郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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県エネルギー政策推進プログラム
利益追求の構造見え隠れ
検討委の後期素案に批判の声

 県は、1月下旬にあった次期エネルギー政策推進プログラム策定検討委員会(委員長=山家公雄・エネルギー戦略研究所(株)取締役研究所長、委員10人)の会合で、洋上風力発電導入に向け、遊佐町沖を先行事例に酒田市沖へ広げることなどを盛り込んだ後期エネルギー政策推進プログラム(対象期間2021〜30年度)素案を示した。これに対し環境問題に詳しい同市の関係者らが「大きな利権に群がる利益追求の構造が見え隠れしてならない」と批判している。関係者の間では、県による合意形成のあり方への不信感も強く、素案に対する県民の理解が進むのかどうかは不透明な状況だ。(編集主幹・菅原宏之)

洋上風力を酒田市沖へ展開

 次期エネルギー政策推進プログラム策定検討委員会は、後期エネルギー政策推進プログラム素案を、山形市内で1月27日に開いた同委員会第4回会合で示した。これを受け、会合では同素案について意見を交わし、大枠を了承した。
 素案は、政策展開の視点に①大規模事業の県内展開促進②再生可能エネルギーの地産地消③地球温暖化対策としての再エネの導入拡大と利用の促進④地域資源活用による経済環境と地域課題の解決⑤災害対応力の強化⑥自然環境や歴史・文化等との調和を図った再エネの導入促進―の6項目を挙げ、視点ごとに現状と課題、施策の考え方・方向性、具体的施策をまとめている。
 具体的施策を視点別に見ると、①では▶洋上風力発電の導入に向け、遊佐町沖を先行事例に酒田市沖へ広げていくことを検討する▶課題となっている送電線網の確保に向け、関係機関へ提案・要望活動を続け、酒田港の拠点港化を政府に働き掛けるなど。
 ②では▶再エネ事業者が売電した場合に、FIP価格(基準価格)と市場価格の差額を割増金として交付するFIP制度の導入や、固定価格買取制度の買取期間が終わる電源の増加を見据え、地域の小規模電力を集めて需給を管理する業者の育成を支援する▶県内で再エネを調達し、県内の需要家に供給している(株)やまがた新電力の技術を活用し、各地域に小規模な地域新電力を創出していくなど。
 ③では▶50年に二酸化炭素排出量の実質ゼロを目指すゼロカーボンやまがた2050の実現に向け、出力(キロワット)基準だけでなく容量(キロワット時)基準の導入も念頭に施策を展開する▶再エネ由来の水素など、新たなエネルギー資源の開発・導入の可能性を調査するなど。
 ④では▶ふるさと納税者への返礼品に、県内の再エネを供給して税収を確保するなど、再エネ活用のモデル事業を展開する▶県民が出資などを通して再エネ事業に参加する県民参加型の取り組みを進めるなど。
 ⑤では▶太陽光パネルの同時設置を要件としない家庭向け蓄電池導入を支援する▶近隣に小型発電施設を設けてエネルギーを地産地消するマイクログリッドの構築を研究していくなど。
 ⑥では▶住民合意に基づく再エネ導入に向け、最終的に県知事が事業認定する仕組みの条例制定を検討する▶事業者と地元が協調し、円滑に事業を進めている例などの周知を図ることなどを盛り込んでいる。

再エネ開発おおむね順調

表

 エネルギー政策推進プログラムは、20年間のエネルギー政策の方向を示すエネルギー政策基本構想(対象期間11〜30年度)とともに、県が12年3月に策定した「県エネルギー戦略」を構成している。
 これまでの10年間の具体的施策の展開方向を定めた、現行の前期エネルギー政策推進プログラム(対象期間11〜20年度、17年3月に中間見直し)が今年3月で終わることから、今後10年間の新たなエネルギー政策推進プログラムを策定することにした。
 同委員会では、昨年9月から策定に向けた検討に入り、素案をまとめた。今後、実施中の意見公募を経て3月末に策定する見通し。
 県エネルギー戦略のうちエネルギー政策基本構想では、山形県の目指すべき姿に▶再エネの供給基地化▽分散型エネルギー資源の開発と普及▶再エネの導入拡大などを通じた産業振興の実現―を挙げ、電源と熱源を合わせて30年度末までに原発1基分に当たる101万5千キロワットの再エネを導入する開発目標を掲げている。
 県エネルギー戦略策定後の開発状況を見ると、19年度末までの開発量は計画決定分を含め計55.8万キロワットで、最終30年度末までの開発目標に対する進み具合は55.0%となっている。対象期間の中間年となる20年度末まで1年を残して50%を超えているため、県では「おおむね順調に推移している」と総括している。

