郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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全文掲載

大型連休
一部にぎわうも全体的に低調
飛び石連休、荒天、物価高が影響

 大型連休中の庄内の主要施設の来客数や売上動向を、独自に取材した。開業したばかりのいろは蔵パークなど、にぎわった施設があった一方、前年を下回る施設が目立った。土日祝日が前後半で分かれて飛び石連休になったこと、悪天候、物価高とガソリン高で節約意識が働いたことなどが影響したようだ。(本紙取材班)

 土産品販売施設   いろは蔵パークは好調

 酒田市上本町の酒田商業高校跡地に大型商業施設「いろは蔵パーク」のA館が3月27日、B館が4月18日にそれぞれ開業した。
 伊藤真治・いろは蔵パーク統括マネージャーによると、酒田観光物産協会の酒田観光物産館酒田夢の倶楽や無印良品酒田など6店舗が入るA館は、3月27~31日の5日間の売上が約8千万円に上り、レジ客数は3万783人だった。
 A館の4月1~17日の売上は約1億1千万円となり、レジ客数は4万7755人。それに18日に開業した食品スーパート一屋いろは蔵パーク店など2店舗が入るB館を合わせた施設全体の4月1~30日の売上は約2億8千万円となり、レジ客数は12万4176人に上った。
 開業当初に比べて客足は落ち着いてきているが、大型連休期間の5月1~6日の6日間の売上は約8300万円(酒田地区薬剤師会のカイエイ薬局は含まず)となり、レジ客数は3万4465人に上っている。
 酒田夢の倶楽の売上も、大型連休期間に限れば、コロナ禍前でピーク時だった当時の売上にほぼ戻った。地元8蔵の日本酒の試飲コーナーでは、最高で300杯売れた日もあった。
 駐車台数は304台を確保していたが、5月3~5日の3日間は早ければ午前10時15分、遅くても同10時半までには満車となった。県内外から大勢の観光客などが来店し、全駐車台数の約43%、130台が庄内以外のナンバーだった。
 内訳は山形がほぼ2割で最も多く、次いで秋田、新潟が続いた。ただこの3県で庄内以外のナンバー全体の半分に届かず、残りは北見、札幌、函館、姫路、京都など全国各地からだった。
 最も懸念していたB館開業後の駐車場の問題も、これまでのところ大きな混乱は見られない。ト一屋いろは蔵パーク店の来店客は午前の早い時間帯と夕方が主流なのに対し、A館は昼の時間帯がピークだったことから、すみ分けがうまくいっている、と分析する。
 伊藤マネージャーは「店舗によって凹凸はあるが、3月は想定以上に忙しく、4月の売上は想定を超える120%となっている。大型連休を含め全体としては想定以上の盛況さで推移している」と振り返った。

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いろは蔵パークの酒田夢の倶楽

街中への誘導策が課題

 伊藤マネージャーは「いろは蔵パークの真価が問われるのはこれから」とも語る。観光客が国指定史跡・山居倉庫を見学した後に、いろは蔵パークで買い物や飲食をすることが、まだ定着していないためだ。
 山居倉庫への観光バスはほとんどが同倉庫の駐車場を利用するため、いろは蔵パークに立ち寄る時間が無い例が多い。中には、山居倉庫の敷地内にある、みどりの里山居館で買い物をする観光客もいるという。酒田観光物産協会と旅行会社で今後、改善策を検討する。
 同マネージャーは「いろは蔵パークが目指しているのは、観光客に買い物をしてもらい、その経済効果を街中まで波及させること。もう一つは、地元の人から街中に足を運んでもらうこと。今のところ、施設自体は売上、来店客数とも好調に推移しているが、いろは蔵パークの観光客を街中へどう誘導していくのかは、今後対応するべき課題になっている」と話した。

来店客は前年比1割弱増

 酒田市みなと市場テナント会長の小松祐輔小松鮪専門店代表によると、同専門店の4月26日~5月6日の来店客数は、前年同期から1割弱増えた。
 大型連休前半の4月26~28日は通常の土日を若干上回る程度で推移したが、29日~5月6日は例年と同様にぎわった。5月3~6日は観光客が多く、それ以外の日は地元客が中心だった。
 ピークは5月5日。各種定食などが午後1時には売り切れ、待ち時間は最高で3時間となった。地元客が多かったのは、旅行を控えた人などが来店したのではないか、とみている。
 日本海沿岸東北自動車道の遊佐比子―遊佐鳥海インターチェンジ間の開通効果で、秋田県由利本荘市以南からの来客が増えたほか、東北中央自動車道の整備効果か、県内陸、とりわけ南陽市など置賜地域や福島県からの来店客も目立った。
 客単価自体は落ちていないが、ガソリン価格など物価高騰の影響などもあり、昨年秋ごろから高額商品の購入を控える傾向が強まっている。それまで売れ筋だった大トロは敬遠され、中トロや赤身の上物が売れるなど、量を重視する消費者の心理が垣間見えるという。

