郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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酒田市決算2021年度
財政運営 厳しい状況続く
新型コロナで過去2番目の決算規模

 酒田市の2021年度普通会計歳入歳出決算は、新型コロナウイルス感染症の影響が続く中、経常収支比率や地方債現在高、実質単年度収支が黒字転換するなど、20年度から好転した財政統計指標も見受けられるが、財政力指数は悪化し、類似団体平均値に届かない指標が多いなど、厳しい財政状況が続いている。同市では、財政調整基金を取り崩して財源に充てないと予算を編成できない状況が常態化しており、将来に向け財源の確保や歳出超過の改善などを含め、持続可能な財政基盤をどう構築していくのかが課題となっている。(編集主幹・菅原宏之)

実質収支 類似団体平均に届かず

 酒田市の21年度普通会計決算(一般会計と駐車場事業特別会計を合わせたもの)の①主な財政統計指標②自治体財政健全化法に基づく健全化判断比率③同市を含めた山形県内13市の普通会計決算の状況(速報)④市中期財政計画で示した財政収支の見通し試算︱は表1~4の通り。
 歳入総額は671億3800万円で20年度比83億6800万円11・1%の減額、歳出総額は649億1600万円で同87億9千万円11・9%の減額となり、決算規模は過去最大だった20年度に次ぐ過去2番目の規模となった。21年度は20年度に比べ減額となってはいるが、コロナ禍前に比べれば大幅な増額となっている。
 決算規模が20年度に比べ減額となったのは、新型コロナ対応として、対象者に一律10万円を給付した特別定額給付金事業101億300万円と、ひとり親世帯臨時特別給付金事業1億2千万円が全額減額となり、GIGAスクール推進事業が5億3千万円減少したことが主な要因となっている。
 酒田駅前地区第1種市街地再開発事業の公共施設購入費を含む酒田コミュニケーションポート(仮称)整備事業が22億1100万円、駅周辺整備事業が4億7800万円それぞれ減少し、浜田・若竹統合保育園整備事業の完了に伴い5億3千万円が全額減額となったことも規模縮小につながった。
 決算収支を見ると、歳入総額から歳出総額を差し引いた形式収支は22億2200万円の黒字となり、同4億2200万円23・4%の増額。形式収支から、事業が進まないため翌年度へ繰り越すべき財源2億8600万円を除いた実質収支は19億3600万円の黒字となり、同2億8900万円17・5%の増額となった。
 決算で生じた剰余金に相当する実質収支の黒字が増額となったのは、21年12月に地方交付税の追加交付があったこと、ふるさと納税寄付金を含む寄付金が当初想定より伸びたことなどが主な要因となっている。
 酒田市は今年8月下旬に、同市と人口規模や産業構造が似通っている全国20の類似団体を対象に独自の調査を行った。回答のあった18市に同市を加えた計19市の実質収支の21年度平均額は23億400万円の黒字だった。酒田市の黒字額は21年度から増額になってはいるが、類似団体平均額に3億6800万円届いていない。県内13市の中では山形市、鶴岡市に次ぐ3番目と、順位は20年度と同じだった。

基金頼みの財政運営が常態化

表1と表2

 実質収支の20年度と21年度間の差額となる単年度収支は、2億8900万円の黒字となり、黒字幅は20年度の1億6300万円の黒字から1億2600万円77・3%拡大した。
 単年度収支に含まれる実質的な黒字要素と赤字要素を除いた実質単年度収支は12億9900万円の黒字となり、20年度の1億9600万円の赤字から黒字に転換した。
 内訳を見ると、単年度収支の2億8900万円の黒字に、積立金(財政調整基金への積み立て金)16億4300万円と繰上償還金(地方債の繰上償還金)6億700万円を加えた黒字要素は計25億3900万円。これに対し赤字要素となる積立金取り崩し額は12億3900万円だった。  
 実質単年度収支が黒字に転換した要因は、積立金取り崩し額を、積立金と地方債の繰上償還金の合計額が上回ったことによる。
 地域振興に充てる地域づくり基金や、ふるさと納税寄付金にかかる経費を除いた分を積み立てている、さかた応援基金など特定の目的のための準備資金となる合計27基金の基金現在高は、21年度で101億5500万円と、20年度に比べ13億1千万円14・8%の増額となっている。このうち財政調整基金現在高は32億6800万円と、積立金取り崩し額より積立金が多くなったため20年度比4億400万円14・1%の増額となっている。
 同市では、財政調整基金を取り崩して財源に充てないと予算を編成できない状況が常態化している。積立金取り崩し額は、コロナ禍で国の予算措置に先立つ形で多くの緊急対応を行い、加えて補正予算を17回も編成したことから財政調整基金の活用機会が多くなり、20年度は19億4800万円に上った。21年度は国費の状況を踏まえながら対応できたことから、20年度比7億900万円36・4%の減額となったが、基金頼みの財政運営であることは変わらない。
 基金現在高は、県内13市の中では鶴岡市に次いで2番目に多い。しかし21年度の類似団体平均額は125億600万円。酒田市はこれを23億5100万円下回り、類似団体とは大きな開きがある。財政調整基金現在高は、21年度の類似団体平均額が50億400万円。酒田市はこれに17億3600万円届いておらず、目標額を設定し、計画的に確保することが求められる。

