第27回参議院議員選挙(7月20日投開票)は、7月3日の公示まで1週間を切った。山形県選挙区(改選数1)には、再選を目指す無所属で現職の芳賀道也氏(67)=国民民主党推薦=、自民党新人で元山形県議会議員の大内理加氏(62)=公明党推薦=、共産党新人で党常任委員の三井寺修氏(45)、参政党新人で自営業の佐藤友昭氏(52)の4人が立候補を予定している。選挙戦本番を控え、本紙が4氏に対し独自に行ったアンケート調査の結果を掲載する。(編集主幹・菅原宏之)
アンケート調査は5月下旬に立候補を予定する4人に調査用紙を送り、6月中旬に回答を得た。質問は庄内地方と日本が直面している諸問題を中心に計8問。それぞれの問題をどうとらえ、解決に向けどのような対応・施策が必要と考えているのかなどを答えてもらった。
庄内地方は歯止めの掛らない人口減少を背景に、地域経済は停滞・縮小傾向が強まり、産業力を強化してどう成長軌道につなげていくのかなど、解決するべき課題が山積している。
これを踏まえ「庄内地方の現状をどのように認識しているか」を聞いた。
芳賀氏は「昨年の豪雨災害もあり、人口減少もあるが、酒田の素晴らしさは誰もが知っている」と回答したが、三井寺氏は人口減少や農業経営の困難さ、災害対応の弱体化を挙げて「暮らしの安心が奪われ、明日への希望が持てない状態」と答え、両氏の間の認識に大きな隔たりが見られた。
一方、大内氏は「農業、漁業ともに山形県の第一次産業を担っている大事な地域」、佐藤氏は「山形県内において一次産業の盛んな地域であり、重要な地域」とそれぞれ回答し、両氏はほぼ同様の認識を示した。
今後について、芳賀氏は「再生可能エネルギーや新たな研究開発などで次代の成長が期待される」、大内氏は「インフラ整備が前進し、エネルギー基地の役割が発揮できれば、経済発展につながる」などと指摘した。三井寺氏は「命と暮らしを大切にする政治への転換は、庄内にとっても特に大切」、佐藤氏は「庄内地方は日本農業の復活の鍵を握っている」などと主張した。
次期参院選では、物価高騰対策と、それに伴う家計支援策が大きな争点の一つとなってくる。
これを踏まえ「あらゆる物価が高騰を続け、地方では賃金上昇が追い付かず、暮らしは厳しさを増している。どのような対策を考えているか」を尋ねた。
大内氏は「物価上昇を上回る賃上げができるよう、成長戦略と事業者支援を加速する」などと答え、減税についての具体的な言及は無かった。
これに対し芳賀氏は「ガソリン税暫定税率の廃止や、所得税の給与所得の課税最低額『103万円の壁』を178万円まで引き上げ、全ての働く人たちの手取りを増やす」などと回答した。
三井寺氏は「消費税を5%に減税し、将来は廃止を目指す。代わりの財源は、大企業と富裕層に応分の負担を求める」、佐藤氏は「税と社会保険料の合計の国民負担率を、現在の46%から35%を上限に可処分所得を増やし、国民の税負担を軽減する」などと回答した。
芳賀、三井寺、佐藤の3氏が減税による物価高対策を主張したのに対し、大内氏は賃上げを訴えるなど、4人の間で考え方の違いが鮮明になっている。
鶴岡、酒田両市では、日々の生活を支える医療、福祉、教育、買い物、二次交通などの面で、持続可能な環境を維持していくことが危ぶまれる事態に直面している。
そこで「地方の暮らしを守るために、どのような政策を打つべきか」を聞いた。
芳賀氏は「医療・介護・保育・福祉・教育の各領域に対する公的な報酬を引き上げ、移動の権利も国が保障すべき」と回答した。
佐藤氏は、子育て世代の減少が地域経済の停滞と活性化が進まない要因、と指摘して「0~15歳の子を持つ世帯に一人当たり毎月10万円の子育て給付金を支給する」などと回答し、三井寺氏は中小企業と小規模事業者の振興などを挙げて「地方自治体が取り組む地域活性化策を、国が全力で支援する」などと答えた。
