郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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大型連休庄内の人出
コロナ禍前に届かずも回復鮮明
関西や九州など遠方の客戻る

 大型連休中に庄内を訪れた観光客数は、コロナ禍前の2018、19年には及ばなかったものの前年を上回った観光施設が多く、コロナ禍からの回復が鮮明になった。関西や九州、北海道など遠方の客が増え、ピークの5月3~5日は駐車場が満車になった施設も多く、入場や座席待ちで長い行列ができた施設もあった。(本紙取材班)

サカタント来客過去最多

 酒田本港東ふ頭の交流施設サカタントの4月29日~5月7日の入場者数は計1万8千人弱だった。ピークとなった3~5日には、昨年9月の開業以来最多となる1日3千人が訪れた。最もにぎわった時間帯には、客の行列が各店舗から屋外まで伸び、常に満席で座れない人も多かった。
 同期間中は関東など遠方の客が多く、連休終盤は新潟、秋田など近隣県の客が増えた。
 サカタントを管理するグッドライフアイランド合同会社の松並三男管理責任者は「これまでの最多入場者数は1日当たり2千人だったので、連休中の人出は想定を大幅に上回った。来年に向けて商品を強化する一方、市と相談して座席を増やすことも検討していきたい」と話した。
 隣の酒田市みなと市場と、さかた海鮮市場の入場者数も、昨年同期を上回った可能性が高い。
 酒田市みなと市場テナント会長の小松祐輔小松鮪専門店代表によると、同店のピークは5月4日。定食などが正午前には受付分だけで完売し、最後の客に商品を渡したのは午後4時半ごろだった。九州や北海道など遠方の客が増え、客層はほぼコロナ禍前に戻った。
 小松会長は「サカタントの開業によって、酒田港エリアを訪れる客が増えたように感じている。これまでは酒田市みなと市場とさかた海鮮市場で受け切れなかった客を市外に逃していたが、サカタントの開業によって客を分散化できるようになった」と話した。
 酒田観光物産協会によると、酒田市観光物産館酒田夢の倶楽の4月29日~5月7日のレジ通過客数は3万2064人で、前年同期より1368人4・5%増えた。売上は同約20%増えた。コロナ禍前の2019年同期比ではレジ通過客数、売上とも約15%減だった。
 今年のピークは5月3~6日。この4日間は駐車場が常に満車となり、新内橋を挟んだ新井田川対岸に臨時駐車場50台分を設けた。
 コロナ禍で行動に慎重だった高齢者の姿が戻り、自家用車のナンバーも九州など遠方が増えた。庄内―羽田空港便5便化の効果か、飛行機を使う旅行者も増えたように感じた。

サカタント
1日3千人が来たサカタント

しゃりん売上18年並みに

 鶴岡市温海地区の道の駅あつみの夕陽のあつみふる里物産館しゃりんでは、4月26日~5月8日のレジ通過客数が8500人で、前年同期比5%増、売上は同15%増だった。
 コロナ禍前の19年同期比ではレジ通過客数が37%減、売上が25%減。19年同期は10連休で過去最高並みの売上だったためで、17、18年同期と比べれば売上はほぼ同じに戻った。3年ぶりに売上の大きい日が続いた。6、7日の雨が無ければ、もっと伸びたと思われる。
 人気の土産品はANA庄内ブルーアンバサダーとのコラボ商品「あつみバターサンド」。だだちゃ豆やサクランボを使った鶴岡や山形らしい商品も売れた。コロナ下では自分のための消費が中心だったが、お土産用に戻ったのか、千円程度の菓子類が人気だった。
 土産品を買うより、海を眺めたりヘリコプター遊覧を楽しんだりとレジャー目的で来た人が多かった。屋外の人出は19年並みだった。
 風景を楽しんでゆっくり滞在する人が多かったため、駐車場の回転率が悪かった。関西より西のナンバー車も増え、車中泊の車で朝の駐車場は6~7割が埋まっていた。バイク客も多く、ピークの4、5日は1日千台ほど出入りした。
 遊佐町の道の駅・鳥海ふらっとによると、4月29日~5月8日のレジ通過客数は前年同期比1%減、売上は5%増だった。売上増は原料費等の値上げに伴い、価格を上げたことが主因。
 今年は8日が月曜日で、6、7日の天候が悪かったことを考えると、前年より人の動きは大きかったとみている。
 同道の駅では、1日当たりの売上のピーク額を500万円と想定しているが、昨年の大型連休中は超えた日が無かったが、今年は4日に超えた。駐車場を見ても、遠方のナンバーが目立って増え、朝は車中泊の車でほぼ満杯状態だった。
 しかしコロナ禍前に比べると売上で2割減、レジ通過客数で2割以上減の状況。特に観光バスはコロナ禍前の大型連休には1日数台入ってきたが、ほぼ無い。そのため土産品の動きは相変わらず鈍い。
 部門別では野菜の産直の売上が前年比で最も悪かった。4月が暑く、春先の野菜や山菜類が早めに育ち品薄になったため。生産者が高齢化して減ったことも影響している。鮮魚は値上げしたため売上が増えた。
 西浜コテージ村とキャンプ場は客数、売上ともに前年比90%余り。天気の影響もあったが、コロナ下にキャンプ場に来ていた人が、今年はほかに出掛けたのではないかと分析している。

