郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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大雨災害
住宅インフラ農地 被害甚大
復旧に向け各方面で取組中

 7月25日からの記録的な大雨で庄内・最上を中心に甚大な被害が出た。発災から2週間が経ったが、被害の大きかった酒田市八幡地域などでは断水が続く地区もあり、同市と遊佐町では住民の避難生活も続いている。水田が土砂で埋まったり、梨畑が流されたりと農業被害も大きいが、災害の全容はまだ分かっていない。(本紙取材班)

酒田市 5日も97人避難中

 庄内を襲った大雨で、八幡、西荒瀬の両地区を中心に甚大な被害が出た酒田市では、指定避難所の西荒瀬、一條、大沢、日向、松嶺、内郷の6コミュニティセンターに、5日午前8時現在で計97人が避難している。
 そのほか八幡地域の大沢地区(大蕨、上青沢、北青沢、下青沢)などで66軒153人の在宅避難者と、避難場所への自主避難者がいることも、市職員の訪問などで把握している。市内では最大63カ所の避難所を開設し、最大避難者数は1752人に上った。
 建物の浸水被害は4日午後4時現在、市災害対策本部に情報が寄せられている分のみで298棟。内訳は床上浸水70棟、床下浸水218棟、判別不明10棟。被害棟数は、今後増えることが予想されている。北青沢では女性1人が行方不明となっている。
 八幡地域で最大1011軒に上った断水は、4日午後4時現在で約4分の3に当たる759軒で解消した。大沢地区と常禅寺地区、麓地区の一部の計252軒では依然断水が続いているが、常禅寺地区と麓地区の一部は11日までに、大沢地区全域は31日までに解消する見込みとなっている。
 断水は平田地域でも最大67軒発生したが、全て解消している。
 酒田、八幡、松山の3地域では、最大3353戸で停電したが、1日に全ての地域で復旧している。
 医療支援では、日本海総合病院の災害派遣医療チームの2班が、7月28日午後に各避難所の評価を行い、同病院の災害時健康危機管理支援チームが7月30日~8月8日に、八幡総合支所を拠点に活動した。日赤山形県支部のこころのケアチームも1~3日に、避難者を対象に傾聴活動などを行った。

市営住宅の提供始まる

 復旧・復興を念頭に置いた動きも出てきた。
 市は7月30日から、罹災証明書の発行に向けた住宅被害認定調査を始めた。同証明書は保険金の支払いや公的な支援を受ける際に必要となるもの。申請期限は通常1カ月程度だが、今回はおおむね10月末ごろまで受け付ける予定。
 同調査の対象軒数は、当初約4500軒と見通していたが、5日現在2500軒程度になるとみている。
 大雨で住宅の使用が困難になった市民に対し、市は入居後1年以内(最長2年間)を期限に市営住宅などを提供する手続きを進めている。申込期間が7月31日~8月5日だった第1弾では50戸を募集し、6日に抽選会を行った。
 申込期間を9~15日に設定した第2弾では、第1弾で決まらなかった分に21戸を足した戸数を募集し、17日に抽選会を行う。
 大雨被害の相談窓口を5〜30日の午前9時~午後5時(日曜除く)に、市役所2階の市町づくり推進課と、八幡総合支所1階、松山総合支所1階の3カ所に設置している。
 災害ボランティアの活動も7月30日から始まっている。同日に32人のボランティアが登録し、八幡地域で作業した。市と社会福祉協議会は同月27日、ボランティア希望者の受け入れや調整を担う酒田市災害ボランティアセンターを設け、ひらたタウンセンターに拠点を置いている。ボランティア活動をしたい人は、電話080(6879)9492へ。
 こうした中、悪質商法の情報も多く寄せられている。その内容は▼他自治体の職員をよそおい、「調査に来た」と言って家屋に入り込もうとした▼トラックなどで被災家屋などを訪れ、「回収するものは無いか」と声をかけ、荷物を積み込んだ段階で金銭を要求した▼明らかに詐欺と思われる相談など。市では、酒田警察署と連携して注意喚起をしている。

