進み、厳しさが増している実態が浮き彫りになっている。
 こうした背景から、基金現在高は16年度末現在で115億0600万円と、15年度に比べ11億0500万円8・8%減っている。主な内訳は▼財政調整基金が33億0100万円で、15年度比6億8400万円17・2%減▼振興開発基金が3億5900万円で、同1億円21・8%減▼市債管理基金が25億5千万円で、同0・4%減▼地域づくり基金が30億5300万円で、同500万円0・2%増―など。
 それに加えて、経常的経費に対し経常一般財源収入がどの程度充当されているのかを示し、財政構造の弾力性を判断する経常収支比率が94・8%と、15年度から1・3ポイント悪化した。
 歳出で経常的経費の一般財源として退職者増に伴う退職手当の増加で人件費が15年度比2億6800万円増えた半面、扶助費、公債費、補助費等が同計7億1800万円、歳入で地方消費税交付金が同2億1500万円、地方交付税が同4億9100万円それぞれ減ったことなどが主な要因。経常的歳出が減少し、経常的歳入もそれ以上に減ったことが、経常収支比率の悪化を招いた、と分析できる。
 経常収支比率は類似団体の16年度の平均値が91・0%で、同市はそれを3・8ポイント上回っており、財政の硬直化が深刻さを増していることを裏付けた。
 これに対し、標準的な行政需要に自前の財源でどれだけ対応できるのかを示し、1に近いほど自主財源の割合が高いことを表す財政力指数は0・469と、15年度から0・009ポイント改善。長期借入金に当たる地方債現在高は625億2300万円と、同12億8400万円2・0%減った。
 しかし類似団体との比較では、16年度の財政力指数の平均値0・770、地方債現在高の平均額468億3900万円に対し、酒田市は財政力指数で0・301ポイント下回り、地方債現在高で156億8400万円上回っている。

早期健全化基準下回るも

 酒田市の全ての会計を対象とした、自治体財政健全化法に基づく四つの健全化判断比率を見ると、借入金の返済額やこれに準じる経費の大きさを指標化し、資金繰りの危険度を示す実質公債費比率は11・8%と、15年度の11・4%から0・4ポイント悪化した。
 公営企業債の償還財源に充当する繰出金が増加傾向にあること、市土地開発公社の解散に伴う第三セクター等改革推進債の元利償還が14年度から続いていることなどが主な要因。
 さらに一般会計などの借入金や将来支払っていく可能性のある負担等の現時点での残高の程度を指標化し、将来財政を圧迫する可能性の度合いを示す将来負担比率も44・6%と、15年度の40・5%から4・1ポイント悪化している。
 その主な要因は、地方債現在高は減少しているが、普通交付税や充当可能基金の財政調整基金も減少したことなどによる。
 基準を超えると財政健全化計画の策定や外部監査が義務付けられている実質公債費比率の早期健全化基準は25・0%、将来負担比率の同基準は350・0%。両比率とも基準を大きく下回っているが、悪化傾向にあることは否めない。
 黒字決算となったことから、実質赤字比率と連結実質赤字比率は生じなかった。
 池田里枝・市財政課長は16年度決算を「財政統計指標を見る限り、実質公債費比率と将来負担比率がともに悪化したことに加え、積立金取り崩し額が増えたことに見られるように基金頼みの財政運営が一段と進んでいる。経常収支比率も上昇して財政の硬直化が一段と強まるなど、市の財政状況は悪化傾向にあると見て間違いない」と総括した。

