郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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酒田市長選
丸山至氏が再選果たす
4,637票差で阿部氏制す

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当選を祝う花束をもらう丸山氏

表1
表2
 任期満了に伴う酒田市長選は1日に投開票され、現職の丸山至氏(65)=自民党県連、公明党県本部推薦=が、元市長で衆議院議員を1期務めた阿部寿一氏(60)=国民民主党県連推薦、社民党県連支持、共産党県委員会自主的支援=を破り、再選を果たした。1期目の実績と政権与党との太いパイプを前面に打ち出して市政継続を訴えた丸山氏が、現職批判を展開して市政刷新を唱えた阿部氏を振り切った。酒田市議会議員補欠選挙(欠員2)は、新人の阿部秀徳氏(57)と前職の齋藤直氏(56)が当選した。(本紙取材班)

政策論争無く批判合戦に

 丸山氏が推し進める現市政の継続を選ぶのか、それとも阿部氏に再び市政運営を託すのか。現職と元職による一騎打ちとなった酒田市長選は、この点が最大の焦点となった。また阿部氏が立候補を決意した理由に、一部に偏った丸山氏の政治姿勢や急速に進む市財政の悪化、優先する事業の順位に対する不信感などを挙げていたことから、こうした点を市民がどう判断するのかにも注目が集まった。
 丸山氏は2万7246票(得票率54・1%)を獲得し、阿部氏の2万2609票(同44・9%)に4637票の差をつけた。結果を見れば、市民は丸山氏の市政運営を一定程度評価し、今後4年間の市政のかじ取りを引き続き託した格好。
 しかし丸山氏の得票数は前回選(2015年9月)で獲得した2万8843票を1597票下回り、得票率も前回選の54・74%から0・09ポイント低下するなど、今回の勝利が決して盤石なものではなかったことが浮き彫りとなっている。
 一方の阿部氏は、国政転出前の09年11月の市長選で獲得した3万3912票から1万1303票も減らした。さらに7月の参議院議員選挙で自身が支援した芳賀道也氏が同市で獲得した2万5762票にも3153票届かないなど、「市内での求心力が思いのほか低下している」(阿部選対の関係者)印象は否めなかった。
 投票率は57・64%で前回選(15年9月)の59・57%を1・93ポイント下回り、05年11月の市町村合併以降で過去最低となった。
 市長選に対する市民の関心が低かった要因に、両陣営の関係者は▶「阿部氏は市長を任期途中で投げ出して衆議院議員となり、2度の落選を経て国政復帰が難しいから就活として市長に戻ろうとしている」「丸山氏は市民の意見を聞かず、応援してくれる一部の人の声や自分の思いつきでやりたい放題の市政運営を行っている」などと双方が激しい批判を繰り広げたため、それにしらけた市民がいた▶多くの市民が望んでいた政策論争の場面がほとんどなく、互いの政策を戦わせるような市長選にならなかった▶政治離れの傾向が強まる中、市長選に対する市民の関心がいまひとつ盛り上がりを欠いた▶投票日の天候が午前中を中心に不順だった―ことなどを挙げる。
 しかし一部市民の間には「阿部氏と丸山氏以外の市長」を望む声や、大沼昭氏、阿部氏、本間正巳氏、丸山氏と行政機関出身の市長が4代続いたことから、「行政経験者ではない市長」を望む声が根強くあった。市民の間にくすぶる、こうした意向も投票率低下の一因になったのではないか、とみる向きもある。


