郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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議会改革 現状と課題[上]
議員の質低下、期待感も薄く
庄内住民からは厳しい声も

 庄内は今年、選挙の年を迎えた。24日投開票の山形県知事選を皮切りに、鶴岡、庄内、遊佐の1市2町で首長選、酒田、鶴岡、三川の2市1町で市町議選が予定されている。菅義偉首相が国民の審判を仰ぐ衆院選(10月21日任期満了)も行われる。このうち市町議選では投票率の低下傾向が目立ち、背景に議会に対する期待感の薄さがある、と指摘する声は多い。議会が地域住民の声を反映していないと批判する声も聞かれ、議会改革は待ったなしとなっている。庄内5市町の議会の現状と課題、改革に向けた方策を探った。(本紙取材班)

投票率は低下傾向止まらず

グラフと表

 酒田市議会議員選挙の投票率の推移を見ると、合併直後の2005年は72.45%、09年は72.14%と70%台を維持していたが、13年は54.36%と旧市時代を含めて過去最低を記録した。17年は57.74%と13年を3.38ポイント上回ったが、2回連続で50%台の低投票率が続いている。
 小松原俊議長は、その要因に①09年までは市長選との同日実施だったが、13年からは単独実施に変わった②旧市地区の若者を中心に政治離れが進んでいる―の2点を挙げる。
 これに対し行政や政治に詳しい複数の市民は「根本的な要因の一つに、市議の質の低下が著しく、市議会に期待感を持てないことがある」と口をそろえる。ある会社社長は「行政の監視機能を果たしていない、と市民は市議に批判的。市議会への信頼も薄い。誰を選んでも変わらないという諦めが背景にある」と話す。
 ほかに▶就職活動として市議選に立候補するような人がいる▶議員年金が無くなり、仕事を辞めて立候補してほしいと要請するのが難しくなった。資質のある人材が出てこない原因となっている▶選挙戦で政策論争をするべき市政の課題にほとんど触れない立候補者が多い―などの声もある。
 庄内町議会議員選挙の投票率は、定数20に26人が立候補した合併後初の06年には80.62%を記録したが、同18に19人が立候補した10年は72.31%、同16に18人が立候補した14年は67.21%と、選挙のたびに低下した。18年は平成以降では県内初の定数割れ、無投票となった。
 これを受けて庄内町議会では、議会内に「議員なり手不足解消調査特別委員会」(委員長・石川保副議長)を設け、町議と町民で作る検討会議を設置して、議員のなり手不足の要因を分析し、対応策などを考えた。
 石川委員長は投票率低下の要因を「全体として政治への関心が薄れている。防雪柵の設置などハード面の整備も、議員を通して町に要望する形ではなく、行政区長が要望して地区で優先順位を付ける形になり、議員の存在感が薄くなった。議員のなり手がいないということと、投票率の低下の根っこは同じではないか」と話す。
 遊佐町議会議員選挙の過去5回の投票率は、03年の82.78%をピークに下落傾向が続き、07年は79.31%と前回比3.47ポイント低下、11年は66.59%と同12.72ポイント低下した。15年は68.78%と同2.19ポイント上がったが、19年は63.63%と同5.15ポイント低下。03年比では19.15ポイント低下し、過去5回の選挙で最低になった。
 土門治明議長は「以前は投票所が海辺や山間部にもあって高齢者が歩いて行けたが、現在は投票所が7カ所減り、投票のために車で行かなければならなくなった。年配者の足が遠のく原因になっている」と指摘する。
 鶴岡市議会議員選挙の投票率は、05年は旧市町村ごとの地域別選挙で72.42%だった。定数特例38で設置選挙を行い、計68人が挑んだ。09年は法定定数34の一般選挙を行い、40人が立候補し、投票率は前回をやや上回る73.85%。
 しかし、13年は同日選の市長選が無投票となった影響で、投票率が62.13%と前回比11.72ポイント下がった。定数を32に減らしたが、立候補も34人に減った。17年は8年ぶりの選挙となった市長選が盛り上がり、投票率が68.34%と同6.21ポイント上がった。定数と立候補は前回と同じ。
 投票率はやや低下傾向を示す。保守系のベテラン市議は「注目の新人が出るなど、話題性によっても市民の関心は変わるので、一概には言えない。60%を割り込むようだと問題だが、60〜70%であればまずまずではないか」と話す。
 三川町議会選挙の投票率は、09年は80%を切って前回比3.78ポイント低下、13年は同6.25ポイント低下、17年は同0.15ポイント上昇した。次回選挙を2月に控えている。
 小林茂吉議長は投票率低下の要因に「定数が20だったころは議員が町民の身近にいて、競り合いも激しく、投票に行く人が多かった。今は定数が10に半減し、やや遠い存在となった。議員が普段から住民のもとに足を運び、議会活動への関心を高めてもらうことが大切」と話す。投票所に行けない高齢者が増えたことも一因に挙げる。