大内氏は、長期的には地域の経済を成長させることが必要、と指摘した上で「地方分散型の国づくりを提言したい。地方に投資を促し、新たな拠点を創り、人を集めて経済を成長させることで、課題を解決できる」などと主張した。
庄内地方が抱える課題の一つに、地域の発展に欠かせない空港、道路、鉄路の高速化を含めた交通基盤整備の遅れがある。
こうした現状を踏まえ「庄内空港の羽田5便通年化と新路線開拓、山形新幹線の庄内延伸、日本海沿岸東北自動車道の県境区間開通にどのように取り組んでいくのか」を尋ねた。
大内氏は「日本海沿岸東北自動車道の県境区間はスピード感を持って整備が進むよう力を尽くしたい。羽田5便通年化と新路線の開拓は大切な政策で、滑走路の延長も前向きに進めていくべき」と回答した。
芳賀氏は「日本海沿岸東北自動車道は県境をつなげる必要がある。吉村美栄子県知事と協力して山形新幹線を延伸する。羽田通年5便化や新路線開拓で庄内空港の強化も必要」と答えた。
佐藤氏は「羽田5便の通年化はニーズや採算性を考慮して取り組むべきと考える。山形新幹線の延伸も積極的に考える」などと答え、三井寺氏は「庄内空港の利便性を確保しながら、日本海沿岸東北自動車道が地域の雇用拡大と地域活性化に結び付くよう、自治体の財政負担にも配慮して計画的に進める」などと回答した。
庄内空港の羽田5便通年化には大内、芳賀の両氏が積極的な考えを示したが、佐藤氏は慎重な姿勢を見せ、三井寺氏からは具体的な言及は無かった。
日本海沿岸東北自動車道の県境区間開通には大内、芳賀の両氏が前向きな姿勢を示し、三井寺氏は一定の条件の下での推進を、佐藤氏は言及しなかった。
山形新幹線の庄内延伸に対しては、芳賀、佐藤の両氏が積極的な姿勢を示した一方、大内、三井寺の両氏からは言及が無かった。
今回の米価高騰は、生産者と消費者の双方に持続可能な生産体制や食料安全保障をどう確保していくのかといった課題を、改めて考えさせる機会となった。
これを踏まえ「日本の農業をどのように変えていくべきか」を聞いた。
芳賀氏は「米価高騰は『減反政策』など国の農政の失敗が原因。増産を考え、農地の多面的機能に着目した直接支払いで農家の所得を支え、肥料代などの補助も拡大して、持続可能な農業に変えていく必要がある」などと回答した。
三井寺氏は、米不足が価格高騰を引き起こしたと指摘し「減反・減産から増産へ転換し、国が責任を持って安定供給を進める農政に転換する。農家への価格保証・所得補償制度を充実させ、消費者に納得できる価格で提供する」と答えた。
佐藤氏は、今までの農業政策の歪みが現状を招いているとし「農業従事者に十分な戸別補償をして増産し、価格補償や新規農業従事者への補償も充実させ、小規模農家にも補償することが重要」との考えを示した。
これに対し大内氏は、安定した米価は生産者の生産持続のために不可欠、と指摘し「農家の『稼ぐ力』を強化するための営農や輸出支援などを着実に実施する一方、備蓄米の放出などで安定化を図る」と主張した。
米の増産には芳賀、三井寺、佐藤の3氏が前向きの考えを表明したが、大内氏からは言及が無かった。
農家への直接支払いや各種補償の充実に対しては、芳賀、三井寺、佐藤の3氏が必要と訴えた一方、大内氏からは言及が無かった。
米国の第2次トランプ政権は、保護主義的な関税政策を打ち出し、日本に対し、国防費をGDP比3・5%に引き上げるよう求め、在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)を増額する交渉も行っている。これを踏まえ「今後の日本はどのような外交関係を築いていくべきか」を尋ねた。