課題山積、批判聞く姿勢を

 市民から市政のかじ取りを負託された丸山氏だが、2期目の4年間に待ち構える課題は数多い。
 真っ先に取り組まなければならないのは、あらゆる施策を動員して人口減少に歯止めをかけていくことだ。
 酒田市の今年7月末現在の人口は10万1769人。市の人口は年間1200人前後ずつ減っていることから、任期中に10万人の大台を割り込むのは確実な情勢となっている。酒田市に対する国や県の見方は「10万都市で無くなれば変わってくる可能性がある」(保守系ベテラン市議)ことも覚悟しなければならない。
 選挙戦で丸山氏は、子育て世代の負担軽減と屋内型大型児童遊戯施設の具体化に向けた検討、酒田型小中一貫教育体制の構築などを訴えた。本紙が独自に行ったアンケートでも最優先で取り組む政策として「県内トップレベルの幼児教育・保育の経済負担軽減策を実現し勤労世代の支援を強化する」と回答した。
 公約に掲げた以上、その実現を目指すことは当然だが、多くの市民が第一に望んでいることが果たしてこれなのかどうか。公約に取り組んでいく優先順位については、改めて検証してみる必要がありはしないか。
 丸山氏はまた、本紙のアンケートに「庄内の鉄道高速化では、山形新幹線の庄内延伸を優先して整備した方がよい」と答えた。しかし県はフル規格による羽越、奥羽両新幹線整備に注力しているのが実情。一度は発言を大きく後退させた丸山氏が、山形新幹線庄内延伸の実現に向け、どのような具体的施策を打ち出すのか注目が集まる。
 市内の各界各層を二分して激しく争った今度の市長選。批判勢力の声にも耳を傾け、一部に偏ることなく、市内勢力の一体化をどう実現していくのか。2期目の丸山氏の手腕が試される。


1期目の実績を市民が評価

 1日は丸山氏の支援者ら約80人が、酒田市松原南の選挙事務所で開票状況を見守った。午後10時40分過ぎに当選が確実になると、支援者からは拍手と歓声が沸き起こり、丸山氏は笑顔で1人1人と握手を交わした。
 再選を果たした丸山氏は「1期目の4年間に実績を出そうと、皆さんの力を借りて頑張ってきたが、それを市民の皆さんが評価してくれたことが勝因。次の4年間にやりたいことも伝えたが、それもしっかりと受け止めてもらい、大変うれしい。真面目に真摯に市政に取り組んできたが、それを評価してくれたことに感謝したい」と喜びを語った。
 2期目に向けては、まちづくりの信条に「人財と風土が支える産業・交流都市酒田」を掲げていることを挙げ「この信条にのっとり粛々とさまざまな施策を打っていく。特に子育て環境はしっかりと整えていきたい。次の世代を担う人たちの人材育成にも力を入れ、市政の中で子供たちや若い人、働き盛りの人たちの育成につながるような多彩な仕掛けに取り組んでいきたい」と抱負を述べた。
 阿部氏が獲得した2万2千票余りについては「これまで進めてきたことに対する批判票なのかどうかは分析してみないと分からないし、(阿部氏が)批判していることで『その通り』と思うことは微塵もない。分かりやすい行政を心掛けてきたつもりだが、分かってもらえない人たちがそれくらいいるのだと受け止めている。もっと分かりやすく、丁寧に伝える努力を重視していきたい」と話した。
 高橋幸雄・選対本部長は勝因を「丸山氏の1期目に対する評価は大半の人が合格点と判断しており、市民の中に合格点の人を落とすわけにはいかないという空気が強くあった。告示前には38億円の財源不足など誤解されるような問題も出たが、それに対する説明を文書で丁寧に行い、ある程度の理解を得たことも大きかった。この4年間で将来に向けた多くの芽がつくられたので、その成果を数字で示せるように頑張っていきたい」と総括した。
 自民党県連と公明党県本部の推薦に加え、衆議院県3区選出で自民党の加藤鮎子衆議院議員、酒田市・飽海郡区選出で同党の県議3人、市議会では自民党系と公明党議員の会派「公政会」(9人)の全員と労組系の「市民の会」(6人)の一部から支援を受け、終始先行する形で戦いを進めた。
 選挙戦では、鳥海山・飛島ジオパークの日本ジオパーク認定や北前船寄港地として日本遺産への認定、格安航空会社の庄内空港―成田国際空港便の開設など、4年間の実績と国との太いパイプを強調。個人演説会や街頭演説などで2期目に向けた政策中心の訴えを展開して支持を集め、終盤に激しく追い上げてきた阿部氏を突き放した。