5市町議会とも定数削減

 庄内の5市町議会では、人口減少や立候補者の減少傾向に歯止めが掛からないことなどを背景に、定数削減の動きが相次いでいる。
 酒田市議会は20年12月定例会最終日の12月17日、議員定数を28から25に減らす議員定数条例改正案を議員発議で提出し、賛成多数で可決した。任期満了(21年11月12日)に伴う次期市議選から適用する。
 同市議会は19年12月、各会派の議員9人でつくる議会改革推進特別委員会(富樫幸宏委員長)を設置。議員定数・報酬の在り方を当面の最優先課題に挙げ、特別委員会を15回開き、「市民の意見を聴く会」を開いて各種団体の代表ら21人に意見を求め、市民を対象にアンケート調査(有効回答146人)も行うなどして、適正化に向け検討を重ねた。
 議員定数に対し▶自民党系と公明党からなる最大会派の公成会(10人)が6人減の22人▶保守系で第2会派の志友会(9人)が3人減の25人▶労組系で第3会派の市政研究会(4人)が3人減の25人▶労組系で第4会派の市民の会(3人)が現状維持▶会派規定の3人以上に該当しない日本共産党酒田市議会議員団(2人)が現状維持―との考え方を示した。
 これを踏まえ、20年9月定例会で富樫委員長は「議員定数については、現在の28人から3人削減し25人とする意見が一番多かった」と中間報告していた。
 議員定数には市議や市民の間から▶定数減に賛成の市民の間では「議員は何をしているのか分からない」「市長の言うことを何でも聞いている」といった意見が多く、定数を減らすことが議員不要論に拍車を掛けることになるのではないか▶自分たちから範を示していく、自分たちが身を切る姿勢を市民に見せていくことが、市議会不要論につながらない一つの方法。25人は保身の案と言わざるを得ない▶酒田市の人口は21年度に10万人を切るのは確実だが、21年度以降に分類される類似団体の議員定数は平均22人。定数は22人でもよいのではないか―といった意見も出ていた。
 鶴岡市議会は20年9月定例会で定数を32から4減らして28とする議案を可決した。21年10月選挙から適用する。17年選挙後に市議の県議選出馬などがあり、現状は欠員3の29人。13年選挙後にも県議選出馬で欠員2の状態が続いた。
 議員定数等検討特別委会(渋谷耕一委員長)を19年6月に設置し、市民の意見も聞きながら、計13回の会合を重ねた。
 議員30人への無記名アンケートの結果は「減らす」が80.0%を占め、その内訳は「4人減」が66.7%、「2〜4人減」と「2人減」が各6.7%。「現状維持」は20.0%だった。
 意見募集に応じた市民65人の意見は「減らす」38.5%、「現状維持」24.6%、「増やす」9.2%、「分からない」27.7%と分かれた。市議会モニター9人は「減らす」66.7%、「現状維持」22.2%、「増やす」11.1%。「現状維持」の理由には、市民や地域の声が届きにくくなるなどがあった。
 住民自治組織や産業団体の代表など19人の意見は「減らす」と「現状維持」が各36.8%。議会が目指す方向性や議員の活動が見えないなど「判断できない」も26.3%を占めた。
 庄内町議会は合併して庄内町となった05年、在任特例を使い、合併前の両町の議員全員36人が残った。翌06年に定数20とした。
 その後は改選の前に議会内に議員定数等調査特別委員会を設けて、議員定数と報酬などの見直しを図ってきた。結果、定数は10年改選時に18に、14年に16に削減した。
 17年にも同特別委員会を置いて調査し、「1人減の15」と僅差ながら「現状維持の16」とした。町民から「欠員1の15でも議会に支障が無いように見える」との声があったが、議会は「1人減を委員会内での委員の協力や他委員会からの応援で議会運営に支障が無いように対応している。町が広く住民の声に対応するためにも、定数削減は好ましくない」と結論付けた。
 結局、18年の改選時に定数16に立候補は15人しか出ず、平成以降、県内市町村で初の定数割れを起こした。
 同町議会では、人口規模だけでなく議員定数と報酬は連動しているという考え方で、議員1人当たりの報酬を上げても全体額が上がらないように考えて定数を減らしてきた。選挙での定数割れは定数が適正だったのか、他の要因のためか、課題を突きつけられた。
 同町議会では21年3月に改めて議員定数等調査特別委員会を設置して、定数、報酬、政務活動費などを調査することにしている。
 遊佐町議会では、定数を議論する特別委員会を設け、町民や有識者との意見交換会を開くなどして議論を進めてきた。
 その結果、定数は07年選挙から6減の14に減らし、8年後の15年選挙ではさらに2減の12にした。
 定数減の最大の要因は立候補者の減少傾向に歯止めがかからないことにある。同町議選の立候補者数は、07年は定数14に対して5人超過の19人だったが、11年は2人超過の16人、15年は定数を12に減らしたものの、立候補者は2人超過の14人、19年では1人超過の13人になった。
 三川町議会は09年2月27日から、定数が12から10になった。過去4回の町議選の定数と立候補者数は上の表のように減少傾向にある。19年の補欠選挙では、定数1に立候補が1人と無投票になった。
 小林茂吉議長は立候補者数の減少に「定数20人に対して立候補者21人なら少ないと思うが、10人に対し11人なら少ないとは思わない。立候補を考える人にとっては、定数が10と少ないことが障害になっているのでは。定数が多ければ立候補者数も増えると思う」と話した。
 同町議会の各常任委員会は5〜6人で運営しているが、多い人は三つの委員会を掛け持ちしているため忙しいことから、定数はもう2人ほど多くてもよいとの考えも示した。


