郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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県と酒田市の大型風車計画
市長意見書の内容に反発強まる
市環境審議会の答申に沿わず

 庄内海浜県立自然公園内の酒田市十里塚地区で、山形県企業局と同市がそれぞれ進めている発電用大型風車計6基の建設計画に対し、丸山至酒田市長は吉村美栄子県知事に市長意見書を提出したが、市環境審議会の委員らが「慎重意見が反映されず、内容が的確ではない」と反発を強めている。この委員は丸山市長宛に公開質問書を提出。環境保全団体の関係者も酒田市議会内の3会派1団体と丸山市長を対象に両計画に関する問題点の説明を始めた。一方、山形県環境審議会自然環境部会(部会長=幸丸政明・東京環境工科専門学校長)は1月26日に第3回会合を山形市内で開き、両計画を認める方向で県知事に答申する考えを了承した。(編集主幹・菅原宏之)

県環境審は設置認める方向

 山形県企業局は2019年5月の着工に向け、昨年10月26日付で庄内海浜県立自然公園第3種特別地域内での風力発電施設の新築許可申請・同普通地域内での新築行為届出を、吉村県知事に行った。酒田市は昨年11月17日付で同様の許可申請・届出を行っている。
 これを受け吉村県知事は、山形県立自然公園条例に基づき、特別地域内での行為許可の適否と、普通地域内での措置命令の要否を審査し、許可申請などについて判断するため、丸山酒田市長に意見を照会。丸山市長は市長意見書を今年1月23日付で吉村県知事に出し、市が同月26日に公表した。
 丸山市長は両事業が「環境保全措置の確実な実行を条件として、当申請などは許可及び受理が妥当と考える」と市長意見書に記した。
 市長意見書には具体的な環境保全措置などとして①砂草地植生の原状回復、地形の変化など、環境影響評価書に記載された環境保全措置を確実に実行し、経過や事後調査、結果を県と市に報告する②建設工事や施設の存在・稼働による騒音などの問題が発生した場合は、誠意を持って対応する③事業区域は国内有数の渡り鳥の飛来地として国指定鳥獣保護区に指定されていることなどを踏まえ、他事業の見本となるような対策に努める④事故による稼働停止、施設の破損や鳥の衝突などが発生した場合は、経過を県と市に報告する⑤計画地周辺の地域住民と定期的な懇談の場を設けるなど、良好な関係の構築に努める⑥環境保全や撤去などの費用を確保するため、事業収支などの状況を定期的に公表する―の6項目を別紙に添付した。
 市長意見書は今年1月15日の市景観審議会(会長=遠山茂樹・東北公益文科大学教授)と、同17日の市環境審議会(会長=佐藤顕・酒田地区医師会十全堂副会長)からの答申を参考意見とし、市が作成した。

市環境審は「価値あるか疑問」

 このうち市環境審は両事業について「再生可能エネルギー推進の観点から、当申請などを妥当とする意見もあったが、環境に対する回復不可能な影響を懸念する意見や、県条例などに適合するとは認め難いとの意見のほか、環境保全措置、維持管理、撤去、原状回復や監視に要する費用から収益性も不確定との意見が多くあった。以上より当事業を進めるだけの価値があるか疑問がある」と答申した。
 別紙には各委員からの意見として▼申請が許可されれば、今後同地域で風車乱立の恐れがある▼撤去計画の実施を担保する予算が適切に積算されていないなど、撤去計画が適切に定められているとは言えない▼先人たちが育てた松林の価値を踏まえ、立地場所を再考するべき―などを添えた。
 市景観審は両事業について「震災後の再生エネルギーの活用推進も重要であり、環境影響評価に従い、景観に十分配慮し事業を行うべき」「景観は時代と伴に変化するものであることから、人の生活との共存、融合を考慮しながら進めるべき」とする推進意見と、「過去に同場所での計画について『景観維持を図る上で重要な支障がある』という理由で許可しなかった経緯もあり、場合によっては美しい海岸の風景の消失の危惧もあることから、慎重を期すべき」とする慎重意見を併記する形で答申した。
 別紙には各委員からの意見として▼景観については十分に配慮していることから、環境影響評価のとおり事業を進めるようお願いしたい▼海岸林の津波に対する防災機能や鳥海山飛島ジオパークの認定により、砂丘や海岸林に対する自然環境や景観の価値が一層高まっている▼風力発電事業は、民間に任せておいた方がよい―などを添付した。

慎重意見は反映されず

 これに対し環境保全団体の関係者や一部市民の間から「丸山市長の意見書は、市の環境審と景観審の答申内容を的確に反映したものとはなっていない」と反発の声が上がっている。
 NPOパートナーシップオフィス理事で市環境審委員の金子博氏は1月29日、「市長意見書の内容に疑義がある」として、丸山市長宛に公開質問書を提出した。
 質問項目は―
 ①先の市環境審では環境に対する回復不可能な影響を懸念する意見や、県条例などに適合するとは認めがたいという意見のほか、環境保全措置、維持管理、撤去、原状回復や監視に要する費用から収益性も不確定との意見が多くあり、答申書に明記された。
 丸山市長からの同審議会への諮問では、県立自然公園条例に基づいて適合するか否かを審議するよう求められ、特別地域では8項目、普通地域では6項目の審査基準の全てに適合する場合以外は許可、受理してはならないとされている。
 市長意見書では、環境保全措置の確実な実行を条件として、許可及び受理が妥当としたが、市環境審の答申における多数意見を覆した理由を教えてほしい。関連して審査基準項目の全てに適合すると判断したことになるが、適合するとした判断理由を項目ごとに教えてほしい。
 ②市長意見書では、環境保全措置の確実な実行を条件としているが、環境保全措置が実行されなかった場合の各事業者への対抗措置の内容について、具体的に教えてほしい―の2点。
 金子氏は本紙の取材に「丸山市長は市の環境、景観両審議会に県立自然公園条例の許可基準に沿った判断を求めておきながら、自らは基準に沿った判断を明確に示していない。これは、事業実施者と審査権者が同一であることの矛盾を示している」と批判する。