合併特例債残り93億円超

 主な歳出状況は、任意に削減できない義務的経費が237億4600万円と、15年度比2・9%増えた。主な内訳は、地方債の支払いに充てる公債費は利子の減額などで75億4700万円と同1・5%減ったが、人件費は退職手当の増額などで69億0500万円と同3・3%増、社会保障費に充てる扶助費は保育所入所扶助費等の増額などで92億9400万円と同6・5%増となった。歳出総額に占める義務的経費の構成比は44・4%で同2・6ポイント上昇した。
 備品購入費や委託料などに充てる物件費は、ふるさと納税推進事業に要する役務費増などで65億2700万円と同0・6%増えた。歳出総額に占める物件費の構成比は12・2%で同0・4ポイント上昇している。
 一方で前述の通り普通建設事業費が大幅に減少。歳出総額に占める普通建設事業費の構成比は9・0%で同2・0ポイント低下した。
 他の地方公共団体への支出などに充てる補助費等も、機構集積協力金の減などで75億1800万円と同3・3%減少。歳出総額に占める構成比は14・0%で同0・1ポイント低下している。
 義務的経費や物件費などは15年度から増加したが、その増加幅を普通建設事業費や補助費等などの減少幅が上回ったことが、歳出総額の減額につながった。
 実施した事業のうち事業費の95%に使うことができ、元利償還金の7割を国が普通交付税で充当する合併特例債を、16年度は計16億2100万円活用した。その内訳は、総合文化センター耐震改修事業5億0900万円、酒田市斎場改築事業4億6200万円、中町にぎわいプラザ(仮称)整備事業3億5400万円、新庁舎整備事業1億1100万円の4事業を含む計11事業に充てた。
 合併特例債の発行可能額は計329億2900万円。これに対し16年度末までの活用実績は、建設関連の207億1500万円に、基金造成済みの28億6600万円を合わせて235億8100万円に上っている。借入期間は15年度から20年度まで延長されていることから、残り4年間の発行可能額は、建設関連で93億4800万円となっている。
 合併特例債は有利な起債であることから、市では全額を使い切る方針。

合併優遇の縮小始まる

 主な歳入状況は、自主財源の中心で歳入総額の23・8%を占める市税は、131億6千万円と15年度比2・0%増えた。このうち法人市民税は税制改正による減税が影響して同1・1%減ったものの、個人市民税が給与所得の伸びなどで同3・0%、固定資産税が企業の設備投資などで同2・1%それぞれ増えた。
 さらに国庫支出金(歳入総額に占める構成比10・8%)が59億9200万円と同11・4%、寄付金(同1・8%)が9億8200万円と、ふるさと納税寄付金の増額で同288・2%それぞれ増えている。
 その一方で、依存財源の柱で歳入総額の27・2%を占める地方交付税は、150億6900万円と同3・6%、地方債(同10・4%)は、57億4500万円と同15・3%、地方消費税交付金(同3・3%)は、18億2700万円と同10・6%それぞれ減ったことが、歳入総額の減額につながった。
 合併による普通交付税の優遇措置期間は15年度末で終了した。16年度からは、合併前の市町村ごとに算定した普通交付税の総額を配分する合併算定替と、一つの自治体として算定する一本算定の差額が16年度10%、17年度30%、18年度50%、19年度70%、20年度90%と5年間をかけて段階的に減額されていく。
 これに基づく酒田市の16年度の合併算定替による配分額は139億0200万円、一本算定による配分額は126億2200万円となり、その差額は12億8千万円となっている。
 これにより普通交付税は差額の10%に当たる1億2800万円が減らされる予定だったが、「地方消費税交付金の減少や税収の増加など交付税算定に関わる全体的な影響が強くあり、実際にいくら減らされたのかははっきりしない」(池田・市財政課長)のが実情という。

財政見通しは厳しさ一段と

 市が公表している中期財政計画(17年8月23日作成)によると、歳出では今後、①人件費は退職者増で18、19年度に増加するが、20年度以降は減少②公債費は投資的事業への取り組みなどに伴い高い水準で推移し、22年度がピーク③扶助費は人口ビジョンの推移などを踏まえ減少④施設の維持管理に要する物件費、酒田地区広域行政組合や下水道事業への補助費等は高い水準で推移―と見込んでいる。
 これを踏まえ市は対策に▼施設などの一元的な維持管理の実施や契約の一本化、事務事業の抜本的な見直し、事務・事業執行の効率化による経費の縮減▼公共施設適正化計画の着実な推進による施設管理経費の削減▼働き方の見直しなどによる総人件費の縮減▼繰上償還実施による利子の軽減や投資事業の抑制による市債残高の縮小―を挙げる。
 一方、歳入では今後、①市税は納税義務者数の減少や地価の下落傾向などにより減少②普通交付税は合併特例事業債などの発行で公債費算入分は増えるが、合併算定替の段階的縮小などで減少③市債は投資的経費などに連動し、19年度がピーク―などと見込んでいる。
 このため市では対策に▼企業誘致の促進や産業の振興など地域経済活性化による税源の養成、収入対策の強化などによる税収の増加▼国・県などの補助制度の積極的な活用▼未利用資産の売却▼受益者負担の見直しなどによる新たな財源の確保―を挙げている。

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