首長議案の修正否決少なく

表

 地方議会の機能不全を指摘する声が聞かれる中、議会に対し、首長を含む執行機関の監視・監督機能に期待を寄せる市民は多い。
 首長提出議案を修正可決や否決した例はほとんど無く、「(市議会が)無くても支障や不便を感じない役割しか担っていない」(70歳代の酒田市の会社経営者)との不満があるからだ。
 酒田市議会では、酒田市長が19年に上程した提出議案は計198件。審査状況を見ると、可決が147件74.2%、人事案件などに対する同意が20件10.1%、一般会計や特別会計の決算などに対する認定が10件5.1%、補正予算の専決事項などに対する承認が4件2.0%、損害賠償に関する金額決定などのその他(報告)が17件8.6%。一方、修正可決、否決、継続審査は1件も無かった。
 また議会自らが政策立案や条例を制定することを求める声も根強くある。
 地方自治法第112条で議員の議案提出権は保障されているものの、立法機関の一員として議案を提案・制定することは、ほとんど無いことが背景にある。
 議員が提案し、条例制定にこぎ着けた件数は、19年はゼロ件。17〜19年の3年間では計3件だった。
 その内容は①「酒田市議会議員の議員報酬等に関する条例」(17年、長期欠席議員の処遇を定めたもの)②「酒田市議会委員会条例の一部を改正する条例」(同、「水道局」を「上下水道部」に改めるもの)③「同」(18年、「企画振興部」を「企画部」、「総合支所及び八幡病院」を「及び総合支所」、「建設部、農林水産部、商工観光部」を「地域創生部、建設部、農林水産部」に改めるもの)―となっている。
 ①は市議の身分に関するもので、②③は市の組織再編などに伴うもの。市民の暮らしに直接関わる一般施策に関する政策条例は、大半が首長提案で制定されているのが実情だ。
 小松原俊・酒田市議会議長は本紙の取材に「首長提出議案に対しては、議員各人が判断している。3常任委員会で検討しており、そこでは反対意見も出でいる」と話した。
 遊佐町議会の町長提出議案の審査状況は、19年は議案89件中可決69件77.5%、同意14件15.7%、承認5件5.6%、認定1件1.1%だった。過去3年間でも議案の修正や否決は無かった。19年の議員提出議案は、意見書2件、その他7件で全て可決した。


