クマの目撃、秋に急増
ブナ大凶作で里の果樹狙う
クマの目撃が、山間部のある庄内4市町で急増している。酒田市では昨年度の4倍以上に増え、新市合併後では過去最多を更新した。鶴岡市、遊佐町、庄内町でも昨年度の倍以上に増えている。暖冬の影響で11月以降もクマが出没する可能性があるため、各市町では、屋外に柿などの果樹を残さず、目撃したらすぐに行政機関や警察へ通報するよう、呼び掛けている。(編集部課長・土田哲史)
酒田市は過去最多183件
酒田市環境衛生課によると、同市の今年4~10月の目撃件数は計183件。昨年度1年間の37件の4倍以上に増えている。新市に合併した2006年度以降で最多だった、06年度と20年度の122件をすでに上回り、過去最多となった。
月別では10月が43件と最も多い。民家の庭や畑の柿や栗を狙ったのか、里山での目撃が急増している。親子と思われる2~3頭の集団が多い。
これまでは11月になると、冬眠に入るため目撃件数が極端に減ったが、今年は気温が高いせいか目撃されている。長期予報は暖冬を見込んでいることから、12月も出没する可能性がある。
鶴岡市農山漁村振興課によると、同市の今年4~10月の目撃件数は137件。昨年度の57件から倍以上に増えている。過去8年間で最多だった20年度の150件を上回る可能性がある。
月別では10月が29件で最も多い。旧市町村別で見ると櫛引が12件、鶴岡が7件、羽黒が5件、朝日が3件、温海が2件と、果樹園が多い櫛引や羽黒で目立つ。柿の木に登って枝を折るなどの被害も出ており、農業被害額が増える恐れがある。
遊佐町産業課によると、同町の今年4~10月の目撃件数は94件。昨年度の16件から約6倍に増えた。直近で最も多かった20年度の50件をすでに上回っている。目撃が急増しているため、同町では目撃情報を町のホームページに載せた。
これまでは鳥海山の山際で目撃されることがほとんどだったが、今年度は平野部でも増え、出没場所は町の全域に広がっている。
庄内町環境防災課によると、同町の5月1日~11月2日の目撃件数は14件。昨年度の1件から大幅に増えている。20年度の18件より少ないが、20年度は1頭が何度も目撃されたためで、今年度は「体感的には20年度より増えている」と話す。今年度は9頭捕獲し、20年度の8頭を上回った。
増えたクマを餌不足が直撃
目撃が増えている背景には、餌となるブナの実の大凶作がある。東北森林管理局が10月20日に発表した「ブナの結実状況調査」の結果によると、本県は22カ所中、非結実が19カ所、一部結実が3カ所となった。
豊凶指数は0・1で、3・5以上「豊作」、3・5未満~2・0以上「並作」、2・0未満~1・0以上「凶作」、1・0未満「大凶作」のうちの大凶作だった。
昨年は3・1の並作だったことから餌に困らず、出産頭数が増えた可能性がある。そこを大凶作が襲って餌が足りず、里に降りてきていると考えられる。中山間地の人口減少も、警戒感を無くして里に下りてくる要因になっている。
各市町の担当者は「餌となる果樹や生ゴミは屋外に残さないでほしい。一度餌場を覚えると何度も里に下りてくる。渋柿も食べるので放置しないでほしい。目撃したら警察や行政へ速やかに連絡してほしい。目撃情報が途切れると、行動経路が把握できなくなる。人的被害を出さないためにも協力してほしい」と話す。
県は出没警報を10月18日に発令し▼出没したら屋内へ避難する▼音の出る物で自分の存在を知らせる▼目撃された場所では早朝と夜間の外出を控える▼自宅や倉庫に鍵をかける―などと呼び掛けている。