郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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ふるさと納税 鶴岡・酒田市
米不足・値上げ、大雨被害で明暗
寄付増加には旅行、加工品が必要

 鶴岡市と酒田市の今年度のふるさと納税の概要が見えてきた。両市では米が返礼品の主力品目だが、鶴岡市は全国的な米不足と値上がりに応えて寄付額を伸ばしたのに対し、酒田市は昨夏の大雨被害などによる米不足によって、追加注文に対応できず寄付額を減らした。米以外ではアンデスメロンやだだちゃ豆が人気だった。市の担当者からは、寄付を延ばすには自然環境に左右されにくい加工品が必要との声が聞かれた。(編集部課長・土田哲史、編集委員・戸屋桂)

 鶴 岡 市   過去最高28億円見込む

 鶴岡市総務課によると、同市の今年度4~12月のふるさと納税の寄付額は23億3千万円。前年同期より3億2千万円15・9%増え、前年度の23億8千万円にほぼ並んだ。今年度は過去最高の約28億円となる見込み。
 寄付額が増えた背景には、昨年夏~秋に騒動となった米不足と、現在も続く米の値上がりがある。
 米は同市の返礼品の6割以上を占める主力品。市総務課では2024年産米を確保する一方で、25年産米の先行予約を強化した。農協を通していない個人農家に声を掛けて数量を確保した。このため24年度の返礼品の事業者数は375件へと、前年度より29件8・4%増えた。
 23年10月のふるさと納税制度の改正によって、領収書や寄付金証明書などの発行費用、担当職員の人件費、事務委託事業者に払う費用なども計上した経費を、寄付額の5割以下とするように改められた。このため寄付額を値上げしたり、返礼品の量を減らしたりする自治体が、全国で相次いだ。
 鶴岡市では、24年4月から寄付額を値上げしたため、今年度の寄付額が前年度を下回るのではないかと心配したが、米不足も影響して好調に推移した。
 月別に見ると、前年同月を下回ったのは値上げした4月と、制度の改正による駆け込み需要で前年は特需が生じた9月だけだった。他の月は12月まですべて前年を上回った。特に12月は9億6千万円と、前年同月より3億3千万円52・4%も増え、単月の過去最高額を更新した。

1位はアンデスメロン

 返礼品の人気上位3品は申し込み件数順に①鶴岡市農協アンデスメロン3~5玉、寄付金額1万5千円、2500件、計3750万円②だだちゃ豆早生甘露1・5キロ、同1万2500円、1200件、計1500万円③パックライス200グラム36食分、同1万6500円、1050件、計1733万円―だった。

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鶴岡市で申込件数1位のアンデスメロン(写真:鶴岡市提供)

 返礼品全体では、前述したように米関係が6割以上を占めた。③は米不足に加え防災備蓄品としても需要が伸びている。
 市内の温泉旅館など16施設で使える共通宿泊券など、旅行関係の返礼品の人気も高まっている。今年度の寄付額は12月までに8800万円と、前年同期より4300万円95・6%増え、ほぼ倍増した。
 市総務課では「旅行は飲食や土産品、交通など付随する効果が高い。高温障害や自然災害などの天候に左右されやすい農作物に比べ、安定的に供給できて季節に関係なく受け入れることができるのもメリット。旅行関係はまだまだ伸び代がある。今後積極的に力を入れていきたい」と話した。

使途1位は市長に一任

 23年度のふるさと納税寄付金23億8104万円から、返礼品の調達や発送などに要した経費12億2701万円51・5%を引いた11億5403万円48・5%の使い道を、合計寄付額順に見ると①未来創造プロジェクト(市長に一任)3億5967万円②暮らしと防災1億9775万円③福祉と医療1億6974万円④学びと交流1億6469万円⑤農林水産業1億4714万円⑥地域の振興4852万円⑦商工と観光4572万円⑧社会の基盤2014万円⑨西目地内土砂災害支援66万円だった。

 酒 田 市   寄付件数、金額とも3割減

 酒田市のふるさと納税の寄付状況は、2024年4~10月で寄付件数7万963件、寄付額14億7618万6367円。前年同期を件数は30・3%減、金額は29・0%減と大きく下回った。同市では24年度の寄付額を40億円と見込んでいたが、想定額を下回ることは確実となっている。
 要因は、返礼品の中でも人気の高い米が、予定していた量が出てしまい、例年なら追加で対応できたものが、今年度は対応できなかったことが大きい。取扱業者の農協、米穀店、生産者のどこにも追加注文できる状況にない、と同市交流観光課では話す。
 24年夏に米不足が騒ぎとなり、市場の人気も高く、返礼品の米には関心が高まっているだけに、米を確保できなかったことは痛手となった。
 同課では寄付額が前年より減った理由を①23年産米の不足で、24年1月下旬から返礼品の米の申し込みを停止した取扱業者が増えた②23年10月から、自治体の返礼品の経費の規則が厳しくなり、寄付額が上がると考えた人が、23年9月末までに駆け込みで寄付した―ためと分析している。
 また、24年産の庄内米は7月の大雨の影響を受け、品薄で米価が上昇し、市と返礼品用の米を納入している取扱業者との打ち合わせが遅れた。返礼品の申し込みの受け付けも遅れ、取扱業者からの米の納入数も減る傾向にある。
 そのため市は24年度の寄付額の目標を、22年度と同等の35億円に下方修正した。

米の定期便が人気上位

 24年4~10月の返礼品の人気順位は、合計寄付額順に①米が半年間毎月届く「定期便―無洗米はえぬき5キロ×6月」、5117件、2億1572万9千円②米が12カ月届く「定期便―無洗米はえぬき5キロ×12月」、698件、5662万2千円③「アンデスメロン5キロ」、4195件、5034万円④「令和6年産つや姫15キロ」、1806件、4040万8千円⑤「定期便―つや姫5キロ×12月」、333件、3430万円だった。10位までに米の返礼品が7品入った。
 同課では「全国的に見て生活必需品の日用品的なものが人気。米もその一つとなっている。寄付額と返礼品の内容を見比べて、お得感のあるものが選ばれている。需要にあった返礼品を作る必要がある。米の定期便は人気なので、米が確保できれば件数は伸びていく」と話す。
 酒田市はインターネット上のふるさと納税取扱サイト10社に、返礼品を千点以上掲載しているが、同課では「いろいろそろっていればいい、というものでもない」と話す。返礼品として掲載していても申し込みのないものもあり、農産物は自然環境に左右されることから「加工品の人気商品がほしい」と取扱業者と相談しているが、簡単ではないと言う。
 市では、返礼品についての取扱業者からの相談を随時受け付け、さまざまなところに情報提供を頼んでいる。ふるさと納税の仕組みを活用してインターネットで資金を調達し、寄付金の一部を補助金として交付する返礼品開発等支援補助金も設けた。23、24年度にそれぞれ1件ずつ返礼品を開発した。
 同市交流観光課では「まだ寄付していない人への呼び掛けや掘り起こしには、ふるさと納税取扱サイトも自治体も力を入れているが、寄付者獲得の競争は激化している」と話した。

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