郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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元代表ら預託法違反容疑で逮捕
太陽光発電事業のチェンジ社

 太陽光パネルを販売した後に預かる形を採り、売電収入を配当として還元するとうたう販売預託商法(オーナー商法)を展開したとして、大阪府警は10月30日、酒田市のベンチャー企業「チェンジ・ザ・ワールド」(破産手続き中、以下チェンジ社)元代表取締役の池田友喜容疑者(47)=東京都中央区=ら6人を預託法違反の疑いで逮捕した。販売預託商法は2022年6月施行の改正預託法で原則禁止とされたが、チェンジ社は改正法施行後も販売を続けていた疑いが持たれている。池田容疑者を巡っては、これまでに衆院山形3区選出の加藤鮎子衆院議員や前酒田市長の丸山至氏などとの親密な関係が取り沙汰されたこともあった。(編集主幹・菅原宏之)

違法性認識の疑い強く

 庄内地域在住の関係者などによると、チェンジ社は内閣総理大臣の確認を受けずに改正預託法施行後の22年6~12月、関西地方に住む40~50歳代の男女4人と太陽光パネルに関する計約218万円の販売預託契約を結んだ疑いがある。
 チェンジ社は改正預託法施行前後に、東北財務局と消費者庁から数回にわたり改正内容の説明や指導を受けていたといわれる。
 事実、破産申立代理人弁護士が作成した陳述書によれば、池田容疑者は事業の展開拡大を図るため、第二種金融商品取引業(株や社債といった主要な有価証券以外の「みなし有価証券」を販売する業務)の登録に向け22年2月から東北財務局への事前相談を始めた。
 だが登録準備を進める中で、東北財務局から「事業が22年6月1日に施行される改正預託法に抵触する可能性がある」との示唆を受け、管轄省庁の消費者庁に相談するよう勧められた。
 これを受け22年9月から消費者庁への相談を始め、継続的に面談などを行った。ところが22年11月、同庁から事業が改正預託法に抵触する可能性があるとの見解が伝えられ、指導も受けたなどと説明していた。
 府警はこうした一連の流れを把握し、チェンジ社が違法性を認識していた疑いが強いと判断した模様だ。
 チェンジ社は14年2月に設立。17年7月からは主に耕作放棄地などの上に太陽光パネルを設置する営農型太陽光発電施設の区分オーナーを小口で募り、売電収入から利益を支払う投資サービス「ワットストア」事業を展開していた。
 インターネットで1口300円から購入可能で、年間の利回りは7~10%などとうたい会員を募集した。
 そして改正預託法施行後も全日本空輸(株)や日本航空(株)と連携し、ワットストアの販売促進キャンペーンを展開して、多額の金を集めていたといわれる。
 こうした中、23年2月に東京地裁から破産手続きの開始決定を受けた。負債総額は約38億円、債権者は1万2千人超に上る。

「国のお墨付き」で信用

 チェンジ社は、20年11月12日に経済産業省東北経済産業局などから「ジェイ‐スタートアップ東北」に選定されたのを皮切りに、国から表彰・選定される機会が数多く見受けられた。
 その後も▼環境省主催第8回グッドライフアワードで「実行委員会特別賞サステナブルデザイン賞」を受賞▼経済産業省東北経済産業局「20年度地域経済産業調査報告書」で紹介▼中小企業庁「事業再構築補助金」で採択が決定▼経済産業省等が実施した東北地方の起業家育成を目的としたアクセラレータープログラム「ソーシャルインパクト部門特別賞」に選定―されている。
 チェンジ社の太陽光パネルを購入していた債権者たちは昨年、本紙の電話取材に「国の賞を受賞していて『お墨付き』があったこと、全日空や日本航空などといった大企業とも連携していたことなどで信用していた」と口をそろえた。
 滋賀県在住の50歳代の女性は、インターネットでチェンジ社を知り、21年8月に岡山県津山市の太陽光パネルを購入した。その後も小口で購入を続け、最終的な購入額は計約1653万円に上り、債権額は約1557万円となっている。
 配当は換金のできるポイントで付与された。これは、「チェンジコイン」という名称の仮想通貨だったが、国のお墨付きがあったことから信用していたという。
 この女性は「年金の不足分を補えるようにと購入していたが、将来設計が崩れてしまった。自己責任で致し方のない面はあるが、将来が危ぶまれる」と嘆いた。
 広島県在住の20歳代の男性は、21年6月に約49万円分を購入。別の男性も200万円分を購入した。
 後述の男性は、地元警察に相談していることを明かした上で「改正預託法施行後は太陽光パネルを販売して預からずに、管理会社にしてしまえば、破産は避けることができたのではないか」と話していた。

代議士、前市長と密接に

 池田容疑者を巡っては23年9月、衆院山形3区選出で自民党の加藤鮎子衆院議員と同容疑者が、笑顔で肩を組んでいる写真が一部週刊誌や夕刊紙で報じられた。
 撮られた時期は14年8月と、加藤衆院議員が代議士になる前だが、それ以降の衆議院議員総選挙の際には、加藤衆院議員の遊説先や集会などで、ビデオカメラを回している池田容疑者の姿が度々、目撃されている。
 池田容疑者は17年9月に市内の起業家育成スペース「ライトハウス」(同市新橋2丁目)を開設し、運営にも携わっていた。さらにコロナ禍で売り上げが落ち込んだ飲食店などを支援しようと、20年度に酒田市と連携してスマートフォンを活用した先払いチケット制度「もっけ玉」を運用した。

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もっけ玉発表時の池田容疑者と丸山前市長

 もっけ玉は、登録店が電子チケットを専用サイトで販売し、会員登録した利用者がチケットを購入して利用する仕組み。市観光交流課によると、登録店舗数は電子チケットと紙チケットを合わせ延べ484件。市はチェンジ社に補助金2524万円を交付した。
 これについて市民の間では前酒田市長の丸山至氏との親密な関係が取り沙汰され、「市のもっけ玉への助成は、酒田市長選(19年9月)で支援してもらった(丸山氏の)池田容疑者に対する論功行賞に映る」と批判する声が上がっていた。

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