郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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庄内・山形空港
県の支援額に大きな格差
県議や経済人から不満、批判の声

 山形県が庄内、山形両空港の利用拡大・路線定着などのために毎年度負担している支援額に格差のあることが、本紙の調査で分かった。山形空港への支援額は庄内空港を大きく上回り、その差は2018年度予算によると県費だけで約1・8倍、県費に国費も加えると約4・9倍にも達する。これに対し庄内地域選出の県議会議員や地元経済界の関係者たちの間からは「根底には内陸偏重の県政が続いていることがある」「支援の格差を放置してきた庄内選出県議会議員の責任は大きい」といった不満や批判の声が上がっている。(編集主幹・菅原宏之)

支援額の差は4・9倍

表1
 本紙が入手した資料などによると、山形県は、県や庄内地域5市町などで組織する「庄内空港利用振興協議会」(会長・丸山至酒田市長、会員数36団体)と、県や内陸地域30市町村などで構成する「山形空港利用拡大推進協議会」(会長・佐藤孝弘山形市長、同68団体)に、負担金を出している。
 両協議会に対する県の18年度予算の負担金などは表1の通り。
 このうち庄内空港利用振興協議会には、同協議会の運営経費や全日本空輸(株)が1日4往復運航している庄内―東京便の利用拡大に向けた経費などを合わせた①運営・利用拡大分負担金1005万円を計上した。
 同協議会では18年度の総収入を3028万円と見積もっており、県の負担金が総収入に占める割合は33・2%となる。
 ①のうち利用拡大に向けた経費は▼庄内空港発着の航空便を利用した旅行商品の造成、販売・広報などに対する旅行会社への助成▼特定便の利用を拡大するため、2人以上で庄内空港発着の東京便を利用した場合、1人につき5千円を返す個人利用者への助成▼庄内空港発着の定期便・チャーター便を利用した教育旅行に際し、学校に支援する教育旅行への助成―などに充てる。
 これに対し山形空港利用拡大推進協議会の①は1500万円を計上し、庄内空港利用振興協議会のそれを495万円上回る。内訳は、日本航空(株)が全額出資する(株)ジェイエアによる1日2往復運航の山形―東京便と同3往復の山形―大阪便、(株)フジドリームエアラインズによる同2往復の山形―名古屋便と同1往復の山形―札幌便の利用拡大・促進に向けた経費や、同協議会の運営経費など。
 両協議会の①を巡っては、国の羽田発着枠政策コンテストに応募した県の提案が認められ、14年3月30日から山形―東京便の2往復化が実現。同日には山形―名古屋便も就航したことから、県は14年度と15年度の2年間限定で、山形空港利用拡大推進協議会の①をそれまでの350万円から7倍超の2500万円に増額した=グラフ1参照=。
 これを庄内空港利用振興協議会員らは「県の負担金に格差がある」と問題視し、当時350万円だった①の増額を要望。県は16年度から同協議会の①を1千万円超に増やしたが、それでも山形空港利用拡大推進協議会の①には届いていない。


赤字折半し負担する制度も

グラフ1
 それに加えて山形空港利用拡大推進協議会には、庄内空港利用振興協議会には無い②路線収支への支援575万円③集客力強化事業600万円④近隣空港との連携200万円―の各負担金が計上されている。
 このうち②は、羽田発着枠政策コンテストで運航会社への支援策として導入した、路線収支共有制度に基づくもの。山形空港利用拡大推進協議会と運航会社の両者が、山形―東京便で生じる収支の黒字・赤字を折半して取得・負担する仕組みとなっている。
 同推進協議会の負担総額1150万円のうち県が半分を、残りを市町村と山形空港ビル(株)が出した。当初は14年度から2年間限定の仕組みだったが、3年間の延長を経て18年度が最終年度となっている。
 ③は、空港来訪者の視野の拡大と将来の利用拡大に向け、山形空港ビルで展開している同空港への集客力強化や、にぎわい創出につながる事業に対し、県が山形空港利用拡大推進協議会に出しているもの。同協議会が山形空港ビルに委託する形を取っている。東日本大震災発生直後に被災した太平洋側空港の代替空港としての役割を担った山形空港を支援しようと、11年度から続いている。
 ④は、仙台空港と連携してレンタカーの相互乗り捨て料金を助成し、訪日外国人観光客をはじめとする仙台空港利用者の取り込みなどを狙ったもの。庄内、仙台両空港間を想定した同様の仕組みは、県国際観光推進協議会に300万円を予算化して設けている。
 山形空港利用拡大推進協議会に対する県負担金は①に②③④を加えた計2875万円。同協議会では18年度の総収入を5349万円と見積もっており、県の負担金が総収入に占める割合は53・7%となる。


名古屋便運航に国費投入

 山形空港利用拡大推進協議会にはさらに、⑤地方創生推進交付金関連事業特別会計があり、18年度予算では5千万円を計上している。
 これは最終的に国が負担する地方創生推進交付金を、就航間もない山形―名古屋便の支援に充てるもの。14年度から3年間は、国がモデル的に実証調査を行うことで路線維持を図る「地方航空路線活性化プログラム」の支援金を使っていた。
 しかし16年度途中で同プログラムが終了したため、国からの提案もあって地方創生推進交付金を活用することにした。期間は16〜20年度の5年間。3年目の18年度は3千万円を「いせでわ関連事業の展開」、2千万円を「航空路線の維持・拡大」に使う。
 このうち、いせでわ関連事業では▼「西の伊勢参り・東の出羽三山参り(いせでは)」の核となるDMO法人(観光資源に精通し、地域と協同して観光地域作りを行う法人)の設立、その法人を支援する官民連携の体制づくりに向けた調整▼山形―名古屋便など山形空港路線の観光需要拡大を効果的に行うため、収集した情報の調査・分析、体験プログラムなどの企画、宣伝などを山形、三重両県の観光関係者と検討、実施―する。
 このほか県は⑥フジドリームエアラインズが山形空港に就航した13年度に、空港カウンター設置費用1518万円の2分の1の759万円を補助。チャーター便旅客と定期便旅客の導線を分けるため、17年度に改修工事を行った⑦山形空港国際化機能強化事業では、総事業費1億5690万円のうち9998万円を補助金として出した。


