郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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県議選 酒田市飽海郡区
県内有数の激戦区になる公算
有権者の関心、盛り上がり欠く

 統一地方選挙で行われる山形県議会議員選挙は、4月9日の投開票日(31日告示)まで3週間余りに迫った。庄内地域のうち「酒田市・飽海郡区」(定数5)では現職3人に前職1人、新人3人の計7人が立候補を予定し、県内17選挙区の中でも有数の激戦区になる公算が強まっている。立候補を予定する7陣営は、選挙戦本番に向け激しい前哨戦を繰り広げているが、有権者の関心は今一つ盛り上がりに欠けている。最新の動向と本紙独自アンケート調査の結果を掲載する。文中敬称略。(本紙取材班)

現前新7人が立候補予定

 酒田市・飽海郡区で立候補を予定するのは、自民党公認で7期目を目指す副議長経験者の森田廣(73)と2期目に意欲を示す梶原宗明(65)、4期目を狙う立憲民主党山形県連代表の石黒覚(66)の現職3人と、いずれも無所属で、2021年10月の衆院選に立候補するため県議を任期途中で辞職した前職の阿部ひとみ(62)、前酒田市議で副議長を務めた田中斉(66)、前酒田市議の江口暢子(62)、不動産会社を経営する今井和彦(64)の新人3人の計7人。5議席を8人で争った前回選(19年4月)に続き、県内でも有数の激戦区となるのは必至の情勢となっている。
 立候補予定者の顔ぶれが出そろう中、自民党関係者の間には、同党公認の候補者全員が当選したとしても、現有3議席から2議席へ1議席減ることへの不満や懸念の声がくすぶる。
 最上川以南の川南地区を地盤とする自民党現職で副議長経験者の星川純一(75)が今期限りでの勇退を表明。酒田、平田、八幡、松山、遊佐にある同党5支部の関係者を中心に候補者の擁立を模索したが、最終的に擁立には至らなかった。
 県議選に立候補を予定する陣営の幹部で自民党の内情に詳しいある関係者は「酒田市・飽海郡区の自民党はこれまで、(思想的に)右から左まで幅広く仲間を増やし、支持層を厚くして3議席を死守してきた。しかし最近は組織自体が細ってきており、3人目を擁立する力が無かった」と指摘する。
 そして「北庄内、特に酒田市では直近の国政選挙や県知事選挙で自民党は敗けが続いている。こうした状態を作り出してしまった山形第3選挙区支部長の加藤鮎子衆議院議員や各支部長の責任は大きい」と話した。
 直近の県知事選(21年1月)で自民党本部が推薦して敗れた大内理加は、現職の吉村美栄子に酒田市で2万782票、遊佐町で4295票の差をつけられた。第49回衆議院議員総選挙(21年10月)では加藤が無所属の阿部ひとみに4万2238票の差をつけて圧勝したが、酒田市では阿部の得票を4293票、遊佐町でも180票下回った。
 自民党を支援してきたある有権者も「戦わずに1人減らすのは、政党組織では考えられない。8月の酒田市長選や次期国政選挙に影響が出ることは避けられない」と危機感を露わにした。
 一方、非自民党系の立候補予定者5人のうち、石黒と江口は連合山形の推薦を受けた。連合山形酒田飽海地域協議会では、前回選挙では新人擁立の出遅れが響き、2議席あった連合系議席を1議席に減らしたことから、今回は必ず2議席を確保したい意向。
 連合加盟の労組も減少していることから組合員票は3千~4千票。当選ラインを前回選挙並みとすると7千票が必要で、労組以外の地域票をいかに積み上げられるかが鍵となる。自民党候補が3人から2人になるため、保守票がばらつく可能性もあるとみており、接戦になると展望している。

内陸との格差認識に隔たり

 本紙アンケート調査は、庄内の「酒田市・飽海郡区」「鶴岡市区」「東田川郡区」に立候補を予定する現前新の計14人に質問用紙を配布し、全員から回答を得た。
 質問は①吉村県政に対する評価②庄内地方と内陸地方の社会基盤等の格差が広がっているとの声が少なくない中、当選したら、どう対応するか③当選したら、第一に力を注ぐことは何か。
 ②では、7人のうち5人が庄内地方と内陸地方との格差の存在を「肯定または一部肯定する」との考えを示し、1人が格差の存在を「否定または内陸に対する庄内の優位性」を主張し、1人が格差の存否や具体的な対応策には触れなかった。
 7人の間でも、庄内と内陸との格差に対する現状認識に隔たりが見られた。
 ③では、複数人が日本海沿岸東北自動車道と地域高規格道路・新庄酒田道路の早期整備、東北公益文科大学の公立化に言及した。


