郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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商業高跡地での商売継続が不透明
夢の倶楽の地元納入業者が不安視

 酒田市は、山居倉庫の市観光物産館・酒田夢の倶楽が担う物販機能(土産品販売)を、旧酒田商業高校跡地に移す考えを示しているが、酒田夢の倶楽に土産品などを納入している一部地元業者から「商業高跡地でも、これまで通りの条件で商売ができるようにしてほしい」との声が挙がっている。市と、酒田夢の倶楽を指定管理する一般社団法人・酒田観光物産協会(会長・眞島裕酒田商工会議所副会頭)の双方が、商業高跡地での土産品販売の方向性を決めかねていることが背景にある。市は10月末にも商業高跡地を開発する民間事業者を全国公募する方針だが、地元納入業者らは早急な対応を求めている。(本紙取材班)

山居倉庫の土産品売場廃止で

 酒田市が、酒田夢の倶楽の物販機能を旧酒田商業高校跡地に移す考えを示していることに対し、一部の納入業者が最も不安視しているのは、土産品などを委託販売する契約相手が未定で、支払う手数料の見通しも立っていない、ということ。
 関係者の話を総合すると、酒田夢の倶楽に土産品などを納入している業者は、酒田観光物産協会と委託販売契約を結び、21%の手数料を支払っている。しかし同協会は、酒田夢の倶楽の物販機能が商業高跡地へ移転した後、どう対応していくのかを明らかにしていない。
 土産品を納入しているある地元業者の代表取締役も「酒田観光物産協会が、商業高跡地で物販事業を継続すると判断すれば、同協会が跡地を開発する民間事業者とテナント契約を結び、納入業者は改めて同協会と委託販売契約を結ぶことが想定される。しかし同協会が物販事業を断念した場合、納入業者は跡地を開発する民間事業者と個別に委託販売契約を結ばなければならなくなる」と見通す。
 そして「酒田夢の倶楽の指定管理者の酒田観光物産協会にはテナント料が発生しないため、納入業者の手数料を21%に抑えることができたが、商業高跡地を開発する民間事業者と個別に委託販売契約を結ぶ場合や、跡地にテナントとして入居する酒田観光物産協会と委託販売契約を結ぶ場合には、テナント料が生じるので、手数料が大幅に引き上げられ、納入業者の利益が圧迫される可能性が高い」と指摘した。

山居倉庫外観
南端の棟を物産館に利用している

開発業者を10月末公募

 市では商業高跡地を開発する民間事業者の全国公募を10月末をめどに始め、来年2月か3月の公開企画発表を経て、今年度内に開発事業者を決める。プロポーザル(企画提案)方式での選定を想定し、開発事業者の募集要項を作っている。すでに市内と県外を合わせ数社から問い合わせがある。
 商業高跡地の開発事業では、転売や乱開発を防ぐために土地を売却しないで、事業用定期借地権を設定する。市が跡地を民間事業者に貸し出し、貸付料を徴収する。市が跡地に新たな公共施設を整備したり、補助金を出したりする考えは無く、民間事業者が資金を調達して開発、運営する。
 募集要項には提案してもらう項目として、建物の機能、駐車場を含めた配置、規模、整備手法、市が示した地代の最低額を踏まえた開発事業者が市に払う貸付料額、事業費、資金計画などを盛り込む考え。市では24年度中の開業を見込む。

物販飲食は商業高跡に整備

 酒田市は、文部科学省による3月の山居倉庫国史跡指定を受け、酒田夢の倶楽の物販機能を商業高跡地へ移転することを検討し始めた。各分野の学識経験者12人でつくる山居倉庫保存活用計画策定委員会を設け、保存活用していくための基本方針や方法、現状変更の取り扱い基準などを盛り込んだ保存活用計画を、21、22年度の2年間で定める。
 担当する同市教育委員会社会教育文化課の担当者によると、策定委員会を21年度は10月下旬の初回を含め2回、22年度は3回開き、保存活用計画をまとめる。
 一方で市は国史跡指定を踏まえ、山居倉庫周辺地区の魅力向上と中心市街地の活性化を目指し、旧酒田商業高校跡地活用基本構想を21年度に策定した。
 同基本構想によると商業高跡地約2万883平方㍍に①商業機能②産直機能③駐車場④その他を整備する。
 ①では、歴史・観光資源の山居倉庫を間近で感じることができ、庄内空港や幹線道路から中心市街地に至る玄関口という立地を生かした集客施設(物販、飲食、サービス業を想定)を整備する。観光客だけでなく市民も日常的に利用し、生活利便性が向上する機能(生活雑貨、書店などを想定)も導入する。
 ②では、市が山居倉庫と、隣の庄内みどり農協の産直施設みどりの里山居館の土地・建物を取得する予定であること、前を通る都市計画道路・豊里十里塚線の4車線化で駐車場が狭くなっていることから、山居館を商業高跡地に移す。
 ③では整備した施設に応じた駐車場を整備する。
 ④では市内外の多様な世代が山居倉庫周辺地区を訪れたいと思うような空間とサービス、DX(デジタル技術による変革)による新ビジネスモデルを導入する。
 文化庁文化財第二課によると、国史跡指定の建物には特別な制約は無く、物販機能や飲食機能を入れることは可能という。山居倉庫の物販機能を商業高跡地に移すという考えは、市の判断によるもの。