鶴岡ねじれ議会も大半賛成

 鶴岡市議会の19年の市長提出議案の審査状況は、議案161件中可決146件90.7%、同意8件5.0%、認定2件1.2%、承認2件1.2%、その他2件1.2%、修正可決1件0.6%だった。17年は否決が1件、18年は修正可決が1件、20年は継続審査が2件あった。修正可決や否決が議会評価のポイントになるとすれば、行政監視機能が他市町議会よりいくらか適切に働いていると見ることができる。
 しかし、修正可決や否決が生まれる背景には、皆川市政への対抗勢力である新政クラブが議席の過半数を押さえ、議案成否の鍵を握っているという実態がある。議案は多数決で決まるため、可決するには同クラブの賛成が必ず必要になる。反対すれば即否決にできる。
 その意味で、否決は増やすつもりならいくらでも増やせるはずだが、実際はそうせず、大半は賛成している。同クラブは「理に合わないことは賛成できない」とする立場だけに、大半の議案は反対するほどの理由が無いことを示している。
 一方、19年の議員提出議案の審査状況は決議が2件、意見書が21件。17〜20年を見ても、条例案件は18年の鶴岡市議会議員政治倫理条例の制定と20年の鶴岡市議会議員定数条例の一部改正のいずれも議員に関わるもので、政策的な条例の提案は無い。国会や関係省庁に提出し、法改正や対策を求める意見書は17年10件、18年15件、19年21件と増加傾向にある。
 庄内町議会の町長提出議案の審査状況は、19年は議案124件中可決106件85.5%、認定10件8.1%、承認・報告5件4.0%、同意3件2.4%だった。過去3年で見ても否決は18年9月定例会で「庄内町子育て応援住宅設置及び管理条例の設定について」の1件。
 19年の議員提出議案は条例0件、決議1件、意見書2件、その他2件で、すべて可決している。
 同町議会は議会に関することでは08年3月に議員発議で「議会基本条例」を、12年6月には「議会議員政治倫理条例」を制定し、15年3月に改正した。
 また、議会常任委員会の所管事務調査の取り組みを強化し、議案ではないが、20年3月には同町議会総務文教厚生常任委員会と産業建設常任委員会が、同町に初めて「政策提言書」を提出した。
 三川町議会の町長提出議案の審査状況は、19年は議案83件中可決82件98.8%、否決1件1.2%だった。否決は、6月定例会で出された、空き家等の適正管理に関する条例の一部改正案。空き家の寄付の受け入れ要件などが、今後の空き家対策に不十分として否決した。この一部改正案は9月定例会で修正可決した。
 19年の議員提出議案は条例1件、意見書2件、その他7件で、全て可決している。条例は、個人情報保護のため、議会傍聴の際に名前の記入を無くしたもの。
 同町議員は、本会議が始まる前に自由討議の時間を取り、議案の内容や疑問点を活発に話し合っている。一人の議員の疑問から、反対派が増えることもある。
 小林茂吉議長は「何も話し合わずに議会に臨み、その場で討論しても、否決には至らないと思う。事前に専門的な知見を持つ人を呼んで公聴会を開き、議員同士で疑問点を話し合うことで、後々問題になりそうな点を指摘できる」と話した。
 また「他の議会で可決した後から問題点が出てくるのは、議案の内容理解が深まっていないことや、会派制で議員一人一人の意見が反映されないこともあるのでは」と語った。


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