郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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荘内病院17年度決算

15年連続の赤字も幅は縮小
患者増、施設基準取得が要因

 鶴岡市立荘内病院(三科武院長、診療科25科、病床数521床)は、2017年度決算で当期純利益3億4千万円超の赤字を計上した。最終赤字は03年度から15年連続だが、赤字幅は16年度より縮小した。患者数が入院、外来ともに増加したことに加え、診療報酬加算を算定するための施設基準の取得に努めたことなどから、収益が増えたのが要因。同病院では20年度に単年度収支での黒字転換を目指しているが、医師をどう確保していくのかなど、解決するべき課題は多い。(編集主幹・菅原宏之)

最終赤字は3億4千万円超

 荘内病院がまとめた17年度の決算概要と患者動向などは下の表の通り。総収益は122億7300万円で、16年度比2・7%増。総費用は126億1900万円で、同0・2%増。総収益から総費用を差し引いた当期純利益は3億4600万円の赤字となった。
 しかし赤字幅は、6億4300万円の赤字だった16年度より2億9700万円46・2%縮小した。累積欠損金(赤字の合計額)は16年度比2・9%増の120億9900万円に上る。
 同病院では総務省の公立病院改革ガイドラインに基づき、09年に中長期運営計画(対象期間09〜13年度)、14年には3カ年運営計画(同14〜16年度)を策定し、自治体病院としての役割を担い続けていくために経営改善を進めてきた。
 引き続き17年3月には収益的収支計画で20年度に純利益を800万円の黒字にするとした事業収支計画などを盛り込んだ中期経営計画(同17〜20年度)を策定。現在はこの計画に基づいて、経営基盤の安定化と地域医療の充実に取り組んでいる。収益的収支計画では、17年度の純利益の年次目標を6億7800万円の赤字としていたが、同年度の純利益はその目標を3億3200万円上回った。
 事業収支計画は、地方公営企業会計制度の改正に伴い、14年度から適用された新会計基準で作成したもの。
 同基準では、過去分の退職給付引当金を複数年で経常費用に計上することが義務付けられたが、経営に与える影響が一時的に大きくなる場合は経過的に除くことができるとされており、同収支計画ではその分は除いている。しかし実際には新会計基準に基づき同年度から15年間、毎年度約2億4600万円を経常費用に計上している。

新築の巨額投資が重荷

 さらに20年度には国の診療報酬改定が予定されており、改定内容によっては事業収支計画に大きな影響を及ぼすことが想定されている。加えて今年10月には、消費税が10%に引き上げられる見通しとなっており、経費や材料費などで支出額が増える可能性が高まっている。病院事業では医業収益に消費税は掛からないことから、材料費などの消費税負担分を病院会計の中から持ち出して支出する必要があるためだ。
 また同病院が15年連続で最終赤字となっている要因の一つに、病院の新築移転に伴う巨額の投資が重荷になり、毎年度9〜13億円の減価償却費を計上していることもある。17年度は13億円で16年度に比べ1・1%増えている。
 こうした現状を踏まえ同病院総務課の担当者は4月30日、本紙の取材に「診療報酬改定や消費税増税が行われれば、医療機関を取り巻く経営環境は厳しさを増すと予想される。しかし中期経営計画で掲げた目標通り、20年度には単年度収支での黒字転換を実現したい」との考えを強調する。

外来の診療単価が増加

 荘内病院が最終赤字の赤字幅を縮小できた主な要因は、患者数が入院、外来とも増えたのに加え、診療報酬加算を算定するための施設基準の取得に努めたことなどから、収益が16年度より増えたこと。一方で経費節減などに努めたことで、医業損失が16年度より減少したことも、赤字幅の縮小につながった。
 総収益の内訳を見ると、本業の医業収益は106億7600万円と、16年度比2億8300万円2・7%増えた。このうち入院収益は76億7300万円で同1億9600万円2・6%増、外来収益は24億9400万円で同7200万円3・0%増となった。
 入院収益が増えたのは、入院患者1人1日当たりの診療単価が4万8307円と、16年度比212円0・4%減とほぼ横ばいで推移したものの、延べ入院患者数が冬場に風邪やインフルエンザなどが増加したことで15万8848人と、同4743人3・1%増えたことが要因。
 医療体制の充実を図ろうと認知症ケア加算1やハイケアユニット(高度な治療や看護を必要とする重篤な患者を受け入れ、集中的に治療するもの)入院医療管理科1などの施設基準を取得したことも、収益を押し上げた。
 外来収益の増加は、放射線治療装置の診療再開による影響から、延べ外来患者数が16万9280人と、16年度比1181人0・7%増えたことによる。外来患者1人1日当たりの診療単価が1万4732円と、同325円2・3%増えたことも要因の一つとなった。
 これに対し医業費用は119億8600万円と、16年度比5400万円0・5%増にとどまった。主な費用は、給与費が65億5800万円で同600万円0・1%増、材料費が22億9400万円で同2800万円1・2%増、経費が16億1700万円で同900万円0・6%増。医業収益に占める割合は給与費が61・4%(16年度63・0%)、材料費が21・5%(同21・8%)、経費が15・1%(同15・5%)。


