郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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本紙単独インタビュー
山形新幹線の庄内延伸、前に進める
加藤聡・酒田商議所会頭語る

 酒田商工会議所の加藤聡会頭は8日、本紙の単独インタビューに応じ、吉村美栄子山形県知事が推進に前向きな見解を示している山形新幹線の庄内延伸について「経済界としては、とてもありがたいことだと受け止めている。これまでは動きが無かったかもしれないが、できる限り頑張って、前に進めていきたい」との考えを示した。酒田市民の間に、会頭がリーダーシップを発揮して、インフラ整備を進めていくのが本来の姿、との意見があることには、自らがリーダーシップを取り、(庄内延伸の推進運動を)やらせていただくことに、何らいとうことはない、と決意を語った。(編集主幹・菅原宏之)

写真
加藤会頭(7月8日)

知事に「頑張れ」と激励された

―吉村美栄子県知事が、本紙の単独インタビューと県議会6月定例会予算特別委員会で、山形新幹線の庄内延伸の推進に前向きな見解を示した。会頭としてどう受け止めているか。
 先日、矢口明子酒田市長と一緒に、吉村県知事から山形新幹線の庄内延伸について直接話を伺う機会があり、県知事が庄内延伸の推進にとても強い意思を持っていることを、改めて確認することができた。
 その際、吉村県知事からは「奥羽本線の山形新幹線米沢トンネル(仮称)を整備するのだから、庄内地域にも山形新幹線を延伸し、トンネルの整備効果を県内4地域の均衡ある発展につなげたいので、地域から(要望の)声を上げてほしい」との意向が示され、「頑張れ」と激励も受けた。置賜地域に巨額の投資をする計画があり、その利便性・恩恵を庄内地域に波及させたいという吉村県知事の思いは理解できる。我々経済界としては、とてもありがたいことだと受け止めている。
 これまでは大きく動いていなかったかもしれないが、とにかくできる限り頑張って、前に進めていきたい。逆に言うと、我々はもっと早い段階で庄内延伸推進の声を上げなければならなかったかもしれない。
―「頑張れ」と励まされたということだが、吉村県知事は「地域でも議論を盛んにしてほしい」との意向を示している。議論をどう盛んにしていく考えなのか。
 吉村県知事が頑張れとおっしゃった意味は、地域で庄内延伸の機運を醸成してほしい、ということだと理解している。議論を盛んにし、機運の醸成を図っていくにはどうしたらいいのか、を現在検討している。地域の皆さんの中に「新庄市から庄内地域に山形新幹線をぜひ延伸してほしい」との思いが広がっていくような進め方を、方法論も含めて探していかなければならないと考えている。

鶴岡商議所会頭と意見交換

―酒田市では庄内地域が一つにまとまった形で要望活動を展開する方向を考えているようだが、経済界としての考え方は。
 行政と基本的な考え方は同じ。かつて酒田商工会議所の新田嘉一元会頭と鶴岡商工会議所の故本山彌元会頭が中心となり、庄内地域の15経済団体で組織する「山形新幹線庄内延伸促進期成同盟会」を設立し、整備運動を展開したが、その時と同じような働き掛けはしていかなければならない。
 庄内延伸については、鶴岡商工会議所の上野雅史会頭と頻繁に意見交換を行うなど、商議所レベルでの情報共有は進めているが、酒田、鶴岡両市の間に温度差はあるのかもしれない。
 ただ多少の温度差はあったとしても「(庄内延伸の実現に向け)一緒に頑張れませんか」とお願いをして、(鶴岡商工会議所から)応援していただくことは可能だと思っている。
 酒田港に寄港した外航クルーズ船の外国人観光客が一番訪れるのは、鶴岡市の出羽三山。たとえ山形新幹線で庄内を訪れた観光客が余目駅や酒田駅で降りたとしても、足を延ばす先は出羽三山や加茂水族館であり、宿泊先はあつみ温泉や湯野浜温泉になる。このように庄内延伸による経済効果を、庄内地域全体で享受できればいいと思う。
―鶴岡商工会議所以外の庄内地域の経済団体には、どのような働き掛けをしていこうと考えているのか。
 酒田市のふれあい商工会、遊佐町の遊佐町商工会、庄内町の庄内町商工会、鶴岡市と三川町の出羽商工会といった庄内の経済団体には、なるべく早い時期に庄内延伸を巡る現況を説明しなければならない。
 さらに陸羽西線沿線にある、戸沢村の最上南部商工会や新庄市の新庄商工会議所など、機運醸成に大きく関わってくる最上地域の経済団体にも、現況を説明していこうと考えている。

自らリーダーシップ発揮

―酒田市民の間には「行政と経済界、議会で構成する期成同盟会的な組織をつくった方がいい」といった声がある。庄内延伸に向け、推進のための組織体などをつくる考えはあるのか。
 期成同盟会をつくり、有識者を招いた勉強会や講演会を開催し、関係機関への要望活動を展開するのも一つの方法だと思う。ほかにも庄内開発協議会でしっかりと議論をするなど、さまざまな方法があると思う。いずれにしても、それらに説得力を持たせた形で、庄内延伸を前に進めていくようにしなければならない。
 今後の進め方については検討中だが、少なくとも経済界と行政が連携し、力を合わせていくことは不可欠だと考えている。
―庄内空港の開港では、酒田商工会議所の故前田巌元会頭、日本海沿岸東北自動車道(日沿道)の新潟、秋田両県境区間の整備や酒田港の港湾整備などでは、新田元会頭が果たした役割は大きい。酒田市民の中には交通インフラの整備を進める際は、会頭がリーダーシップを発揮して市全体を引っ張り、行政がそれを支えていくのが本来の酒田市の姿、という意見も強くある。
 引っ張っていくという言い方、考え方が正しいのかどうかは分からないが、(吉村県知事に)頑張れとまで言っていただいている以上、できる限りのことを、なるべく早くやっていかなければならない。
 その意味で、私がリーダーシップを取り、(庄内延伸の推進に向けた運動を)やらせていただくことに、何もいとうことはない。

庄内延伸の決意示したい

―会頭の立場から、庄内延伸が実現した場合の利点をどう見ているか。
 県内4地域が一気通貫で行き来ができるようになることから、県都の山形市だけでなく、置賜という魅力的な地域ともつながることが一つ。もう一つは、対首都圏ということで言えば、羽越本線と奥羽本線のどちらの路線からでも行き来できるようになること。羽越本線は冬季間に運休や遅延が多発しているが、山形新幹線は比較的雪に強い。
 庄内延伸の実現に向けては、JR東日本も大事なパートナー。今後は同社を動かしていかなければならないので、一生懸命にお願いをしていきたい。
―改めて会頭としての決意を聞かせてほしい。
 吉村県知事は庄内延伸の推進に対して強い意思を持ち、「地域でも議論を盛んにしてほしい」とおっしゃっているので、その思いに応えていきたい。そして我々酒田商工会議所の強い決意を、いろいろな場面で示していく必要がある。
 具体的な進め方はこれから決めるが、庄内延伸に向けた我々の要望を県やJR東日本などの関係機関に届け、他地域も巻き込んで機運の醸成を図っていく。それが会頭として私ができる第一歩だと思っている。

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