旧酒田商業高校校舎
解体中の旧酒田商業高校校舎

酒田の土産品そろう場残すべき

 佐々木好信・市地域創生部長は「山居倉庫は国の史跡に指定されたことで、機能が変わってくる。物販や飲食、産直機能は山居倉庫に入れない方針。これに基づき(23年3月に指定管理の契約期間が終わる)酒田観光物産協会と、(同時期に長期独占契約が終わる)食彩旬味芳香亭は、山居倉庫を出ることになる」と話す。
 そして「商業高跡地の駐車場に車を停め、山居倉庫など市内の観光施設を回遊し、土産品を買ってもらうという仕掛けにしたい。酒田夢の倶楽の納入業者には、できるだけ商業高跡地で商売を続けてほしいし、稼ぐ機会を失わせたくはない」との考えを示した。
 これに対し、酒田夢の倶楽に土産品を納入している60歳代の地元業者は「酒田観光物産協会が商業高跡地に移り、新施設のテナントとして入居してほしい。委託手数料が今より引き上げられるのは覚悟しなければならないが、市は緩和措置として、酒田観光物産協会が支払うテナント料の一部を補助するか、商業高跡地の開発事業者を募る募集要項の中に『酒田観光物産協会が支払うテナント料を正規の値段より安くする』といった項目を設けるべき」と要望する。
 さらに「酒田市内で酒田の主な土産品がそろい、それらを1カ所で買える場所は酒田夢の倶楽しかない。そういう売り場を残すよう、市と酒田観光物産協会は協力すべき。1カ所で買える売り場が無くなれば、酒田の観光にとって大きなマイナスになる」と指摘した。

山居倉庫と関連団体の歴史

地元零細企業は切り捨てか

 酒田観光物産協会によると、酒田夢の倶楽の管理運営業務受託は22年度に終わり、同協会の23年度以降の事業計画は、現時点では白紙状態。商業高跡地の新施設の運営に関与するかは決まっていない。
 酒田夢の倶楽内にある同協会事務所は、市が山居倉庫を取得した後は移転するよう求められているが、移転先も決まっていない。同協会では今後、会員や市と話し合って存続か解散かを決断することになる。
 同協会は、1917年に設立した酒田物産協会と、50年に設立した酒田観光協会が母体で、04年に両協会が統合して設立した。同年、旧酒田産業会館内にあった酒田市観光物産館の管理運営を市から受託し、同物産館は山居倉庫へ移転し、04年に酒田市観光物産館酒田夢の倶楽が開館した。
 夢の倶楽の開館後は、酒田観光物産協会が現在まで管理運営業務を担い、土産品の開発と市内業者からの販売委託の受け入れ、旅行会社への営業と観光客の誘致、酒田花火ショーなどの催事の運営を行ってきた。
 同協会の事情に詳しいある関係者は「酒田観光物産協会は04年に市の要請を受けて、酒田の観光と物産を担う組織として設立した経緯がある。市の要請を受けて土産品を販売してきたのに、山居倉庫に物販機能を置かず、新しい事業者が商業高跡地の施設を運営するという市の方針には、今まで酒田観光物産協会がやってきたことは一体何だったのか、というやるせない気持ちがある。今後の雇用を心配している職員もいる」と話す。
 また「酒田夢の倶楽に土産品を納入する業者は、ほとんどが市内の中小零細企業。夢の倶楽で土産品が売れることに伴って生産設備に投資してきたが、新施設では今まで通りに販売できるか全く分からない。せっかく軌道に乗ってきた酒田の土産品製造業に、水を差すようなもの。コロナ禍で苦しい状況が続いているのに、市は業者をないがしろにしている」と指摘する。