 各立候補予定者の動向 

 森田は、2月13日に同市千石町2丁目で後援会事務所開きを行い、今月11日に支援者ら約180人を集め市内で決起大会を開いた。
 保守系の市議会最大会派「新政会」の9人全員と無会派1人などから支援を受ける。今月10日までに170企業・団体から推薦状を集めた。地盤の旧市中心部で票を固め、旧3町地区と遊佐町では自身の後援会支部を足掛かりに浸透を図る。
 梶原は、1月26日に同市東大町1丁目の旧銀行支店跡に後援会事務所を構えた。2月10日に支援者ら約150人を集め市内で県政報告会を、今月7日には同約200人が参加して総決起大会を開いた。
 新政会の9人全員と無会派1人などから支援を受ける。地盤とする酒田二中学区を固め、後援企業・団体を足場に旧3町地区と遊佐町で攻勢を強める。
 石黒は、2月12日に同市東中の口町で事務所開きを行った。決起大会は3月5日に同市勤労者福祉センターで、逢坂誠二党代表代行を招いて開催した。連合山形と県平和センター、幅広く労組の推薦も得た。3期の実績と吉村美栄子とのパイプ、旧3町地区から唯一の候補であることを強調し、票の掘り起こしを図る。
 阿部は、2月23日に同市富士見町で事務所開きを行った。酒田市議会の保守系会派「志友会」の市議5人と同会派OB、佐藤藤弥元県議、芳賀道也参院議員などが出席した。11日の世話人代表者会に舟山康江参院議員が激励に訪れた。吉村県知事の支援も受ける。新堀地区を固め、旧市の農村地区、旧町にも代表者を置いて支持拡大を図っている。
 田中は、1月29日に同市緑ケ丘1丁目の旧店舗跡で後援会事務所開きを行い、今月25日には舟山康江、芳賀道也の両参議院議員を迎え酒田勤労者福祉センターで総決起集会を開く。
 地元の川南地区を固め、星川の地盤や支援者にも食い込もうと働き掛けを強める。市内全域と遊佐町では、支援企業を足掛かりに浸透を図る。袖浦農協、吉村県知事の女性後援組織「オレンジの会」の一部会員からも支援を受ける。
 今井は、1月8日に同市西野町の自宅隣に後援会事務所を開設した。今月26日には酒田勤労者福祉センターで3回目のタウンミーティングを開く。
 街頭演説を市内中心部と遊佐町で2月25日から毎日、辻立ちを市内中心部で同27日から週5日間行い、支持拡大を図っている。街頭演説は今月30日、辻立ちは31日まで続ける。
 江口は、2月4日に同市幸町で事務所開きを行った。吉村県知事、舟山、芳賀両参院議員も支援に回る。幅広い年齢層の女性の声を聞き交流する女子カフェを2月21日と3月12日に開いた。住民目線、女性目線の生活課題に取り組む身近な県議をうたい、市民派の選挙を打ち出す。3月25日に市総合文化センターでキックオフ集会を開く。


県議選立候補予定者への質問と回答について

本紙では各立候補予定者に質問3項目を渡し、各150字以内で回答してもらった。調査期間は2月20日~3月9日。掲載は五十音順、敬称略。

阿部ひとみ

阿部 ひとみ(62)

無所属 前職
酒田市新堀/松徳学園卒


❶吉村県政に対する評価をお聞かせください。
 県民の生活者目線での県政運営を展開しており、都道府県幸福度ランキングの順位が年々上がっている。高速道路整備が加速し、再生可能エネルギーの導入にいち早く取り組み、独自のエネルギー戦略を進めており、激甚災害への迅速な対応、農林水産業についてもつや姫、庄内北前ガニなどのブランドを立ち上げるなど評価する。

❷庄内地方と内陸地方の社会基盤等の格差が広がっているとの声が少なくありません。当選したら、どのように対応されますか。
 高速交通網が顕著であり、内陸の高速道路、高規格道路整備が加速している中で国の予算措置の問題が大きく、さらに国道47号は軟弱地盤で難工事であるため、遅れが生じていると承知しているが、リダンダンシーの上でも早急に進めるべきと考える。高屋トンネル工事により陸羽西線が2年間運休中だが今後の再開を強く要望する。

