郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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県議選
現職6人、新人4人が当選
酒田市・飽海郡区 鶴岡市区  投票率低迷、盛り上がり欠く

 統一地方選の前半戦となる山形県議会議員選挙は7日、投開票が行われ、庄内地域の3選挙区のうち選挙戦となった酒田市・飽海郡区と鶴岡市区で全10人の当選者が決まった。内訳は現職6人、新人4人。現新合わせて14人が立候補し、予断を許さない激しい選挙戦を繰り広げたが、低投票率が示すように有権者の関心は最後まで盛り上がりを欠いた。文中敬称略。(本紙取材班)

酒田市・飽海郡区 無所属・阿部がトップ当選

表
 酒田市・飽海郡区では現職3人と新人5人の計8人が5議席を争い、無所属と自民党の新人2人が初当選。自民党のベテラン2人と立憲民主党1人の現職3人が再選を果たした。
 トップ当選したのは唯一の女性候補となった無所属で新人の阿部ひとみ(58)。前々回(2011年4月)トップ当選の立憲民主党公認で現職の石黒覚(62)は2位で3選を果たし、自民党公認で新人の梶原宗明(61)が3位で初当選した。
 ともに自民党公認で現職の森田廣(69)は4位、星川純一(71)は5位でそれぞれ6選を果たしたが、苦戦を強いられた。
 無所属で新人の伊藤利明(59)は出遅れが響いてあと一歩及ばず、無所属で新人の市村浩一(59)と共産党公認で新人の吉田武(69)は、ともに支持を広げることができなかった。
 トップ当選の阿部と5位の星川との得票差は2783票。星川と次点の伊藤との得票差も1900票余りと、得票をみれば選挙戦のあった県内8選挙区中最激戦区となった戦いを裏付ける結果となった。
 しかし投票率は51・84%で、前々回の55・59%を3・75ポイント下回り、市町村合併に伴い合区となった07年4月の県議選以降の最低を更新。県内8選挙区中最低だった山形市区の49・25%に次ぐ県内2番目の低投票率になるなど、有権者の関心は最後まで盛り上がりを欠く結果となった。
 これについて今期で勇退する自民党現職の佐藤藤彌県議は本紙の取材に「低投票率の背景には、有権者の県議会議員、特に現職に対する物足りなさ、期待感の薄さがあったのではないのか、とみている。新人2人が上位当選した半面、組織票に支えられている1人を除き、現職が下位当選に沈んだことも考え合わせると、私を含め現職に厳しい審判が下ったものと受け止めている」との見解を示した。
 県内政界の情勢に詳しいある関係者も「一部有権者の間に世代交代を望む声があったが、そうした声は広がらなかった。こうしたことを含め投票率が低かったのは、地域への実績や貢献がほとんど見えてこないという、現職に対する有権者の不満があったのではないか」と指摘した。

