郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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地震に始まり大雨被害も発生
衆院選、致道館開校、基地港湾指定

 今年庄内で起きた重要な出来事などをまとめてみた。元日の能登半島地震に始まり、7月には大雨が未曽有の被害をもたらした。裏金問題で揺れた国政選挙も行われた。酒田市で仮設屋内スケート場の整備が物議をかもし、非公開の花火大会実施には批判の声もあった。洋上風力発電計画には住民から疑問が相次いだ。一方で県立中高一貫校の致道館が開校し、朝暘五小はデジタル教材に対応した新校舎が竣工した。アランマーレ山形が初勝利を挙げ、鶴岡三中の三浦采桜選手が全中女子100メートルで優勝し、過去最大規模の外航クルーズ船が酒田港に来た。

 天  災   未曽有の大雨被害が発生

 今年は元日夕方に能登半島地震が発生して、庄内に津波警報が発令されたことに始まり、7月には大雨と、自然災害に襲われた。
 7月25日に線状降水帯が発生して非常に激しい雨が降り続き、「大雨特別警報」が2度発表された。酒田市と遊佐町をはじめ庄内全域で大きな被害を受けた。床上・床下浸水した家屋も多く、特に荒瀬川が氾濫した酒田市大沢地区では、住宅や農地に土砂が流入して、今後の生活の見通しが不透明となっている集落もある。
 酒田市危機管理課の資料によると、7月24日午前零時~27日午後12時までの総降雨量は、酒田市大沢で407・5ミリ。同期間の24時間降水量の最大値は、大沢で357・5ミリ、酒田は過去最大を更新する289・0ミリとなった。
 酒田市では八幡地域をはじめ西荒瀬地区など市内の広範囲に警戒レベル5「緊ほって急安全確保」を発令した。
 避難所は最大63カ所を開設し、最大避難者数は26日午前4時時点の1752人となった。現在把握している公営住宅などへの二次避難世帯は57世帯。
 荒瀬川沿いの国道344号は陥没などの被害が大きく、八幡保育園前交差点から最上地方方面にかけて全面通行止めとなり、応急復旧で10月25日に全線通れるようになった。
 農道や林道の被害も大きく、八幡地域では山林の地滑りによる土砂流出などが至るところで見られ、被害を大きくした。水田や畑への土砂流入により、刈り取りできずに黄色く実った稲が、現在も放置されている。
 酒田市の被害額は暫定額だが、道路や河川など公共土木施設関係59億3100万円、農作物や農業機械など農林水産関係は大沢地区を除き91億3700万円の計約150億6800万円。

全県被害額1078億円

 県のまとめによると、庄内の住家被害は、全半壊や床上床下浸水などを合わせて酒田市793件、鶴岡市113件、遊佐町312件、庄内町48件、三川町17件。
 県全体の被害額は現時点で公共土木施設が755億円、農林水産業が294億円、教育施設が1億8千万円、商工業関係が27億5千万円、その他施設が2700万円の計1078億円超と過去最大となった。

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流木が押し寄せた八幡地区(7月31日)

津波警報の解除前に帰宅

 能登半島地震は元日16時10分ごろ、石川県能登半島を震源として発生した。マグニチュード7・6、最大震度7、庄内各地では震度4を観測した。
 津波警報が出され、鶴岡市沿岸部をはじめ、酒田市では広域に日和山や光ケ丘などの高台、平田地域方面への避難者があふれた。津波避難ビルにもたくさんの市民が避難したが、水や寒さをしのぐ毛布などの備蓄が無かったため、多くは津波警報が解除される前に帰宅したことが課題となった。
 同市は民間の津波避難ビル6カ所に、水や非常食用ゼリー、保温断熱用のアルミシートなど計800人分を11月に配備した。

米不足、価格は上昇

 2023年産米が猛暑のために品質が低下したことや、外国人旅行客の増加などで、夏ごろに米不足が起こり「令和の米騒動」と騒がれた。米どころ庄内でも、スーパーなどの商品棚から米が消え、一家庭1袋などの販売制限もかけられた。
 9月に新米が出始めると、米不足は解消されたが、価格は昨年より上がった。米の需要が伸びていることに加え、肥料や資材費などの生産コストが上がっていることから、米を集荷する際に農家に支払う概算金が上がった影響。
 全農山形本部では24年産米の概算金(一等米60キロ)を、「つや姫」は前年比3100円18・9%増の1万9500円、「雪若丸」は同4300円33・6%増の1万7100円、「はえぬき」は同4300円35・2%増の1万6500円に上げた。
 農家は「肥料や農薬、農機具、燃料とすべてが値上がりして生産費が上がっている。このくらいにならないと大変厳しい」と話した。