経常収支比率改善も動向を注視

 財政構造の弾力性を表し、比率が低いほど独自の事業に使えるお金が多いことを示す経常収支比率は90・2%と、20年度比3・6ポイント改善した。
 経常収支比率は、21年度の類似団体平均値が90・2%で、酒田市はそれと同じだった。しかし21年度の県内13市の平均値は86・6%で、同市はそれを3・6ポイント上回っている。県内13市の中では上山市に次いで2番目に高く、最も低い村山市の78・6%とは11・6ポイントも隔たりがある。20年度から改善してはいるものの、新型コロナによる経常的事業の中止なども指数に影響していることから、今後も比率の動向を注視していく必要がある。
 標準的な行政需要に自前の財源でどれだけ対応できるのかを表し、指数が1・0に近いほど財源に余裕があることを示す財政力指数(3カ年平均)は0・489と、20年度比0・005ポイント悪化した。
 財政力指数は21年度の類似団体平均値が0・634。同市はそれに0・145ポイント届かず、依然として大きな隔たりがある。県内13市の中では山形市、天童市、東根市、米沢市、寒河江市、新庄市に次いで7番目に高い。
 市の長期借入金に当たる地方債現在高は565億3300万円と、同28億4300万円4・8%の減額となった。元金償還額が78億2600万円に対し、市債借入額が49億8300万円と、借入が償還を下回ったのが要因となっている。
 地方債現在高は、21年度の類似団体平均額が571億2300万円で、酒田市はそれを5億9千万円下回っている。県内13市の中では山形市、鶴岡市に次いで3番目に多い。今後も市債借入額を公債費元金償還額以下に抑制するとともに、繰上償還によって地方債現在高の縮減が求められる。
 全9会計を対象とした自治体財政健全化法に基づく四つの健全化判断比率では、借入金の返済額などを指標化し、資金繰りの危険度を示す実質公債費比率(3カ年平均)は10・1%と、20年度の10・0%比0・1ポイント悪化した。
 一方、借入金や将来支払う可能性がある負担などの残高を指標化し、将来財政を圧迫する可能性の度合いを示す将来負担比率は28・8%と、20年度の38・5%比9・7ポイント改善した。
 髙橋紀幸・市財政課長は21年度決算を「経常収支比率は改善しているが、これはコロナ禍に伴う事業の中止や縮小による事業費の縮減と、国の普通交付税の追加交付によるところが大きく、市の財政全体が改善したわけではない。市の予算は基金に頼った編成が続いており、歳出超過を改善することで収支均衡を図る必要がある。今まで以上に危機感を持って効率的、効果的な財政運営を行っていく」と総括した。

義務的経費は10・8%増

2021年度山形県内13市普通会計決算の状況(速報)

