郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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酒田商業高跡整備
大手生活雑貨店、ト一屋も出店計画
2024年度中の開館目指す

 酒田市は10日、酒田商業高校跡地を整備する事業者に、「いろは蔵パーク(仮称)プロジェクト」を提案した、総合建設業の(株)丸高(酒田市下安町、髙橋剛代表取締役社長)が代表を務める地元を中心とした事業グループを優先交渉権者として選んだ、と発表した。施設は2024年度中の開館を予定し、大手生活雑貨店やト一屋などが出店、山居倉庫の物産施設と産直施設が移転する。一方、山居倉庫の物産施設の納入業者団体・酒田夢の倶楽協力会(梅田光隆会長、会員145人)では、販売手数料が今より高くなる可能性があることなどから、商業高跡への移転に慎重な姿勢を崩していない。(編集主幹・菅原宏之、編集部課長・土田哲史)

市、丸高代表の事業者を選定

完成予想図。山居倉庫一帯の歴史を考慮した内容が評価された
完成予想図。山居倉庫一帯の歴史を
考慮した内容が評価された

 いろは蔵パークには、丸高のほか、構成法人に(株)菅原鮮魚(同市船場町、菅原和浩代表取締役会長)、仮設機材工業(株)(同市こがね町、西村修代表取締役)、林建設工業(株)(同市幸町、林浩一郎代表取締役社長)、(株)菅原工務所(同市東栄町、菅原靖代表取締役)、I・N設計スタジオ(同市東町、碇谷規幸代表)、(株)石本建築事務所(東京都千代田区、長尾昌高代表取締役社長)の計7社が参画する。
 酒田商業高校跡地整備事業に係る事業者選定委員会(委員長・吉村昇東北公益文科大学学事顧問、委員8人)は、事業者名を伏せて公開審査を5月31日に酒田市民会館で開き、選定結果報告書を6月9日に市へ出した。
 審査は200点満点で審査項目と配点に▼目的、テーマに関する評価60点▼建築に関する評価30点▼運営に関する評価90点▼土地の貸付料20点―を設定した。
 最初に各選定委員が点数の上位2案を選び、(株)丸高案を委員7人、大和ハウス工業(株)山形支店案を委員8人が選んだ。丸高案と大和ハウス案の決選投票の結果、委員5人が丸高案を、委員3人が大和ハウス案を選び、丸高案が優先交渉権者、大和ハウス案が次点交渉権者に決まった。
 選定結果報告書の講評では、丸高案を「山居倉庫周辺エリアの変遷、歴史的背景等を踏まえた提案内容がハード、ソフト両面で高く評価された」と評価したが、他の3案は「商業跡地の歴史的背景や山居倉庫を考慮したデザインへの検討が不十分」「商業跡地の歴史的、地理的背景や地域との関わりが不足」などと記し、丸高案はその他の3案と比べて、地域の歴史的背景を十分に盛り込んだことが決定打になったことがうかがえる。
 一方で丸高案を「豊富な提案内容を含む大規模な事業のため、想定通りに事業を成立させることは容易ではない」「建設費が高額であることに伴うテナント賃料の高さも懸念される」とし、日程に基づいて確実に事業を進めるように求めた。
 同市都市デザイン課によると、同市と事業者は基本協定を7月に結び、完成は2024年度中を予定している。市が事業者へ貸す地代は全額が一般会計に入る。

