郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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鶴岡の医療を守る市民研究会
両市一体の医療体制を公開討論
荘内病院長は基幹病院統合に消極姿勢

 鶴岡市の医療環境を考える団体「鶴岡の医療を守る市民研究会」(代表・鎌田剛東北公益文科大学准教授)は5日、最終となる第5回講座を同市の出羽庄内国際村で開き、庄内地域の3病院長と鶴岡地区医師会の医師2人が公開討論会で意見を交わした。「鶴岡、酒田両市を一体として地域医療を考えなければならない」とする意見が大勢を占めた一方、鶴岡市立荘内病院と酒田市の地方独立行政法人山形県・酒田市病院機構日本海総合病院の統合も議論されたが、荘内病院長が消極的な姿勢を示すなど、考え方に違いも見られた。(編集主幹・菅原宏之)

庄内の3病院長が参加

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医療関係者や市民ら約100人が聴講した

 この日討論したのは鶴岡市立荘内病院長の鈴木聡、日本海総合病院長の島貫隆夫、鶴岡協立病院長の堀内隆三、鶴岡地区医師会副会長の小野俊孝、同医師会理事の三原一郎の5氏。研究会で中心的役割を担う前黒羽根整形外科理事長の黒羽根洋司氏が進行役を務めた。
 黒羽根氏は、このまま過疎化、高齢化、少子化が進めば、庄内5市町からなる庄内2次医療圏の総人口は2025年に24万人ほどになる見込み、と報告した。
 その上で「それに向け庄内の医療・介護体制を早急に再構築しないと、機能も経営も成り立たなくなる。急性期病院の確保には、急性期機能の集約化と、それ以外の病院機能の見直しは不可欠」との分析を示し、現状への認識を尋ねた。
 島貫日本海総合病院長は「(新型コロナに対応するため)1病棟(45床分)を休めているが、それでも日本海総合病院の病床稼働率は80%を維持するのがやっとという状況。一つの病院だけが縮小しても限りがあり、庄内全体で最適化を考える必要がある」と指摘した。
 堀内鶴岡協立病院長は「病院同士の緩い連携ではなく、踏み込んだ連携をしなければならないところに来ている。医療・介護スタッフや薬剤師を含めた医療従事者が減り、人材を奪い合う状況となっている。こうしたことも地域全体で調整していく必要がある」と話した。
 三原同医師会理事も「鶴岡、酒田両市は別々でなく、庄内一体で地域医療を考えなければいけない時代になっている。荘内病院だけで鶴岡市民を全て抱え込むことはできない。お互いがどれだけ連携していけるのかが大事になる」と述べた。
 これに対し鈴木荘内病院長は「荘内病院の受診、入院患者が減っているのは事実だが、これへの対応は、すぐには必要無いと思っている。救急外来を受診する患者数はほとんど変わっていない。それを考えれば、荘内病院の医療の力をより強力にしていかないと、地域住民の需要に応えられない」と主張した。

診療科別の集約を提言

 黒羽根氏は将来への備えや医師不足への対応、今後の生き残り策などにも意見を求めた。
 堀内鶴岡協立病院長は、同病院は医師も看護師も基幹病院以上に不足していると説明し、「荘内病院と日本海総合病院が一つになれば、多くの症例を研修できる病院になる。(医師確保の面から)両病院が一緒になり、全く新たな病院をつくりあげてほしい」と訴えた。
 島貫日本海総合病院長は、北庄内の10法人で活動している地域医療連携推進法人・日本海ヘルスケアネットに触れ、「お互いに医療資源が不足しているので、(日本海総合病院から)医師や看護師を派遣し、逆に手術の手伝いで来てもらったりしている。こういったことを、さらに密に進めていきたい」と述べた。
 鈴木荘内病院長は、人口減少で医療環境が変われば、統合を含めた再編も一つの案として考えていかないといけないと思う、と話した。一方で「『経営的に問題があるから一緒になればいい』というだけでは済まない。対等合併か吸収合併かが出てくるし、経営面、患者数、医療スタッフに問題があるのなら、各病院が良い病院となった上で一つになるのが理想。まずは足元を固めないといけない」と早期の統合には消極的な姿勢を示した。
 さらに荘内病院が約124億円の累積欠損金(赤字の合計額)を抱えていることに触れ、「黒字を出して、累積欠損金を減らそうと努力している。患者が減る中で『そんなのんびりしたことで(大丈夫か)』という批判もあろうが、基本はそこにある」とも述べた。
 これに関連して三原同医師会理事は「診療科別の集約をしてはどうか。医療は病院ではなく、市民のためにある。市民が望む病院を考えてほしい」と提言した。


看護大学を望む声も  看護師の供給不足を受け

 公開討論会では、看護師の供給不足や鶴岡地区医師会と開業医の現状などに関しても議論した。
 小野同医師会副会長は山形県の看護師養成数の推移を振り返り、「1999年の養成数は689人、2011年は455人と減ってきている。要因は県内各地域にあった准看護学院が減ったことにある」と指摘した。
 堀内鶴岡協立病院長は、庄内では荘内、酒田両看護専門学校(1学年の定員は荘内20人、酒田30人)と鶴岡准看護学院(同25人)で毎年度計75人を養成してきたが、鶴岡准看護学院は2021年の募集を最後に閉校することになった、と説明。そして山形県の看護師養成数は全国で1、2位の少なさだが、その中でも庄内は少ないと述べた。
 さらに、山形県には看護大学が2校あるが、定員は計123人にとどまっていると話し、「養成数が少ないのに、なぜ県内に看護師がいるのかといえば、県外に進学して看護師になり、戻ってきた人たちが県全体を救っていた。しかし今後は首都圏で高齢者が増えることから、これまで通りに戻ってきてくれるのかどうかは不透明」と解説した。
 討論者からは▶看護大学をつくってほしい▶東北公益文科大学に看護学部をつくれないか―といった意見が出た。


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