郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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荘内病院22年度決算
3年連続の単年度黒字
医業収益の増やコロナ補助金などで

 鶴岡市立荘内病院(鈴木聡院長、診療科25科、病床数521床)は、2022年度決算で当期純利益約7億7千万円を計上した。単年度収支の黒字は現病院を開院した03年度以降初めて最終黒字となった20年度から3年連続。医業収益が入院収益、外来収益ともに増えたことに加え、新型コロナウイルス感染症患者に関連した補助金を受けたことなどが要因となっている。同病院では23年度決算で2億4千万円超の最終黒字を見込んでいるが、患者や医師を含めた医療スタッフをどう確保していくのかなど、解決するべき課題は多い。(編集主幹・菅原宏之)

表

純利益は7億6900万円

 荘内病院がまとめた22年度の決算概要(確定値)と入院、外来の患者動向の推移などは表の通り。
 総収益は137億5900万円で、21年度から5億300万円3・8%の増。総費用は129億9千万円で、同5億2700万円4・2%の増。総収益から総費用を差し引いた当期純損益は7億6900万円の黒字となった。
 黒字額は、現病院を開院した03年度以降で最大だった21年度の7億9300万円から2400万円3・0%減ったものの、同年度に次ぐ2番目の黒字幅となった。累積欠損金(赤字の合計額)は104億100万円と、21年度から6・9%減っている。
 同病院では総務省の公立病院改革ガイドラインに基づき、09年に「中長期運営計画」(対象期間09~13年度)、14年に「3カ年運営計画」(同14~16年度)、18年に「中期経営計画兼新公立病院改革プラン」(同17~20年度)を策定し、経営改善を進めてきた。
 引き続き21年3月には、人口減少社会を見据えた国の医療制度改革によって病院を取り巻く環境が急速に変化していることを踏まえ、経営基盤の安定化と地域医療の充実のため、具体的な取り組みと数値目標を盛り込んだ「3カ年運営計画」(同21~23年度)を策定した。
 同計画の収益的収支計画では、22年度の純損益を9500万円の黒字とする目標額を設定しており、当期純利益はその8・1倍に上った。同計画の収益的収支計画では、23年度の純損益を2億4300万円の黒字と見込んでいる。
 同病院は、現病院の開院から19年度まで17年連続で最終赤字を計上していたが、20年度に黒字転換して以降は、3年連続で最終黒字となっている。

収益増が費用増を上回る

 荘内病院が22年度に最終黒字を計上できたのは①入院、外来の患者1人1日当たりの診療単価と延べ患者数が伸び、医業収益が入院収益、外来収益ともに21年度から増えた②新型コロナウイルス感染症患者入院病床確保対策事業費補助金(以下空床確保料)が減ったため、医業外収益は21年度を下回ったが、同年度に近い金額の空床確保料を受けている③現病院の新築移転に伴う減価償却費と支払い利息が減った―のに対し、給与費や材料費、経費が伸び、物価高騰による影響も重なって医業費用は21年度から増えたものの、収益面の増加が費用面の増加を上回ったため。
 収益面のうち医業収益では、がん治療などに使う高額注射薬が増えたことや、診療報酬改定の影響などで、入院患者1人1日当たりの診療単価は5万6891円と、21年度から2334円4・3%増えた。外来患者1人1日当たりの診療単価は1万5622円と、同198円1・3%増えている。
 医業外収益では、空床確保料が10億9200万円と、21年度の11億4500万円から5300万円4・6%減った。空床確保料はコロナ患者を受け入れるほど減る仕組みとなっている。
 荘内病院に対する市の繰入金は①救急医療などの運営費分が9億7800万円で、21年度から1千万円1・0%の減②建物と医療機器の元金償還分が8億2400万円で、同800万円1・0%の増。①②を合わせた繰入金の総額は18億200万円となり、21年度の18億400万円から200万円0・1%減っている。
 総収益の内訳は、医業収益が109億9700万円で、21年度から5億9800万円5・8%増えた。このうち入院収益は75億7200万円で同3億9600万円5・5%の増、外来収益は28億4800万円で同1億6800万円6・3%の増。医業外収益は24億3700万円で同4900万円2・0%の減だった。

給与や材料、経費は増加

 費用面のうち減価償却費は6億6900万円と、21年度から4200万円5・9%減り、支払い利息は1億4400万円と同1300万円8・3%減った。
 一方、給与費は看護師の処遇改善や防疫作業等手当などを支給したことで69億2600万円と同1億400万円1・5%の増、材料費は共同購入による一定の削減効果はあったが、高額注射薬や検査試薬が伸びたことで23億7200万円と同1億8200万円8・3%の増、経費は電気料金やガス料金の高騰で19億2900万円と同1億4600万円8・2%増えている。
 総費用の内訳は、医業費用が121億6800万円で、21年度から4億3千万円3・7%増えた。医業外費用は7億1300万円で、同1億400万円17・1%の増だった。
 齋藤匠・同病院総務課長は22年度決算について「当期純損益で3年連続の黒字を達成することができた。コロナ禍の中、医師や看護師を含めた病院のスタッフが懸命に頑張った結果と捉えている」と総括した。