市長が選挙運動車に

 今回の選挙では、丸山至酒田市長が公務を欠席し、梶原の選挙運動車で選挙の応援をしていたことが、各陣営関係者の間に波紋を広げた。
 問題となった公務は、5日午前10時からあった山形県立産業技術短期大学校庄内校の入学式。入学式には矢口明子副市長が出席し、丸山市長は同日午前8時から正午までの約半日間、梶原の選挙運動車に同乗して遊説に出向いていた。
 丸山市長は8日の定例記者会見で、県立産業技術短期大学校庄内校の入学式より梶原の応援を優先した理由を「梶原候補とは旧知の仲であり、私の同胞でもある。今回の大きな挑戦に政治家として応援したいという思いがあった。県立産業技術短期大学校庄内校の入学式を軽んじたということではないが、梶原候補との信頼関係を重視した対応を取らせてもらった」と説明。
 公務は自身がすべてこなす必要はないとの考えを示した上で「副市長も時間が空いていたので代わってもらった。このことが法律に違反していれば、そのそしりは甘んじ受けなければならないが、私も市長であり政治家。入学式を優先するべきだったのか、そうでなかったのかは、私の判断で対応しており、周りがどうとらえようと致し方ないという思いでいる」と話した。
 これに対し各陣営関係者や政党関係者の間からは「特定候補の選挙運動車に乗って選挙を応援するのは前代未聞。品性を欠いた行動と言わざるを得ない」「市長が個人演説会や街頭演説で特定候補を応援することはあるが、選挙運動車に乗っての応援はやり過ぎ」などといった批判の声が上がっている。
 今後の焦点は、県議選が今年7月に行われる参院選、さらには自民党現職の衆院議員加藤鮎子と、国政復帰を目指す元衆院議員で無所属の阿部寿一の立候補が見込まれる次期衆院選山形3区の戦いに、どのような影響を与えるのかに移る。
 このうち次期衆院選に向け複数の関係者の間からは「酒田市・飽海郡区では、加藤と阿部の差がここにきて縮まったようにみえる」との指摘が出ている。
 阿部は今回、阿部ひとみと伊藤の2人を支援した。阿部ひとみはトップ当選を果たしたものの、舟山康江参院議員とともに阿部が全面支援した伊藤が得票を伸ばせずに落選したからだ。
 前回衆院選(17年10月)で阿部は、地元の酒田市と遊佐町で計3万8131票を得票。2万3629票を得票した加藤に1万4502票の差をつけた。
 しかし阿部に近い関係者は「伊藤の伸び悩みが阿部の求心力の低下を象徴している。これが次期衆院選だけでなく、今夏の参院選に与える影響は大きいのではないか」との見方を示した。

各陣営の選挙戦

 阿部ひとみは告示後、個人演説会を16回開いた。地盤の新堀、広野地区以外に緑町や高砂などにも足を運んだ。酒田市では新堀、広野と後援会がある南遊佐、北平田での票を固めた。また、所属していた酒田市議会の会派「志友会」の支援で旧3町地区の票を取り込んだ。後援会では、遊佐町で得票数1位となったのは、佐藤藤彌県議の支援が大きかったと分析している。
 石黒は、酒田市議会の会派「市民の会」の市議を応援弁士に、地元の平田地区に、松山地区、八幡地区、遊佐町と市街地3カ所で計8回の個人演説会を開き、旧飽海郡から唯一の候補と訴えて集票した。結びつきの強い民間労組を中心に公共労組からも支援を受け、労組票を固めた。
 梶原は、序盤は苦戦したが、東平田地区を中心とする市議時代の後援会が一丸となって、電話かけやリーフレットの配布などで支持集めに奔走。建設業と農業の企業・団体、所属していた酒田市議会の会派「公成会」の市議の支援もあり、選挙対策本部が予想していた得票数より千票上積みして当選した。
 森田は、支援企業や団体などを軸に厚い組織を築き、組織戦を展開。告示後は個人演説会を計22カ所で開き、5期20年の実績を訴えた。地盤や支持層が重なる複数の新人の出馬による危機感から、組織を引き締め、地盤の旧市中心部でも票の取り込みに成功した。しかし当初目指していた上位当選はならなかった。
 星川は、新人に地元の川南地区から新堀の票を奪われ、前々回の選挙戦に比べて企業の支援も少ない中で、苦しい戦いを強いられた。5期務めた県議としての実績から個人票を積み重ね、最後の枠に滑り込んだ。蕨岡や藤崎などの遊佐町内をくまなく歩いて票を掘り起こす草の根作戦で、同町では前々回の2倍の票を得た。
 伊藤は、地元本楯地区の集落を中心に個人演説会を23カ所で開いた。舟山康江参院議員、阿部寿一元衆院議員、和嶋未希元衆院議員の支援を受けたが、出遅れも響き、及ばなかった。
 市村は、酒田青年会議所理事長や合併を挟んで酒田市議を連続4期務めた際の人脈を軸に、会員制交流サイト(SNS)を活用した草の根運動を展開。告示後は旧酒田市内で街頭演説を約30回行って無党派層の取り込みを目指したが、支持は広がらなかった。
 吉田は、党支持者以外の票を取り込めず、広がりを欠いた。加藤俊行酒田地区委員長は「立候補表明時期が1月下旬と出遅れたことや、消費税増税反対などの政策を全有権者に届けられなかったことが影響した。あとはやはり地力不足」と分析した。


