郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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遊佐町沖風力発電
町長は会わず新たな見解も無く
町議会答弁への住民意見書に対し

 洋上風力発電の事業化に向けた3段階ある手続きのうち、最終段階となる「促進区域」に国が指定し、1月に発電事業者の公募を始めた遊佐町沖を巡り、事業に疑念を抱く庄内の住民団体は1月30日、遊佐町役場で町幹部と面談し、先に時田博機町長に提出していた意見書について意見を交わした。意見書では、2023年の遊佐町議会9月定例会と同12月定例会での町長答弁を踏まえ、海域における同町の権限や予防原則の考え方など計7項目で疑問点などを指摘したが、町側からはそれに対する明確な見解は得られなかった。(編集主幹・菅原宏之)

海に権限無しの答弁を疑問視

 意見書を提出していたのは、庄内の住民でつくる「鳥海山沖洋上風力発電を考える会」(菅原善子、三原容子、佐藤秀彰共同代表)。同会では、時田町長に意見交換のための面談を文書で申し入れてもいた。意見書と文書はいずれも1月16日付。
 当日は共同代表の菅原、三原、佐藤の3氏、同会事務局の梅津勘一氏と同運営委員の菅原正氏の計5人が町役場を訪れた。町側は時田町長が公務を理由に欠席し、太田智光・町地域生活課長と佐藤修・同課環境係長の2人が出席した。
 太田課長ははじめに、時田町長の「自分は山形県遊佐町沖における協議会(法定協議会)で話をしており、法定協議会での昨年3月までの議論、意見取りまとめが全て。今後、発電事業者が決まれば、その事業者も含めて法定協議会は続いていくことから、引き続き町民代表として発言していく」との談話を紹介した。
 その後の意見交換では、時田町長の答弁を巡り、活発な議論が交わされた。時田町長の答弁内容と意見書の主な主張、太田課長の対応などは次の通り。
 ①同会は、時田町長が23年の9月町議会の一般質問で「海には町の権限が無い」と発言し、「ではなぜ、洋上風車に固定資産税を課税できるのか」との質問に対して「地方税法に基づき課税できる」と答弁した―ことを疑問視した。
 意見書では「遊佐町の固定資産税の納税通知書には、課税の根拠として『地方税法第342条、第343条及び遊佐町税条例54条に基づき』とあり、洋上風力発電施設に課税する根拠は、地方税法と遊佐徴税条例である」と指摘した。
 その上で「洋上風力施設に課税されるということは、領海内の遊佐町沖の海域も遊佐町であり、条例の効力が及ぶことを意味している。町長は、領海内の海域にも責任を持たなければならない」と主張した。
 太田課長は「町長には『海には町の所有権が無いということなら理解できるが、権限が無いという表現はおかしいと指摘された』と伝えておく」と話した。

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課長らが住民団体と面談した(1月30日)

国に従属する姿勢を批判

 ②同会は、時田町長が23年9月6日の9月町議会で「洋上風力発電は国が進めている事業なので、県も町も手出しできない」と答弁したこと。住民団体「山形県鳥海山沖に巨大風車はいらない有志の会」が昨年11月27日に反対署名を手渡した時にも「国策で地方行政は反対する立場にない」旨の発言があったことを確認している―として問題視した。
 意見書では「地方自治体は、国の下部組織でも下請け機関でも従属機関でもない。自治体の長は、住民の暮らしを守るために、時には国や県に立ち向かうものと考える。町長には、地方自治の本旨に立ち返ってほしい」と苦言を呈した。
 さらに「『酒田は反対が予想されるので、遊佐が防波堤になってくれ』と言われたとの発言も確認している」とした上で「誰からそのようなことを言われたのか」と回答を求めた。
 太田課長は「町長のその発言は私も聞いているが、誰から言われたのかは分からない」と語った。
 ③同会は、時田町長が23年9月6日の9月町議会の一般質問で、すでに贈収賄事件が明るみになっていた日本風力開発㈱と県との関係について意見を求められ「県のことは県議会議員が述べるのが妥当」と答弁した―ことを疑問視した。
 意見書では「遊佐町沖洋上風力発電事業は、日本風力開発の子会社・エネルギー戦略研究所(株)所長で県エネルギー政策総合アドバイザー(23年6月15日付で退任)を務めた山家公雄氏の提唱した『日本海風力コリドー構想』の実現にほかならないことを、私たちは問題視してきた。巨大な利権の下に、地域が大きな影響と犠牲、我慢を強いられるかもしれないと危惧しており、町長は意見を述べてしかるべき」と批判した。
 太田課長は「我々は、そうしたことを把握もしていないので、意見として承る」と述べるにとどめた。

