郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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遊佐町沖合の洋上風力発電
市環境審で「配慮書受理は不適切」の指摘
県は酒田・鶴岡沖へも導入検討

 遊佐町沖合に発電用大型風車を設置する計画が事業化に向けて動き出した。酒田市は市環境審議会(会長・北川幸宏連合山形酒田飽海地域協議会副議長)を21日、市景観審議会(会長・遠山茂樹東北公益文科大学教授)を27日に市役所で開き、県内外の3事業者が作った環境影響評価の計画段階環境配慮書について意見を交わした。委員からは「県の配慮書受理は不適切、時期尚早」との指摘があった。(本紙取材班)

内容が未確定、課題も多数

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 酒田市の環境、景観両審議会は、吉村美栄子県知事が地元の丸山至酒田市長に配慮書について意見を照会したことから、丸山市長が回答をまとめる参考とするために開いた。丸山市長は14日に市環境審、27日に市景観審にそれぞれ諮問した。配慮書は事業の位置や規模、環境保全のために配慮すべき事項をまとめたもの。
 市環境審には委員12人中8人が出席し、3事業者が14日に説明した配慮書に対し意見を述べた。
 NPO法人パートナーシップオフィス理事の金子博委員は、山形県に対し「事業者が未確定の上、出力規模や発電機基数なども不明な時点で配慮書を受理し、酒田市長に意見を求めることは時期尚早ではないか」と指摘した。
 その上で「環境影響評価の手続きに相当期間を要するとしても、環境影響評価手続きの在り方に沿って事業計画の主要事項が示されるか、複数の計画案が示された案件について受理すべき。今回は環境省の『計画段階配慮手続きに係る技術ガイドライン』の記載を理由に複数案を出していないが、3事業者の配慮書からは、複数案の設定が困難な理由を読み取ることはできない」と述べた。
 3事業者の配慮書に対しては▶事業計画が検討中にもかかわらず配慮書を提出することは適切でない▶地域社会に広く理解されることが大切であり、鳥類、海洋生物、景観、騒音等の環境への負荷低減に向け真剣に取り組んでほしい▶景観評価に引用している景観対策ガイドライン(案)は、送電用鉄塔を想定したもので、適切とは言えない。風力発電機と形状や規模感が異なる鉄塔の見え方の評価を参考とすることには疑問がある。環境影響評価方法書(案)の提示までに風力発電機(単基と複数基)に対する評価方法を検討するべき―などの考えを示した。
 環境省東北地方環境事務所自然保護官の澤野崇委員は、洋上風力発電事業の環境影響は国内では十分に解明されていない点が多いと指摘し、「事業の検討に当たっては、最新の知見や海外の事例などの収集に努めてほしい」と述べた。
 さらに▶事業実施想定区域(案)周辺で、他の事業者による複数の風力発電所が稼働中なので、本事業計画との累積的な影響を調査・評価してほしい▶鳥の衝突や鳥類の移動経路を阻害する懸念があることから、風力発電設備の配置の検討では専門家の助言も踏まえ、環境保全措置を講じて鳥類への影響回避・低減を図ってほしい―などと求めた。
 この日の意見は市環境審事務局の市環境衛生課で取りまとめ、7月末までに丸山市長に答申する。

実施しない案も選択肢に

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酒田市環境審議会(7月14日)

 酒田市景観審には委員14人中13人が出席した。市が3事業者の配慮書の概要を説明し、意見を求めた。
 やまがた樹木医会樹木医の梅津勘一委員は「配慮書では複数案を検討するように求められているが、3事業者とも事業を実施しない案・ゼロオプションの選択肢を設けていない。新潟県村上市岩船では事業を断念した。さまざまな調査をした結果、やれないということもあるのではないか。それなのにゼロオプションなしは乱暴ではないか」と実施ありきの計画に疑問を呈した。
 県庄内総合支庁建設部長の佐藤康一委員は「圧迫感のあるなしを景観の評価とするのはどうなのか。飛島に行く時の鳥海山を背景とした海の景色に風車が重なることになる。そういう点を配慮書に入れた方が現実的なのではないか。海から見た眺望などの見た目を、ぜひ配慮してほしい」などと述べた。

