郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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県政検証 知事選まで半年[中]
県の再エネ開発 順調に進む
庄内に偏った立地は改善されず

 次期山形県知事選挙は来年1月に見込まれる投開票まで約半年に迫った。東日本大震災後に発生した原発事故を受け、吉村美栄子県知事が策定した県エネルギー戦略の19年度末の開発量は55.8万キロワットで、開発目標に対する進み具合は55.0%だった。県では「おおむね順調に推移している」と総括するが、環境問題の専門家からは「庄内地域に偏っている電源立地を地域分散型に転換するべき」「原発1基分の開発目標は実態と合わなくなる可能性がある」といった意見が聞かれる。(編集主幹・菅原宏之)

風力は目標の18%どまり

表
 県が2012年3月に策定した県エネルギー戦略は、エネルギー政策の方向を示す「エネルギー政策基本構想」(対象期間は30年度末までの20年間)と、具体的施策の展開方向を定めた「エネルギー政策推進プログラム」(同20年度末までの10年間。17年3月に中間見直しを実施)の二つからなる。
 このうち基本構想には、目指すべき山形県の姿に▶再生可能エネルギー(再エネ)の供給基地化▶分散型エネルギー資源の開発と普及▶再エネの導入拡大などを通じた産業振興の実現―を挙げ、30年度末までに原発1基分に当たる101.5万キロワットの再エネを確保する開発目標を掲げている。
 髙橋徹・県エネルギー政策推進課長によると、県エネルギー戦略に基づく19年度末までの開発量は計55.8万キロワットで、最終年度の30年度末までの開発目標に対する進み具合は55.0%となっている=表参照=。開発量が、対象期間の中間年となる20年度末まで1年を残して50%を超えていることから、髙橋課長は「おおむね順調に進んでいる」と総括する。
 19年度末までの電源と熱源別、エネルギー種類別の開発量は表の通り。太陽光発電は電源と熱源を合わせた総計55.8万キロワットのうち57・7%を占め、開発目標に対する進み具合は105.6%。バイオマス発電は同13.6%となり、進み具合は542.9%と開発目標を大きく上回っている。中小水力発電は同3.6%で、進み具合は17年度末で100%に達している。
 電源の太陽光発電が開発目標に達したのは、民間事業者の大規模施設が酒田市の酒田北港地区や遊佐町の鳥海南工業団地内と同町吉出地内で稼働したことなどが背景にある。バイオマス発電では、酒田北港地区の酒田臨海工業団地内で稼働している大規模施設の新設が、開発目標の達成に大きく影響した。

太陽光は期待薄、洋上風力に期待

 風力発電は同14.7%となり、進み具合は17.9%にとどまっている。要因に県エネルギー政策推進課の担当者は▶環境影響評価手続に加え、稜線に建設する場合は工事用の接続道路を整備しなければならないなど、事業の計画段階から実現までに時間がかかる▶そうした事情から、費用面で負担が大きく膨らむ可能性がある―ことなどを挙げる。
 こうした中、県内では新たな風力発電の建設に向け、数件の環境影響評価手続きが進んでいる。さらに遊佐町沖合では出力規模30万キロワットを想定した洋上風力発電事業の検討も始まっている。
 熱源では太陽熱・地中熱等は同4.3%、進み具合は23.1%と低調だった。熱利用設備の導入には初期費用が多くかかることなどが要因。県では熱利用のうち、地中熱の普及拡大に期待を寄せている。
 髙橋課長は今後について「開発量の拡張に向けては、風力発電と熱利用が課題になっている。風力発電では、遊佐町沖合の洋上風力発電が建設されれば、県エネルギー戦略の開発目標達成に大きく貢献することは間違いない。地元との調整が難しい大規模な太陽光発電の開発は、今後はそれほど期待できないとみており、開発目標に対する数値を大きく稼ぐことができるのは、洋上風力発電しか残っていない」との認識を示した。

知事選の目標達成は不透明

 県エネルギー戦略をめぐっては、吉村県知事が3期目を目指した前回県知事選(17年1月)の際、再エネの総開発量を15年度末の40.2万キロワットから任期中に67.3万キロワットへと27.1万キロワット増やす数値目標を掲げたが、19年度末では55.8万キロワットと、数値目標を11.5万キロワット下回っている。
 こうした事情もあり「吉村県知事の任期中に、数値目標に届くかどうかは不透明な状況」(県内の再エネ事情に詳しい庄内のある関係者)となっている。
 再エネの導入促進に向け吉村県知事は①洋上や県内陸部を含めた風力発電の導入②木質バイオマスエネルギーの導入を進め、林業や関連産業を振興③砂防施設や水道施設を活用した中小水力発電の導入④地域内の温泉熱・雪氷熱・バイオマス熱などを農業や旅館などで使うエリア供給システムを構築⑤県内事業所の省エネルギー、再エネの設備導入などによりエコオフィスを推進―などを挙げていた。
 この①〜⑤の中では、一定の成果を上げたものも見られたが、エネルギーの種類を問わず、大規模施設が庄内地域に集まっているという、当初からの課題は依然改善されていない。


地域分散型に政策転換を

 県エネルギー戦略に対しては、環境問題の専門家の間から厳しい意見や提言などが聞かれる。
 酒田市環境審議会の金子博委員は本紙の取材に、19年度末の累計開発量がバイオマス発電は開発目標の540%を超え、風力発電では同17.9%どまりになっていることに触れ「両者の電源立地は庄内地域にかなり偏っている。再エネの『供給基地化』と位置付けて始動し、折り返し点を迎えたことを機に、県は今からでもバランスの取れた『地域分散型の導入促進』に政策転換していくべきではないか」と提言する。
 遊佐町沖合で大規模洋上風力発電の環境影響評価手続きが始まったことにも触れ「多数の事業者が受託競争に参入する中、特に鳥の衝突や景観などの課題には丁寧に対応していくことを望みたい」とした。
 金子委員はまた「基本構想には『1人当たりの電気使用量の全国最下位を目指す』などの本質的な目標も掲げるべきではないか。それが『卒原発』の原点ではないのか」と指摘した。
 他の専門家からは「山形県の総人口は、15年の112万3891人から30年には95万7314人に15%近く減る、と見込まれている。これに伴うエネルギー需要量は推計可能で、省エネ技術の進展も踏まえると、原発1基分とした開発目標は実態と合わなくなるのではないか」「大規模な再エネ施設を受け入れている地域に、県はもっと優遇措置を講じるべきではないか」などの声も聞かれた。


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