非自民、足並みそろわず

 阿部氏の支援者ら約70人は、同市富士見町1丁目の選挙事務所で開票を見守った。午後10時40分の開票結果が伝わると落胆の声が上がった。阿部氏は支援者の前に立ち「短い時間だったが、皆さんからは自分が候補者のように一生懸命頑張ってもらった。無投票は避けるべきという思いから選挙戦に突入し、市民にも問題提起ができたと思う。結果は結果として受け止める。必死で頑張ってくれたことに感謝し、力不足をお詫びしたい」とあいさつすると、「ご苦労様」とねぎらいの言葉と拍手が送られた。
 阿部氏が出馬を決断した大きな理由に①一部の人の意見で市政が決まっている②財政が悪化する中での市民の血税の使い方が適正でない―などがあった。この点に関して阿部氏は「最初はなぜ市長選に出るのかと言われたが、徐々に理解してもらったと思う。市政の課題を市民の皆さんにしっかり訴えることはできた。選挙が無かったら市政の課題が伝わらなかった」と話し、無投票にならなかったことの意義を強調した。
 今後には「市長選に全力で取り組んできたので、今後のことは白紙、全く考えていない」と説明した。
 本多茂・選対本部長は会場の支援者に何度も謝り、阿部氏にも「酒田を思う気持ちで出馬してもらったが、本当にすみません。残念でならない」と声を落とした。
 中村護・阿部寿一後援会長は敗因を「市民の関心が深まらなかったということなのか。阿部氏の立候補の理由がまだ理解されていなかったのか。政治への無関心が増えているのかもしれない」と分析した。田中廣・市議会議長は「市周辺部は固まりつつあった。市街地で負けていたのかもしれないが分析をしてみないと分からない」と話した。
 国民民主党県連の推薦、連合山形と社民党県連の支持、共産党県委員会の自主的支援を得たほか、舟山康江、芳賀道也両参議院議員、舟山参議院議員の酒田飽海地区後援会、連合山形酒田飽海地協、酒田市・飽海郡区選出の阿部ひとみ県議、佐藤藤彌前県議、市議会では阿部氏に近い会派「志友会」(9人)全員と「市民の会」の一部、共産党酒田市議会議員団(2人)の自主的支援を受けた。
 選挙戦では旧3町地区や農村部を中心に個人演説会を開いた。一党一派に偏らず市民・地域の声に耳を傾ける市政の実現、市財政の健全化、若者の地元定着率の向上、催事より市民生活を優先する市政への転換、安心して暮らし続けられる地域の実現などを訴えた。
 当初は7月の参議院議員選挙で芳賀氏を勝利に導いた野党共闘の再現を目指したが、立憲民社党県連は自主投票、市民の会も割れるなど、最後まで非自民勢力の足並みがそろわず、追い上げたものの届かなかった。


対応割れた市議会が焦点

 丸山氏が再選を果たしたことで、今後の焦点は市長選で対応が割れた各団体・組織の動向に移る。
 とりわけ市民の間で関心が高まっているのが、市議会各会派の今後の対応。本間前市長の死去に伴い丸山氏と元衆議院議員の和嶋未希氏が争った15年9月の前回選で、志友会は丸山氏を支えたが、今回は阿部氏を全面的に支援したからだ。
 背景には、本間市政の継承を期待して応援したが、「当選した途端、自民党と公明党だけを見て市民全体を見なくなった。志友会には排除するような対応を取った」(志友会の本多茂会長)ことがあるという。
 市民からは「審判は下ったのだから、志友会と市民の会の一部市議は丸山氏との関係修復に努め、酒田市のために協力するべき」と指摘する声が聞かれる。
 その一方で「これまでオール与党化していた市議会が大きく変わる好機。志友会と市民の会の一部市議たちは、丸山市政を監視監督するという、議会本来の役割を果たすべき」などと提言する声も聞かれる。
 志友会では今のところ、今後の対応について明確な方向性は示していないが、市民の会の一部市議からは同会の分裂に言及する意見も出ている。
 また阿部氏が市長選に出馬したことから、「次期衆議院議員選挙県3区で、自民党現職の加藤鮎子氏への有力な対立候補になり得る人材を失った」(阿部選対の関係者)非自民勢力が、新たな候補者を擁立できるのかどうかなど、酒田市長選の余波は今後の国政選挙や次期県知事選にも影響を与えそうだ。