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酒田市みなと市場

車寄るが買い物客は減少

 遊佐町の道の駅鳥海ふらっとの4月27日~5月7日の客数(レジカウント数)は、前年同期の82%にとどまり、売り上げも同80%ほどだった。期間中に平日が多かっただけでなく、後半の祝日が続いた5月3~6日も昨年より客足が落ちた。
 例年は特産品売り場のレジ2台にびっしり客が並び、行列が絶えないくらい来ていたが、今年は途切れることもあった。気温が低かったために、冷たい飲料やアイス・ソフトクリームなどもあまり動きが無かった。野菜と鮮魚の直売、パンなど、どの部門も売り上げは全体的に減った。
 駐車場には車中泊も含め車がたくさん来ていて、3~6日には交通整理を置いたが、車の人たちが食事や土産品の購入に結びついたのかは疑問。ごみを捨てたりトイレに行ったりするための通過点になっている可能性もある。
 去年はバイカーが多く、お土産を宅配便で送る発送手続きもあったが、今年はそうした動きも少なかった。大型連休だけでなく今年度に入ってから、大型観光バスの旅行客を見ていない。
 土産品の中では、去年まで無かった「月光川ウイスキー」が売れた。2月に開いた韓国フェアからパン店が販売している「クロッフル」が大人気で、売り上げは右肩上がり。今後もアレンジして販売していく予定。
 西浜コテージは連休期間中、平日も含め6棟がすべて予約で埋まって例年通り。県外客が多かった。
 キャンプ場は昨年に比べて利用客は半分程度だった。天候の影響もあったと思われる。県内客と県外客は半々程度で、近場の利用もある。最も利用客が多かったのは3日の450人。

 観光地   飛島航路、運航4割切る

 定期船とびしまを運航している酒田市定期航路事業所によると、4月26日~5月6日の11日間は、1日2便で22便運航する計画だったが、出航できたのは8便のみで乗船客数は876人だった。
 昨年は4月27日~5月6日の10日間で19便運航して、乗船客数は2022人だったことと比べ、56・7%減と大きく落ち込み、10便しか運航できなかった一昨年の乗船客数1252人も下回った。風が強く波が高い天候の悪い日が続き、欠航が多かったことが響いた。
 出航できたのは4月28日、5月1、3、6日の4日間。祝日の3日は2便に計316人が乗船し、ほぼ満席状態だった。1日と6日も各100人を超えたが、3日に集中した。
 期間中の発券数(島民を除く)のうちインターネット予約客が64%、窓口で直接購入した客が36%。乗船客のうち県外客は65・9%を占めた。乗船客のうちバードウオッチングを目的とした客は49・7%で、個人や小グループが多かった。
 4月に開設した山居倉庫インフォメーションセンターの来館者数は、4月26日~5月6日に1万435人だった。最も来館者が多かったのは5日の2203人。連休が始まった26日は521人で、前日の25日の248人の約2倍に増えた。連休後の土日の10日は440人、11日は388人だったことから、天候なども影響するが、大型連休中は連休前後よりは増えていた。
 夢の倶楽がどこに移転したのか尋ねられて、いろは蔵パークのことを教えると、歩いて橋を渡って土産品を買いに行く人たちもいた。

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山居倉庫とケヤキ並木

水族館は前年比約14%減

 鶴岡市立加茂水族館の4月25日~5月6日の入館者数は2万4625人。前年同期比3865人13・6%減だった。コロナ禍前の19年同期の5万5118人より3万493人55・3%少なかった。
 ピークは5月3~5日で各日とも4千人前後が訪れた。最も混雑したのは4日の4441人。入館待ちの行列が荒崎灯台付近まで連なった。駐車場待ちの渋滞を見て入館を諦める車もあった。行列は最終入館時間の午後5時ごろまで続いたため、閉館を午後6時から同6時半過ぎに延長した。
 4320人が入館した3日は、午前と午後に客が分散したため4日ほどの行列はできなかった。3647人が入館した5日は、午前8時20分ごろから行列ができ、昼には荒崎灯台付近まで長くなったが、午後はUターンが始まったためか、夕方には行列が無くなった。
 今年は入館窓口を分けて、前売り券と年間パスポートの客が優先的に入場できるようにした。混雑の緩和には至らなかったが、前売り券を持っているのに列に並ぶ不満を解消できた。

