郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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山形県沖地震[上]
鶴岡市沿岸部は円滑に津波避難
無線や家庭用受信機に課題も

 山形県沖を震源とするマグニチュード6・7の地震が6月18日午後10時22分に発生し、鶴岡市で震度6弱、酒田市で震度5弱を観測した。2分後に津波注意報が発表されたことから、鶴岡市沿岸部や酒田市で大勢の市民が避難した。東日本大震災以降、津波避難訓練を重ねてきたこともあり、素早い避難行動につながった面もあるが、さまざまな混乱もあり、改めて情報の周知や体制を整備する必要性も見えてきた。鶴岡市では家屋の損傷が大きく、観光に風評被害も出ている。(戸屋桂、土田哲史)

由良、独自の無線網生かす

 鶴岡市由良自治会(遠藤米太郎会長、334世帯1015人)では、同自治会が2013年9月に独自に導入した、多機能型地域無線連絡用システム「アイニード」を使って、住民が避難した。
 アイニードでは、由良コミュニティセンターや自治会長宅などに送受信可能な親機を計5台、ほぼ全戸に受信用子機を1台ずつ配備している。アイニードを使って避難場所同士で連絡を取り合い、特定の避難場所に車が集中しないように伝えて道路の渋滞を避けた。
 各避難場所では各自治会の担当者や非番の消防士らが自主的に車を誘導し、緊急車両が通る道を確保した。
 由良自治会では、一次避難場所に益美荘坂や海蔵寺など13カ所、二次避難所に旧由良小学校を指定している。地震発生直後には旧由良小学校に70人、益美荘坂に50人、鈴木由雄宅裏に40人、海蔵寺に40人の計200人が避難した。
 車で避難する人が多く、住民が近隣の高齢者に声を掛けて一緒に避難する場面もあった。自治会が把握する一人暮らし世帯は、社会福祉士30人が見回って安否を確認した。旧由良小学校では、校門前の登り坂に幅約1センチの亀裂が入り、トイレが壊れたが、それ以外の被害は無く、夜間で寒さを感じる高齢者に毛布を配るなどした。
 遠藤会長は「自主的に動いてくれる住民もいて円滑に避難ができた。地震が発生したら個々の判断ですぐに逃げることが大切。防災グッズを各家庭でもできるだけ備えるように呼び掛けていきたい。由良は観光地でもあるので避難場所を示す英語表記の案内看板が必要。秋までに設置できるようにしていきたい」と話す。

各戸の受信機が鳴らず

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小岩川地区の屋根が壊れた住宅(6月19日)

 鶴岡市鼠ケ関自治会(五十嵐伊都夫会長、415世帯1150人)では、一次避難場所に旧念珠関中学校グラウンドや県境広場など5カ所を、二次避難所に鼠ケ関小学校を指定している。地震発生時の避難人数は、車内で待機した人が相当数いたため正確に把握できていないが、住民の約半数は避難したとみている。鼠ケ関駅に逃げた人もいた。避難手段は車が多かったが、道路の陥没や橋の落下が無かったため、渋滞や大きな混乱は無かった。
 一方で防災行政無線は聞こえにくく、停電の影響で各戸の受信機は鳴らなかった。携帯電話もつながらなかったため、避難場所同士の連絡にも課題が残った。
 五十嵐会長は「通信手段と非常用照明の不備がはっきりした。避難場所同士で確実に連絡できる体制を確保することが必要。抜き打ちの避難訓練でもある程度動けるような体制にならなければ、いざという時に機能しない。避難所には毛布や水などの備蓄があるが、着の身着のままで避難する人が多く、備蓄を増やすことも考えなければならない。各世帯でもある程度備蓄できるように購入を促していきたい」と話した。

防災無線の中継器が停止

 鼠ケ関自治会で指摘されたように、防災行政無線を受信するため、鶴岡市が海岸地域の各戸に設置した受信機が機能しなかった。各公民館などに置いた、各戸の受信機に電波を送る中継器が、地震による停電で動かなかったことが原因。非常用電源は無かった。市によると温海全域で中継器が動かなかった可能性がある。
 一方、街頭の防災行政無線のスピーカー音が、県境に近い鼠ケ関など一部の地域では、新潟県村上市側のスピーカー音と重なって、聞きにくくなっていた
。  市は対応策として▶中継器に非常電源を設ける▶老朽化した中継器を更新する▶FMラジオの活用を検討する意向で、専門機関に近く調査を依頼する。