津波災害の危険性を指摘

 ④同会は、時田町長が23年の9月町議会で、法定協議会に臨む時の五つの方針の中の予防原則は、水環境保全条例第3条の予防原則であると答弁したこと。同条例第3条では「健全な水環境に、長期にわたり極めて深刻な影響又は回復困難な影響をもたらす恐れがある場合は、科学的証拠が欠如していることを対策を遅らせる理由とせず、その原因となる行為や将来の影響について、科学的知見の充実に努めながら、必要に応じて予防的な対策を講ずる原則をいう」と定めている―ことを取り上げた。
 意見書では「予防原則は、保全と開発の調整を図るのではなく、開発行為をしない、させない方向に機能するはず。今回の能登半島地震のように、大規模な海底の隆起や地殻変動、そして津波を伴う地震災害が庄内沖で発生した場合、沿岸域に超大型風車を着床式で建設することのリスクは計り知れない」と主張した。
 太田課長は「予防原則の考え方は、町長が昨年の9月町議会で答弁した通り」などと述べた。
 ⑤同会は、時田町長が23年12月6日の12月町議会の一般質問で「先人が植えたクロマツ林が低周波音を防いでくれる、西遊佐地区には低周波が当たる家はない」旨の答弁をした―ことを問題視した。
 意見書では「日本海岸林学会(会長・林田光祐山形大学農学部教授)でも、海岸林が風力発電から発する低周波音を防ぐという学説は知らない。何らかの学説、論文などの科学的根拠に基づく発言であれば、ぜひ示してほしい」と要望した。
 太田課長は「町長に確認させていただく」と語った。

大手商社が振興策を提案

 ⑥同会は、時田町長が23年9月6日の9月町議会の一般質問で、フォトモンタージュ(合成写真)について「発電事業者が決まらないうちに、どのような施設が建つのかも分からないうちに、想定だけでコンピュータ・グラフィックスで見える化しても、行政としての責任を果たすことができない」と答弁した―ことを問題視した。
 意見書では「行政が合成写真を出さないため、私たちは自主的に作製して住民に示してきた。遊佐町は昨年末に合成写真を作製して公開したが、これも条件を設定して作製している。想定だけでは責任を果たすことができないという議会答弁と矛盾する」と批判した。
 太田課長は「町長は、発電事業者が決まり、その事業者が作製すべきとの考え方で変わらない」と述べた。
 ⑦同会は、時田町長が23年の12月町議会の一般質問で、洋上風力発電による産業振興に言及した―ことに疑問を呈した。
 意見書では「昨年11月に酒田市長と面談した際に、酒田市では、洋上風力発電を産業振興に結び付ける具体的なプランを持っておらず、これから持ちたいと述べていた。酒田市が持っていない産業振興プランを遊佐町が持っているとは思えない」と指摘した。
 これに対し太田課長は「これまでに国内の5大商社や大手企業などが町役場や漁業関係者などを訪れ、地域振興に向けた特色のある提案をいただいている。中には、新たに整備する道の駅に参画したいとの提案もあった。発電事業者が決まれば、その事業者と議論し、提案内容を具現化して雇用の拡大につなげることが我々の責任」と話した。

発電事業者の公募始まる

 経済産業省と国土交通省は1月19日、国が再エネ海域利用法に基づく「促進区域」に指定した遊佐町沖の公募占用指針を定め、同町沖で洋上風力発電事業を行う発電事業者の公募を開始した、と発表した。
 公募の受け付けは今年7月19日までで、応募した発電事業者の公募占用計画を審査・評価し、選定結果は今年12月に公表する。選定された発電事業者には最長30年間にわたり海域を占有する権利を認める。
 事業化想定海域は、南北が吹浦漁港南側から酒田市との市町境近くまでの約8・3キロ、沖合は海岸線から約5・0キロまでの面積計4131・1ヘクタール。海岸線から1海里(1852メートル)までは鳥海国定公園の一部になっていることや沿岸漁業への配慮から、洋上風力発電設備は設置しない。発電設備は着床式洋上風車で、発電出力は45万キロワットを見込む。
 発電事業者の選定は、供給(売電)価格を120点満点、事業実現性に関する要素を120点満点の計240点満点で採点し、最も点数の高い公募占用計画を提出した事業者とする。

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