年末年始庄内の動向
最長9連休で人出は好調
燃料、農産物値上げの影響も
今年の年末年始は、休日が最長で12月28日~1月5日の9連休と長くなり、天気も比較的安定していたことから、庄内の各観光施設の来場者数や国内外への旅行者数は前年を上回るか平年並みが多く、おおむね好調だったようだ。一方でガソリンや農産物の値上がりなどの影響は大きく、スーパーでは野菜を小分けしなければ売れず、商品の値上げで客単価が上がった店があれば、節約志向で単価が下がった店もあった。(本紙取材班)
観光施設 夢の倶楽、売上10%増
酒田市観光物産館酒田夢の倶楽では、12月28日~1月5日の売上が前年同期より10%ほど増え、新型コロナ禍前の水準にほぼ戻った。天気が比較的落ち着いていたため、各公共交通機関が通常通りに運行し、客足につながった。
日別では、前年同日比で12月28日が60%増と年末年始では最も増え、29日は同率、30日は11%増、31日は24%減、1月2日は16%増、3日は35%増、4日は1%増、5日は14%減だった。元日は休業。
年末年始の休みが例年より長かったためか、突出して混んだ日は無く、分散して訪れた。観光客は少なめで大半は帰省客のようだった。物価高で商品が値上がりしたが販売に大きな影響は無く、客単価は通常1人約2千円だが3千円台に増えた。
1月2~4日の初売りでは、平田牧場の肉、地酒、菓子、餅などの福袋を売った。100袋用意したが好評で、順次追加した。
酒田港の観光施設も好調
酒田市みなと市場テナント会長の小松祐輔小松鮪専門店代表によると、同店の12月28~31日の売上は前年同期比2割増、1月2~5日も同2割増と例年より好調に推移した。
12月上旬~中旬の来店客数は前年同期を下回ったものの、年末を含む12月下旬には正月準備の客などが大勢詰めかけた。大半は地元客だったが、秋田県由利本荘市以南を中心とする隣県や、新庄市など県内陸の客も目立った。
物価高やガソリン価格の高騰などの影響もあり、秋ごろから景気が後退局面に入り、客単価はやや下がっている印象を受けている。従来はマグロの大トロが人気だったが、最近は中トロが売れ筋になるなど、消費者の節約志向がうかがえるようになった。
小松会長は「年末年始の売上は例年より良い結果だった。1月23日で開館15周年を迎える市みなと市場は、地元客の利用が中心の施設だが、秋田県など隣県のファミリー層をもっと取り込めるのではないのかと思っている。それに向け、観光誘客などで実績を持つ酒田DMOには、これまで以上に県外で酒田観光、市みなと市場のことを周知してほしい」と話した。
グッドライフアイランド合同会社(本間当代表)によると、同社が運営し飲食店6店が入る酒田本港東ふ頭交流施設「サカタント」の12月28日~1月5日の入館者数は5113人で、前年同期より1601人45・6%増えた。
営業日数が、元日休業や定休日、能登半島地震による休館などで、昨年は5日間だったのに対し、今年は7日間と多かった。今年の1日当たりの入館者数は約730人で、前年同期から28人0・8%増えている。
同社では増えた理由を▼帰省客を中心に家族連れの利用が多かった▼大人数のグループの来館が目立った▼長期の休みに支えられ秋田、新潟、宮城など隣県の客も見られた▼能登半島地震のような自然災害に見舞われなかったためなどと話した。
隣県や内陸の客も目立った酒田市みなと市場
水族館は前年より19%増
鶴岡市立加茂水族館の12月28日~1月5日の入館者数は9474人。前年同期より1542人19・4%増えた。=表参照=
日別では、12月28日が727人で同245人50・8%増、29日が1299人で同333人34・5%増、30日が1326人で同29人2・1%減、31日が1176人で同1人0・1%増、1月1日が856人で同372人30・3%減、2日が1115人で同668人149・4%増、3日が1183人で同311人35・7%増、4日が1073人で同364人51・3%増、5日が719人で同21人3・0%増だった。
宿泊施設 湯野浜の客入りはまだら
湯野浜温泉観光協会によると、12月28日~1月4日の同温泉街の各宿泊施設は、客室の約9割が埋まって「忙しかった」施設があった一方で、「期待したほど客は来なかった」「物足りなかった」施設もあり、まだら模様だったようだ。全体的には平年並みとみている。
年末年始の休みが長かったため、コロナ禍で海外に行けなかった客層が海外に出るようになり、国内の温泉客が減った可能性がある。前年同期は高級そうな輸入車が目立ったが、今年は少なかった。
湯野浜温泉街は年末年始に強風が吹くため、歩く人が少なく、見た目では静かな正月となった。
宿泊コンテナ稼働2~3割
酒田本港に昨年9月に開業した宿泊用コンテナ施設キャンプスの客室稼働率は、10月が3割強、11月が2割強、12月が2割弱だった。運営するグッドライフアイランド合同会社では、サカタントと連携した運営を進めることで年間6割の客室稼働率を目指している。
本間代表は「(サカタントは)常連の帰省客がいるほど地域に根付いていると感じている。今年は開業から3年目を迎え、入居している飲食店との契約が満了することから、夏から秋にかけて一部店舗が入れ替わる可能性もある。酒田市内の宿不足は解消しておらず、まずはコンテナホテルを軌道に乗せることに力を尽くしていきたい」と話した。
