郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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ふれあい給食
コロナ禍前より需要増加
高齢者世帯を見守る契機に

 高齢者世帯の見守りを目的に、酒田市社会福祉協議会が同市全36学区で実施している「ふれあい給食」は、弁当を持って行く学区もあれば、乳酸菌飲料など補食を持っていく学区もあるが、総配食回数はコロナ禍前よりも増えている。担い手不足が課題となる学区が出てきている中、富士見学区では住民36人が協力して調理した弁当を年6回配っている。(編集委員・戸屋桂)

富士見学区は学区挙げて

 酒田市富士見学区社会福祉協議会の「ふれあい給食事業」の第1回目が5月26日に行われ、学区の食生活改善推進員と福祉協力員、同学区コミュニティ振興会女性部などの12人が、旬の食材で栄養や彩りを考えて弁当を作った。

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食改推進員や福祉協力員、女性部員が弁当を作った

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栄養や彩りを考えて作った弁当

 弁当には同振興会の文化部に所属する絵手紙サークルが絵手紙を、有志で作る折り紙を楽しむ会が折り紙の人形を添えて、自治会長などが見守りの必要な高齢者に届けた。
 同学区社協では学区を挙げて同事業に取り組み、年6回、弁当を手作りしている。調理は食改推進員と福祉協力員、女性部の計36人が3班に分かれて、各班2回ずつ担当している。
 弁当を作る10日前にその回の調理担当者が集まり、食改推進員が中心となって献立会議を開いて献立を決め、前日に数人で食材を買い出しに行く。
 弁当を届ける対象者は、身体が虚弱な高齢者世帯や孤立傾向にある人など、見守りや交流が必要な人を、自治会長や民生委員、学区社協で選定する。
 26日は午前9時に調理を始め、検食分を含めて47食を作った。献立は銀ガレイ焼き、豚肉の野菜巻き、煮物、切り干し大根サラダ、フキの油炒め、卵寒天、ゆかりご飯、イチゴなど。12人は手分けして、同11時の完成をめどに段取り良く調理を進めた。
 二升炊き炊飯器2台でご飯が炊き上がると、弁当容器にご飯を詰め、おいしそうに見えるように、色のバランスにも気を配っておかずを入れた。蓋をして献立表を載せて弁当が完成すると、待ちかねていた自治会長たちが次々と訪れ、昼食に間に合うように届けた。
 調理リーダーで同学区食生活改善推進協議会長の佐藤初子さんは「彩りや栄養のバランスが良く、季節感も考えて献立を決めた。弁当を受け取る人が喜んでくれるようにと心掛けている。食べた人においしいと言われるのは励みでもあり、皆で調理するのは楽しみの一つ」と話した。
 富士見学区社協事務局によると、昨年度はふれあい給食事業を6回行い、295食を配った。1食当たりの単価は682円。食材の高騰などで単価が上がる傾向が続いている。市社会福祉協議会からの補助金は1食400円で、差額は学区社協の予算や学区コミュニティ振興会からの補助金で賄った。
 同学区社協の佐藤恒夫会長は「ふれあい給食事業はさらに充実させていきたい。食材の高騰や資金的な縛りもある中で、どうすれば喜ばれるか考えていきたい」と話した。

担い手不足が課題  市社協の補助金を増額

 酒田市社会福祉協議会によると、ふれあい給食事業は「新・草の根事業」の一つで、高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けられるように、地域で見守る手段として2006年度に始めた。市内全域の36学区社協すべてで取り組んでいる。
 弁当を持って行く学区と、乳酸菌飲料など補食を持っていく学区があるが、見守りが必要な人を訪ね、生活状況を確認したり話を聞いたりすることが目的。昨年度は弁当と補食を合わせ市全体で7251食を配り、補助金総額は415万円だった。コロナ禍前の2019年度より約300食増え、需要は伸びている。
 弁当の配布は少ない学区で年2回、年6~8回という学区が多い。弁当を手作りして配っている学区の中では、松陵学区が年10回と最も多い。泉学区では、弁当ではなく乳酸菌飲料を毎週月曜日に届けている。
 一方、弁当を手作りできなくなり、業者の弁当に切り替えた学区や、弁当から補食に切り替えた学区もある。市社協では「やり方はさまざまでも見守ることが大切。手ぶらで尋ねるより行きやすく、関係づくりにもなる」と話す。
 今年度から市社協の補助金を、弁当は100円上げて500円に、補食は50円上げて150円にした。
 市社協では「調理する人や民生委員の担い手不足は、どの学区でも課題となってくる。現状や地域のニーズも聞きながら、地域の中で見守りが続けられるように考えていきたい」と話した。

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