医師の確保が最大の課題

 経営改善に向けた取り組みを加速させる荘内病院だが、経営基盤の安定化を図る観点から、医師の確保が最大の課題となっている。同病院の常勤医師数は18年4月現在、初期臨床研修医5人を含め計69人。17年同月の70人から1人減った。
 常勤医師の現状は「およそ新潟大学の医局出身者6・5対山形大学の医局出身者3・5程度」(土屋清光・同病院事務部長)の割合だが、派遣実績のある大学から医師を確保するのは難しい状況となっている。
 その背景にあるのが、診療に従事しようとする医師に医師免許取得後2年間の臨床研修を義務化したこと。
 従来は研修先の7割が大学病院だったといわれるが、研修先が拡大したことから、症例の多い大都市の一般病院を選ぶ医師が増加。このため大学病院の医局が医師不足となり、関連病院に派遣していた医師を引き揚げる事態が続いている。
 実際、荘内病院はこれまで新潟大学から呼吸器科と循環器科に各2人の常勤医師を派遣してもらっていたが、医師不足で派遣が休止されることが判明。このため同病院は18年7月と10月の2回、山形大学医学部や山形県内の医療機関などで構成し、医師の適正配置などを審議している「蔵王協議会」(会長=嘉山孝正・山形大学医学部参与)に常勤医師の派遣を要望した。
 これを受け山形大学医学部は、呼吸器科に今年4月から非常勤医師1人を週1回派遣しており、循環器科には20年4月から常勤医師を派遣する見通し。
 荘内病院では18年4月時点で、精神科、形成外科、心臓血管外科、眼科の4診療科に常勤医師が不在となっていた。このため山形大学や新潟大学、昭和大学などから週1〜2回出張医の形で応援してもらっているが、眼科には今年4月の1人に加え、7月に1人の計2人の常勤医師を東邦大学から派遣してもらう。
 医師の確保に向けては13年度に「医師修学資金貸与制度」を創設した。年額200万円を上限に卒業まで支給するもので、貸与期間の1・2倍、最低5年間、荘内病院に勤務すれば返済を免除する。
 これまで13年度3人、14年度4人、15、16、17、18年度に各1人の計11人に貸与し、現在2人が初期臨床研修医として勤務している。

繰入金の増額を市と協議

 市の一般会計からの繰入金を、適正な水準に増額することも課題となっている。
 市から荘内病院への17年度の繰入金は、救急医療などの運営分が8億700万円で16年度比5700万円7・6%増、建物と医療機器の元金償還分が8億3200万円で同2200万円2・6%減。両方を合わせた総額は16億3900万円となり、16年度の16億400万円より3500万円2・2%増えている。
 しかし繰入金のうち経常収益に対する運営分の割合は、17年度は6・6%と16年度から0・3ポイント上昇したものの、「全国の公立病院の16年度平均は11・8%」(土屋事務部長)なのが実情。こうした背景を踏まえ、繰入金をどの程度出してもらえるか、市と協議を進めている。
 土屋事務部長は「当面の目標は、入院患者1日1人当たりの診療単価を5万円台に乗せること。それには医師を確保して各診療科の手術件数を増やすことが必要で、新潟大学、山形大学には継続して医師派遣を要請していく。公立病院では繰入金の多寡が経営を左右する面もあり、適正な金額となるよう、市との話し合いを重ねていく」と話した。


表

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