鶴岡市 4億円超の被害

 鶴岡市によると、大雨による被害額は8月1日現在4億2280万円に上った。内訳は林道が58カ所で2億600万円、市道が72件で1億4260万円、農業用施設が51カ所で3570万円、農地が50カ所で2970万円、市管理河川6件と公園4件が各440万円。農作物と観光施設の被害額は調査中のため、被害額はさらに増える可能性が高い。
 市道は72件のうち復旧済みが12件で着手は16件。残り44件は未着手。市管理河川は6件が未着手。
 農作物は1363・1ヘクタールが冠水や浸水の被害を受けた。内訳は大豆が896・1ヘクタール、だだちゃ豆などの枝豆が336・4ヘクタール、その他野菜が60・4ヘクタール、そば45・0ヘクタール、花き25・2ヘクタール。
 大豆は葉に泥が付着して成長が止まった。枝豆は7月に曇天が続いて日照不足となっていたところに大雨被害が重なり、成長の遅れと収量の減少が心配されている。そばは畑にまいた種が流され、花は観賞用のキクなどが被害を受けた。
 水稲は430ヘクタールが浸水や冠水被害を受けたが、元々水に強いため、影響がどの程度になるかは把握しにくい。メロンは水はけの良い砂丘地が産地のため、被害を受けなかった。
 建物被害は104件で内訳は床上浸水が12件、床下浸水が92件。いずれも藤島地域が半分以上を占めた。
 鶴岡市社会福祉協議会は鶴岡市災害ボランティアセンターを7月28日に設置した。平時から連携している団体や事前登録者の協力で対応する。泥出しなどのボランティアを要請したい世帯は同センター電話0235(23)2970へ相談を。

遊佐町は浸水建物312件

 遊佐町では7月31日午後1時現在、床上浸水198件、床下浸水114件の計312件。これらは概数で罹災証明に基づき調査して確定する。罹災証明の受付件数は8月1日正午現在90件で、このうち65件は調査済み。床上54件、床下11件の被害が確定した。
 避難者は8月1日午後1時現在も遊楽里に4世帯8人、しらい自然館に6世帯25人。ほかに親類宅や友人宅に避難している人もいる。
 通行止めになっていた道路もあったが、う回路などができ、1日現在、孤立している集落は無い。
 7月25日に浸水が始まり、同日午後4時現在では町内7カ所に394人が避難していたが、翌日に水が引くと、すぐに自宅の片付けを始めた人が多かった。町内に2カ所設地した被災ごみの集積場には、水に浸かって使えなくなった畳や布団、家具などを軽トラックに積んで来る町民の姿が、ひっきりなしに見られた。
 同町ではボランティアによる支援活動を1日から始めた。ボランティア活動をしたい人は電話0234(72)2201へ。

刈屋梨の被害が多大

 県では大雨による農業被害の詳細を調査中だが、被害額を県全体で約60億円と、2日の第7回災害対策本部員会議で発表した。県内31市町村で、水稲や大豆の浸水・冠水・土砂流入などの被害面積約7309ヘクタールをはじめ、野菜や果樹、花きなども含めると被害面積は約7730ヘクタールとした。
 庄内みどり農協によると、管内の農業被害は7月30日現在、水稲の浸水が4500ヘクタール、稲の上まで水がかぶった冠水が1900ヘクタールの計6400ヘクタール。土砂で埋まった水稲は450ヘクタール。管内の水稲の作付面積は主食用米や飼料用米などを合わせて1万500ヘクタールだが、全体の65%が被害を受けた。ただし、被害の大きい中山間地の状況は分からず、この数字には入っていない。
 穂が出た後に泥水に浸かった稲は登熟に心配が残る。土砂で埋まったものは、程度にもよるが収穫は不可能と思われる。稲とともに土砂を撤去する必要がある。
 大豆は作付面積700ヘクタールの57%に当たる400ヘクタールが浸水・冠水の被害を受けた。
 刈屋梨は堤防の川側の15ヘクタールは梨棚の上まで水に浸かり、大きい流木や泥が入って壊滅状態。堤防の外の15ヘクタールも浸水し泥が積もった。
 カントリーエレベーター14基のうち、松山地区300ヘクタールを収容する1基に2メートルの浸水があった。昨年産米の出庫は終わっていたが、機械設備とコンピューターなどが水と泥で使えなくなった。今季の稼働は見込めず、松山地区の米は他地区のカントリーエレベーターまで運んでもらうしかない。
 刈屋梨を生産している小松賢さんは、12アールが被害に遭った。このうち2アールは梨まで水に浸かり、10アールは梨まであと10センチまできた。浸水・冠水した梨畑には土砂や泥が堆積している。
 梨畑の道路も泥で埋まり、畑に入れないところもある。水に浸かった梨は病気が出たり、腐ったりするため、防除したいが、機械が入れないところも多い。堆積している泥は細かく、固まってしまうと木の根が呼吸できなくなり木が弱っていく。小松さんは「早くなんとかしてやりたい」と話した。
 別の生産者は土砂でつぶれた梨畑を見て「どうしようもない。なんとか来年の生産ができるようになってほしい」と話した。