鶴岡市区 自民新人落ち初の2議席

 現職3人に新人3人が挑んだ鶴岡市区(定数5)は、自民現職の佐藤聡(50)が前回に続くトップ当選、自民現職で議長の志田英紀(68)が現職最多の7選、いずれも無所属新人で連合山形の推薦を受けた髙橋淳(52)と今野美奈子(59)が初陣を飾り、最後の議席には共産現職の関徹(58)が滑り込んだ。自民新人の佐藤久樹(47)は引き離され涙をのんだ。今野は吉村美栄子県知事の与党会派・県政クラブ入りを希望。髙橋は未定。
 市町村合併で今の選挙区となった07年の県議選以降、自民が3議席を確保できなかったのは今回が初めて。告示前からその可能性は指摘されていたが、同党関係者や支持者には改めて衝撃が広がっている。7月の参院選への影響を心配する声が上がるほか、今回の党公認候補者選考の過程を疑問視する声もくすぶる。
 一方、共産を含む非自民系は3議席を獲得し、参院選での野党共闘に向け弾みを付ける格好になった。しかし非自民系の得票合計は自民の得票合計を4千票余り下回ったこともあり、「議席数の逆転に浮かれている場合ではない」と気の緩みを警戒する声もある。
 今回は、勇退する無所属(保守系)の阿部信矢(72)が佐藤久樹と髙橋の双方を、県政クラブ代表の阿部昇司(68)が髙橋を支援する姿勢を見せた。しかし、いずれも自身の後援会が積極的に動くことはなく、有権者にとっては分かりにくい選挙となった。また、結果的に2人を当選させた非自民系陣営も、候補者擁立や支援をめぐる内部の混乱が表面化し、今後の共闘に不安も残した。
 当日有権者数は前回比1796人減、投票者数は同3927人減、投票率は同2・73ポイント低下した。自民3候補の得票合計は3万513票で同3801票減、非自民系3候補の得票合計は2万6423票で同191票減。得票率は自民が53・59%、非自民が46・41%となり、その差は同5・46ポイント縮小したが、自民の優位は変わらない。
 鶴岡市の選挙では、17年の市長選を非自民系の皆川治現市長が得票約4万2千票(得票率57・59%)で制したが、衆院選では自民現職の加藤鮎子が約4万5千票(同63・71%)で圧勝。市議選でも公明党を含む保守系が計約4万5千票(同62・13%)を取った。

各陣営の選挙戦

 佐藤聡は前回同様、地元の西郷地区や血縁関係が多い櫛引地域を地盤に、企業や団体、政策や考え方が近い市議、公明党の支援も受けながら、市街地でも青年層や女性層など幅広く支持を広げた。投票率の低下もあって得票は前回より874票減らしたが、得票率は21・35%でほぼ同水準を維持した。
 志田は、告示日に地元を離れるなど県議会議長の公務をこなしながらの選挙戦。限られた時間の中、出身地の温海地域や市街地、商工業者など支持基盤をこまめに回って固めながら、旧東田川郡内にも足を運び票を掘り起こした。得票は前回を452票上回り、得票率も20・69%と2・10ポイント上げた。
 髙橋は、阿部昇司の勇退で空白域となる旧東田川郡を手堅くまとめ、阿部信矢の支持層や無党派層も取り込んだ。出馬表明が2月と出遅れたが、県平和センターや出羽商工会などの推薦、舟山康江参院議員、皆川治鶴岡市長、市議会の会派「市民クラブ」の応援も受け、知名度不足を挽回した。農村部を重点的に回り、農業票を取り込んだ。
 今野は、市議時代の支援者や女性の協力を受けながら草の根の運動を展開し、地盤とする市中心部や教員時代の知人が多い朝日、櫛引両地域を重点的に回った。唯一の女性候補であることを訴え、党派を問わず幅広い女性層から支持を集めた。特に政治への関心が低い若年女性の票の掘り起こしに努めた。
 関は、得票を前回より1305票減らしたが、党後援会と現職市議5人の後援会組織をフル回転させて支持層をまとめ、前回奪回した議席を死守した。党支持者の多い市中心部を重点的に回り、消費税増税反対などを訴えて無党派層への浸透を図ったが、党員の高齢化に伴う活動の低迷や地盤が重なる新人の切り崩しに遭い、苦戦した。
 佐藤久樹は阿部信矢県議の後継を自任し、農林水産業の活性化や内陸との格差解消を訴えたが、選挙への準備不足が最後まで響いた。加藤鮎子衆院議員がたびたび街頭演説に駆け付け、阿部も後半、個人演説会で支援を呼び掛けるなどしたが、阿部の支持層に十分に浸透しなかった。得票は前回の阿部票の3分の2にとどまった。


