郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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酒田市
災害対応から生活支援の段階に
大雨災害2カ月、土砂撤去は続く

 庄内・最上を中心に甚大な被害が出た7月25日の大雨災害から2カ月以上が経過した。これを受け酒田市の矢口明子市長は先ごろ「多くの被災者が避難所から自宅や公営・民間住宅といった仮の住居に移り、新たな生活を始めている」と現状を説明。一方で「家屋内に大量の土砂が残っている住宅も多くあり、土砂の撤去作業が続いている」とも述べた。これまでに災害対応は一定程度進んだが、農業を含む市内の被害総額すらまとまる見通しは立たないのが実情で、復旧・復興には「相当の年月がかかりそうだ」とみる向きも多い。(編集主幹・菅原宏之)

義援金を11月から配分

 矢口市長は9月25日の定例記者会見で、7月25日の記録的な大雨から2カ月が経ったことについて「緊急的な災害対応から、復興、生活の支援へと新たな段階に移りつつある。被災者が安心して暮らせるようになるまで、市として何をすべきなのか、市民の皆さんと一緒にどう支援していくことができるのかを考え続け、やるべきことをやっていきたい」との考えを示した。
 同市長によると、県内外から寄せられた①義援金②支援金③ふるさと納税は、9月10日現在で計約6千万円に上っている。
 内訳を見ると、①は被災者に配分し、中身は二種類あり、市に寄せられた分が231件2517万2306円、日本赤十字社を通した分が4件24万5128円。
 ②は市の復興を目的とした施策に活用し、20件2320万5100円。③は災害支援分が8月末現在で1095件1068万944円、企業版ふるさと納税分が同2社110万円となっている。
 市は、10月中に「酒田市義援金配分委員会」を設置して配分基準などを決め、11月ごろから被災者に義援金を配分していく。
 被災家屋の解体撤去も始まる。市は9月25日に開会した酒田市議会2024年定例会9月定例議会に、大雨災害公費解体事業8400万円と、大雨災害被災家屋撤去解体事業6902万3千円を上程した。
 大雨災害公費解体事業は、被災家屋のうち「全壊」(50%以上)の罹災証明書の交付を受けた家屋などを、所有者からの申請を受けた市が国の補助制度(公費解体制度)を活用して解体撤去する。
 大雨災害被災家屋撤去解体事業は、「大規模半壊」(40%以上50%未満)、「中規模半壊」(30%以上40%未満)、「半壊」(20%以上30%未満)の罹災証明書を受けた家屋を解体撤去した被災者に対し、市の単独事業として1世帯当たり100万円を一律支給する。
 事前相談と申請の受け付けは、10月中旬以降から始め、申請は12月末まで受け付ける予定。

復興には相当な時間

 保険金の支払いや公的な支援を受ける際に必要となる罹災証明書の申請件数は、9月23日現在で573件に上り、うち調査実施済み件数は556件。罹災証明書は8月1日から発行しており、申請は10月31日まで受け付ける。
 市では大雨で住宅の使用が困難になった市民に対し、入居後1年以内(最長2年間)を期限に市営住宅などを無償で提供し、9月26日現在で計40世帯が入居している。第1~3弾の募集と抽選会は終了し、第4弾が始まった9月5日以降は随時募集している。
 また、市では風水害などで被害を受けた場合、被害の程度に応じて市税と国民健康保険税の減免や、法人市民税の申告等期限を延長する制度を設けている。市税務課で受け付けている。
 災害ボランティアによる活動は7月30日から始まり、同日以降9月23日までに延べ4791人が、北青沢や西荒瀬をはじめ、観音寺、日向、内郷の各地区などで作業に携わった。しかし土砂の撤去を中心としたボランティア不足が表面化し、どう対応していくのかが課題として浮上している。
 市は、指定避難所の全避難者が退所するなど応急措置がほぼ完了したため、9月30日付で災害対策本部(本部長・矢口市長)を廃止した。引き続き10月1日に、復興に向けた各種事業の進行管理や市民に向けて情報発信を行う復興本部(同)を設置している。
 大雨発生時から災害対応は一定程度進んだものの、いまだ市内全域の被害総額がまとまるめどは立たないことなどから、復旧・復興には「相当の年月がかかりそうだ」(複数の関係者)とみる市民は多い。

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