❸当選したら、第一に力を注ぐことは何ですか。
 新庄酒田道路は道路ネットワークの重要な路線であり、災害時の代替機能、救急医療への対応、産業や観光の振興、酒田港の利活用にも必要不可欠であり、整備促進を強力に推し進めたい。日沿道へのアクセス道路として、災害時の避難道路、観光振興において県道371号菅里直世下野沢線の未着工区間の事業化の要望を続ける。

石黒覚

石黒 覚(66)

立憲民主党公認
現職
酒田市飛鳥/北海道科学大学工学部卒


❶吉村県政に対する評価をお聞かせください。
 県民生活を守るため一貫して心のかようあったかい県政を進める姿勢を評価する。リーマンショック、東日本大震災・福島第一原発事故、新型コロナウイルス感染症、度重なる想定外の自然災害等への施策展開は機敏かつ適切。ゼロカーボンやまがた2050宣言をうたい、地球を守る責任ある施策を共に進めることに誇りを感じる。

❷庄内地方と内陸地方の社会基盤等の格差が広がっているとの声が少なくありません。当選したら、どのように対応されますか。
 過去10年間に酒田港に投資された予算は、国、県公共、県単独合せて305億円を超える。庄内特に酒田は、県唯一の重要港湾を持つことから、他地域とは異なる大型投資がある。ここを基点に道路等の社会資本整備を加速させる必要がある。また、コロナ後は外航クルーズ誘致などで他地域にはない観光振興展開が急務である。

❸当選したら、第一に力を注ぐことは何ですか。
 ▶︎人づくり⇒子育て費無償化・東北公益文科大学公立化
 ▶︎健康・安心づくり⇒日本海ヘルスケアネットの強化と地域医療確立
 ▶︎新産業づくり⇒農林水産業の再生支援強化・バイオ先端産業確立
 ▶︎強靭な県土づくり⇒日沿道・新庄酒田道路・各生活道路の早期完成

今井和彦

今井 和彦(64)

無所属 新人
酒田市西野町/酒田東高校卒/㈱カスタムエージェント代表取締役社長


❶吉村県政に対する評価をお聞かせください。
 県民の利益、国益に反するグローバリズム(海外投資家、一部の富裕層)に利益を提供する政策(ワクチン接種、カーボンニュートラル等)を推進していること。どちらかと言えば評価しない。

❷庄内地方と内陸地方の社会基盤等の格差が広がっているとの声が少なくありません。当選したら、どのように対応されますか。
 山形新幹線の米沢―福島間の新トンネル建設、調査費用の補助として2億8千万円を支出。約10分の時間短縮にトンネル整備費で概算約1500億円かかり、今後、県から多額の税金投入が予測される。その税金を酒田~山形間の高速道路の料金見直しに充当し、庄内の人がもっと利用しやすいようにする。

❸当選したら、第一に力を注ぐことは何ですか。
 ①ワクチン接種率は全国で上位だが、感染率も全国で上位。接種後、後遺症で苦しむ県民の救済対応を行う。
 ②コロナで閉塞した経済、売上が落ちた企業を倒産させない緊急支援、返済期限3年の延長、材料原価高騰の差額援助。
 ③不動産関連(都市計画、中心市街地、空き家対策等)の規制を見直し、経済を活性化させる。

江口暢子

江口 暢子(62)

無所属 新人
酒田市亀ケ崎/東北公益文科大学大学院公益学研究科修了/前酒田市議会議員


❶吉村県政に対する評価をお聞かせください。
 農業ではつや姫等農産物ブランド化、知名度アップに尽力、コロナ対策ではコロナ差別防止対策をいち早く実施、災害対応では、鶴岡市の土砂崩れに同日災害救助法を適用するなど対応が迅速であり、地域要望である東北公益文科大学の公立化の意見交換会の実施や水道事業の「水道広域化推進プラン」案を策定した等、評価できる。

❷庄内地方と内陸地方の社会基盤等の格差が広がっているとの声が少なくありません。当選したら、どのように対応されますか。
 日本海沿岸東北自動車道、新庄酒田道路の整備促進、陸羽西線の継続、庄内空港の利便性の更なる推進、また、庄内における県立の施設整備について、内陸の社会基盤整備と比較し、差があるのではないかという地域の声がある。こうした地域要望を着実に県に届け、課題共有や相互理解ができる機会を持つといった努力をしたい。