着陸料100%減免し支援

表2
 一方、県には両空港からの着陸料等収入があり、施設管理維持費を支出してもいる=表2参照=。
 空港別に見ると、庄内空港の18年度の着陸料等収入額は1億656万円と試算。これに対し施設管理維持費は3億354万円を見込み、県庄内空港事務所の県職員の人件費を除く収支は1億9698万円の赤字となる。
 山形空港は着陸料等収入額を4045万円、施設管理維持費を2億3431万円と見積もり、県山形空港事務所の県職員の人件費を除いた収支は1億9386万円の赤字となる。赤字幅は庄内空港が山形空港を312万円上回っている。
 着陸料等収入額は、庄内空港が山形空港より6611万円多くなると見込んでいる。背景には庄内空港の庄内―東京便の減免率が50%なのに対し、山形空港の山形―大阪便は同50%、山形―東京便は同90%、山形―名古屋便と山形―札幌便は同100%と、県が山形空港発着路線の着陸料を低く抑えていることがある。
 施設管理維持費も庄内空港が山形空港を6923万円上回る。主な業務の中で特に目立つのは、庄内空港の消防業務費を山形空港より1533万円多く見積もっていること。中型機も発着する庄内空港は山形空港に比べ運航している機材が大きく、消防車を山形空港より1台多い3台配備していることによる人件費増などが要因となっている。
 この結果、庄内空港に対する支援額は18年度予算で、前述した①に県国際観光推進協議会の300万円を足した計1305万円。これに対し山形空港に対する支援額は前述した①②③④⑤の計7875万円に上る。
 庄内空港に対する支援額に、同空港が山形空港を上回る収支差額の赤字分312万円を加えた1617万円に対し、山形空港への支援額は県費だけで庄内空港の支援額の約1・8倍、県費に国費も加えると約4・9倍にも達する。
 松澤勝志・県総合交通政策課長は5月25日、本紙の取材に「庄内空港は東京便が堅調に推移しているが、1社独占が続いたことで運賃が高いという弊害が出てきており、格安航空会社(LCC)を含め新規就航の実現に取り組んでいる。一方の山形空港は名古屋便と札幌便の定着が一番の課題になっている。そのため両空港間に県の支援格差が出てきているが、新規就航すれば庄内空港にも立ち上がり支援として県費を投入することになることから、格差は自ずと縮まっていくはず」と現状を説明した。


放置した県議の責任大きく

 こうした現状に、庄内地域選出の県議会議員や経済界関係者の間からは、批判の声が上がっている。
 酒田市・飽海郡区選出の佐藤藤弥県議会議員は「根底には内陸偏重の県政が続いていることがある。そうした中で第一義的には庄内、山形両空港に対する県の支援に格差がある状況を、これまで放置してきた庄内選出の県議会議員の責任は大きい。仙台空港との協調を進めていけば、山形空港にそれほど県費を使う必要はなく、庄内空港に県費を投じたほうが投資効果は高いと見ている」と指摘する。
 酒田市内で食品関連の会社を経営する70歳代のある代表取締役会長も「庄内地域選出の県議会議員がこれまで『何をやっていたのか』ということに尽きる。内陸の人は山形空港が優遇されていることを、当たり前のことだと思っている。庄内地域選出の県議会議員は空港の格差是正を含め、超党派で地域の利益になるような行動を起こさなければならない」と話した。
 県内の政治情勢に詳しい酒田市の60歳代のある会社経営者は「県予算の使い方が、村山地域中心になり過ぎているのが実態。村山地域はミニ新幹線もあるのだから、県の施策として庄内地域は空路を拡充するべき。庄内空港路線は運賃が高いという課題もあり、是正するための働き掛けにも注力してほしい」と提言した。


運営・利用拡大分は同額に

 鶴岡市区選出の佐藤聡県議会議員は「県には、せめて庄内空港利用推進協議会の運営・利用拡大分負担金を、山形空港利用拡大推進協議会と同額にしてほしい。加えて運賃を安くするような施策を全日空と組んで行えるのであれば、取り組んでほしい」と強調した。
 その上で運賃を安くするための施策に▼庄内―成田便は20年からの就航を目指しているLCC(株)エア・リージョナル・ジャパンを待つのではなく、路線収支共有制度や着陸料の減免などを示して成田空港を拠点に運航する既存のバニラ・エア(株)やジェット・スター・ジャパン(株)などに就航を働き掛ける▼山形空港で運航しているフジドリームエアラインズに庄内空港への就航を働き掛ける―を挙げた。
 また加藤淳一・鶴岡商工会議所専務理事は、吉村美栄子県知事が庄内、山形両空港の滑走路を現行2千メートルから2500メートルに延長したいと意欲を示していることに言及。国の滑走路延長の補助採択の要件の一つが、1路線の年間利用者数50万人となっていることに触れながら「ビジネス客を中心に通年で中型機が運航でき、チャーター便も誘致できるような環境をつくる必要がある。そのためには県も庄内空港への支援を充実させていかなければならないのではないのか」と指摘した。


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