郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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庄内みどり農協
土作りの取り組み急務に
18年産米は合併以来最低の収量

 庄内みどり農協管内では18年産米の収量が全体で50万俵(1俵60キロで約3万トン)と計画収量の62万俵を大きく下回り、1994年の同農協合併以来、最低の収量となった。特につや姫が大幅な減収となり、県内一律のつや姫栽培マニュアルを見直してほしいと訴える声も上がった。県は築き上げたつや姫のブランド価値を維持するため、安易なマニュアルの見直しはしない方針。同農協でも、マニュアルの範囲でできる見直しや工夫、土作りなどで対応しようと動き出した。(編集委員・戸屋桂)

つや姫は歩留まり例年の半分

 東北農政局の統計では、2018年産水稲(飼料用米除く)の庄内の収量は、農家が使用しているふるい目幅1・85ミリで選別すると、10アール当たり549キロで作況指数95の「やや不良」だった。ふるい目幅1・90ミリで選別すると同506キロだった。1・90ミリでの作況指数は出していないが、17年産水稲は同566キロ、16年産水稲は同589キロで、庄内全体でも18年産は1・85ミリとの差が大きく、例年に比べて米の粒が小さかった。
 特に庄内みどり農協管内では、管内のカントリーエレベーターに運び込まれた米を1・90ミリで自主検査した結果、主力品種(はえぬき、つや姫、ひとめぼれ)の収量は10アール当たり432キロで、東北農政局の統計より74キロも少なくなった。
 管内の水田は粘土質が多く、米のタンパク質含有量が高くなる傾向にある。登熟が不十分で粒が細い米だと食味に影響することがあるため、ふるい目幅1・90ミリにこだわってきた。このため、同農協の18年産米の計画収量は62万俵だったが、実際は50万俵に留まり12万俵も不足した。同農協合併以来の最低の収量となったことで、米卸業者や米販売店への対応に追われた。
 同農協管内の銘柄別作付面積では、はえぬきが60%、つや姫が20%、ひとめぼれなどその他が30%を占めるが、特につや姫の収量低下が著しく、ふるいに掛けた後の歩留まりは例年の半分しかなかった。
 つや姫は特別栽培米のため、施肥などの肥培管理等の対応には限界があった。同農協では「特別栽培米基準や栽培マニュアルでの防除基準は県内一律でも良いが、施肥量や種子量などは内陸と庄内で違ってもいいのではないか」と話す。
 県のつや姫栽培マニュアルでは10アール当たりの基準種子量は4キロだが、同農協では5キロにしてほしいと訴えてきた。現在、庄内は4・5キロまで認められているが、土壌や気候も違う内陸と庄内で全く同じマニュアルでいいのか、という疑問は消えていない。

施肥量や耕起の実験も

 マニュアルを見直してほしいという声に対し、県農林水産部県産米ブランド推進課では「マニュアルは大枠を決めているだけで、地域の実情に合わせて技術で対応できる部分がたくさんある。マニュアルがあるから動けないのは本当なのか、収量が上がらない原因は何か、さまざま分析して考える必要がある」と話す。
 そして「全県的に18年産つや姫が『前年より取れた、悪くない』という農家は、田に残った稲わらをしっかり腐らせている、天候を見ながら田植えの適期に植えている、といった基本的なことをしっかりやっている。農家がどのくらい田んぼの環境を整えることができるかが大事ではないか」と指摘している。
 庄内みどり農協と県庄内総合支庁産業経済部酒田農業技術普及課では、つや姫栽培マニュアルの中で取り組めることとして、19年は①施肥量をマニュアルの範囲で窒素量を見直す②種子量を10アール当たり4・5キロから5キロに増やす③稲わらを早く腐らせて田ワキ(わらなどの分解で発生するガス)を軽減する―などを管内の農家で試験的に実施する。さらに④稲の根の根域を広げるための深耕実証と、特別栽培米向けの緩効性肥料の肥効試験を、庄内水田農業試験場で行う。
 山形大学農学部の藤井弘志教授に「県内でも地力の高かった地域だが、田んぼの貯金を使い果たしてしまった」と指摘されたこともあり、基本に立ち返って土作りに取り組むこととし、19年産米の収穫後からの土作り対策を検討している。

