郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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ごみ焼却施設
東北電力への売電が困難に
鶴岡市の見通しの甘さに批判の声

 鶴岡市は、市が建設中のごみ焼却施設で計画する売電事業が、2021年4月の稼働と同時に行うことが難しくなっている、と5月31日に発表した。売電のために接続する東北電力(株)の送電線網に空き容量が無く、接続するには市が送電線網の増強工事費16億9880万円を支払う必要があるためで、市は県と環境省に支援を要望した。市は東北電力との交渉を続けているが、改善のめどは立っていない。市民からは見通しの甘さや説明不足を批判する声が出ている。(土田哲史)

対応後手で約17億円の負担金

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建設中のごみ焼却施設

 市が同市宝田3丁目で建設中のごみ焼却施設は出力3020キロワットの蒸気タービン発電機を備え、ごみの焼却排熱で発電する。発電した電力のうち、焼却施設で使う1025キロワットを除く1995キロワットを東北電力に売電する計画で、年間約1億8千万円、20年間で約36億円の収入を見込んでいた。建設工事費は127億9476万円。このうち約33億円は国の交付金を受ける。
 市の説明によると、ごみ焼却施設の売電を検討していることを、東北電力へ2017年1月に問い合わせたところ、送電線網に空き容量があり、工事負担金150万円、工期5カ月が必要、と同年4月に回答を得た。市は発電設備の詳細な設計が終わってから契約する方針だったため、この時点では契約しなかった。
 ところが、東北電力は庄内の送電線網の空き容量が無くなったことを同年5月に公表した。市は2回目の問い合わせを5月に行ったが、8月に、送電線網に空き容量は無く、送電線網の増強工事に負担金18億6070万円が必要、工期は11年かかる、との回答が来た。
 市は今後空き容量が生じることを期待し、当時の市廃棄物対策課長が榎本政規前市長に口頭で報告しただけで、市議会や市民には説明しなかった。
 発電設備の詳細な設計が固まった後の18年7月、東北電力に3回目の問い合わせを行ったが、同年11月に負担金16億9880万円、工期11年と示された。これを受けて市廃棄物対策課は同年12月、皆川治市長に報告。皆川市長が今年4、5月に東北電力と交渉したが、状況は変わらなかった。市は支援を求める要望書を県へ5月22日、環境省へ翌23日に提出した。市議会には24日に説明した。
 ごみ焼却施設が発電能力を持っていることが、国の交付金の受給条件であることから、市は売電の可否に関わらず、当初の計画通りに建設を進める方針。売電できなかった場合は年1億8千万円の減収となり、ごみを受け入れる三川町の処理費負担額に影響する可能性もある。
 仮に昨年11月に示された条件で売電するとしても、売電開始までは11年かかるため、20年間の売電契約のうち工期を終えた残り9年間で得ることができる収入は16億2千万円。このため工事負担金16億9880万円と売電収入の釣り合いが取れなくなる可能性がある。

当時の課長を厳重注意のみ

 市は市役所内の情報共有と市民や議会への説明に問題があったとして、17年8月時点での市廃棄物対策課長を、5月29日付けで厳重注意処分とした。当時の市民部長は退職しているため処分の対象にしない。
 ごみ焼却施設の建設を巡っては、過去にも市が三川町の同意を得ずに計画の変更申請を国に届けていたことが、16年3月に問題となり、職員を処分している。
 皆川市長は「再生可能エネルギーを推進する国のエネルギー政策にも関わる話。正直に言って接続できないことが分からない。国と東北電力は自治体を支援してほしい」と話した。


事業の見直し検討すべき

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 鶴岡市議会は6月定例会本会議を4日に開き、最大会派・新政クラブの本間信一市議と、第二会派・日本共産党鶴岡市議団の長谷川剛市議が、ごみ焼却施設の売電事業問題を総括質問で取り上げた。
 本間市議は「17年12月に落札者決定の報告が市議会にあったが、同年5月には送電線網の空き容量がゼロになっていることは分かっていた。12月に議会への報告が無かったのはなぜか」と問いただした。
 さらに「売電できないことによる減収の影響は甚大。事業の見直しも検討するべきではないか。前市長へは口頭で伝えたとのことだが、そういう事実は無いと聞いている。市長自らが担当課を呼んで進行状況を確認するべきだった。市長の手落ちではないか。重要事業は市長が担当課に聞き取りをするなど、目配りをしてほしい」などと指摘した。
 これに対し皆川市長は「前市長への口頭での報告はあったが具体的な対応はなされず、議会への報告も無かった。発電した電力は自家消費を予定しており、国の交付金の要件を確保するためにも計画通りに進めたい。空き容量の情報収集を行い、売電できるように取り組んでいく。(接続できるように見守る)甘い考えに至った経緯は、調査が必要。担当部署から市長へ報告するべきことであり、残念に思う」などと答えた。
 高橋健彦・市総務部長は「職員への聞き取りにより、前市長へ別件での相談の際に口頭で説明した、と聞いている。ただし内容の記録は残していない。説明した日時も分からない」と説明した。
 長谷川市議は「空き容量がゼロとなった時点で、計画の見直しはできなかったのか。電力は近隣の鶴岡浄化センター、コンポストセンター、鶴岡東工業団地などで活用できないか」などと質問した。
 皆川市長は「空き容量がゼロと分かった時点で入札を公告していたことから、整備の遅れにより市民サービスが低下する可能性などもあり、見直しは難しかった。本来は売電を確保してから進めるべきであった。余剰電力を活用できるように検討するが、売電できるように努力していく」などと話した。


市民の声
民間なら首が飛ぶ失態  文化会館と同じ構図に見える

 市民からは市の対応に批判の声が出ている。
 50歳代の会社経営男性は「行政は事業感覚を持ちにくいとはいえ、ビジネスセンスのある人が役所にいたのか疑問。送電線網の容量不足は2017年に問題が表面化しており、関係者であれば分かっていたはず。空き容量があった時点で手をつけていれば問題は無かった。ビジネスのイロハが分からないまま進めていたのではないか。空き容量が無いと分かってから推移を見守ることにしたのも、見通しが甘いと言わざるを得ない」と話した。
 そして「民間企業であれば首が飛びかねない失態。誰が責任を取るのか。ヒューマンエラーは起こらないと考えているなら問題がある。事業領域での危機対応マニュアルを整備し、問題があれば速やかに公表することを考えてほしい」と指摘する。
 70歳代の自営業男性は「都合の悪いことは隠して責任を逃れようとする、鶴岡の悪い体質。プライドばかり高くて市民の立場や目線が分かっていない。建設費を独断で増額した市文化会館と同じような構図に見える。市民への情報公開は速やかに行うようにしてもらいたい」と苦言を呈した。


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