 選  挙   衆院選で加藤氏が4選

 時田博機町長の死去に伴う遊佐町長選は3月24日に投開票が行われ、無所属新人で前町議の松永裕美氏が、同じく無所属新人で前町議の斎藤武氏との一騎打ちを制し、初当選した。

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初当選した松永遊佐町長

 結果は、松永氏が4489票を獲得し、斎藤氏の3093票に1396票の差を付けた。町民は時田町政の約15年間を評価し、その継続を選んだ形となった。
 7カ月後の10月27日に投開票が行われた第50回衆議院議員総選挙の山形3区では、自民党前職で公明党が推薦した加藤鮎子氏が、立憲、国民民主両党県連と連合山形による2党1団体の統一候補で立憲民主党の石黒覚氏と、日本共産党の山田守氏の新人2人を退け、4選を果たした。
 加藤氏は9万3909票(得票率56・10%)を獲得し、次点の石黒氏に3万807票の大差で勝利した。しかし加藤氏の得票数は、前回選(2021年10月)の10万8558票を1万4649票下回り、前々回選(17年10月)の10万3973票に1万64票届かなかった。得票率も前回選の58・06%を1・96ポイント下回った。
 加藤氏の得票数と得票率が前回選を下回った要因に、各政党関係者や複数の有権者からは「自民党派閥の政治資金パーティー裏金問題はあるが、交通基盤の整備、特に高速道路の整備が遅々として進まないことなど、地域振興への貢献度が低いことへの不満があったのではないのか」などと指摘する声が数多く聞かれた。

 政策・公共事業   公費使い非公開で花火

 酒田の花火実行委員会(実行委員長・矢口明子酒田市長)は、酒田市の最上川河川公園を会場に8月3日に開く予定だった「酒田の花火」を、大雨災害の影響を受けて中止にした。
 矢口市長は7月29日の臨時記者会見で「未曾有の大雨災害への対応に全力を尽くすべきと判断した。来年度に改めて盛大な花火大会を開催できるよう、検討を進めていく」と述べた。
 ところが同実行委員会は10月12日、大雨による被災者を勇気づけ、支援者に対して感謝の気持ちを伝えることを目的に「酒田元気応援花火」(「酒田の花火」で打ち上げる予定だった約1万発のうちの約3千発)を同市内で打ち上げた。
 花火の打ち上げには、開催予算約150万円のうち市が実行委員会に負担金として拠出した企業版ふるさと納税寄付金の100万円が使われ、酒田北港緑地展望台周辺だった打ち上げ会場を明らかにしなかった。
 一部市民の間からは「復旧・復興が道半ばの時期に、花火を打ち上げる必要があったのかどうかは疑問に感じる」「非公開にしなければ開催できないような花火を、実施すること自体おかしなこと。『市民不在の、実行委員会関係者のための酒田元気応援花火』と言われても仕方がない」と疑問視する声が数多く聞かれた。

 洋上風力発電   酒田港を基地港湾に指定

 洋上風力発電の事業化に向けた3段階ある手続きのうち、最終段階となる「促進区域」に国が指定した遊佐町沖では、経済産業省と国土交通省が1月19日から7月19日までの半年間、発電事業者の公募を行った。選定結果は12月に公表する見通し。
 国土交通省は4月26日、港湾法に基づき、洋上風力発電施設の設置や維持管理に利用される海洋再生可能エネルギー発電設備等拠点港湾(基地港湾)として、新たに酒田港を指定した。

疑問続出の意見交換会

 洋上風力発電の事業化に向けた3段階ある手続きのうち、2段階目の「有望な区域」に国が選定した酒田市沖に関しては、県と市による市民を対象にした意見交換会が市内の7中学校単位で6月14~28日に開かれ、計256人が参加した。
 各会場では健康や漁業、景観への影響を不安視する声のほか、地震津波への対応や離岸距離を疑問視する意見などが相次ぎ、洋上風力発電に対する地域住民の懸念や不信感には根強いものがある実態を、改めて浮き彫りにした。

