郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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庄内
サクランボ出荷5割、各方面に影響
返礼品足りず、産直は販売制限

 県産サクランボの出荷量が大きく落ち込み、主産地の内陸を中心に県内で対策が急がれている。庄内でも産直施設や農協への出荷量が5割減り、ふるさと納税の返礼品が確保できなかったり、産直で販売制限をしたりと影響が広がった。(戸屋、土田)

鶴岡市918件分送れず

 鶴岡市農政課では、収穫期がほぼ終わりを迎えた6月末に、同市内の産直施設や農協に聞き取り調査を行った。サクランボは、生産者が贈答用などに直売する割合が圧倒的に多く、産直施設や農協への出荷はもともと少ないが、それらへの出荷は例年の50%しかなかった。
 6月末の日曜日には収穫が終わると答えた生産者が多かった。観光果樹園も、例年は7月上旬まで開けているが、6月末にほぼ終了し、営業期間が2週間ほど短くなった。中には、入園者に取らせるサクランボを確保できず、開園できない観光果樹園もあった。
 同市総務課ふるさと納税係によると、ふるさと納税の返礼品にサクランボを申し込んだ件数が5279件あったが、918件17・4%分を確保できず、送れなかった。特に「紅秀峰」を送れない例が多かった。
 送れなかった納税者にはお詫びの文書を送って、代替品にするか、来年度産のサクランボにするか聞いた。7月20日ごろまでに3分の2の返答があり、代替品が6割、来年産が4割の回答結果となっている。
 サクランボは昨年度4150件の申し込みだったのが、今年はそれより1100件以上、約27%ほど増え、力を入れ始めていた矢先だった。同ふるさと納税係では「猛暑がスタンダードになってきているとすると、今後が心配になってくる」と話した。

産直の売上は昨年の6割

 鶴岡市櫛引地区の産直施設(株)産直あぐりでは例年、サクランボは5月末に始まり、7月10日前後まで続く。「佐藤錦」は6月10日過ぎに出始めるが、今年は同日には既に贈答用が並んだ。
 出始めは品質に問題が無かったが、その後高温の日が続いて実が蒸されたようになり、商品にならなかった。昨年の猛暑で一つの軸に実が二つなる双子果が多くなり、収穫期の高温障害で販売量も大きく減り、販売額は昨年の約60%に落ちこんだ。
 サクランボを求める客で開店前から行列ができたが、一度の搬入では足りず、次の搬入まで待ってもらうなど、半日がかりで手に入れた客もいた。例年なら佐藤錦の最盛期となる6月17日ごろから、1人1キロまでの販売制限を設けた。
 スーパーなどに予約した贈答用が6月下旬にキャンセルされた人があぐりに来るなど、平日も行列ができた。暑い中での行列に飲料水やあめを配って対応した。
 例年は常温で発送にしているが、今年は実が柔らかくなり日持ちがしなかったため、冷蔵便で送った。

生産者は収入4割減少

 鶴岡市西荒屋のサクランボ農園「フルーツハウス鈴木」(鈴木光秀園主)では、収量が平年の6割だった。
 高温で実が熟す時期が早まったため、佐藤錦と、収穫時期が遅い紅秀峰の収穫が重なり、収穫作業も追いつかなくなった。
 常連客などの予約分は確保できたが、飛び込み客の分を十分に用意することはできなかった。庄内より内陸の被害が大きかったためか、飛び込み客が平年より多かった。
 高温障害で売値が落ちる規格外品が増え、肥料や農業資材の値上がりもあって、収入は平年より4割減った。売値を上げようにも、客離れが心配でできなかった。
 県の対応不足が収穫量に影響した可能性もある。鈴木園主は「県は5月ごろの時点では、着果量が平年並みの見込みと言っていて、高温対策の情報が出るのが遅かった。高温になることが予想されたら、早めに農家に知らせてほしい。シートで囲ったり収穫を早めたりするなどの高温対策をやった人と、やらなかった人では、収穫量に大きな差が出たようだ」と話した。
 庄内たがわ農協では、同農協への出荷が平年より3~4割減った。生産者によっては半分だった。
 価格は2~3割上がったが、減収分を補えなかった。贈答用にあらかじめ価格を決めて予約販売する品が7~8割を占めるため、品薄だからといって価格を上げられないからだ。

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