水稲や大豆も被害広まる

 庄内たがわ農協では、管内の水田9500ヘクタールのうち半分程度が浸水・冠水し、2割の1900ヘクタールで不稔や未熟粒の発生が心配される。
 大豆は管内の作付1000ヘクタールのうち藤島地区、庄内町、三川町が栽培面積が大きく、9割以上が浸水などの被害を受けた。2日半~3日半も泥水をかぶっていた畑もあり、そこはすでに枯れてきている。
 花は転作田で栽培しているものが、泥水をかぶるなどして35%が被害を受けた。泥が付いた花は商品価値が無くなる。
 余目町農協では水稲150ヘクタールで冠水被害を受けたが、今後の水の管理がしっかりできれば、被害としてはそれほど大きくは無さそう。大豆の冠水被害は50ヘクタール。
 花は0・5ヘクタール、ネギは3ヘクタール、枝豆は1・5ヘクタールの計5ヘクタールが冠水・浸水した。園芸作物の作付面積の半分に当たり、影響は大きい。

頭首工は復旧作業急ぐ

 水田に用水を供給する土地改良区の頭首工や取水口、揚水場なども大きな被害を受けた。稲が出穂時期を迎え田に水を入れる必要があり、水が無いと幼穂の生育や稔実に影響するため、各農協では2日現在「できるだけ早く水を田に入れられるように、揚水等の設備の復旧を急いでもらいたい」と口をそろえていた。
 日向川土地改良区によると、日向川、荒瀬川、最上川の3河川から水を取り入れている頭首工4カ所すべてが、大雨による土砂や流木の流入で25日以降1週間ほど取水できなくなっていた。土砂を取り除く作業を急いで進め、段階的な本通水を再開した。
 揚水機2基も全損して今季の稼働は絶望的なため、この揚水機がカバーしている水田300ヘクタールでは水が不足する見込み。地区全体で少ない水をやりくりし合う必要がある。
 中山間地の日向地区や大沢地区では、川から水を直接引き込む構造の取水口が無くなったところが複数カ所あり、用水を確保できない状況。日向地区では農家が自ら用水を確保する作業を始めているが、大沢地区も含め大規模な復旧工事が必要となりそうだ。

被害は店舗やゴルフ場も

 県がまとめた民間事業者の建物浸水被害等は、1日午前8時半現在で小売業・卸業53社、飲食業18社、製造業32社、建設業41社、宿泊業13社、サービス業・その他40社となっている。
 最上川河川敷のゴルフ場・最上川カントリークラブでは、1963年5月の開業以降最大の大雨被害を受け、被害額は5日現在で計約600万円に膨らむ見通し。
 同ゴルフ場を管理運営する最上川クリーングリーンの本間一久取締役支配人によると、大雨によって最上川と京田川に挟まれたインコース9コースと、京田川沿いのアウトコース9コースの全18ホールが冠水した。
 グリーンとフェアウェイが泥水に浸かり、フェアウェイには、流木に加え京田川の近くに置かれていた小型船舶が流れ込んだ。外周部にある排水用の側溝が泥と砂で埋まり、カート道路3カ所も陥没した。
 水が引いた7月27、28日から、グリーンを洗浄して殺菌剤を撒くなど復旧作業を本格化し、5日からはアウトコースの営業を再開した。インコースの営業再開は14日ごろを予定している。

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冠水した市道(酒田市千石町、7月25日)

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氾濫した大町溝(酒田市大町7月25日)

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あぽん西浜の被災ごみ集積場(7月29日)

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船が乗り上げた最上川カントリークラブ(7月31日)

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棚の上まで水に浸かった刈屋梨(7月31日)

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流木や土砂が堤防を超えて押し寄せた(7月31日)

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大沢地区の折れた橋(7月31日)

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パン入り段ボールが並ぶ大沢コミセン(8月1日)

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大沢地区では土砂崩れも多発(8月1日)

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荒瀬川の橋には流木などがぶつかった(8月1日)

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