郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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女子中学生自殺問題
遺族は酒田市教委、学校に不信感
第三者委が再調査に着手も

 酒田市内の中学校で今年2月、当時1年生の女子生徒が校舎4階から飛び降り自殺した問題で、酒田市教育委員会(鈴木和仁教育長)内の第三者委員会「いじめ問題対応委員会」が、いじめとの関連の再調査を始めてから約2カ月が経った。全校生徒へのアンケート調査も再度行われたが、これまでの学校や市教委の対応に遺族は不信感を抱き、「学校も市教委も事実に向き合おうとしていないのではないか。本当に真相は究明できるのか」と苦しんでいる。(編集委員・戸屋桂)

アンケート内容は後退した

 いじめ問題対応委員会では、学校と市教委が9月に全校生徒と保護者に行ったアンケート調査の結果では、いじめと関連付けるには不十分とし、対応委員会として11月に全校生徒から再度アンケートを取った。
 これに対して遺族は本紙の取材に「いじめとの関連が判断できなかった理由が説明されていない。11月に行ったアンケートの内容は、9月のアンケートより後退しているように思う」と、対応委員会の調査に疑問を呈した。
 遺族の元には複数の保護者から「9月のアンケートに、いじめについて書き込みをした」という声が寄せられた。9月のアンケートは遺族の案を入れて作られたもので、女子生徒に対するいじめについて尋ねている。プライバシーを守った上で、遺族に公開する可能性があることも明記した。
 しかし、対応委員会は、遺族がアンケートを見せてほしいと言っても応じず、どのような書き込みがどのくらいあったのか、それを基に聞き取りなどを行ったのかどうかなども伝えていない。
 対応委員会の委員は弁護士や人権擁護委員、学識経験者などで構成しているが、氏名や調査の内容等は、酒田市いじめ防止対策の推進に関する条例に基づき、公開していない。
 一方で酒田市いじめ防止基本方針では、当事者には委員やアンケートなどの調査結果や経緯を、適時・適切に知らせるように示しているが、これも対応委員会が事案ごとに判断する、と市教委では説明した。今のところ遺族が知らされているのは、委員の氏名とアンケート項目だけのようだ。
 市教委では今後の調査について、必要に応じて対応委員会の委員が生徒や学校教職員、遺族などから聞き取りを行う可能性もある、と言う。調査主体が遺族が不信感を持つ学校や市教委では無くなっても、状況が知らされないため、対応委員会の調査でいじめとの関連が明らかにされるのか、遺族はまだ疑心暗鬼でいる。

報告書は遺族に渡されず

女子生徒の自殺を巡る動き

 遺族が学校や市教委に不信感を抱く背景には、通常では考えられない、これまでの学校側の対応があったからだ=表参照=
 女子生徒は、自殺する前の2020年11月のアンケートに、自分の下駄箱に「うざい」「死ね」などと書かれた紙が9~10月に数回入れられていた、と記入して担任に相談した。担任はこれを学年主任に伝え、当時の校長も把握したが、事実関係の確認は行わずに「経過観察」とした。保護者にも女子生徒から相談があったことを伝えなかった。
 女子生徒の自殺後、学校と市教委は、いじめの可能性が否定できないことから、いじめ防止対策推進法で定める「いじめ重大事態」として「基本調査」を行った。
 3月に出した同基本調査の報告書は、女子生徒の保護者がいじめがあると記入した20年11月のアンケート用紙と、いじめが無いと回答した20年6月のアンケート用紙のコピーとを学校側が取り違えて、保護者によるいじめの訴えが無かったことになっていた。
 報告書は「女子生徒が直接的に嫌がらせや攻撃を受けていた状況は確認できなかったが、これら一つ一つがストレス要因になっていたということも考えられる」と、いじめが自殺の原因とは特定しなかった。
 報告書の内容は口頭で遺族に伝えられたが、報告書は遺族に渡されず、9月に遺族が開示請求して報告書の全容を知ることができた。

隠ぺい体質を感じる

 遺族は「亡くなった後、警察の人から初めて下駄箱にうざい、死ねなどと書いた紙が入っていたことを聞いた。もし、本人が相談した時に学校が伝えてくれていたら、親として何らかの対応もできたし、自殺することも無かったのではないか。アンケートの取り違えも、9月の保護者説明会で初めて知った。ありえないこと。初期の対応の不備が隠ぺい体質につながっているのではないか」と憤る。
 酒田市教育委員会学校教育課の阿部周課長は「いじめの相談やアンケートに書き込みがあった時は、事実確認をすることが原則で、相談があったことを保護者に報告しなかったことも反省すべき点」と認めた。
 アンケートの取り違えは作業ミスと釈明した。これに対しては現職教員などから「考えにくいミス」という声も聞こえる。
 酒田市では基本調査の報告書を、当事者である遺族ですら開示請求しないと入手できなかった。
 鶴岡市では、いじめによる不登校重大事態のため19年7月に設けた「鶴岡市いじめ問題対応委員会」が21年3月に出した報告書が、当事者の保護者と本人に渡された。保護者の意向を確認した上で「広く周知することで再発防止にもつながる」として同市ホームページでも公開している。

要請3カ月後に再調査へ

 女子生徒が亡くなった当初、遺族は自殺の公表や保護者説明会の開催を考えられる状態ではなかったが「それが隠れみのになってしまったのではないか」と考えるように心境が変化した。そのため6月下旬から学校に自殺といじめとの関連の再調査を再三求めた。8月には保護者説明会を開いて経緯を伝えることも求めた。
 市教委と学校は9月17日に同校で保護者説明会を開き、保護者に自殺の事実を話し、その後、全校生徒に説明して、女子生徒の自殺といじめに関するアンケート調査を行った。
 保護者説明会では学校の対応を糾弾する声が上がった。9月のアンケートに対しても「市教委も学校も信用できない」「報告書を握りつぶすのではないか」などの発言があり、学校や市教委に対して不信感を感じたのは遺族だけではなかった。
 市教委では9月、いじめ問題対応委員会で再調査することにしたが、遺族の要請から3カ月が経っていた。

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