郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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全文掲載

新年度予算案
大雨災害復旧、体育施設改修など盛る
酒田市 過去最大の総額617億円

 酒田市は総額617億円の2025年度一般会計当初予算案を、2月27日に開いた25年定例会第2回3月定例議会に上程した。総額は24年度当初を54億5千万円9・7%上回り、これまでで最も多かった20年度の575億円を上回り過去最大規模となった。昨年7月に発生した大雨災害の復旧関連経費や体育施設の大規模改修・改築費が増えると見込んで「投資的経費」を増額と試算し、人件費の上昇や物価高騰による影響で補助費等などが伸びると見通して「その他の経費」も増額になると試算していることなどが要因となっている。新年度は光ケ丘野球場の改修事業や八幡体育館改築事業が本格段階を迎え、旧マリーン5清水屋を含めた中町地区のグランドデザイン(全体構想)も策定する。(編集主幹・菅原宏之)

災害復旧費27億9千万円

 矢口明子市長が手掛けた2度目の予算編成では、市総合計画後期計画を踏まえて重視したポイントに①市民の所得向上と若者・女性の定住促進②一人ひとりの活躍が大切にされる共生社会の実現③災害からの復旧・復興と安全・安心のまちづくり④人口減少・気候変動等に対応したまちづくり―の4項目を掲げた。

表

 予算規模が過去最大となった要因を歳出の性質別で見ると、最も影響したのは、社会資本整備に充てる「投資的経費」を、24年度当初から32億3400万円67・6%増額の80億1900万円と見積もったこと。
 市から各種団体に補助金や負担金などとして交付する補助費等や、委託料や物品購入費などに充てる物件費貸付金などで構成する「その他の経費」を、同19億5400万円7・2%増額の291億6100万円と試算したことも予算規模を押し上げた。
 人件費、社会保障として生活困窮者や高齢者などの支援に充てる扶助費、借入金の元金や利子の返済に充てる公債費で構成する「義務的経費」は、同2億6200万円1・1%増額の245億2千万円と微増にとどまると見込んだ。
 投資的経費が増額となるのは、災害復旧費を、昨年7月の大雨災害を踏まえて24年度からほぼ皆増となる27億9千万円と試算し、公共施設の新増設などに充てる普通建設事業費を、光ケ丘野球場・テニスコートの大規模改修や八幡体育館の改築を進めることから、同9・3%増額の52億2900万円と見積もったことなどが要因となっている。
 その他の経費が増額となるのは▼補助費等を、人件費の上昇に伴い酒田地区広域行政組合分賦金を増やしたことから、24年度当初比3・2%増額の104億2千万円▼物件費を、物価高騰や人件費の上昇を受け同9・4%増額の91億1200万円▼貸付金を、市が借金をして地方独立行政法人山形県・酒田市病院機構に貸し出す同病院事業長期貸付金を増やしたことから、同45・2%増額の27億8500万円―と試算したことなどが要因となっている。
 義務的経費が微増にとどまるのは、人件費を2年に1度の定年延長による対象職員が25年度は出ないことから同1・3%減額の79億2200万円と、公債費を同9・4%減額の62億2700万円と見積もったものの、扶助費を国の制度改正に伴い児童手当費と介護・訓練等給付費、保育所等入所扶助費が増えると見込んで同10・8%増額の103億7100万円と試算したことなどによる。
 齋藤康一・市財政課長は「災害復旧関連経費の計上などで、過去最大の予算規模となった。公債費が減っている一方で、国の制度拡充や物価高騰・人件費の上昇など外的要因の影響も大きい。財源は財政調整基金などからの繰入金で対応しているため、基金残高が減っている。歳入を増やす施策とともに、事業の選択と見直し、公共施設の適正化など歳出の削減に取り組み、将来に責任を持った財政運営を進めていく」と話した。

