郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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全文掲載

鶴岡八森山風力発電所
絶滅危惧種など数種の鳥類死骸発見
クマタカ死骸確認後の追加調査で

 エネオスリニューアブル・エナジー(株)(東京都港区、竹内一弘代表取締役)が、鶴岡市三瀬の八森山で2021年11月から稼働している「JRE鶴岡八森山風力発電所」の事後調査の追加報告書「環境影響評価報告書(その2)」を、5月20日まで同社ホームページや鶴岡市役所などで公開している。同報告書によると、県指定準絶滅危惧種を含む数種類の鳥類の死骸が見つかり、国指定絶滅危惧種を含む猛きん類の飛翔確認数の減少が認められた。日本野鳥の会山形県支部では「10年、20年と経てば種の存続に関わるほどの変化になる」と風車の建設稼働の影響を懸念している。(編集部次長・土田哲史)

猛きん類の飛翔確認数が減少

 鶴岡八森山風力発電所では、高さ139メートル、出力3400キロワットの発電用大型風車5基を、八森山の尾根筋に設置している。
 鶴岡八森山風力発電所では、高さ139メートル、出力3400キロワットの発電用大型風車5基を、八森山の尾根筋に設置している。
 同発電所では、国の絶滅危惧ⅠB類(近い将来野生での絶滅の危険性が高いもの)のクマタカが衝突死したと思われる事故が23年6月に発生するなど、鳥類とコウモリ類の同様の事故が22、23年に計14件確認された。
 これらを受けて追加の事後調査を23年10月~24年11月に行い、①死骸探索調査(鳥類・コウモリ類)②猛きん類調査の結果を、今回の追加報告書にまとめた。
 ①では鳥類のイカル2羽、エゾムシクイ1羽、コウモリ類のユビナガコウモリ1匹、ヒナコウモリ1匹の死骸が見つかった。県はエゾムシクイを準絶滅危惧種に、ヒナコウモリを情報不足に指定している。
 ②では、クマタカの飛翔確認数が、風車建設前の事前調査では828例あったが、建設工事中は179例、風車稼働後は489例に減っていた。
 国の絶滅危惧ⅠB類イヌワシとクマタカ、絶滅危惧Ⅱ類サシバ、準絶滅危惧種ミサゴ、ハチクマ、ハイタカなど、猛きん類全体の飛翔確認数も、事前調査の1443例から工事中は307例、稼働後は741例に減っていた。
 クマタカの繁殖成功率は、事前調査では30%、工事中は33%だったが、稼働後は25%に低下した。

死骸の数はあくまで最小値

 この報告書に対し、日本野鳥の会山形県支部の細谷千鶴子支部長は「調査は限られた日数で行われたもので、ここにある数字はあくまでも最小値。2羽の死骸が見つかったということは、4羽かも8羽かもしれない。
 エゾムシクイなどの小さな鳥の死骸が1羽でも回収されたことが希少といえる。小さな鳥は風車に触れただけで木っ端みじんになり、死骸はほんの数時間で動物の餌となって分解される。この1羽の陰に10羽、20羽の命が推定できる」と指摘した。
 そして「クマタカは繁殖成功率が事前30%、工事中33%、工事後25%という数字を挙げているが、明かに減っていると思えるし、もともとの分母が少ない状態でのパーセンテージ低下に危機感を覚える。
 猛きん類の餌場への飛翔ルートが奪われ、猛きん類の餌となる生物への影響など、バードストライクだけでなく、風車の稼働による環境の変化は確実にある。数年での変化はわずかでも、10年、20年と経てば種の存続に関わるほどの変化となる」と懸念を示した。
 エネオス社は鳥類の衝突対策として、風車の塔などに目玉模様を23年12月までに施した=写真=が、これにも「報告書では、目玉模様の設置前と後の明らかなデータ比較が無い。少なくとも設置後の今もバードストライク事例があるということは、効果が無いと言える。コウモリ類に対しての措置が取られていないことは言うまでもない」と指摘。

写真
目玉模様(矢印の部分)を施した風車

 その上で事業者に対し「20年後にはこの風車は廃棄されるのだから、そんな先のことなど知ったことじゃない、自分も現役を退いているから関係ないという姿勢ではなく、10年、20年の誠意ある対応を望む」と話した。
 エネオス社は、八森山から約3キロ北東の同市矢引地区に、高さ最大172メートル、出力4200キロワットの発電用大型風車を最大6基設置する「三瀬矢引風力発電事業(仮称)」も計画し、地元住民団体「上郷地区風力発電事業を考える会」が計画中止を訴えている。

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