患者動向が黒字継続の鍵

 荘内病院が23年度以降も純損益で黒字を続けていくには、齋藤総務課長は「入院、外来の患者数の動向が鍵を握る」とみている。
 同病院の患者数は、21、22年度と2年連続で前年度を上回ったものの、18、19、20年度は3年連続で前年度を下回っているからだ。
 22年度の延べ入院患者数は13万3092人で、21年度から1565人1・2%増えた。新型コロナウイルス感染症の受け入れ患者が増えたことに加え、受診控えが緩和されたことも影響した。診療科別では、新型コロナ患者の受け入れが多かった内科が2万6401人と同1522人6・1%増えた。延べ入院患者数は回復傾向にはあるが、コロナ禍前の19年度の14万3775人には届いていない。
 22年度の延べ外来患者数は18万2288人で、21年度から8562人4・9%増えた。要因は入院患者数と同様。診療科別では、新型コロナの検査などを担う内科が5万2487人と3583人7・3%増え、小児科も1万4032人と3254人30・2%増えている。延べ外来患者数はコロナ禍前の19年度の16万7060人を上回っている。
 齋藤総務課長は、荘内病院、庄内医療生活協同組合鶴岡協立病院(鶴岡市)、医療法人徳洲会庄内余目病院(庄内町)の3病院による地域包括ケアパス連携協定が、患者確保の方策の一つになる、との見方を示す。
 同ケアパスの対象は原則65歳以上の高齢者で、肺炎、尿路感染症、心不全などの患者。3病院が患者ごとの診療計画表を作成・共有し、荘内病院が急性期医療を、鶴岡協立病院と庄内余目病院が回復期の治療を担う。
 3病院は5月31日に地域包括ケアパス連携協定を締結。今月10日までの転院実績は計47件に上っている。
 同総務課長はさらに、国立研究開発法人国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)との連携強化も患者確保に有効、と指摘する。
 荘内病院と東病院は22年12月、遠隔による手術指導(支援)システムを使い、1例目の腹腔鏡下S状結腸切除術を実施した。荘内病院で行った腹腔鏡下手術の映像を、東病院の外科医が即時に確認し、口頭や図示で荘内病院の外科医を支援した。同日以降、今月10日までに同システムを使った手術件数は計10件に上る。

医師含め人材確保が課題

 経営基盤の安定化を進める荘内病院では、医師や看護師などを含め医療スタッフをどう確保していくのかが課題となっている。
 同病院の常勤医師数は23年4月1日現在で、初期臨床研修医の8人を含め計75人。22年同日の77人から2人減っている。
 荘内病院の常勤医師は、新潟大学の医局出身者が約6割を占め、山形大学の医局出身者が約3割、その他大学の医局出身者が約1割という比率だが、派遣実績のある大学から医師を確保するのは難しくなっている。
 事実、新潟大学から呼吸器科と循環器科に各2人の常勤医師を派遣してもらっていたが、医局の医師不足で派遣が休止に。これを受け山形大学医学部から、呼吸器科に19年4月から非常勤医師を週1回、循環器科には20年4月から常勤医師2人をそれぞれ派遣してもらっている。
 呼吸器科には医師のUターンに伴い常勤医師1人も加わっている。今年度に入ると、整形外科の常勤医師1人が新潟大学に戻り、代わりの医師は派遣してもらえていない。
 さらに精神科、形成外科、呼吸器外科、心臓血管外科の4診療科では、常勤医師が不在となっており、出張医で対応している。
 医師の確保に向けては、13年度に「医師修学資金貸与制度」も創設した。年額200万円を上限に卒業まで支給し、貸与期間の1・2倍、最低5年間病院に勤務すれば返済を免除する。
 13~23年度の11年間で計14人に貸与し、初期臨床研修医として勤務実績のある医師は延べ6人に上る。
 看護師数は23年4月1日現在で492人と22年同日の510人から18人、薬剤師は同19人と同20人から1人、理学療法士は同15人と同16人から1人それぞれ減り、言語聴覚士は同4人と同3人から1人増え、作業療法士は同6人と1年前から増減は無かった。
 齋藤総務課長は「医師や看護師を含めた医療人材の確保は難しくなっている。看護師は、25年度開校予定の市立荘内看護専門学校の定員を20人から30人に増やすことになっており、若い人材の確保につながるものと期待している」と話す。

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