郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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県知事選へあと5カ月
自民党県連、不戦敗が濃厚
遠藤会長に不満や批判の声

 吉村美栄子山形県知事(73)の任期満了(2025年2月13日)まで半年を切る中、前回県知事選(21年1月)に続き、独自候補の擁立を目指す自民党山形県連(会長・遠藤利明衆院議員)内に、不戦敗が濃厚との見方が広がっている。吉村県知事は態度を明らかにしていないが、「5選に向け立候補するのはほぼ確実」(複数の関係者)と言われる。戦いの構図は固まっていないが、同党県連の関係者の間には「候補者を擁立できなければ、執行部の責任が問われる」「遠藤会長は『不戦敗にして(吉村県知事に)恩を売ろうとしている』と見られても仕方が無い」といった不満や批判がくすぶる。(本紙取材班)

候補者擁立が手詰まりに

 自民党県連は7月7日、山形市内で党県連大会を開いたが、閉会の間際、遠藤会長(衆院山形1区)に対し、県知事選に向けた候補者擁立作業の状況について、説明を求める声が出た。
 説明を求めたのは、県議会議長や党県連幹事長などを歴任し、県議会議員を10期務めた米沢市区元県議会議員の後藤源氏。後藤氏は「24年度の活動方針と大会決議に、県知事選のことが書かれていない。県知事選をどう考えているのか説明してほしい」と要望した。
 これに対し遠藤会長は「候補者擁立に向け引き続き鋭意努力する」と述べたが、具体策などには踏み込まなかった。
 後藤氏は26日、本紙の取材に「吉村県知事は、これまで当選した4回のうち、2回が無競争での当選だった。3回目を許してはならない。政党組織は選挙を重ねることで強くなる。党特別参与で元県議会議員の大内理加氏が立候補を予定する、来年夏の次期参院選で勝利するためにも、県知事選には独自の候補者を出すべき」と話した。
 こうした声がある一方で、複数の同党関係者の中からは「不戦敗の可能性は高い」との声が聞かれる。
 その背景には▼派閥の政治資金パーティー裏金問題を中心に「政治とカネ」を巡る自民党への逆風が吹いている▼前回選と同様、吉村県知事の後援会組織は県内全域に拠点があり、支援体制が強固なために、勝利するのは難しいと受け止められている―ことがある。
 前回選では、自民党本部と公明党県本部の推薦した大内理加氏が立候補したが、23万票余りの大差で敗れた。得票数は吉村県知事が県内35市町村の全てで大内氏を上回った。
 庄内のある自民党関係者は「相手は組織力を背景に、前回選で圧勝した現職。裏金問題で逆風が吹く中、自民党の支援を受けて県知事選に挑戦しようとする人はいない」と現状を分析する。
 別の党関係者は「不戦敗は避けてもらいたいが、誰でもいいということではない。『政治とカネ』の問題で逆風が吹く中、新人が名乗りを上げにくいことは理解しているし、党員の不満も県連執行部の大変さも分かる。複雑な気持ちだ。党総裁選の結果で風向きが変わればいいが」と話した。

恩を売るとの見方が大半

 こうした中、自民党県連の関係者の間からは、遠藤会長に対する批判や不満の声が上がっている。
 庄内のある自民党関係者は「候補者の擁立作業に充てる時間は、前回選から4年間もあった。最終的に候補者を擁立できなければ、遠藤会長を含め執行部の責任が問われる」と話す。
 別の党関係者は「昨年秋に、庄内選出の県議会議員が遠藤会長に『年が明けると候補者の擁立は難しくなる。早く決めよう』と進言したが、遠藤会長は『まずそれはいいから』と取り合わなかった」と打ち明けた。
 そして遠藤会長が吉村県知事と、山形新幹線新米沢トンネル(仮称)整備で協力関係を築いていることに言及し「遠藤会長は次期衆院選での勝利を見据え、吉村県知事に協力できるところは協力している。『今回は不戦敗にして(吉村県知事に)恩を売る』と見ている人が大半に上っているようだ」と批判した。
 党関係者からはほかに「遠藤会長がなぜ独自候補を出さないのか分からない」「遠藤会長は立場上、(候補者の擁立を)諦めたとは言えないが、すでに諦めていると思う」「県連内部には上からの押さえ付けがあり、県知事選に関し発言できないような雰囲気がある」などといった声が聞かれた。

現職の出馬表明は9月以降

 吉村県知事は態度を明らかしていないが、県知事周辺は「5選に向けて立候補するのはほぼ確実」との見方で一致する。
 吉村県知事に近い庄内選出のある県議会議員も「自民党からは誰も出馬する候補者がいない状況であり、吉村県知事の中では出馬の意向を固めていると思う。しかしギリギリまで表明しないだろう。県議会9月定例会では、大雨被害に取り組む必要があり、前回の県知事選でも県議会9月定例会後に表明した」と出馬表明の見通しを話した。
 ただ吉村県知事に対しては、支援者の中からも多選批判が聞かれる。
 これまで吉村県知事を支えてきた庄内のある政党関係者は「県民が判断することだが、首長の5期20年は長い。吉村県政の4期で『内陸偏重、内陸優先の県政』が是正されたとは言えず、庄内にもっと目を向けてくれる新たなリーダーを選んだ方が庄内のためになる」と指摘した。

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