夏の決算[上]
コロナ禍前割るも前年超え
観光施設の人出と売上、回復続く
庄内の7、8月の観光客数は、5月に新型コロナが2類相当からインフルエンザなどと同じ5類に変更されたことや、花火大会などの開催で観光客や帰省客が増えたことで、ほとんどの観光施設で入館者数や売上が前年を上回った。外国人観光客も少しずつ見かけるようになった。回復傾向は鮮明だがコロナ禍前に比べまだ1~2割ほど下回っている。猛暑の影響で海水浴客は伸び悩んだが、好天続きで登山客は伸びた(本紙取材班)
土産品販売施設 外国人客も目立つように
酒田市観光物産館酒田夢の倶楽の入館者数は、7月が4万3千人で前年同月比2千人4・4%減、8月は6万8千人で同1万6千人30・8%増だった。コロナ禍前の19年同月比では7月が3万7500人46・6%減、8月が2万7千人28・4%減となった。
売上は7月が同12・0%増え、8月は同38・0%増えた。19年同月比では7月が9・0%減、8月が12・0%減だった。
7月は前年同月を入館者数は下回ったが売上は上回り、8月は入館者数、売上とも前年同月を上回った。回復傾向は続いている。
観光客、帰省客ともに増えた印象。首都圏の大手旅行会社の団体バスが増え、北関東の中小旅行会社の団体バスも動き始めた。外国人観光客も8月末ごろから台湾を中心に増え始めた。
来館者のピークは通常8月13~15日だが、今年は8月4~21日と分散する傾向が見えた。コロナ禍の影響でピークの日を避ける人が増えた可能性がある。
酒田市交流観光課によると、さかた海鮮市場の入館者数は、7月は3万8796人で前年同月比2860人8・0%増、8月は3万8852人で同1088人2・9%増だった。隣の酒田市みなと市場は7月が2万540人で同884人4・5%増えた。
みなと市場テナント会長の小松祐輔・小松鮪専門店代表によると、入館者と売上が前年を上回った店が多かったようだ。小松鮪専門店では週末を中心に忙しい日が多く、ピークの8月13、14日には1日約700人が訪れた。フランス、アメリカ、台湾、香港などの外国人客も目立って増えた。
小松代表は「昨年9月にオープンしたサカタントとの相乗効果もあるのではないか。今年は天気の良い日が多く客足が絶えなかった」と話した。
グッドライフアイランド合同会社(本間当代表)によると、同社が運営し、飲食店6店が入る酒田本港東ふ頭交流施設サカタントの来館者数は、7月が2万4501人で当初予想の22・5%増、8月が3万3983人で同54・5%増となり、2カ月連続で当初予想を大幅に上回った。
特に8月は、お盆の11~13日を中心に毎週土日の来館者が急増した。昼夜合わせ1日に2千人を超えた日が5日間あり、4月以降では春の大型連休でにぎわった5月の3日間を上回った。
観光客の内訳は、県内陸のほかに秋田、宮城、新潟など隣県が目立ち、特に秋田が多かった。
遊佐町の道の駅鳥海ふらっとでは、入込客数が7月は天気が良く海水浴客などの人出もあったが、前年同月比で増減無し。売上は産直売り場に野菜やメロンなど品数も多かったため同20%増と伸びた。
8月は盆ごろまでは良かったが、メロンと野菜が品薄になると同時にイワガキも終わり、中旬以降客足が落ちた。それでも入込客数は同4%増、売上は同15%増だった。
売上増は原料価格の高騰などで、商品が軒並み値上がりしている影響も大きい。イワガキは需要があるため、品物を確保するために争奪戦となり値上がりした。1個700円、800円だったのが千円を超え、最高値は1500円と昨年の約2倍で販売した。
遠方客が増え、駐車場で車中泊をする観光客も相変わらず多かった。
帰省客や観光客が落ち着く盆以降は例年、ゆるやかに客足が減っていくが、今年は一気に減った。野菜類が品薄になったこと、暑すぎて外出を控えたこと、消費にメリハリを付けて盆以降は財布のひもを締めたことなどが考えられる。
宿泊施設 ホテル利用、前年比13%
酒田市ホテル振興協議会(会長・熊谷芳則(株)ホテルリッチ酒田代表取締役)によると、加盟6ホテルの利用客数は7月が前年同月比11・0%増、8月が同14・5%増と、2カ月連続で前年を1割超上回った。7月と8月の2カ月合計の利用客数は、前年同期から12・8%増えている。