総事業費は20億円見込む

 丸高案の主な内容は、商業高校跡地と隣接地からなる敷地面積計2万1668平方メートルを、市から20年間借り受けて地代を支払い、①商業②光③地域開発の各機能などを整備し運営する。
 丸高の髙橋剛代表取締役社長によると、総事業費は約25億円を見込んでいるが、最終的には20億円を下回る価格まで圧縮する方針。市に借り受け料として支払う地代は年間約2千万円。
 整備する施設は、蔵をイメージした一部2階平屋建ての1棟と、平屋建ての2棟からなる延べ床面積計7939平方メートルの建物。敷地内には五つの広場を配し、駐車場を一般用278台分、観光バス用8台分、サービス用7台分、臨時用約74台と、観光客や一般の自転車バイク用も確保する。
 ①では、一部2階平屋建て1階の物販施設に、大手生活雑貨店が出店する。
 同じ1階のスーパーマーケットには、酒田市内で8店舗を展開する(株)ト一屋(同市東町2丁目、荒木洋一取締役社長)が出店する。店舗の延べ床面積は1134平方メートルを希望している。
 1階には山居倉庫隣から移転する庄内みどり農協の農産物直売所・みどりの里山居館など(延べ床面積540平方メートル)が、2階には酒田市に現地法人を設ける条件で庄内企業が整備する酒田フードパーク(同1658平方メートル)が、平屋建ての1階には山居倉庫の市観光物産館・酒田夢の倶楽から移転する物産施設(同430平方メートル)が入る。

事業主体の新会社を設立

 ②では、市の観光戦略機関・酒田観光戦略推進協議会との連携と、DX(デジタル技術による社会的変革)による消費者動向の把握、防災情報を含めた観光案内所の設置、各種催事の開催などにも注力する。
 ③では、賃貸予定のキッチンスタジオを除き、事業グループが平屋建ての1階に6次産業化のための施設やチャレンジショップを設け、コワーキングスペース(共有型事務所)を使って起業家の育成にも乗り出す。
 今後は、出店を予定する企業・団体との間で、最終的な店舗の延べ床面積や家賃などの条件面を詰める。来年2月ごろまでに事業計画を決めて詳細設計に入りたい考えだが、協議の推移次第では現在の内容が大幅に変わる可能性もある。
 施設の建設や運営を担うなど事業主体となる新会社も、着工前までに設立する。このため出資者を事業グループの7社だけに限らず、幅広く集めていく。
 総事業費20億円弱の一部は金融機関からの融資で賄う計画。すでに地元金融機関と打ち合わせを始めている。
 髙橋代表取締役は「これだけ多くの地元企業が集まって取り組む開発事業は、酒田市ではおそらく初めて。その相乗効果で、これからの大変な時代を乗り切っていきたいという思いが強く、この事業を地域再生の旗印にしたい。こうした思いに賛同してくれる個人・法人・団体などを広く募り、新会社の設立につなげていきたい」と話した。

関係者の話し合い必要
夢の倶楽協力会が総会

 山居倉庫の酒田市観光物産館酒田夢の倶楽にある物産機能を酒田商業高校跡地へ移す計画に反対している、酒田夢の倶楽協力会では、6月11日に酒田勤労者福祉センターで総会を開き、移転問題も議題となった。
 総会終了後、梅田光隆会長は本紙の取材に「夢の倶楽での商売が家計を支えている業者もある。夢の倶楽の商売と同じ条件であれば酒商跡地への移転もあり得るが、移転をきっかけに商売をやめることがあってはならない。会員の意見を聞きながら酒田市、酒商跡地の事業者と話し合いをしていきたい。まだ移転という言葉は使いたくない」と慎重な姿勢を示した。
 この日の総会には会員23人と、同協力会顧問の眞島裕酒田観光物産協会長、来賓の佐々木好信酒田市地域創生部長が参加した。
 眞島会長は、酒商跡地への移転では土産品の委託販売手数料を現在の20~21%のままになるか不明なことや、夢の倶楽の規格に合わせて作った器具が酒商跡地の新施設に合わない可能性などを挙げ「移転がうまくいくのか、酒田市、観光物産協会、夢の倶楽協力会でチームを作り、それぞれが密になって情報発信をしないと、とても動ける状態ではない」と指摘した。
 会員の「夢の倶楽での販売は22年度で終わるのか」という質問に、佐々木部長は、酒田観光物産協会による夢の倶楽の指定管理は22年度で一旦終わるが、市の指定管理審査会では、酒田商業高校跡地の施設ができるまで、夢の倶楽での販売が継続できるように検討している、と答えた。

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