郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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鶴岡市
地域の医療環境厳しさ増す
危機感持つ有志が研究会発足

 鶴岡市の医療環境に危機感を持つ有志13人が「鶴岡の医療を守る市民研究会」(代表・鎌田剛東北公益文科大学准教授)を設立し、全市民対象の第1回講座を29日午後6時半から、同市第三学区コミュニティセンターで開く。同市では人口減少や医師不足などを背景に、病院の診療所化と開業医の閉院が相次ぎ、地域の医療体制をどう再構築していくのかが喫緊の課題となっている。研究会では今後、地域医療の崩壊を防ぐための解決策などを考えていく方針で、予定している参加者全員による意見交換の行方に関心が集まっている。(編集主幹・菅原宏之)

第1回講座を29日に開催

 講座は「瀬戸際に立つ鶴岡地区 地域医療体制を考える」を主題に、講師の医療法人レスポアール・すこやかレディースクリニックの齋藤憲康院長が「産婦人科開業医からみた鶴岡の医療の問題点と解決策の提案」、研究会事務局の瀬尾利加子(株)瀬尾医療連携事務所代表取締役が「鶴岡の医療に興味を持つ意味」、鎌田代表が「つるおかの医療・介護を守るために」と題し、それぞれ提言する。
 その後、提起された問題を基に、参加者全員で意見交換をする予定。オンラインでの参加も可能とした。講座は今回を含め月1回の割合で5〜6回開き、講師の提言内容や参加者の意見を冊子にまとめる。
 研究会は鎌田代表と瀬尾代表取締役に加え、前整形外科医の黒羽根洋司氏、社会福祉法人月山福祉会の石川一郎理事長、野村廣登鶴岡市議(新政クラブ)の5人が呼び掛け設立した。
 市第三学区コミュニティセンターで6日夜にあった発足会には、計13人が出席した。席上、あいさつに立った鎌田代表は、市民の地域医療に対する危機意識の低さが問題、と指摘し「皆で地域医療を考えていく会となるよう、盛り上げていきたい」と決意を述べた。
 発足会では①鶴岡市(南庄内)の医療環境の実情を市民全体で把握するため、市民参加による「鶴岡の医療を守る市民研究会講座」を開き、問題点や方向性を共通認識としていく②地域医療の崩壊を防ぐための解決策を共に考えていく―との目的と活動方針も決めた。

常勤医師数に圧倒的格差

表
 鶴岡市の医療環境が厳しさを増している状況は、一般社団法人鶴岡地区医師会(福原晶子会長、対象地域=鶴岡市、三川町)と同酒田地区医師会十全堂(佐藤顕会長、対象地域=酒田市、庄内、遊佐両町)などが公表している各種のデータから読み取ることができる=表参照=。
 病院や開業医などの医療機関数を見ると、鶴岡地区医師会の会員が所属する2019年7月時点の医療機関数は87施設で、10年前の09年同月に比べ8施設8.4%減った。同様に酒田地区医師会の会員が所属する医療機関数は98施設で、同13施設11.7%減っている。
 この間の減少数と減少率は、酒田地区が鶴岡地区を5施設3.3ポイント上回り、酒田地区でも医療機関の減少傾向は著しい。
 酒田地区に比べ医療機関の減少数が少なく、減少率が小さいにも関わらず、なぜ鶴岡地区では市民が地域の医療環境に危機感を持ち、研究会を設立したのか。
 その最大の要因に福原鶴岡地区医師会長は、地域医療の中核を担う鶴岡市の市立荘内病院(三科武病院事業管理者、25診療科、521床)と、二次医療圏の中核を担う酒田市の地方独立行政法人山形県・酒田市病院機構(栗谷義樹理事長)が運営する日本海総合病院(27診療科、630床)との常勤医師数に、圧倒的格差があることを挙げる。
 荘内病院の常勤医師数は今年4月1日現在、初期臨床研修医の10人を含め計75人。19年同日の72人から3人増えた。これに対し日本海総合病院と日本海リハビリテーション病院(2診療科、114床)、日本海八幡クリニック等診療所(4診療科)を合わせた常勤医師数は今年4月1日現在、初期臨床研修医25人を含め計155人。19年同日から5人減ったものの、荘内病院の2倍強に上っている。
 福原医師会長は「酒田地区の場合は、医療機関自体が鶴岡地区より多く、開業医が減ったとしても、それを補って余りある医師が日本海総合病院に集積している。それに対し鶴岡地区は、荘内病院の常勤医師数が少ないために、開業医が閉院してしまえば、それを補充することができない状況になっている」と解説する。

新潟大医局との関係も課題

 医療従事者などを含む医療資源の減少傾向に直面する鶴岡地区だが、医師の確保に向けては、荘内病院に派遣してもらう大学の医局とどういう関係を築いていくのかも課題となる。
 荘内病院の常勤医師の現状は、およそ新潟大学の医局出身者6、山形大学の医局出身者3、その他1の割合だが、派遣実績のある大学から医師を確保するのは難しい状況となっている。
 背景にあるのが医師免許取得後2年間の臨床研修を義務化したこと。従来は研修先の約7割が大学病院だったといわれるが大都市の一般病院を選ぶ医師が増加。このため大学病院の医局が医師不足となり、派遣していた医師を引き揚げる事態が続いている。
 新潟大学から呼吸器科と循環器科に各2人の常勤医師を派遣してもらっていたが、医局の医師不足で派遣が休止に。このため18年に2度、山形大学医学部や県内医療機関などで構成し、医師の適正配置などを審議している「蔵王協議会」(会長=嘉山孝正・山形大学医学部参与)に、常勤医師の派遣を要望した経緯がある。
 山形大学医学部では、呼吸器科に19年4月から非常勤医師を週1回派遣し、循環器科には今年4月から常勤医師2人を派遣している。呼吸器科には今年4月から医師のUターンに伴い常勤医師1人も加わった。
 一方、医師不足による影響は深刻さを増し、「荘内病院には糖尿病の専門医が不在で、内科が一番の弱点になっている。バランスの取れた医師の配置もできていないところがあり、総合病院としては問題があると思っている」(福原医師会長)という課題もある。

集約化や連携の在り方も

 将来に向け機能の集約化や連携の在り方などの協議も必要になる。とりわけ一部医療関係者の間には「荘内病院の医師たちと鶴岡市の両者で、荘内病院をどういう形にしていくのか、という将来ビジョンを描いてほしい」という声がある。
 関連して同病院が18年度決算で121億4700万円の累積欠損金を抱え、赤字体質から抜けられないでいる経営状況を問題視する声も聞かれた。
 連携の一つの形としては、地域医療連携推進法人「日本海ヘルスケアネット」(代表理事・栗谷同病院機構理事長)が、山形県・酒田市病院機構など酒田市内の医療・介護・福祉施設の9法人(現在10法人)が参画して18年4月に発足し、大きな成果を上げている。
 主な共同事業を見ると―
①医療人材の出向派遣、相互交流では、20年度に医師7人を参加法人に派遣し、看護師8人を出向させた。
②病床調整では、19年度に医療法人健友会・本間病院に日本海総合病院から一般病床を4床移動し、療養病床として使っている。
③有効性や安全性、経済性を考慮した医薬品の使用指針を19年度から地域でつくり始め、6薬剤で実施中。
 佐藤俊男・同病院機構病院統括医療監付参事は「成果を出している最大の要因は、人材確保がうまくいっていること。連携の方法は多種多様で、地域の実情を分析しながら最適な方法を考える必要がある」と話す。


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