遊佐沖合の発電は計30万キロワット

 洋上風力発電は、再生可能エネルギーの主力電源と期待されている。このため政府は「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」(再エネ海域利用法)を19年度に施行し、全国一律のルールを整備した。
 同法では、国が関係自治体や漁業者、海運会社といった利害関係者などでつくる「法定協議会」を設立することを認め、関係者は協議会の決定を尊重することを義務化した。
 また国は洋上風力発電に適した「促進区域」を指定できるとした。指定されると、従来は所管の地方自治体ごとに3〜5年とばらつきがあった事業者の海域占有期間を、最長30年間まで延長できる。事業者は国が公募で選ぶ。
 洋上風力発電の導入に向けた条件整備が進んでいることを踏まえ、県は18年7月に県地域協調型洋上風力発電研究・検討会議を設立し、遊佐町沖合への導入を念頭に、事業化の可能性を検討してきた。
 19年12月の同会議では遊佐町沖合を「有望な区域」として国に情報提供し、法定協議会の設置を要請していくことを了承した。これを受け、今年2月13日付で経済産業省と国土交通省に対し、法定協議会を設置するよう要請した。
 こうした経過を経て経済産業、国土交通の両省は7月3日、今後の促進区域指定に向け整理した資料を公表した。それによると、遊佐町沖合は「既に一定の準備段階に進んでいる区域」の全国10区域には含まれたが、「法定協議会の設置といった準備に着手する有望な区域」には入らなかった。
 遊佐町沖合が有望な区域に入らなかったのは、事業者による東北電力(株)の送電線網への接続が確保できなかったのが理由。同送電線網への接続の権利を持つ事業者は、開発することが決まった事業者に権利を譲り渡す仕組みで、既に数社が東北電力に接続を申し込み、回答を待っている。このため21年度には法定協議会を設立できる見通し。
 髙橋徹・県エネルギー政策推進課長によると、法定協議会の設立から1年以内に国が促進区域を指定し、事業者公募の基準を作成する。順調にいけば22年度に事業者を公募し、同年度内に決定できるという。
 髙橋課長は「遊佐町沖合の事業実施想定区域(案)に導入する洋上風力発電は、出力規模を約30万キロワットと想定している。遊佐町沖合が促進区域に指定されるなど一定程度形になったと判断した段階で、酒田、鶴岡両市沖合への導入も検討していくことになる」と山形県沖の全域で開発を進めていく考えを示した。

配慮書を31日まで公開中

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 配慮書を提出している3事業者は①中部電力(株)(愛知県名古屋市)②日本風力開発(株)(東京都千代田区)③コスモエコパワー(株)(同品川区)と加藤総業(株)(酒田市)。配慮書を酒田市役所と遊佐町役場、各事業者のホームページで31日まで公開している。配慮書への意見も同日まで募集している。ほかに1事業者が配慮書の提出を準備中で、8月3日〜9月2日に公開予定。
 ①〜③は遊佐町と酒田市の住民向け説明会を7月に予定していたが、新型コロナウイルスの感染者が全国で増えていることから、直前になって延期した。開催時期は未定。
 ①〜③の事業計画を見ると、発電用大型風車は海底に設置する着床式で、海底ケーブルを経て送電線網に接続する。設置場所は地図参照。面積は約3200〜3960ヘクタール。水面から海底までは約10〜40メートル。
 ①の配慮書では調査項目に▶騒音と超低周波音▶風車の影▶動植物▶景観を選んだ。騒音と超低周波音の予測範囲は2.0キロ、風車の影の予測範囲は事業実施想定区域から2.2キロまでとし、2.2キロ以内の住宅は約1840戸、風車から最も近い遊佐町比子地区の住宅までは約1.2キロとしている。
 動植物では、コアジサシ、オオワシなどの鳥類55種、サクラマス、ハタハタなどの魚類46種の生息環境に影響が及ぶ可能性があるとし、ハクチョウなど渡り鳥の激突死やけがの可能性も示した。植物や藻場への影響は無いとした。
 景観では、風車が見える場所に遊佐町の十六羅漢岩、大平展望台、酒田市の日和山公園、酒田市美術館など23地点を選び、このうち、圧迫感を受けて景観と調和しない可能性のある場所として、十六羅漢岩、出羽二見、西浜海水浴場、遊佐十里塚海水浴場、遊佐白木海岸の5地点を挙げた。
 ②の配慮書の調査項目は①と同じ。騒音と超低周波音、風車の影の予測範囲は事業実施想定区域から2.0キロまでとし、鳥類とコウモリの激突の可能性を示した。景観に影響を与える可能性はあるが、重大な影響は回避か低減できる可能性が高いとした。
 ③の配慮書の調査項目は▶騒音▶風車の影▶動植物▶景観▶人と自然との触れ合いの活動の場を選んだ。超低周波音は、環境省が17年に示した風力発電施設から発生する騒音に関する指針の「20ヘルツ以下の超低周波音は健康影響との明らかな関連を示す知見は確認されなかった」を根拠に、調査項目に選ばなかった。
 騒音の予測範囲は事業実施想定区域から2.0キロまで、風車の影の予測範囲は2.2キロまでとし、①②と同様に渡り鳥や景観に影響を与える可能性を示した。
 県によると、遊佐町沖合の洋上風力発電事業に意欲を示しているのは3事業者を含む全国の30社で、30社が共同で風の強さや海底地形の調査を行っている。


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