みどり農協の産直施設みどりの里山居館
みどり農協の産直施設みどりの里山居館

土産購入は他での可能性も

 ある観光関係者は、観光客の流れが変化する可能性もあると指摘する。
 山居倉庫と商業高跡地との距離は最短でも約200㍍、移動には4車線道路を横断しなければならない。途中の新内橋は少し傾斜し、冬は強風が吹き、足の不自由な人や年配の観光客には、不利な条件が重なる。
 立ち寄り先での無用な時間と、利用者の評価に敏感な旅行会社は、酒田市外の土産品販売施設に立ち寄る可能性も出てくる。
 老朽化する山居倉庫の補修管理も課題。最も古い棟は築128年が経ち、外壁に破損が目立つようになってきた。ケヤキ並木は枯れ枝が多く、落ちた枝で山居倉庫の屋根が壊れる例も増えてきた。山居倉庫の市有化後に補修と維持管理の費用がふくらめば、市の財政に影響する可能性がある。

納入業者会が臨時総会

 酒田夢の倶楽に土産品を納入している市内業者の団体「酒田夢の倶楽協力会」(会長・梅田光隆㈲梅田食品製造本舗代表取締役、会員約140社・個人)では、会員から困惑や不安の声が出ていることを受け、臨時総会を今月22日に開いて意見を聴くことにした。
 梅田会長は「夢の倶楽で土産品の販売を始めてから17年目を迎え、酒田の物産がようやく波に乗ってきた、と思っていたところに出てきた移転話。酒田商業高跡地への移転をきっかけに、商売を辞めようと考えている業者もいると聞く。最善は夢の倶楽で販売を続けさせてもらうことだが、それが難しいようであれば、会員が一人も漏れることなく新施設に移り、これまでと変わらない条件で商売ができるように配慮してもらいたい」と話した。

見えない市の物産振興政策

 酒田市は7月27日に酒田夢の倶楽協力会員に計画の概要を説明したが、納入業者からは市の方針に理解を示す声がある一方で、疑問視する声や不安視する声が挙がっている。
 同市のある納入業者は「山居倉庫は国の史跡として保全していかなければならないので、その中で飲食や物販をすることができなくなるのは当然の話。だから商業高跡地にまとめて移すというように聞いた。移転の形を最終的にどうするかは、酒田観光物産協会だけで判断はできないと思うので、決定権は酒田市にあるのでは」と話した。
 一方で食品を納入している別の業者は「市によると、山居倉庫が史跡に指定されたため物販ができなくなるということだった。しかし他の地域を見れば売店がある史跡もある。そもそも酒田夢の倶楽がある状態で史跡に指定されているので、市の説明はおかしいのではないか」と指摘した。
 そして「酒田の物産振興の拠点である夢の倶楽を、民間が開発する商業高跡地に移してしまうということだが、市は今後の酒田の物産振興をどう考えているのか。民間事業者になることで手数料の上昇や、納入業者の選別などが起きないかという心配もある。商業高跡地と山居倉庫との間には川や大きな道路があり、観光客の導線確保もできるのか」と疑問視する。

納入業者への説明乏しく

 別の納入業者は「夢の倶楽は22年度に閉店し、24年度に完成する商業高跡地の施設に物販機能を移す予定と聞いた。空白の2年間はどこで販売すればいいのか。山居倉庫は酒田で一番の観光地。そこで販売できなくなることに大きな不安を感じる」と困惑を隠さない。
 2年間の空白については、市都市デザイン課の担当者が、酒田観光物産協会の指定管理期間は22年度で終わるが、商業高跡地の整備完了まで何らかの形で販売を継続できるようにする考え、と本紙に話した。
 7月の説明会に出なかった複数の納入業者は、山居倉庫から物販を無くすことを「そのような話は知らない」「何も聞いていないので分からない」と言い、手工芸品関係の納入業者は「説明会に参加できなかったが、その後そのような話は何も聞かなかったし、文書も何も届いていない。そんな重要な話であれば、文書でも知らせてもらわないと困る」と話した。
 別の納入業者は「商業跡地の物販機能がどのようなものになるのか、今の酒田夢の倶楽の機能が維持されるのかどうか、全く分からないので、市ははっきり方針を示してほしい」と言う。

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