 産  業   4港結ぶ内航航路を開設

 酒田港と門司港(福岡県北九州市)、博多港(同福岡市)、新潟港(新潟市)の国内4港を結ぶ内航フィーダー航路が5月10日に開設し、10月末までの寄港回数は計18回に上った。
 県港湾事務所によると、県内荷主の利用はあるものの、貨物量はそれほど多くはないのが実情という。
 就航したのは、鈴与海運(株)が運航する最大積載能力199TEU(20フィートコンテナ換算)のコンテナ船「みわ」(749総トン)。同社は昨年12月に門司、博多、新潟の3港を結ぶ航路を開設しており、同航路に酒田港が加わった。
 門司港と博多港でコンテナを積み替え、共同事業者のコスコショッピングラインジャパン(株)が運航する外航航路を使い、中国南部や東南アジアなどとの輸出入も可能となっている。

 観  光   クルーズ船が8回寄港

 酒田北港には今年、過去最大規模の外航クルーズ船「MSCベリッシマ」が10月5日に寄港するなど、4~10月に外航クルーズ船と国内クルーズ船が計8回寄港した。たくさんの外国人客が酒田を起点として庄内一円の観光を楽しんだ。
 県国際観光推進室によると、ツアーは①相馬樓や山王くらぶ、土門拳記念館、山居倉庫、本間美術館などを行程に組み入れた酒田市内の周遊ツアー②羽黒山ツアー③加茂水族館ツアー④鳥海山ツアー⑤最上川舟下りツアーなどがあった。寄港した外航クルーズ船は欧米系の乗客が多く、美術館などの人気が高かった。
 本間美術館によると、乗客は旅慣れた富裕層が多いため、東京や京都などの有名観光地には無い、日本の原風景を求めている印象だった。このため、国名勝の本間氏別邸庭園と純和風建築の清遠閣が人気だった。
 鶴岡市の致道博物館の売店では、御殿まりや絵ろうそく、刀剣が描かれたクリアファイルなどが売れた。客単価は1人2千~3千円。
 リサイクル着物やせんべい焼き体験などの日本文化に触れる「中町クルーズマーケット」も開かれた。酒田市交流観光課によると、「酒田のラーメン」を知っている客も多く、ラーメン店には行列もできた。

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SMCベリッシマが酒田北港に入港(10月5日)

 公共施設の整備   屋内スケート場整備を中止

 酒田市は、3月末に閉館した県内唯一の屋内スケート場スワンスケートリンクに代わる仮設屋内スケート場を、県が整備を検討している県営屋内スケート施設の庄内空港周辺への誘致を前提に、旧松山中学校体育館を改修して整備する方針だったが、中止した。
 矢口明子酒田市長は11月5日の定例記者会見で▼8月22日の県屋内スケート施設整備検討会議・第2回会合で「公共交通機関でアクセスできる村山地域の都市部に整備する」との方向性が示された▼県と山形市が10月10日、県営屋内スケート施設・武道館・体育館の3スポーツ施設の整備に向けた検討を共同で進める、と発表した―ことなどを理由に挙げた。
 市は旧松山中校体育館の改修に向けた設計委託費1100万円と、駐車場を整備するための校舎解体費2億3200万円(2カ年で計5億8千万円)、予算化した。
 6月には、2025年度市重要事業要望全45項目のうち重点11項目の一番目に「県営屋内スケート施設の酒田市への整備」を求めた要望書を、吉村美栄子県知事に提出。同施設が整備されるまで、同校体育館を改修し、暫定的に仮設屋内スケート場として使う方針などを記した資料も、県知事に提出していた。
 設計委託業務は2割程度進んでいたが、7月の大雨被害を受けて停止していた。整備の中止に伴う設計委託費の損失額などは、12月市議会に示す意向。
 市民の間からは▼市長の政策判断は、明らかな誤り。県が立地場所の方向性を示してから、仮設屋内スケート場の関連予算を計上するべきだった▼大雨災害による被害状況を考慮すれば、復旧・復興が最優先の課題。仮設屋内スケート場の整備と、市八幡体育館の建て替えは凍結するべき▼県営屋内スケート施設の誘致を市重要事業要望の一番目と考える市民は少ない。市の政策判断は市民の目線とかけ離れている―などといった声が上がった。

国体記念体育館が再開

 老朽化のため改修工事をした酒田市国体記念体育館が4月1日から利用を再開した。改修費は約21億円。
 鉄筋コンクリート造り一部鉄骨造で延べ床面積8842平方メートル。大アリーナは2420平方メートルで、バレーボールとバスケットボールのコートが各3面取れる。観客固定席は1040席。小アリーナは880平方メートルで観客固定席は200席。弓道場、図書室、視聴覚室などを備えている。