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加茂水族館のクラゲ大水槽

 鶴岡市羽黒庁舎産業建設課と羽黒町観光協会によると、出羽三山神社・国宝五重塔・いでは文化記念館・休暇村羽黒・月山ビジターセンターを含む羽黒山地域の4月25日~5月6日の推計観光客数は2万1000人。前年同期比4300人17・0%減った。内訳は県内客が6300人で同1400人18・2%減、県外客が1万4700人で同2900人16・5%減だった。
 最も多かったのは5日の3900人。駐車場は終日ほぼ満車となり、午前11時~午後1時半のピーク時は駐車場待ちの渋滞ができた。
 連休前半は飛び石連休となったため、通常の土日並みの千人台だった。連休後半は3、4日が雨で客足が鈍り、6日はUターンが始まって、5日の半分以下の1700人だった。
 連休中の駐車場のナンバーを見ると、例年は関東が5割を占めるが、今年は新潟と東北の近県が4割で、関東は2割ほどに減り、庄内を例年より多く見かけた。物価高やガソリン価格の高騰が影響したためか、連休でも近場で過ごそうとする意識がうかがえた。

 ホテル・旅館   観光客は前年下回る

 酒田市ホテル振興協議会によると、加盟する同市内6ホテルの4月26日~5月6日の宿泊客数は、前年同期から200人ほど増えたものの、売上は前年同期とほぼ同額にとどまった。
 田代健之・ホテルリッチ&ガーデン酒田宿泊部支配人によると、ガソリン価格の値上がりなど長引く物価高騰の影響から、旅行を控える傾向が強かったことに加え、酒田市が通過型の観光地で最終目的地になりにくいこともあり、観光客の利用は前年同期を下回った。
 一方で、前年同期には無かった酒田共同火力発電(株)の保守・点検作業に伴う長期宿泊者の利用が、大型連休明けまで続いたため、観光客の減少分を補い宿泊客数は微増となった。
 宿泊料金はイールドコントロール(平日などは安く、土日や繁忙期は高くする)を採り入れ、各ホテル平均で前々年同期から10~15%値上げした前年同期と、ほぼ同水準に設定した。
 しかし、観光やビジネス利用に比べて料金の安価な長期宿泊の1人利用が多く、客単価は前年同期を若干下回ったことから、売上は前年同期並みにとどまった、と分析している。
 今年は前年と同様、大型連休が飛び石連休になった。このため客室の稼働率は、前年同期とほぼ同じ傾向となり、5月3日と4日は満室だったが、5日と6日は空室が目立った。長期宿泊者を除いた観光とビジネスを合わせた宿泊客は、県内陸と宮城県、東京都を含めた首都圏が多かった。インバウンド(訪日外国人旅行)の利用はほとんど無かった。
 湯野浜温泉観光協会によると、同温泉街の4月25日~5月6日の宿泊と日帰り客は5300人で、前年同期比1200人18・5%減だった。内訳は県内客が1000人で同1300人56・5%減、県外客が4300人で同100人2・4%増。
 最も多かったのは5月4日の900人。3日は800人、5日は700人と、この3日間に集中した。3~5日は旅館全館でほぼ満室となった。レストランゆのはま100年キッチンも3~5日は満席となり、4日は年間トップクラスの売上を記録した。
 連休前半は通常の土日並みで、4月26、27日は各500人だった。同観光協会が旅館から聞いたところ、宿泊客は年配者が多く、若年層や家族客は少ないという旅館があった。一方、砂浜で遊ぶ家族客や夕日を見に来るカップルなどは多く、物価高の影響による節約志向がうかがえた。

 高速交通   空路増え鉄道高速道は減

 全日本空輸(株)の庄内空港―羽田空港便の4月26日~5月6日の搭乗客数は1万1604人で、前年同期比2・4%増えた。提供座席数は1万8410席で同7・8%増えた。
 ピーク日は、庄内行きは5月3日で計5便の平均搭乗率は95・3%。第5便の搭乗率87・7%以外は第1~4便とも9割を超えた。
 次に多かったのは4月26日の同85・0%、5月2日の同79・4%、4日の同69・9%だった。
 羽田行きのピークは5月3日で同88・7%。次いで6日の同79・8%だった。3日は第1、2便の搭乗率が9割を超えたが、第3~5便は6~8割台と比較的落ち着いていた。
 東日本旅客鉄道(株)によると、羽越本線・特急いなほの4月25日~5月6日の利用客数は2万9000人で、前年同期比2000人6・5%減だった。
 東日本高速道路(株)によると、山形自動車道の庄内あさひ―鶴岡インターチェンジ間の4月25日~5月6日の平均日交通量は、上り線が2100台で前年同期比300台12・5%減。下り線は1900台で、同400台17・4%減だった。ピーク日は上りが5月5日、下りが5月3日だった。

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