しかし、この2カ月合計の利用客数は19年同期の85・0~90・0%にとどまり、依然コロナ禍前の水準には戻り切れていない。
熊谷会長は、利用客数が前年を上回った最大の要因に、5月8日から新型コロナが2類相当から5類に変更されたことを挙げた。心理的な制約が緩和され、酒田の花火など各種の催し物が開催されたことから、前年同期より観光客や帰省客が増えたと分析している。
ただ人手不足の影響から客室清掃員を確保することができず、お客の受け入れを制限したホテルも一部に見受けられた。
一方、各種会合後の宴会や懇親会もコロナ禍前の水準には戻っていない。人流の回復を背景に、ここにきてコロナ感染者数が増えていることもあり「まだ様子見の状況」(熊谷会長)が続いている。
鶴岡市の湯野浜温泉観光協会によると、同温泉街の各宿泊施設では7、8月の週末と8月11~14日に、ほぼ満室となった。平日もそれなりに埋まった。コロナ禍前には届かないものの昨年よりはにぎわった。
台湾の家族客など4~5人のグループを見かけることもあり、湯野浜温泉で外国人観光客を見たのは、コロナ禍前を含むここ6~7年では初めてのことだった。
観光地 水族館8月は前年比26%
鶴岡市立加茂水族館の入館者数は、7月は4万2145人で前年同月比125人0・3%増、8月は7万4450人で同1万5160人25・6%増となった。19年同月比では、7月は9334人18・1%減、8月は2万3648人24・1%減だった。
県外客は7~8割と、コロナ下より2割ほど増え、コロナ前にほぼ戻った。外国人客もコロナ下はほぼ無ったが、少人数のグループを見掛けるようになった。
入館者が最も多かったのは8月12日の4847人。8月14、15日も各4千人を超えた。昨年も8月12日と14~16日が3千人超でピークだったため、旧盆前後がピークの傾向は続いている。
レジャー 猛暑で海水浴客伸びず
湯野浜温泉観光協会によると、湯野浜海水浴場の遊泳期間7月14日~8月20日の海水浴客は17万8千人で、前年同期比3万6千人25・4%増だった。昨年は遊泳禁止が11日、遊泳注意が9日と、遊泳期間の半分以上が悪天候だったため、海水浴客が過去最低となったが、今年は遊泳禁止が5日、遊泳注意は1日に減った。
しかし猛暑が続いたため客足が予想より鈍り、コロナ禍前の20万人には届かなかった。砂浜が熱すぎて耐えられず1時間で帰る客もいた。ガソリンの高騰で内陸や太平洋側の水上バイクの客も大幅に減った。
出羽三山神社によると、羽黒山有料道路の通行台数から推計した羽黒山頂の参拝者数は、7、8月で計約10万人だった。前年同期比で約20%増えた。コロナ禍前の19年比では約30%減。
個人客が中心で、県内と宮城、新潟、秋田、岩手などが多かった。首都圏や関西圏、外国人客もコロナ禍前ほどではないが回復しつつある。
月山頂上の月山神社本宮の7、8月の参拝者数は計約1万6千人で、前年同期比約6千人60%増えた。コロナ禍前は約2万人で推移していたため、まだ完全には回復していない。
8月は好天に恵まれ、月山の御縁年だったため前年より増えた。今年は中高年に加え、若い人も多かった。
酒田市八幡総合支所によると、鳥海山湯の台登山口の登山者数は、7月が267人で前年同月比177人39・9%減り、8月は440人で同266人152・9%増えた。19年と比べると7月が110人29・2%減、8月が147人25・0%減だった。7月は雨が多かったが、8月は好天が続き、登山者が増えた。
高速交通 空、鉄道、高速とも前年超
県庄内総合支庁連携支援室によると、全日本空輸(株)の庄内―羽田便の搭乗者数は、7月は2万8428人で前年同月比6721人31・0%増、8月は3万2893人で同6333人23・8%増となった。しかし19年同月比では7月が5824人17・0%減、8月が6211人15・9%減だった。
東日本旅客鉄道(株)新潟支社によると、8月10~17日の特急いなほの利用客数は3万2千人で、前年同期比1万4千人77・8%増だった。18年同期比では5千人13・5%減だった。
東日本高速交通(株)東北支社によると、山形自動車道庄内あさひ―鶴岡インターチェンジ間の8月9~16日の上下線平均日通行量は5700台で、前年同期比1100台23・9%増だった。