山居倉庫
山居倉庫には高齢者の姿が戻った

水族館は8割県外客に戻る

 鶴岡市立加茂水族館によると4月26日~5月7日の入館者数は2万9700人。前年同期の2万4200人より5500人22・7%増えた。コロナ禍前の18年度4万6900人に比べると1万7200人36・7%少なかった。
 今年のピークは5月4、5日で1日約4600人が訪れた。3日も4千人を超えた。最もにぎわった時間帯には入館待ちの行列が建物の外周に及び、最大2時間待った。4月29、30日は通常の土日並みの約2500人が入った。
 5月4~6日は混雑緩和のため入場を1日5千人に制限したが、コロナ禍で休止していた「ひれあしの時間」「クラゲのおはなし」「バックヤードツアー」などを再開し、ほぼコロナ禍前の営業形態に戻した。入館者の8割は県外客とコロナ禍前にほぼ戻った。

羽黒山も県外客多く

 鶴岡市羽黒庁舎産業建設課によると、出羽三山神社や国宝五重塔、いでは文化記念館などを含む羽黒山地域の4月26日~5月7日の推計観光客数は計2万5400人。前年同期より3200人14・4%増えた。
 このうち県外客は8700人34・2%を占め、前年同期より500人6・0%増えた。観光客数が最も多かったのは5月4日の5500人で、うち県外客は2200人40・0%だった。
 コロナ禍前の19年同期の4万5700人まで2万300人44・4%届いていないが、19年は五重塔内部特別拝観などがあり、5月1日の令和改元で御朱印を求める参拝者も多かった。特別な事業が無かった18年同期の2万7000人と比べれば94・1%まで回復した。
 今年は子供連れの家族や若いカップルが目立った。県外客は新潟や宮城など近隣県が中心だったが、九州など遠方もいた。
 羽黒町観光協会では5月3~5日、出羽三山神社随神門周辺の通常駐車場250台分と、宿坊街などの臨時駐車場150台分の計400台分を用意し、3、4日はいずれも満車になった。
 同観光協会の吉住弘幸事務局長は「随神門周辺の駐車場では、昨年は県内ナンバーが県外ナンバーより多かったが、今年は9割以上が県外ナンバーだった。昨年よりかなり客が増えたように感じる」と話した。

飛島は野鳥目当て

 定期船とびしまの4月29日~5月8日の乗客数は1252・0人(子供は1人0・5人換算)で、昨年同期の1094・0人を158・0人14・4%上回った。
 同期間は8日を除き1日2往復で全19便運航する計画だったが、30、1、6、7、8日が悪天候のため欠航し、9便しか運航できず、出航率は47・4%だった。
 昨年の15便を大きく下回ったが、1便当たりの乗客数は139・1人と昨年の72・9人からほぼ倍増した。
 大型連休は乗客が増えるため単純には比べられないが、今年4月1日~5月17日の1便当たりの乗客数は73・3人。コロナ禍前の19年4月1日~5月31日は同95・0人と多かったが、前年にテレビ番組「ブラタモリ」で飛島が放送された影響。18年の同期間72・1人、17年の同期間77・1人と比べ、乗客数はだいぶ戻った。
 酒田発便の乗客計669人(子供も1人換算)の内訳は、観光客が最も多く558人で83・4%を占め、このうち199人35・7%がバードウォッチングを目的としていた。次いで帰省35人5・2%、島民31人4・6%、仕事28人4・2%、その他17人2・5%だった。県内外別では県内283人42・3%、県外386人57・7%となった。