 スポーツ   アランマーレが初勝利

 プレステージ・インターナショナルアランマーレ(アランマーレ山形)は、今季からスタートした国内トップの大同生命SVリーグで11月に初勝利を挙げた。
 選手は木村友里主将をはじめ、伊藤摩耶、佐藤菜々美など昨季も活躍した11人に、新加入したウクライナ出身のオレクサンドラ・ビチェンコ、タイ出身のドンポーン・シンポー、川釣奈津、インディグウェ・シンディ千想夢の4選手の計15人。北原勉監督の下、日本人選手の巧みさと外国人選手のダイナミックさが融合して、確実にチーム力は向上している。

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国体記念体育館でのホーム初戦(10月18日)

三浦采桜100メートル走全国優勝

 鶴岡市の陸上クラブ「鶴岡ATHLETICS CLUB」に所属する鶴岡三中3年の三浦采桜が、第51回全日本中学校陸上競技選手権大会の女子100メートルで優勝した。記録は自己ベストを更新する12秒06。
 左足の親指の付け根の骨折で走れなかった間に、体幹トレーニングと腹筋などの筋肉を鍛え、重心が安定し、100メートル後半での体のぶれが無くなった。
 山形県中学校総合体育大会の100メートルと200メートルで県記録を更新し、東北大会でも優勝した。そして全中も制覇と、大会ごとに自己ベストを更新している。目標は11秒台で走ること。

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鶴岡三中の三浦采桜選手

鶴岡東が甲子園2回戦敗退

 第106回全国高等学校野球選手権山形大会の決勝が7月27日、中山町の県野球場で開かれ、鶴岡東が東北文教大学山形城北を11対1で破り、2年ぶり8回目の優勝を果たした。
 全国大会の1回戦では福島代表の聖光学院と対戦し2対1で勝利。2回戦では西東京代表の早稲田実業と対戦し、息詰まる投手戦の末に延長10回に0対1で敗れた。

 文化教育   致道館中学・高校開校

 鶴岡南、北両高校を統合して県立中学校を併設した、庄内初の併設型中高一貫教育校県立致道館中学校・高等学校が4月1日に開校した。基本理念に「自主自立」「新しい価値の創造」「社会的使命の遂行」を掲げ、6年間の一貫した教育で確かな学力と豊かな人間性を身に付けた生徒を育成する。
 校舎は中学校が旧鶴岡北高校を部分的に改修し、給食配膳室と技術室、 数学・理科・英語・社会科専用の教科型教室を追加した。
 高校は旧鶴岡南高校の外壁と屋根など校舎1~4階を全面改修し、老朽化した設備や配管を更新した。中庭に渡り廊下などを含め延べ床面積約1990平方メートルの4階建て校舎を増築した。
 致道館中学校の定員は3学級99人。致道館高校の定員は、普通科5学級200人と理数科2学級80人の計7学級280人。

デジタル備え朝暘五小竣工

 老朽化により2022年10月から改築工事を進めてきた鶴岡市立朝暘第五小学校が、7月26日に竣工した。旧校舎を解体し、新グラウンドを整備して完全に竣工するのは、25年12月の予定。
 新校舎は鉄筋コンクリート造り一部3階建てで、建築面積4141平方メートル、延べ床面積7643平方メートル。事業費は、新校舎と第五学区放課後児童クラブの建築、旧校舎の解体を合わせ41億530万円。新グラウンドの整備も含めた総事業費は約47億円を見込む。
 全教室にデジタル教材を表示するホワイトボードとプロジェクタ、教育用ICT(情報通信技術)専用端末を備えた。体育館の床材は、市内小中学校で初めての長尺弾性塩ビシートを採用した。フローリングより足当たりが柔らかく、冬季の底冷えを減らす。中庭はゴムチップを敷き、内履きのまま屋外の遊具で遊べる。
 朝暘五小は、最大で4・3メートルまで浸水することが想定されているこのため、1階の床を周辺道路より1メートル高く設計した。1階の天井を2、3階の天井より高くした。電気室も2階に設けた。

 文化教育   笹巻きが無形民俗文化財

 庄内の笹巻きが3月21日、国の「無形民俗文化財」に登録された。庄内の笹巻きは①三角巻き(庄内全域)②こぶし巻き(温海地域)③小さなたけのこ巻き(遊佐町と酒田市北部)④大きなたけのこ巻き(羽黒地域)⑤細長い三角巻き(温海、櫛引、松山地域)⑥大きな三角巻き(羽黒地域)の6種類ある。
 笹巻きは新潟や秋田にもあるが、庄内のような限られた地域に多くの種類がある例はほかに無く、特に黄色い笹巻きは鶴岡にしかないことなどが評価された。

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