思惑見通す、期待は相半ば  市民は市長選をどう見たか

▶50歳代・男性・会社経営
 阿部氏は参院選勝利の勢いに乗ろうとしたのかもしれないが、市政・国政で何もしてこなかった。市職員から聞くと阿部氏が市長だった時代は良かったという話はあまり聞かない。丸山氏は元市職員ということがあり、役所をうまく味方につけたのではないか。結果は現職の再選となったが、丸山氏の4年間の実績を全面的に認めたわけではない。丸山氏は市民の声を拾おうという姿勢が足りない。ワークショップなどを開いているが、最初から結論ありきのようで市民の声が反映されていないように見える。市内には酒田市の活性化のために頑張っている人たちがたくさんいる。自分を応援してくれる自民党寄りの人たちの意見ばかり拾うのではなく市井で頑張っている人たちの声を広く拾い集めて支援・応援する市長になってもらいたい。
▶60歳代・男性・自営業
 今回の市長選は企業や業界への締め付けが厳しかったと聞いている。いまだに昭和の選挙をやっているという印象だった。4千票以上の差が付いたが、阿部氏は当選したら何をするのかが具体的でなく、やりたいことが伝えきれていなかったのではないか。「どうせ若い人の意見など反映されない」と投票しなかった若者もいて残念だった。当選した人も落ちた人も、政治家は選挙の時だけでなく、普段から地域に入り込んで住民の声を聴き、くみ取ってほしい。自治会は機能不全を起こしそうなところが少なくない。市長には育児支援だけでなく、地域の課題にもっと目を向けてほしい。
▶20歳代・女性・会社員
 丸山氏に投票した。市民主導のイベントを応援してくれるなど、市民活動に協力的な印象があるため、丸山氏が良いと思った。
▶60歳代・男性・会社役員
 丸山氏は特定の人たちとの関係が強過ぎると映るので、阿部氏に投票した。一部報道で丸山氏が「首長は大統領と実感した」と発言していたのを見て、強い違和感を持ったこともある。2期目に対する期待感は正直無いが、市の財政状況がどうなっているのかについてだけは、真実を分かりやすく説明してほしい。市長選では市議会が割れたが、これを契機に市議会はオール与党体制から脱却し、主張するべきことは主張する議会になってほしい。そして市政を監視監督するという、議会本来の役割を果たすようになってほしい。
▶20歳代・女性・会社員
 どちらに入れたらよいか分からなかったので、知人が支持していた阿部氏に入れた。結局誰に入れても大きく変わらないだろうと思っており、期待感は無い。 ▶60代・男性・営業
 阿部氏に投票した。退路を断って市長選に立候補した覚悟に期待していた。今の酒田は活気が無く、いろんな面で鶴岡市に負けている。2期目の丸山市長は、本人が言っていた通り、1期目に準備していたものを2期目で花を開かせてほしい。人口減少が大きな課題なので、子育て環境の整備に力を入れてほしい。
▶70歳代・男性・会社役員
 投票率が低かったのは従来からの両者の対立に市民が飽き飽きし、もうやめてもらいたいといううんざり感の表れ。阿部氏は市長を辞めて国政に出た時も、当初は保守系だったのに希望の党にすがるなど、その時その時の動きで問題がある。阿部氏にはこうしたいという政策も無かった。丸山氏は自分が頑張っていろいろ良くなったと実績を挙げたが、そんな実感は市民には無い。市民は、どっちが市長になっても自分の生活は変わらないと感じている。


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