議会と市長に問題点を説明

 クロマツ林を通して地域の自立を目指す民間組織「クロマツ林文化創造ネットワーク」(森繁哉代表、略称クロマツネット)は2日、酒田市議会内の3会派1団体に、今回の風力発電計画の問題点を説明する機会を設けてもらうよう求める文書を、丸山市長には同主旨に基づき面談を求める文書をそれぞれ提出した。
 会派・団体への文書では、事業は市の予算で執行され、計画に対してはさまざまな問題点が専門家、実務者からも指摘されていると説明し「私たちの見解などについて、市行政の監視機能を果たしている市議会議員の方々へ、直接伝える機会を設けてほしい」と要請。市長に面談を求める文書では「住民とのコミュニケーションを図る観点から、市長へ直接伝える機会を設けてほしい」と要望した。
 これを受け5日には、市議会内最大会派の一つ「志友会」(本多茂会長、10人)と会合を持ち、クロマツネット側が問題点などを説明。今後も、意見交換を続けていく方針を確認した。
 14日には同第3会派「市民の会」(後藤泉会長、6人)と会合を持ち、15日は丸山市長と面談する予定。6日現在、もう一つの最大会派「公政会」(富樫幸宏会長、10人)と日本共産党酒田市議会議員団(斎藤周団長、2人)との会合は未定。

県環境審、各委員の意見求めず 2月中旬めどに知事へ答申

 一方、山形県環境審議会自然環境部会は1月26日に第3回会合を山形市内で開き、県企業局と酒田市がそれぞれ行った風力発電施設の新築許可申請・同新築行為届出について審議した。
 吉村県知事は県立自然公園条例に基づき、申請許可などについて判断するため、県環境審議会自然環境部会に諮問。同部会は答申の取りまとめに向け、各委員や丸山酒田市長からの意見を聴こうと開いた。
 会合には、委員・特別委員の計18人中12人が出席。審議では、事務局の県環境エネルギー部みどり自然課の担当者が県企業局と酒田市の事業概要のほか、環境影響評価準備書に対する県知事意見と同評価書での対応状況、県立自然公園条例に基づく風力発電施設の新築許可基準とそれに対する県の考え方などを説明した。
 このうち同部会委員で山形県環境影響評価審査会長の横山潤・山形大学理学部教授は、環境影響評価書への意見を求められ「準備書について議論した昨年7月の審査会では、各委員から鳥が風力発電施設に衝突する累積的影響の問題、コアジサシの繁殖活動を保護する対策、植物群落の移植を含めどう措置するのかなど専門的意見が多く出された。これらの意見は、県知事意見に全て反映させていると考えている」などと述べた。
 また県は、風力発電施設の新築許可基準の一つとなっている「色彩並びに形態がその周辺の風致又は景観と著しく不調和でないこと」について、色彩を薄い灰色とし、形態も庄内海岸に既に設置されている他の風力発電施設と比べて、外見上に大きな違いが無いことから、周辺の風致または景観と著しく不調和ではない、と説明した。
 「山稜線を分断するなど眺望の対象に著しい支障を及ぼすものでないこと」という許可基準については、景観への影響を低減するための環境保全措置を講じる計画となっており、庄内砂丘とクロマツ林の景観に著しい支障を及ぼす恐れはないと認められる、との考え方を示した。

「風力施設は景観損なう」 県環境審部会長が異例の意見表明

 佐藤景一郎・山形県森林組合連合会代表理事会長からは▼環境保全措置の中で「改変した防浪砂堤の東側のクロマツ植林を強風による影響から保護するため、現場施工段階よりも高い防風柵の整備を検討する」とあるが、検討ではなく実行してほしい▼稼働後のクロマツ植林の復旧状況を長時間報告する、監視のためのシステムを構築する必要がある―という意見が出た。
 しかしほかに意見が無かったことから、答申に向けた聴取を終結。幸丸部会長は環境影響評価方法書、準備書、評価書と手続きを踏み環境保全対策を十分に記していること、新築許可基準に対する県の考え方も示していることなどを挙げ、「酒田市の環境、景観両審議会のように委員一人一人から意見を求めることは、この審議会にふさわしくない。答申は、基本的に県企業局と酒田市の事業を認めるという方向でまとめさせていただきたい」と提案し、全会一致でこれを了承した。
 一方で幸丸部会長は、今回の自然環境部会では県立自然公園内での風力発電施設の建設を認める方向になったが、自分の考えを述べさせてもらい、議事録に留めておいてほしいと話した。
 そして、自然再生エネルギーの活用は世界のすう勢であり、日本も原発ゼロの方向に向かうのであれば、それ自体の促進は歓迎するべきもの、と話した上で「風力発電施設は、自然環境の中では明らかに不調和で異質な存在。この施設によって庄内海岸という長大で水平的な景観の価値を損ねることの方が、化石燃料によらない発電施設の新築や山形県内における風力発電施設の建設促進の契機にするなどという利益を明らかに上回ると考えている。風力発電施設の影響は長期にわたる広範囲な調査が必要であることを指摘し、喪失される景観の評価は後世の方々の判断に待ちたいと思う」などと語った。
 自然環境部会では2月中旬をめどに答申をまとめ、吉村県知事に提出する見通し。同部会の答申や丸山酒田市長の意見などを踏まえ、吉村県知事は2月中に県立自然公園条例に基づく新築許可などの適否を最終判断する予定。

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