郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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酒田駅前の再開発
建築工事は来年1月着手へ
入札結果を危惧する声も

 酒田市の旧ジャスコ酒田駅前店跡地と近隣街区に、図書館やホテル、分譲住宅などが入る計3棟の施設と公共広場を整備する酒田駅周辺整備事業の建築工事が、来年1月に始まる見通しになった。同月上旬に入札で業者を選定する。しかし発注するのは市と(株)西松建設(東京都)が共同出資で設立した特別目的会社・光の湊(株)(大野重美代表取締役社長)。落札業者は西松建設が本命視されており、過去に旧ジャスコ跡地の民間再開発に関与した関係者からは「落札価格は予定価格とほぼ同額になる可能性が高い」「結論ありきで競争原理が働かない」といった批判の声が聞かれる。(編集主幹・菅原宏之、佐藤萌)

完成は2022年3月を予定

 11月29日に開いた酒田市議会総務常任委員協議会で、高橋紀幸・市都市デザイン課長が報告した。酒田駅周辺整備事業は光の湊が施行者となって進めている。
 協議会での報告や本紙の取材に応じた高橋課長の説明によると、建築工事が始まる見通しとなったのは、実施設計の見直しなどを進めた結果、総事業費と公共施設購入費を光の湊が設定した目標額の範囲内に収めることが可能となったため。
 総事業費と公共施設購入費をめぐっては、基本・実施設計を請け負った(株)アール・アイ・エー東北支社(仙台市)が、実施設計の段階で建築費を積算した。しかし建築費を積算し直した光の湊は建設資材や労務費が高騰する可能性があり、アール社の積算額と実勢価格との間に隔たりが生じてしまうと判断。そのままの積算額で入札を行えば、不調に終わる場合があると見通したが、市は「光の湊が積算し直した建築費を、西松建設から知らされておらず、アール社をどの程度上回ったのかは分からない」(高橋課長)と明かした。
 こうした経緯を踏まえ、光の湊は総事業費の目標額を、当初の102億円から6億円増の108億円に設定。図書館機能を有するライブラリーセンター・観光情報センター・公共広場・立体駐車場・バス専用駐車場の5施設が対象の公共施設購入費の目標額は、同27億円から2億7千万円増の29億7千万円とした。
 この目標額の範囲内に総事業費と公共施設購入費を収めるため、光の湊とアール社、地権者の民間事業者の3者は実施設計などの見直しを進めた。そして①ホテル棟屋上に設けることにしていた機械設備を3階屋上へ移転し、ホテル棟外壁の高さを変更②3階のひさしとデッキの範囲を縮小③県道酒田停車場線側の大型ガラスを分割④公共施設の外壁の高さを変更―した。さらに再開発に伴う発生土を旧酒田商業高校グラウンドの盛土に使い、産業廃棄物の処理費用も削った。  その結果、総事業費と公共施設購入費が、光の湊で設定した目標額の範囲内に収まる見通しとなり、事業性が確保できると判断した。


西松建設も応札か

 これを踏まえ、市は公共施設購入費等として上限額29億7千万円の債務負担行為(複数年度にわたり支出を予定する事業)を、12月補正予算で設定する。
 市は12月上旬をめどに国と県に補助金の交付申請手続きを行う。並行して光の湊は建築工事の入札を公告し、1月上旬に入札を実施する。工事の契約は国と県の補助金交付決定後に結ぶが、時期は同月中を想定する。完成は22年3月の予定。
 法定再開発事業の場合、自社の提案が選ばれた建設会社は優位性があるため、入札では落札業者の本命と目されるのが一般的。酒田駅周辺整備事業の場合も「西松建設が応札するものと思っている。そうでなければ本末転倒」(高橋課長)との見方が根強い。
 こうした事情から光の湊では、西松建設が応札すると利益相反に当たる可能性があるため、入札業務全般を第三者に業務委託する。建築工事の予定価格は公表し、金額はアール社が実施設計段階で示した積算額に近いものになるという。
 高橋課長は同日、本紙の取材に「公共施設購入費29億7千万円に補助金を加えた市の最終負担額は、計40〜50億円になると試算している」と話した。


結論ありきに映ると批判

 かつて旧ジャスコ跡地の民間再開発に関与した60歳代の建設関連企業幹部は「競争入札は、予定価格からどれだけ安く応札できるのかを競うもの。しかし今回は落札価格が予定価格とほぼ同額になる可能性が高く、企業努力をした金額での応札は期待できない」と指摘する。
 70歳代の会社経営者も「発注者側の構成員と、落札を本命視される企業が同じなのは問題。光の湊は入札業務全般を第三者に業務委託するというが、結論ありきのアリバイづくりにしか映らない」と批判した。
 一方、市内にある建設会社の50歳代のある社員は「光の湊が積算し直した建築費を、市が西松建設側から知らされていないのであれば、光の湊が設定した目標額自体が、妥当なものだったのかどうかが問われる」と疑問を呈した。
 行政の仕組みに詳しい50歳代のある会社幹部は「西松建設を事業実施主体者に選んだ企画提案方式は、事業費が有って無いようなもの。市職員も市議会議員も人のお金だから、増額することにそれほど抵抗を感じないのではないか。今後、この方式で業者を決める場合は、事業全体の上限額を設けるべき」と提言した。


市民団体が市長に要望書

 酒田市民有志の「図書館を考える会」(渡部英男代表、20人)が11月28日、酒田駅前に整備する市立図書館を、指定管理者ではなく市直営にするように求める要望書と署名約1400筆を、丸山至市長に手渡した。
 市は4月に策定した整備実施計画に、指定管理者制度の導入を明記している。要望書では①新図書館は市直営にし、職員は市が直接雇う②新図書館について市民との懇談の場を今後も設けることなどを求めた。
 当日、考える会と意見交換した丸山市長は「今の市職員では、新図書館で利用者のさまざまな需要に応えていくことができない。専門知識がある指定管理者に運営してもらい、サービスを充実させたい」と話した。


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