中町の全体構想を策定

 災害対策、施設整備、産業振興、都市機能強化の主要事業は次の通り。
下水道事業運営費負担事業(継続)16億8149万円は、気候変動による影響で短時間での強雨が増加傾向にあることなどを踏まえ、計画的な雨水浸水対策を実施するための、雨水管理総合計画を策定する費用を、下水道事業会計に繰り出す。
被災住宅復旧支援事業(新規)5027万円は、浸水被害を受けた空き家の解体に1件20万円、修繕に同12万円の補助金をそれぞれ支給し、将来的に危険空き家となることを未然に防ぐ。
光ケ丘野球場改修事業(継続)6億1367万円は、同野球場と屋内練習場を人工芝に改修し、同練習場のトイレを洋式化し、同野球場にエアコンを設置する。
八幡体育館改築事業(継続)5億2997万円は、同体育館の建て替えに向け25年度は24年度と2カ年の予定で行う建て替え工事を継続し、26年度まで2カ年の予定で行う外構工事(修道館の解体工事を含む)にも着手する。
テニスコート改修事業(新規)2億1225万円は、国体記念テニスコートと光ケ丘テニスコートを人工芝に改修し、フェンスの改修工事も行う。
新規就農者確保緊急円滑化対策事業(新規)8100万円は、新規就農者を緊急的に育成・確保するため、将来の担い手の円滑な世代交代と就農後の初期投資を支援する。
産業振興まちづくり推進事業(継続)1億1757万円は、新たに事業承継を進めるために補助金を創設し、サンロクIT女子マネージャーを1人増やし、酒田コミュニティ財団の運営も補助する。
都市計画総務管理事業(継続)409万円は、まちづくりに知見を持つ有識者を招いて旧マリーン5清水屋を含めた中町地区の方向性を検討し、官民が連携した「まちなかグランドデザイン」を策定する。
観光戦略推進事業(継続)5663万円は、酒田DMOの体制強化のため専門の職員を増員し、新たに観光戦略策定に向けたデータ分析の補助金を交付する。
公共施設ESCO推進事業(継続)5億1165万円は、コミュニティ施設28施設、小中学校20校、道路304カ所の照明を、省エネルギーによる経費削減効果予定分で設備更新するESCO事業を活用してLEDに替える。

鳥海小屋内運動場を改修

 教育、健康福祉、文化芸術の主要事業は次の通り。
不登校支援メタバース活用事業(新規)2278万円は、学校や教育支援センターに通うことが難しい児童生徒に、人とのつながりを持つことができる新たな居場所を仮想空間で提供するシステムを構築する。
小学校施設長寿命化事業(継続)2億4507万円は、鳥海小学校屋内運動場の設計を2024年度に行ったことを受け、屋根・外壁・サッシの改修と、骨組み補修などの改修工事を行う。
医療的ケア児支援事業(新規)809万円は、医療的ケアが必要な児童生徒の学校での支援体制を構築する。
こども家庭センター運営事業(継続)3619万円は、スマートホン世代の妊婦や子育て世代を支援するため、新たにカメラ機能や子どもの発育記録をチャート化(図示)する機能などを持つ電子版母子手帳アプリを導入する。
山居倉庫整備基本計画策定事業(継続)4675万円は、山居倉庫整備基本計画を策定するため、外部有識者による策定委員会を継続して開き、24年度にできなかった同倉庫3〜9号棟と研究室棟、事務所棟の耐震診断を行う。

基金を35億円超取り崩す

 主な歳入を見ると、自主財源の柱となる市税は、24年度当初から3・1%増額の134億2300万円(歳入に占める構成比21・8%)と見積もった。
 個人市民税は、国の定額減税が終了した影響を見込んで、同11・0%増額の45億800万円。法人市民税は、24年度の決算見込みを踏まえて、同10・2%減額の8億4700万円。固定資産税は、25年度が土地と家屋の評価替えの年度ではないことから、ほぼ横ばいで推移すると見込んで、同1・0%増額の59億6300万円。都市計画税は同1・3%増額の8億6300万円。市たばこ税は同2・9%減額の6億7300万円とそれぞれ試算した。
 基金を取り崩して一般会計に充てる繰入金は、同16・4%増額の35億4800万円(同5・8%)。ふるさと納税寄付金が大半を占める寄付金は、24年度の実績を踏まえて同12・8%減額の35億3200万円(同5・7%)。貸付金の元利収入や預金利子などからなる諸収入は、同3・1%減額の31億100万円(同5・0%)と見込んだ。
 このうち取り崩した基金の主な内訳は、一般財源の不足分を補うための財政調整基金を15億800万円、ふるさと納税寄付金を原資に積み立てたさかた応援基金を5億2400万円、合併特例債を原資に積み立てた地域づくり基金を4億7700万円、公共施設の整備資金に充てる公共施設等整備基金を3億8500万円、公債費の償還に充てる市債管理基金を3億円など、計18基金に上る。
 この結果、25年度末の主な基金残高見込み額は、財政調整基金が24年度末見込み額から38・1%減額の24億4300万円、地域づくり基金が同64・2%減額の2億6500万円、公共施設等整備基金が同23・7%減額の9億1600万円、市債管理基金が同15・9%減額の15億8200万円、さかた応援基金は同28・8%増額の7億9700万円と見通している。
 依存財源では、地方交付税を、国の地方財政対策を基に手堅く積算して同1・6%減額の146億6千万円(同23・7%)と見積もった。国庫支出金は、災害復旧費が入ることを見込んで同32・7%増額の81億3200万円(同13・2%)。県支出金は、同様の理由から同49・2%増額の57億1600万円(同9・3%)。長期の借入金に当たる市債は、山形県・酒田市病院機構への貸し出しが増えることなどから、同51・8%増額の52億5千万円(同8・5%)と試算した。
 合併特例債は、25年度借入見込み額を1億4400万円と見積もった。市は新市建設計画を変更し、20年度末までだった合併特例債の発行可能期間を25年度まで5年間延長した。25年度末以降の発行可能残高はゼロ円で、全て使い切る。

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