郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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部活動が変わる[上]
酒田、鶴岡市で地域移行進む
保護者の負担増など課題多く

 中学校の部活動は2026年度から平日のみとなり、休日は学校を離れ、地域での活動に移行する。酒田、鶴岡両市教育委員会では、23~25年度を移行期間と位置付け、学校、保護者、地域と協調しながら受け皿作りを進めている。移行が着実に進んでいる一方、保護者の負担は生徒の送迎やクラブ活動費などで部活動より増え、指導者が不足するなど、課題は多い。(戸屋桂、土田哲史)

 酒 田 市   3学区で1地域クラブ

 酒田市教育委員会学校教育課では、部活動地域移行総括コーディネーターを1人配置して、休日の受け皿作りを進めている。
 同課によると、市内7中学校のうち酒田一中では総合型地域スポーツクラブ「希望ケ丘体育文化振興会」、酒田四中では同「きらり川南スポーツクラブ」、東部中では同「ひらた目ん玉スポーツクラブ」が、既に休日の部活動の受け皿となっている。
 酒田二中、三中、六中の3学区では、3学区を一つにした、土日の部活動の受け皿のための地域スポーツクラブの設立を視野に、保護者代表や外部指導者などを中心に話し合いを進めている。地域スポーツクラブの中に学校ごとにチームを組む競技と、3校合同でチームを組む競技を混在させることも検討している。25年秋には活動を始めたい考え。
 鳥海八幡中は、総合型地域スポーツクラブとの連携も含め、どのような形の受け皿にするか、今後検討を始める。

生徒減り部活成り立たず

 部活動の地域移行の背景には、教員の働き方改革や、専門的に教えられる教員と指導者がいない学校が出てくることに加え、生徒の減少により、各学校が単独で活動しにくくなっていることも影響している。
 同学校教育課の資料によると、同市の24年の中学生は2177人で、22年の2398人に比べ221人9・2%減った。12年の3149人からは972人30・9%も減り、この傾向は今後さらに続き 32年には1678人へと、12年比1471人46・7%減になると想定されている。
 これに対して運動部は22年に137部あり、部員数は1595人だった。32年には部員数は1120人へと475人29・8%減ると推計している。
 部活動への加入は任意で、学校以外の競技団体や民間団体のクラブチームが増え、スポーツをする選択肢が広がっている。中学校体育連盟以外の大会も多く、中体連の大会もクラブチームの出場を認め、その方向は拡大していくとみられている。
 こうした中、生徒にとって望ましいスポーツ環境を整えることがクラブ化の目的、と言われている。
 メリットは、土日の活動が保障されることや専門的な指導を受けられること、やりたいスポーツの選択肢が広がることなど。デメリットとしては、生徒の移動に伴う保護者の送迎、クラブの会費・活動費など金銭面の負担増が心配されている。
 同学校教育課では「生徒のさまざまな需要に対応できる形を考えていきたい。地域移行は、部活の延長で教員に頼るものではなく、地域で持続可能なものにしていく。保護者の負担もできるだけ軽減することも検討課題」と話した。
 さらに外部指導者を増やそうと、同市スポーツ・文化サポーターバンクを作り、サポーターを募集している。指導者を養成するサポーターセミナーも開いている。24年9月の外部指導者数は167人で、22年の121人から増えた。22年までは減少が続いたが、23年以降は増えてきている。
 学校ごとの部活動が成り立たなくなることを視野に、地域スポーツクラブを競技団体で担ってもらうことも考えられる。ソフトボールでは、新人戦には三中・四中・遊佐中の合同チームで出場し、同市ソフトボール連盟が地域移行の受け皿になることを相談している。
 文化部もいずれ地域移行を進めていく。今のところ各学校の実情を聞いているが、具体的な話にはなっていない。運動部のめどがついたら、土日の受け皿づくりを進める予定。

 鶴 岡 市   5形態に移行完了

 鶴岡市教育委員会では、21年度の「鶴岡市における運動・文化部活動と地域等との連携の在り方に関する検討委員会」の提言を受け、教員が関わらない土日曜日と休日の部活動の段階的な地域移行を、23年度から進めてきた。今年4月には「鶴岡市中学校部活動等に関する基本方針」を策定した。
 同基本方針では▼単一の学校で部を設けることができない場合は、複数校の生徒が拠点校の部活動に参加するなど、合同部活動等の体制づくりを検討する▼学校や地域の実態に応じ、地域の関係団体との連携と民間事業者を活用して、学校と地域が融合した形で持続可能な環境整備を進める▼学校管理下ではない活動に、学校体育施設の開放を進める▼週末の大会などへの参加が生徒や部顧問の負担とならないよう、大会などの統廃合や簡略化に向けた検討を、各競技団体などに要請する―ことなどを定めた。
 鶴岡市教育委員会学校教育課によると、同市内の休日の部活動は①民間クラブ41団体②スポーツ少年団18団体③総合型スポーツクラブ4団体④合同部活動2団体⑤保護者会クラブ52団体―の5形態に移行した。
 ⑤は保護者がいなくなると運営できなくなるため、25年度末で①~④に移行するよう通達した。市教委では、⑤の主な移行先に①と②を想定し、受け入れる団体が無い場合は、他学区にある②で受け入れることを考えている。市内のスポ少は学区外からでも入団できるようになっている。
 地域移行の背景にあるのは、酒田市と同じく部員の減少による部活動数の減少が顕著になってきたこと。
 鶴岡市の中学校の24年度部員数は2280人で、前年度の2380人に比べ100人4・2%減った。内訳は運動部が1750人で同50人減り、文化部が530人で同50人減った。
 生徒の部活動への所属割合は約8割とほぼ変化が無いため、単純に1部当たりの部員数が減っている。団体競技の部活動は特に継続が難しくなっている。
 部活動数は24年度が136部で前年度より6部減った。内訳は運動部が112部で5部減り、文化部が24部で1部減った。部員数と部活動数の減少傾向は、ここ10年ほど続いている。
 鶴岡田川地区中学校体育連盟には、民間クラブの登録が増えてきている。現時点でバドミントンと柔道は各2団体、陸上、新体操、バレーボール、ソフトテニス、ソフトボール、剣道は各1団体と計10団体が登録している。このうち陸上の鶴岡アスレチックスクラブは中体連の地区大会に出場した。民間クラブの登録、出場は今後さらに増える見込み。

農村部ほど負担は大きく

 鶴岡市教育委員会では地域移行の課題に①指導者の確保②活動費や練習場所の移動による保護者の負担増大③活動場所の割り振りの調整―を挙げる。
 対策として①では、顧問がいなくても部員を指導できて、教員免許がいらない「部活動指導員」を増やす。現在28人いるが、増やしていく。②では、練習場所の利用料減免や団体への補助金交付、家庭への助成制度、民間クラブに送迎手段を持ってもらうことなどを検討していくが、予算が限られるため全て実現するのは難しい。③は検討中だが、クラブ間の公平性を保つのは難しい。
 同市教育委員会学校教育課では「地域移行を進めれば、活動場所への送迎や活動費用の増加などで保護者の負担は増える。特に市街地よりも中山間地や農村部の負担が大きくなることが考えられる。これまでの部活動はボランティアの側面があったが、質の高い指導を受けるには対価が必要になる。今後はこれまでの部活動とは異なり、受益者には相応の負担が生じるということを理解してもらいたい」と話した。

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