鶴岡市、復旧に2・5億円予算化

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鶴岡市長と県知事が被災地を視察

 鶴岡市は震災関連の補正予算計2億4563万円を組み、6月28日の市議会臨時会で可決した。内訳は▷被災住宅の復旧緊急支援1億2225万円▽温海温泉の緊急支援9950万円▽被災ブロック塀の撤去と木製化1260万円▽中小企業の災害対策利子補給1128万円。
 これを受け市は被災住宅の修復補助や、被災した中小企業への金融支援などを行っている。具体的には(1)鶴岡市瓦屋根修繕緊急支援事業=り災証明書で被害が認められた住宅の瓦屋根修繕に工事費用の20%以内、上限40万円まで補助(2)被災ブロック塀撤去・木製化推進事業=費用の50%以内、上限40万円まで補助(3)被災事業者に対する県・市が協調した特別融資制度=中小企業や小規模事業者の復旧に必要な設備資金や運転資金の融資に、年1・6%の利率が無利子になる利子補給を行う。限度額は8千万円で期間は10年間。
 (3)の事業者向け説明会と相談会を、出羽商工会の温海支所で17日午前10時から、同商工会本所で同日午後2時から、鶴岡商工会議所で同日午後6時から開く。参加する際は市商工課に16日まで申し込む。
 酒田市では、松原コミュニティ防災センターの貯水槽周辺の液状化や、液状化による防火水槽7件の破損など、市の施設・設備の修繕費として約1200万円を2日に専決処分した。国指定史跡「旧鐙屋」の柱や梁にひびが入ったため、もともと20年度に予定していた大規模修繕の見直しを、国や県と協議する。


鶴岡市の被害は18億5千万円
家屋被害は759棟に及ぶ

 7月8日現在の庄内の被害状況は、県災害対策本部によると、人的被害は、鶴岡市で重軽傷者18人、酒田市で重軽傷者4人、三川町、遊佐町で軽傷者各1人の計24人。高速道路と国・県道は、一部の道路で路面沈下などの被害があったが、全て復旧した。鶴岡市道は湯之里越路線、越路3号線、越路天魄線で通行止めが続いている。
 鶴岡市災害対策本部によると、地震による概算被害額は▷家屋被害など約5億8540万円▷道路や上下水道など土木が約5億2737万円▷農地や漁港など農林水産が約4億7285万円▷日本酒蔵や温泉旅館のキャンセルなど約1億1407万円▷小中学校施設など約9854万円▽社会福祉施設や子育て施設など約3144万円▷その他約1700万円の計約18億4668万円。民間企業や個人財産の被害は集約できていないため、被害額はさらに膨らむことが予想される。
 家屋被害は、住家被害認定調査によると旧温海町の大岩川、小岩川、鍋倉地区で一部損壊195棟、半壊10棟を確認した。各町内会などからの被害報告では、旧温海町で屋根損傷215棟、屋根以外の家屋損傷55棟、鶴岡市豊浦学区で屋根損傷110棟、屋根以外の家屋損傷87棟、それ以外の地域で屋根損傷38棟、屋根以外の家屋損傷49棟を確認した。家屋被害は累計759棟に及んでいる。
 住宅の被害を証明する「り災証明書」は7月5日現在、市温海庁舎で177件、市役所で70件、その他で1件の計248件を受け付けた。

温泉宿キャンセル多数

 鶴岡市内各温泉地の旅館では宿泊キャンセルが相次いだ。市のまとめによると温海、湯野浜、湯田川、由良の4温泉地で、7月5日までに約9600件のキャンセルが発生した。震源に近い温海のキャンセルが約7割を占めている。
 あつみ観光協会(若松邦彦会長)によると、温海温泉のある旅館では、6月は地震による休業で約1千万円の損害が発生し、7月は予約の50%、8月は同10%がキャンセルされたという。
 若松会長は「6〜8月は観光のハイシーズンなのでキャンセルは痛手。温海温泉では全ての旅館が営業を再開している。市が宿泊代として3千円の補助を始めてから、少しずつ観光客は戻ってきているので、これからに期待している。早く平年並みに戻ってもらいたい」と話した。

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