郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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鶴岡市大山上池・下池
自然学習盛んも経済的活用無く
ラムサール条約登録湿地10年

 鶴岡市大山の上池・下池が、湿地の保全と賢明な利用を目指す国際条約・ラムサール条約の登録湿地となって10年が経った。この間、生物観察や外来生物の駆除といった保全や自然学習の取り組みは活発になったが、池の富栄養化が進んで水質は悪化し、観光誘致や土産品開発といった経済面での活用計画も無いのが現状だ。(金井由香)

▼ラムサール条約登録湿地大山上池・下池=2008年10月にラムサール条約登録。登録面積は計39ヘクタール。上池は庄内赤川土地改良区、下池は西郷土地改良区が管理する。両改良区は農業用水に利用し、浮草組合が上池のハスの花を出荷している。鶴岡市は、庄内森林管理署が管理する高館山と、同市が管理する都沢湿地を含めた両池一帯を自然学習に利用する「庄内自然博物園構想」を2009年に掲げた。12年に「鶴岡市自然学習交流館ほとりあ」を開館し、大山自治会を指定管理者とした。各管理団体や大山自治会、尾浦の自然を守る会などでつくる「庄内自然博物園構想推進協議会」(会長・櫻井修治大山自治会長)が、自然観察会や都沢湿地の保全活動などを行っている。

池の富栄養化が進む

 上池と下池は農業用ため池で、両池の水だけで耕作している水田が10ヘクタール、渇水期などの利用を想定している水田が240ヘクタールある。しかし、以前より水田での利用水量が減ったことで、池の水の入れ替えが進まず、野鳥のふんによる富栄養化に拍車が掛かっている。
 管理する庄内赤川、西郷の両土地改良区では「農業用水としては問題が無い」とし、水質向上のための対策を積極的に行ってこなかった。市では池の水を抜き、汚泥をさらうなどの浄化策を改良区に薦めているが、水田での利用が終わると、10月には渡り鳥が飛来してくるため、水を抜くタイミングが無い。


ほとりあに年2万6千人

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下池とほとりあ(右手奥)

 鶴岡市では登録翌年から、自然学習のための庄内自然博物園として、周辺の高館山や都沢湿地も含めて整備してきた。拠点施設の自然学習交流館ほとりあには、庄内自然博物園構想推進協議会がコハクチョウの観察会や都沢湿地の外来生物の駆除・草刈りなど、趣向を変えて催しを頻繁に開いてきた結果、13年度は延べ2万8380人、その後は年間2万6千人以上が訪れた。
 来館者の内訳は、各催しの参加者と一般見学者に、総合学習や社会科見学で来た鶴岡、酒田両市や新潟県村上市の小学生など。  催しの外来生物の駆除などで捕まえたアメリカザリガニやウシガエルは、14年度から市内の飲食店に無償で納め、3店が料理を出している。
 ほとりあと都沢湿地の管理を手伝うサポーター登録者は、13年度の150人から80〜90人に減っている。


ジャム頓挫後、活用無く

 上池でハスやレンコンを収穫している浮草組合(田中富雄組合長、35人)があることから、登録直後には、出羽商工会大山支所がハスの花を使ったジャムを試作したが、浮草組合には収穫と処理作業をする余力が無く、商品化には至らなかった。
 浮草組合ではハスを生花店に出荷し、上池のほとりで直売もしている。組合員は高齢化し、今は役員4人で収穫している。
 今年初めて、推進協議会の「こどもラムサールワークショップ」で講師を務め、上池で子供たちにハスの収穫体験をさせた。田中組合長は「池を利用してきた伝統的な姿を残したい。盆花にするハスが売れなくなっている中、直売の宣伝やレンコン販売、体験ツアーの受け入れなどを考えていかなければ」と話した。
 一方、市が作った庄内自然博物園構想は都沢湿地を主体にした自然学習の推進を掲げたため、推進協議会では、登録地を含む一帯を保全・活用していくための議論を深めることができていない。上池・下池・高館山・都沢湿地は、それぞれ管理する団体が違うことも難しくしているようだ。推進協事務局の鶴岡市環境課では「どこが主導するのかを含めて、これまで積極的に議論ができなかった」と話す。


佐賀市は特産米に活用 栃木市はカードで来客増

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販売中の「シギの恩返し米」

 国内の登録湿地は今年10月、東京都の葛西海浜公園と宮城県南三陸町の志津川湾を加えて52カ所となった。登録地の自治体では、誘客や商品開発に生かしている。
 日本一のシギ・チドリ類の飛来地、佐賀市の東よか干潟では、市と農協などが「シギの恩返し米プロジェクト」を登録2年後の17年度から始めた。近くの水田で通常行われる麦の二毛作をやめ、冬に水を張って渡り鳥が休める場所を作った。生産する特別栽培米に下水道汚泥で作った肥料とIT技術を導入して、ブランド米化を目指している。
 市が庁内からアイデアを募って農協に働き掛け、県やIT企業を巻き込んで協議会を作り取り組んでいる。実証試験段階だが18年度は33アールで1700キロを収穫し、地元のイベントや佐賀空港などで販売している。来年1月には、有明海で採れる佐賀のりとセットにして売る。
 栃木県など4県の4市2町にまたがる渡良瀬遊水地では、ダムの写真と概要を紹介する「ダムカード」を参考に、登録湿地の情報や地元自治体の観光地を紹介した「ラムサールカード」を登録5周年の昨年7月に作成。4市2町にある関連施設や道の駅など計7カ所に、それぞれ異なるカードを置き、回遊を狙った。結果、栃木市の施設では来館者が前年比2割増となった。
 渡良瀬遊水地保全・利活用協議会では、会員の自治体や地元住民など46団体を①賢明な利活用②地域振興③遊水地保全・再生などの4検討部会に振り分け、各部会では年間テーマを2カ月に1度議論している。地域振興の検討部会では昨年、観光とエコ・ツーリズムの可能性を議論した。


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