郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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県立鶴岡病院跡地
市が解体費負担しサッカー場に
市議会で疑問の声が相次ぐ

 鶴岡市が同市高坂の旧県立鶴岡病院を解体して、跡地に人工芝サッカー場を整備する新年度予算案について、市議会で「筋として県が解体するべき」などと疑問の声が相次いだ。8日の市議会予算特別委員会総務分科会では予算案を否決したが、翌9日の同市議会市民文教分科会では可決し、判断が割れた。予算案は22日の市議会予算特別委員会で採決される。(編集部課長・土田哲史)

解体費13億円を市と県で折半

 同市財政課によると、鶴岡病院は土地と建物を県が市に無償譲渡し、解体工事を市が行う。解体費は約13億円を見込み、県と市が6億5千万円ずつを負担する。
 人工芝サッカー場は市が整備し、事業費は約10億円。このうち受給予定のスポーツ振興くじ助成金5800万円を除く約9億4200万円を、市が負担する。
 市は、発行額の7割が国から普通交付税として戻ってくる過疎債を充てるため、実質的な負担は解体で1億9500万円、サッカー場整備で2億8200万円の計4億7700万円となる。
 サッカー場は、メインコートとサブコート、管理棟、夜間照明設備、駐車場などを備え、27年の完成を予定している。年間維持管理費は約1千万円を見込む。

県が過疎債利用案を提案

 鶴岡病院は県立こころの医療センターの開院により、15年3月に閉院した。市は14年春から毎年、鶴岡病院の解体と同病院跡地を含む県有の遊休施設跡地への県営サッカー場整備を盛り込んだ重要事業要望を、県に提出してきた。
 しかし、県病院事業局は資金不足のため16年には赤字会計に陥り、解体費用を捻出できなくなった。
 旧鶴岡病院の地元、黄金地区の住民は閉院前から、防犯上の問題から早期の解体を県に求めていた。鶴岡地区サッカー協会も12年に、子供たちが酒田市や庄内町などで練習や試合をしているので、サッカー場を整備するよう、市に要望した。
 県は昨年、県単独では解体できないが、市が解体とサッカー場の整備を一体で行えば過疎債を使うことができるとして、土地建物の市への無償譲渡と県の解体費用一部負担を市に提案した。市は当初難色を示したが、問題を先延ばしにできないとして受け入れた。

「すり替えに屈した」

 8日の市議会予算特別委員会総務分科会では、予算案に共産党の加藤鑛一委員、無所属の佐藤久樹委員が賛成し、新政クラブの本間新兵衛、佐藤博幸両委員、市民フォーラムの石井清則委員、無所属の小野由夫委員が反対して、賛成2、反対4で否決された。
 9日の市議会市民文教分科会では、新政クラブの本間正芳、佐藤麻里両委員、共産党の長谷川剛委員、SDGs鶴ケ岡の南波純委員が賛成し、無所属の中沢深雪委員が反対して、賛成4、反対1で可決された。
 中沢委員は「鶴岡病院は県が責任を持って解体するべき。県の財政が厳しいのは分かるが、市の財政も厳しい状況にある。県議会で十分に議論されたとは感じない」と反対理由を述べた。
 賛成した南波委員は「県が全額負担すべきと反対する考えだった。しかし病院の解体を願う人がたくさんいる中、県は動かなかった。苦渋の決断だ」と述べた。
 ほかにも石井市議は2月28日の総括質問で「県の施設を市税で解体するのはおかしい。県の責任放棄であり納得できない」と述べた。新政クラブの佐藤昌哉市議は3月2日の一般質問で「県による解体と整備を要望していたのに、市が負担するすり替えになっている。旧いこいの村庄内の時は、県が無償譲渡に応じず市が買い取った。県には不信感を持っている。市は県の思惑に屈したと思わざるを得ない」と批判した。
 ある行政職員は「公共施設は使い続けることを前提に建てており、解体に備えて基金などを積み立てることはない。今後、解体されない公共施設は問題化する可能性がある。市内には旧温海高校など県有の遊休施設があり、市による鶴岡病院解体が認められれば、県の建物を市が解体する前例になる」と指摘した。

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