宿泊客回復も人手不足影響

 酒田市ホテル振興協議会(会長・熊谷芳則(株)ホテルリッチ酒田代表取締役)によると、加盟6ホテルの5月3~5日の利用客数は、前年5月2~4日比1・0%増となった。
 この3日間は前年も好調だったので、今年はそれを上回った形。人手不足の影響から客室清掃員を確保できず、客室を100%提供できなかったホテルも見受けられ、それが無ければ、もっと伸びた可能性は高い。
 ホテルリッチ&ガーデン酒田の5月1~7日の利用客を都道府県別に見ると、東京都が190人で最も多く、2番目が山形県の127人。以下、宮城県81人、千葉県80人、埼玉県71人、新潟県38人、岩手県34人。
 利用客は北海道から熊本県まで広範囲に及び、海外からも米国8人、韓国3人など「エリア的にはコロナ禍前と遜色のないところまで回復している」(同)と分析している。
 同協議会全体の利用客数は、平均で1月が前年同月比24・0%増、2月が同52・0%増、3月が同37・0%増、4月が同23・0%増。利用客数は6ホテルとも前年同月を4カ月連続で上回り、コロナ禍前の19年1~4月の実績も4カ月連続で上回った。
 大型連休期間は適用外だったが、政府の観光需要喚起策「全国旅行支援」が追い風になった。
 中学校や高校など学校関係の各種大会に向けた団体の予約は回復傾向にあるものの、宴会を伴う会合はいまだ戻っていない。
 熊谷会長は「コロナ禍の3年間に旅行ができなかった反動が、活発な人流につながっている。今後、宿泊利用は大きく改善していくと見通しているが、人手不足とその確保が解決するべき課題」と話す。
 湯野浜温泉観光協会によると、同温泉街の4月26日~5月7日の宿泊と日帰り客は6万1千人。前年同期の5万9千人に比べ200人3・4%増えた。18年同期の2万700人と比べると1万4600人70・5%減った。今年のピークは5月3~5日。1カ月前には予約で満室になった。
 コロナ禍で旅館5軒が廃業したため温泉街全体の部屋数が減り、さらに従業員が不足して予約を断る旅館もあったことなどから、今年の客数は昨年同期を上回ったものの、コロナ禍前を大きく下回った。行動制限が無くなったことで、昨年は多かった県内客が減ったことも影響した。

旅行取扱額は前年の2倍

 (株)庄交コーポレーション庄交トラベルの大型連休期間(4月29日~5月7日)の取扱額は前年同期比95・8%増と、22年同期から倍増した。しかしコロナ禍前の19年同期との比較では67・1%減と約3分の1にとどまった。
 旅行需要の高まりを背景に、個人客による航空券やJR切符の販売、ホテルや旅館の宿泊手配などが大幅に伸び、22年同期の実績を2倍近く上回った。
 一方で販売額が19年同期の約3割だったのは、往復航空券と宿泊がセットになった全日本空輸(株)のフリープラン「ANAスカイホリデー」と、往復切符と宿泊がセットになった東日本旅客鉄道(株)のフリープラン「TYO」などの主力商品が、22年から販売中止になったことが最大の要因。加えて19年は、海外航空券や海外パッケージ商品の販売実績が若干あった影響もある。
 庄交トラベルでは、大型連休期間に同社が企画・募集するミリオンツアーを原則設定していないが、今年は日帰りバスツアー「日本一の桜弘前公園とホテルランチブッフェ」と「山形牛ステーキ重&寒河江いちご狩り食べ放題」を販売。どちらも満席で催行した。
 今後は、コロナ禍後の旅行需要の回復と、団体から個人へ旅行形態の移行などを見据え、国内旅行では大人1人当たり2万円以内の日帰りが中心の現行商品群に、新たに富裕層向け高額商品を増やしていく。
 行き先は北海道、関西、沖縄などを中心に全国一円を想定し、価格帯は大人1人当たり1泊2日で3~5万円、2泊3日で10万円台のツアーを設定していく。
 海外旅行では、ミリオンツアーによる商品は24年度に改めて検討する方針。
 薮下博朗同社執行役員は「大型連休の結果から、遠方に足を延ばす人が増えている傾向が見て取れる。高額商品を増やしながら徐々に客層も変え、今年度の年間取扱額は前年度比3割増を目指していく」と話す。

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