有権者の声

関心低くがっかり  ▶酒田市・男性・70歳代・会社経営=内陸と庄内との地域間格差を長年放置してきた現職には強い不満があり、世代交代を進める必要があるとの思いもあって、無所属新人の市村浩一に投票した。酒田市・飽海郡区は県内随一の激戦区となったが、投票率は選挙戦となった県内8選挙区中2番目に低く、政治に対する有権者の無関心ぶりにはがっかりした。当選した5人は、地元の声を県政に届けることに力を注ぎ、地元のために働いてほしい。そして庄内空港の開港を主導した前田巌、日本海病院(現日本海総合病院)の誘致に尽力した伊藤耕治郎の両元県議会議長のように、力のある県議になってほしい。

議員活動の実績が不明  ▶酒田市・男性・60歳代・会社役員=地元のために仕事をしてくれる県議が必要で、それが期待できると思い、保守系の無所属新人に投票した。酒田市・飽海郡区で当選した顔ぶれを見ると、現職3人にしても酒田市議を辞めて出馬した新人2人にしても、これまでの議員活動の中でどのような実績を残し、地域に貢献してきたのかが明確でない、という印象が拭えない。地域の発展に力を尽くしてほしいが、期待感はあまり無い。

久しぶりの女性議員に期待  ▶酒田市・女性・50歳代・自営業=県議選にはあまり興味が持てなかった。酒田飽海地区から女性議員がいなくなって大分経ったため、主婦や介護経験の女性目線で市民の声を届けてもらいたいと期待する。

陸海空インフラに活力を  ▶酒田市・女性・20歳代・会社員=梶原宗明に投票した。公約にある陸・海・空のインフラ整備に力を入れ、酒田飽海地区の交流人口、人口増加につなげてほしい。

いろんな人が暮らしやすく  ▶酒田市・女性・20歳代・会社員=阿部ひとみに投票した。子育て世代に介護者、働き盛り世代、老若男女さまざまな生活者にとって暮らしやすいまちになるよう、これからの活動に期待している。

現職は後継者を育てて  ▶鶴岡市・女性・60歳代・無職=新元号の発表と重なったためか、県議選が話題になることは少なく、特別な争点も無いためか最後まで盛り上がらない選挙だった。告示1カ月前まで無投票という空気が流れていたのも盛り上がらない原因になったと思う。議員のなり手不足は深刻な問題。現職は後継者をしっかりと育ててほしい。各候補者は選挙でだけ多弁となるのではなく、公約の実現はもちろん、庄内の大きな課題となっている少子高齢化対策やインフラ整備に、本腰を入れて取り組んでもらいたい。

内陸との格差に声上げて  ▶鶴岡市・女性・60歳代・会社役員=県議の仕事が見えず、誰がなっても同じという声が多い。インフラ、産業、教育などすべてで庄内は内陸より配分が少なく、格差がついている。人口割合で配分されているという考え方では、人口が減り過疎化が進む地方は無くなってしまう。こういう地域の暮らしも守っていけるようにもっと声を出していくべき。

女性目線で活躍してほしい  ▶鶴岡市・女性・20歳代・会社員=今野美奈子に投票した。家族の幸せを基盤として、女性目線で鶴岡のまちづくりのために動いてくれるという印象を受けた。障害を持つ人にも柔軟な対応をしてくれると感じた。


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