風力は目標の18%どまり

 19年度末までの電源と熱源別、エネルギー種類別の開発量は表の通り。太陽光発電は同年度までの総開発量55.8万キロワットのうち57.7%を占め、開発目標に対する進み具合は105.6%。バイオマス発電は同13.6%となり、進み具合は542.9%と開発目標を大きく上回っている。中小水力発電は同3.6%で、進み具合は17年度末で100%に達している。
 一方、風力発電は同14.7%で、進み具合は17.9%にとどまっている。こうした中、県内では遊佐町沖で出力30万キロワットを想定した民間事業者による洋上風力発電所の建設計画が事業化に向けて動き出している。
 熱源では太陽熱・地中熱等は同4.3%、進み具合は23.1%と低調だった。


自らの提言に自らお墨付き

 県が示した素案に対し、環境問題に詳しい関係者からは疑問や反論、問題点を指摘する声が上がっている。
 県樹木医会樹木医で酒田市景観審議会委員の梅津勘一氏は、県民目線で政策展開の視点に挙げた6項目を見た場合、順番として最初に記すのは視点③であり、次に地域で推進していく大前提として視点⑥、視点①はその次に記す各論の一つである、と指摘した。
 その上で「今回の後期エネルギー政策推進プログラムの肝は視点①であり、素案で最初に記したことは、遊佐町沖から酒田市沖などに洋上風力発電導入を進めるための根拠づけにほかならないと感じる。(委員会の)名簿を見ても、これまで強力に風力発電を進めてきた山家氏をはじめ、風力推進側の人選であり、各種環境影響の専門家はいない。これでは自らが提言してきた事業に、自らがお墨付きを与えようとするようなもの」と厳しく批判した。
 そして「発電量の不安定性や事故対応の困難さ、耐用年数の短さとリサイクルの困難さなどが分かっていながら導入を進めようとすることに、温暖化対策への貢献、再エネ推進などといった大義名分の以前に、巨大な利権に群がる利益追求の構造が見え隠れしてならない」と話した。
 梅津氏は、洋上風力発電が景観に及ぼす影響にも言及。洋上風力発電は、魚類や鳥類への影響、超低周波音の影響などは未知数で、景観に対する影響も回避、低減という次元ではなく出てくる、と強調する。
 そして「庄内沖に鳥海山の1合目に匹敵する高さ、庄内砂丘の4倍を超える高さの構造物が乱立することから、庄内海岸からの日本海の景観、庄内平野の景観が一変するのは明らか。そのような多大な影響を『影響が無い』と評価して強引に進め、それを県が後期エネルギー政策推進プログラムで根拠づけることに、危惧と疑問を感じざるを得ない」と指摘している。

自治会の同意でいいのか

 NPO法人パートナーシップオフィス理事で酒田市環境審議会委員の金子博氏は、視点⑥の施策の考え方・方向性の中に「地元住民との十分な合意形成(後略)」とあることに触れ、地元住民とは開発地域周辺のごく狭い区域内の住民だけを想定し、そこの住民から同意を得られれば、開発を進めるという書きぶりになっている、と説明する。
 そして酒田市十里塚地区の県営・市営風力発電事業を挙げ「自治会レベルで合意がもらえれば開発を推し進めるという、これまでの県のやり方に変化は感じられない。そこからは、ほかの多角的な意見を吸い上げようという姿勢も感じられず、それで良いのかと疑問を持っている」と指摘する。
 その上で「本来あるべき議論は『この区域から望む日本海の夕陽景観は諦める』『観光資源を一つ無くしても再エネを導入する』といった覚悟を持つ真摯な議論だろう。そのためには、自治会の枠を超え、県民全体での議論が必要になる。特に洋上風力発電は規模が大きく、自治会レベルではくくれない。県が合意形成をどうとらえているのかが問われる。次世代に説明できる議論をしていかなければならない」と話した。
 金子氏は視点①に関連して、風力発電もバイオマス発電も大規模事業は酒田市を中心とした庄内地域に集中していることを挙げ、開発の分担量としての地域分散の視点が素案を読んでも見えない、と指摘する。
 そして「県内4地域ごとに平等に分担して開発していくためのメニューを考えていくべきだろう」と提言する一方、「今回のプログラムでも、県民一人当たりのエネルギー消費量を最小化しよう、というような卒原発の思想が見られないのは残念だ」と話した。

事業者は複数案の提示を

 梅津、金子の両氏からは、遊佐町沖で計画されている洋上風力発電に関して―
 ▶環境影響評価法が13年度に改正され、複数案を示して早期の段階での柔軟な変更を可能にするという、計画段階配慮書手続きが創設された。その法の趣旨がないがしろにされ、事業者は複数案どころか一つのイメージも示さず、県はそれを指摘、指導もせずほぼ無条件で受理し、市町村に意見照会をし続けている。
 ▶「影響が少ない、影響が無い」という議論の論法には意味が無い。開発に向けては、正直な議論を重ねていくという姿勢がなければならない。そして「分からないものは分からない」として事前事後の継続的な調査を徹底して整えるべきと考える。結論を出す過程も含めて明確な記録を残していかなければ、原発問題と同じになってしまうといった意見も出された。


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