大内氏は「日米関係は日本外交の基軸であり、今後も米国との関係は重視すべき。中国など近隣諸国との関係も重要で、重層的な友好関係を築くべきだ」との考えを示した。
芳賀氏は「日米安保条約や日米関係は維持しながらも、『米国依存』になり過ぎた日米防衛協力や、日本に不利な日米地位協定は見直すべき」などと回答した。
佐藤氏は「他国との協調的な関係は続けるべきだが、日本人ファーストで外交を進め、本当の意味での公平で平和的な日米関係を構築すべき」などと答えた。
三井寺氏は「トランプ関税を許さず、撤回を求める外交で、日本の経済、中小企業・農業を守る。日米同盟絶対の『戦争準備』をやめ、憲法9条を生かした平和外交で『平和の準備』を進める」などと主張した。
今後も米国との関係を重視するべきとした大内氏に対し、芳賀、佐藤の両氏は日米関係を維持しながらも過度な米国依存からの脱却を、三井寺氏は「米国追従」からの転換を訴え、踏み込んだ見直しにも言及した。
エネルギー政策を巡る状況は変化が激しく、安定供給の確保や経済効率性のバランスを取りながら、進めていくことが求められる。
そこで「危険が付きまとう原子力発電、コストアップで事業化が難しくなっている洋上風力発電などの再生可能エネルギーをどのようにすべきか。主力電源はどうすべきか」を聞いた。
大内氏は「厳しい安全基準を満たした原発は稼働すべき。一方、洋上風力など新エネルギーも大いに支援し、電源構成の多角化を図るべき」と答えた。
芳賀氏は「再生可能エネルギーをベースに、できる限り地域内の循環を理想とすべき。ただ洋上風力発電など再生可能エネルギーの活用は性急に比率を高めることで『環境破壊』などが起きないよう、進める必要がある」と回答した。
佐藤氏は「健康被害や非効率性から洋上風力発電の推進には反対。それよりも新技術の火力・水力・地熱などのさらなる革新技術を推進する」などと主張した。
三井寺氏は「再生可能エネルギーによる『環境保全区域と建設可能区域を明確にしたゾーン区域』を、住民参加と合意のもとで作成する。大胆な再生可能エネルギー導入で2035年までに、電力比8割にする」などとする考えを示した。
再生可能エネルギーの導入には4人とも積極的な考えを示したが、洋上風力発電の推進には佐藤氏が反対、芳賀氏は条件付きで賛成、大内氏は賛成の意向を示し、三井寺氏は言及しなかった。
原発の稼働に対しては大内氏が賛成の考えを示し、芳賀、佐藤、三井寺の3氏からは言及が無かった。
自民党の派閥などが主催した政治資金パーティーの
収益の一部を、政治資金収支報告書に過少・記載していなかった裏金問題は解明されず、企業・団体献金の見直しもいまだに行われていない状況が続いている。
これを踏まえ「政治資金規正法をどのように改正すべきか」を尋ねた。
三井寺氏は「企業・団体によるパーティー券購入を含む企業・団体献金を全面禁止し、国民の税金を分け取りする政党助成金制度を廃止する」などと回答した。
佐藤氏は「企業・団体献金は無くし、個人献金だけにして、クリーンな政治を目指す」との考えを示した。
芳賀氏は「企業・団体献金を制限するなど規制を強化すべきで、政治資金は基本全て公開・見える化を図るべき。お金で政治が左右される仕組みを止めるべき」などと主張した。
これに対し大内氏は「企業・団体を一律に排除すべきではない。大切なのは政治資金に対する公開性を高め、多くの監視の目が行き届くようにすることである」などと回答した。
企業・団体献金について三井寺、佐藤の両氏は全面禁止・廃止の考えを示し、芳賀氏は規制の強化を、大内氏は存続を主張した。
政治資金の透明化は芳賀、大内の両氏が必要と訴えたが、三井寺、佐藤の両氏は言及しなかった。