郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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庄内浜の水産物
加工品や養殖で成果徐々に
進む付加価値高める取り組み

 庄内浜の水産物の加工品開発や陸上養殖で、付加価値を高めたり新たな特産品を作ったりする取り組みが進んでいる。県が昨年10月に開設した水産品加工施設では試作品1件を商品化につなげた。サクラマスの陸上養殖では世界初の認証取得に向けて準備が進み、一口アワビの陸上養殖も来年に一般販売を予定する。(戸屋桂、土田哲史)

低価値イカで干しイカ開発  100個をほぼ完売

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ラボを使って開発した

 県水産試験場が鶴岡市加茂の同試験場に18年10月に開設した「おいしい魚加工支援ラボ」では、今年9月末までの1年間に加工品の試作で9団体49人が利用し、7件を試作。このうち、同市の鼠ケ関水産加工生産組合(飯塚厚司組合長)はスルメイカの加工食品「こいかちゃん」を商品化につなげた。
 こいかちゃんは、10〜15センチほどの小ぶりなスルメイカを醤油などで味付けして乾燥させたもので、干しスルメとも一夜干しとも異なるほどよい歯ごたえが特徴。1袋(3〜4匹入り)約100個を9月から道の駅あつみしゃりんなどで売り、ほぼ完売した。同組合では来年はさらに製造量を増やしたい考え。
 原料のイカは夏の底引き網漁で捕れるが、浜値で1箱(4キロ程度)千〜4千円。より商品価値を高めるために加工食品の開発を考えた。5箱分のイカから税抜き350円の商品を約100個作ってほぼ完売したため、単純計算では2万円以下のイカが3万5千円で売れたことになる。
 飯塚組合長は「思ったよりも評判は良く、売れる手応えはある。漁師だけで商品開発を行うのは大変だが、ラボでは研究はもちろん、ちょっとしたことでも相談できるのが便利」と話す。
 同ラボはオーブンや冷凍庫、乾燥機などを備えた調理試作室、鮮度やアミノ酸量などを測る分析室、研修室があり、県民はだれでも利用可能。県内で漁獲された水産物を材料に加工する場合は無料で使える。


遊佐町一口アワビ陸上養殖  来年度の販売目指す

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52,000個を養殖中

 遊佐町で、新たな特産品を開発しようと15年度から始めた一口アワビの陸上養殖は現在、5万2千個を養殖中で、20年度には一般販売を目指している。
 15年度に同町漁村センターの物置に0・5トン水槽4基を置き、稚貝500個を養殖するところから始めた。16年度は1・1トン水槽12基を追加し、1万個に増やした。19年度は屋外に1・4トン水槽24基を増やし、大小合わせて水槽は屋内24基、屋外24基の48基に拡大した。町職員1人が業務に当たっている。
 一口アワビの陸上養殖に対する町の支出は人件費を除き15〜18年度に約4550万円。19年度は約2800万円を予算化した。
 種苗が悪いと成長も悪いことが分かり、当初は県産の稚貝を使っていたが、18年度から価格が3倍する岩手県産の稚貝に切り替えた。三陸などでは7センチに成長するまで2年かかるが、遊佐町の陸上養殖では鳥海山の湧水を含む漁村センター近くの海水を取水して使っているためか、1年半で7センチに成長した。
 遊佐町では特産のイワガキのシーズンが6〜8月の3カ月間しかないため、その前後にもう一つ特産が欲しいと考えていた。同町産業課では「1個350〜400円で販売できれば。町内の宿泊施設や飲食店に、試食会をしながらPRして一口アワビを使ってもらいたい」と話した。


サクラマスの陸上養殖試験  育種研究施設も新設中

 マルハニチロ(株)(本社・東京都江東区豊洲)と県農林水産部など産学官7機関が、遊佐町吹浦の同町漁村センター敷地内で進めている、サクラマスの陸上養殖試験は現在、4回目の魚を養殖試験中。体重平均2キロに育てて20年5月に水揚げし、海外レストランなどで品質評価を受ける予定。また、ASC(水産養殖管理協議会)の認証取得に向けて準備中で、認められればサケ・マスの陸上養殖では世界初の認証取得となる。
 陸上養殖施設は面積450平方メートルの二重シートを使ったテントハウスで、直径2・5メートルの円形水槽(容量5トン)2基と、小型水槽数基を設置している。さらに同施設の海側に、サクラマスの育種研究施設とする、同規模のテントハウスを19年度中に開設する見通し。
 4回目の養殖試験中の魚は、同施設で育てたサクラマスから18年10月に採卵し、幼魚に育てたもので、19年6月に800匹を水槽2基に入れた。11月中旬に大きさで選別し、水槽2基で230匹を養殖中。放流用に育てた幼魚と違い、人からエサを与えられることに慣れているため、エサの食いつきが良く、11月時点で3回目の魚より体重が2倍と順調に成育している。
 この陸上養殖試験は、農研機構生研支援センター「知」の集積と活用の場による研究開発モデル事業で、期間は16〜20年度の5年間。①水質管理の自動化などによる効率の良い陸上養殖の実証②低コストで高品質化を図る新規飼料の開発③排水を出さないゼロエミッション型陸上養殖の実証―などは概ね実現したが、コストが課題となっている。
 このため、外海水温が飼育水温に近くなる時期はゼロエミッション型にこだわらず、一部換水を行う半循環式の試験を行っている。周年安定した水温が期待できる海水井戸を掘る調査も実施予定。自然エネルギーの活用なども検討している。
 また、モデル事業が終わる21年3月以降の事業化を目指して、マルハニチロと遊佐町などが協議している。
 マルハニチロ(株)中央研究所リサーチ二課の吉武政広課長役は「サクラマスだけにこだわらず、ニジマスなどのトラウト類と組み合わせた事業化なども可能性はある。サーモン類は中国の需要が伸び、国際競争が激しくなっている。価格も上がると予想でき、国内の生産量を増やした方がいい」と話している。


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