❸当選したら、第一に力を注ぐことは何ですか。
 まずは、ポストコロナに向けた経済・暮らしの立て直しに早急に取り組みたい。「安心して暮らせる山形」のために、「子育て支援」はもちろん、治水・河川整備等の計画的な推進と広域的連携を進め、高齢者や子ども達等が災害弱者とならないよう、県民の命と財産を守るため「県土強靭化」「防災・減災」に力を注いでいきたい。

梶原宗明

梶原 宗明(65)

自由民主党公認 現職
酒田市北沢/庄内農業高校卒


❶吉村県政に対する評価をお聞かせください。
 地方自治を進める上で県と市町村は同等の立場であり、議員は選 挙により県民の代表として選ばれている。市町村との連携は重要で、議会へも丁寧な説明と、十分な議論が必要。国政との意思疎通も十分でなく、県民の思い、県の考えがきちんと伝わっているか疑問である。すべてにおいて信頼関係の構築、連携にもっと尽力すべき。

❷庄内地方と内陸地方の社会基盤等の格差が広がっているとの声が少なくありません。当選したら、どのように対応されますか。
 庄内も内陸も山形県であり、さらなる相互交流、正しい情報共有が必要と考える。内陸の中においても格差を感じるところもある。地域ごとの課題を明確にし、事業化によるさまざまな県内への効果を発信していく。県はもちろん、政府への働きかけは重要である。

❸当選したら、第一に力を注ぐことは何ですか。
 急ぐべきは少子化への対応、どのような施策が、この国・地方にとってより効果があるのか、検証、検討を急ぐ。現在の状況を考え、この地域における将来を見据えた場合、カーボンニュートラル社会を念頭にエネルギー基地、食糧基地としての機能強化、拡充そしてその可能性にチャレンジしなければならないと考える。

田中斉

田中 斉(66)

無所属 新人
酒田市宮野浦/駒澤大学法学部卒/前酒田市議会議員


❶吉村県政に対する評価をお聞かせください。
 つや姫をはじめ農林水産物ブランドの広告塔として強力に全国発信し、年間農業産出額2500億円を達成されたことは高く評価する。しかし、農業所得、漁業所得が安定し将来に向けて「もうかる農林水産業」でなければ、後継者に地域農業は引き継げない。農産物・加工品輸出や高収益作物栽培で手取り確保策が必要。

❷庄内地方と内陸地方の社会基盤等の格差が広がっているとの声が少なくありません。当選したら、どのように対応されますか。
 昨年10月の東北中央自動車道の区間開通で、新庄からは仙台と首都圏に高速道がつながり、観光客や物流の経済効果が期待されている。庄内地方は物流・人流の面で格差が拡大している。まずは物流拡大で港湾振興に資する交通インフラ整備は庄内の大きな課題である。庄内を孤立させない取り組みを知事に進言する。

❸当選したら、第一に力を注ぐことは何ですか。
 東北公益文科大学の公立化に合わせて県立産業技術短期大学校庄内校の機能も強化し、少子化による人手不足に悩む地元企業が求める多様なスキルや資格を公益大と産業技術短大で取得して「地域人財」として育成する地域循環型社会の構築に力を注ぐ。土木系・保育・看護、さらに港湾振興に必要な人財育成を目指すべきと考える。

森田廣

森田 廣(73)

自由民主党公認 現職
酒田市若原町/駒澤大学経営学部卒


❶吉村県政に対する評価をお聞かせください。
 知事、議員を問わず、県民のお声を聞き、選ばれた議会の一員として、是々非々で公平を旨として、県政に反映していくことが大切だと考える。

❷庄内地方と内陸地方の社会基盤等の格差が広がっているとの声が少なくありません。当選したら、どのように対応されますか。
 上述と同じ。

❸当選したら、第一に力を注ぐことは何ですか。
 インフラ整備:日本海沿岸東北自動車道の早期全線開通、国道47号線高速化(新庄酒田線自動車道)の早期全線開通。体育施設整備:屋内フィギュアスケート場、高機能バレーボール(アランマーレホーム)、高機能フットボールスタジアム、高機能ベースボールスタジアム。上記施設は収容人数を重視する。

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