スキー場 雪増え各スキー場に分散
湯殿山スキー場の12月28日~1月5日の利用客数は4600人。前年同期より750人14・0%減った。
前年同期は暖冬で多くのスキー場が雪不足となり、雪のある湯殿山に客が集中したが、今年は各スキー場に十分な雪が降ったため分散した。それでも年末年始は用具のレンタルがよく出るなど、帰省客と思われる家族客を中心ににぎわった。
ハーフパイプの壁が数多くある「R天国」を全国にアピールした効果で、プロやセミプロ級の愛好家などの県外客も増えている。
利用客が14%減った湯殿山スキー場
初詣 今年も天候安定し前年並に
鶴岡市の荘内神社の1月1~3日の初詣客は約8万人と、前年並みだった。前年同様、今年も天気が安定していたことが影響した。出羽三山神社の1月1~5日の初詣客も約5万5千人で前年並みだった。酒田市の下日枝神社では初詣客を数えていないが、ほぼ前年並みだったとみている。
5万5千人が訪れた出羽三山神社
からからの参道に初詣客が並んだ下日枝神社
スーパーマーケット 帰省客増えごちそう人気
生活協同組合共立社では、年末年始は9連休で帰省客が多かったのか、すしや刺身、オードブルなど3~4人前と4~5人前を中心に売れ行きが好調だった。少し高めの牛肉や例年より安くなったカニなど、ごちそう感のある商品がよく売れた。
人口減少に加えスーパーマーケットは飽和状態のため客足が少し減ったが、物価上昇により客単価が上がり、売上は昨年並みになった。この店ではこれ、あの店ではこれ、とスーパーを使い分けて買い回る客が増えている。酒やギフトの利用は減った。
農産物が値上がりし、キャベツは半分や4分の1に切って価格を抑えて売った。市場を通した野菜は軒並み高いため、店舗内産直のものがよく売れた。
米は値上がりにより売り上げが伸びた。一方で、すしや弁当などのご飯を使った総菜は、米の値上がり分を価格に転嫁しないで売るため、容器を小さく薄くするなどして原価削減を工夫した。
旅行 取扱額は前年比68%増
(株)庄交コーポレーション庄交トラベルの12月28日~1月5日の総取扱額は、前年同期比67・8%増と大幅に伸びた。取扱人数も同25・0%増えた。
休みが取りやすい日並びだったために遠方への旅行が増え、国内、海外とも滞在日数が伸びて客単価が上がり、ここにきて海外旅行の需要が活発になってきたことなどが要因。
国内旅行はこれまで同様、大半が個人客に向けた航空券やJR切符の販売、ホテルや旅館の宿泊手配などが占めた。宿泊手配は例年通り首都圏が圧倒的に多かったが、今年は関西が続き、以下、庄内、沖縄の順だった。
海外旅行は、大手他社が主催したパッケージ商品等の代理店業務で台湾2組、シンガポール1組の計3組を扱った。前年同期は台湾1組のみだったので、海外旅行の需要に動きが出てきたことがうかがえた。
同社では、円安に伴いジェット燃料や滞在費の値上がりで旅行費用が高騰する中、コロナ禍で海外旅行を控えていた富裕層が、休みを取りやすいこの時期に家族連れで出掛けたようだ、とみている。旅行代金は台湾が3泊4日で大人1人20万円台、シンガポールが4泊5日(うち機中1泊)で同30万円台だった。
今後は海外旅行に再度力を入れていく方針で、2025年度は5~6本の主催旅行を実施する。行き先は台湾、シンガポール、マレーシア、カンボジア、インドネシアのバリ島、ベトナムのホーチミン・ダナンが候補地に挙がっている。
国内旅行では引き続き、四国や九州、北海道などを行き先に、庄内空港から出発する(株)フジドリームエアラインズのチャーター便を使ったミリオンツアーを強化していく。
薮下博朗同社執行役員は「年末年始の販売額は通常期に比べ限られているが、海外を中心に旅行需要は高まってきている。主力のバスツアーでも、日帰りではなく、1泊2日や2泊3日の宿泊を伴うツアーなど、熟年層を想定した高単価で高品質な品ぞろえを進めていく」と話す。
高速交通機関 天候安定し空・鉄路は増
ANAあきんど(株)庄内支店によると、庄内空港羽田便の12月27日~1月5日の利用客数は1万1139人。前年同期より15・2%増えた。提供座席数は1万5140席で同8・9%増え、搭乗率は73・6%で同4ポイント増えた。欠航は12月27日の下り第1便と折り返しの上り第2便だけ。
搭乗率の下りのピークは12月30日の97・1%。28日の95・2%、29日の94・5%、31日の91・8%、27日の86・1%が続いた。
上りは1月4日と5日の98・4%がピーク。次いで3日が97・0%、2日が87・9%、12月28日が66・4%だった。
東日本旅客鉄道(株)新潟支社によると、羽越本線特急いなほの12月27日~1月5日の利用客数は3万7000人。前年同期比7000人23・3%増だった。
同社管内のピークは、下りが12月30日の3万3千人、上りが1月4日の3万2千人だった。
東日本高速道路(株)東北支社によると、山形自動車道庄内あさひ―鶴岡インターチェンジ間の12月27日~1月5日の上下線合計平均日交通量は1900台。前年同期比300台13・6%減だった。ピーク日は下りが12月30日、上りが1月3日だった。