土作り資材はピークの5%

グラフ
 土作りは農業の基本と言われるが、省力化、原価削減の中で置き去りにされてきた部分でもある。
 全農山形県本部のデータによると、土作り資材であるケイ酸資材の庄内での出荷量=表=は、1977年の約2万4千トンをピークに大幅な減少が続き、資材代の半分の国庫補助があった99〜2001年には約1万5千トンに増えたが、補助事業が無くなると再び激減。16年にはピーク時の5%以下の約千トンまで減っている
。  酒田農業技術普及課によると、つや姫をはじめとする酒田飽海地区の18年産米の収量減には①穂の元となる分げつが増える時期の日照不足による分げつの遅れ②出穂前の高温による養分蓄積の不足③登熟期間の台風や大雨など天候不順による登熟不足―などで米の粒が細ったことが影響した。しかし同普及課では、地力の高い土作りをすることで天候に左右されにくい稲作ができる、と指摘する。


土壌改善進め収量安定化  余目町農協の全米農家

 余目町農協管内の全米農家が会員の「JAあまるめブランド米振興会」(佐々木寿春会長)では、2014年からうるち米を作付する水田約980ヘクタールで土作りに取り組んでいる。県が目安とする土壌の酸性度をPH5・7に上げてアルカリ性に近づけることを目標に、刈り取り後の水田に酸度矯正を目的にした「てんろ石灰」(製鋼の際に出るスラグで石灰を主成分として作物の成育に必要な鉄やケイ酸などの微量要素を含む土壌改良剤)を散布してきた。5年を経てPH5・7に上がった水田もあり、昨年の天候不順でもつや姫の10アール当たり平均収量は470・5キロと、土作りの効果を実感するところまできた。
 同振興会が土作りに乗り出したのは、11〜13年の管内うるち米が同534キロと、昭和50年代の同600キロ以上から相当落ち込んだ上、年によって収量にばらつきが大きいことがきっかけとなった。12、13年に、つや姫の水田を中心に740カ所の土壌を分析したところ、管内の平均酸性度はPH5・2と目標のPH5・7を大きく下回り、酸性に傾いていることが分かった。
 そのため山形大学農学部の藤井弘志教授に助言をもらい、14年春に藤井教授と共に管内22集落を回り、土作りの重要性を理解して取り組むための「土づくり座談会」を開いて意見交換した。さらに管内のうるち米を作付する水田4千カ所すべての土壌を分析した。

費用助成し農機も貸与

 意見交換の結果、農家は土作りの重要性は理解しているものの、経費や散布の手間が掛かることが障壁となることが分かった。そのため余目町農協が、てんろ石灰の購入費の約半分を助成すること、散布は集落の生産組合を中心に行うこととし、散布する機械が無い集落には農協の散布機2台を貸し出すことにした。
 てんろ石灰は10アール当たり60キロ散布する。1袋20キロで約700円。農家にとっては1ヘクタールで2万1千円の経費増になるが、10アール当り10キロ増収することで補う。
 15〜18年に水田約500カ所を追跡調査し、土壌の酸性度を調べたところ、17年はPH5・40に上がった。18年分は解析中で、今秋もう一度全水田の土壌を分析して結果を検証する。同振興会に作った「土づくり委員会」が今後の方向をまとめる予定。
 同農協営農部では「土作りの効果は、庄内の他の農協管内よりも収量の振れ幅が少なくなったことにも現れた。米作りには土作りが必要。収量の安定、食味の良さ、産地としての差別化にもつながっている。農協ではこれからも土作りに取り組んでいきたい」と話した。


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