 主な歳出状況を性質別に見ると、任意に削減できない義務的経費は269億900万円と、20年度比26億3300万円10・8%の増額となった。歳出総額に占める構成比は41・5%で同8・6ポイント上昇した。
 主な内訳は、社会保障費に充てる扶助費は、子育て世帯への臨時特別給付金給付事業費などの増で115億2400万円と同18億3500万円18・9%の増額。借入金の支払いに充てる公債費は、繰上償還を行った影響が大きく81億1100万円と同7億4千万円10・0%の増額。人件費は新型コロナウイルスワクチン接種と選挙への対応による時間外手当の増などで72億7400万円と同5800万円0・8%の増額となった。
 歳出総額に占める構成比は、扶助費が17・8%で20年度比4・7ポイント、公債費が12・5%で同2・5ポイント、人件費が11・2%で同1・4ポイントそれぞれ上昇している。
 社会資本整備に要する投資的経費のうち、災害復旧事業費と失業対策事業費を除いた普通建設事業費は77億4600万円と、同22億6500万円22・6%の減額となった。歳出総額に占める構成比は11・9%で同1・7ポイント低下した。酒田コミュニケーションポート(仮称)整備事業費などの減額が影響した。
 他の地方公共団体への支出や負担金・補助金・交付金などに充てる補助費等は98億7800万円と、同103億7500万円51・2%の減額となった。歳出総額に占める構成比は15・2%で同12・3ポイント低下した。備品購入費や委託料などに充てる物件費は78億300万円と、同3億9700万円5・4%の増額となっている。歳出総額に占める構成比は12・0%で同1・9ポイント上昇した。
 合併特例債は、国体記念体育館改修事業6800万円と酒田商業高校跡地整備事業1億3700万円の2事業に、20年度から繰り越した観光物産施設改修事業100万円、側溝整備事業200万円を加え、計2億800万円を活用した。発行可能額は計329億2900万円。21年度末までの活用実績は316億5200万円。借入期間は25年度まで延長されており、残りの発行可能額は12億7700万円となる。

交付税は追加交付で増額

 主な歳入状況を見ると、自主財源の柱で歳入総額の19・6%を占める市税は131億6400万円と、20年度比4億1200万円3・0%の減額となった。法人市民税は税制改正による税率引き下げの影響はあったものの、10億600万円と同7500万円8・1%の増額となった。
 これに対し固定資産税は新型コロナ対策の一つとして実施された「中小事業者等が所有する償却資産及び事業用家屋に対する特例措置」や土地・家屋の評価替えなどが影響して59億5100万円と同4億3400万円6・8%、個人市民税は給与所得者分が減となった影響から43億6200万円と同5200万円1・2%それぞれ減額となった。
 諸収入(歳入総額に占める構成比5・7%)は38億1600万円と同1億1200万円3・0%の増額、寄付金(同5・2%)は35億300万円と同5億1100万円17・1%の増額、繰入金(同4・8%)は32億4900万円と同5億4500万円14・4%の減額となっている。
 一方、依存財源では地方交付税(同22・3%)が国の税収が増加したことに伴う追加交付などの影響で149億9500万円と、同12億6400万円9・2%の増額となった。
 国庫支出金(同18・4%)は123億5千万円と同83億3900万円40・3%の減額、地方債(同7・4%)は49億8300万円と同10億1500万円16・9%の減額、県支出金(同6・8%)は45億8900万円と同10億400万円18・0%の減額となっている。
 自主財源は20年度比1億8500万円0・7%増の265億4200万円、依存財源は同85億5300万円17・4%減の405億9600万円。歳入に占める自主財源の構成比は39・5%と同4・6ポイント上昇した。

25年度まで財源不足続く

酒田市中期財政計画で示した財政収支の見通し試算

 酒田市は昨年2月12日、今後の財政収支の見通しを試算し、それに対する収支均衡への対応策をまとめた「市中期財政計画」(計画期間=2021年度~25年度の5年間)を公表した。
 それによると、一般会計では歳入から歳出を差し引いた財政収支が21年度以降、39億2200万円~23億800万円の財源不足が生じると試算している。
 これを踏まえた収支均衡への対応策では、歳入で①基金の活用(財政調整、市債管理、さかた応援、地域づくりの各基金ほか)②未利用財産の売却、利活用③各種補助制度、ふるさと納税などの活用による財源の確保④風力発電事業による売電収益の活用―を挙げた。
 一方、歳出では①業務と職員数の均衡の推進②事務事業の見直し③投資的経費の見直し④繰上償還による元利償還金の圧縮―を挙げている。
 こうした対応策の結果、市債残高は25年度に462億3700万円と、20年度比144億8800万円23・9%減少すると試算している。財政調整基金は25年度に10億3300万円と20年度比21億6600万円67・7%、市債管理基金は25年度に1400万円と20年度比10億8500万円98・7%それぞれ減少すると見通している。
 今後の財政運営について髙橋・市財政課長は「将来に向け持続可能な財政基盤を築くことが最大の課題。まずはコロナ禍など予見しにくい経済変動や災害といった緊急的な対応に必要な財政調整基金を確保し、類似団体に比べ大きな負担となっている公債費の削減に取り組んでいく」と話す。

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