7月の記録的な猛暑の影響と、7月から盆休み期間までの庄内の観光地や店舗の状況を聞いた。熱中症の救急搬送が7月に急増した。農作物は一部で猛暑の影響を受けたが、8月の雨で回復したものもある。海水浴は猛暑と8月の雨天で客足が伸び悩んだ。天候に左右されない土産品販売施設やスーパーでは、帰省客や観光客で売り上げが伸びた。旅行商品は北海道や東京、関西、スポーツ関連が売れた。(本紙取材班)
山形地方気象台のまとめによると、7月は記録的な高温と少雨となった。酒田の月平均気温は27・7度で平年差3・9度高く、階級区分にすると「かなり高い」。1937年の観測開始以来、最も月平均気温が高い7月となった。
降水量は3・0ミリで平年比1%と同「かなり少ない」で、月降水量はこれまでで2番目に少なかった。日照時間は270・4時間で平年比170%の同「かなり多い」となった。
7月16日と31日は日最高気温が37・0度となり、7月の日最高気温としては2番目と3番目を記録した。日最低気温は17日が26・9度とこれまでで3番目に高かった。
狩川では7月30日に日最高気温が37・8度と、7月としては観測史上最も高くなり、年間を通しても最も高かった。
月降水量は鶴岡5・0ミリ、狩川6・5ミリ、櫛引9・0ミリ、鼠ヶ関と飛島がともに2・5ミリ、浜中2・0ミリと6地点で7月として最も少なく、年間を通しても最も少なかった。
鶴岡市消防本部によると、管内の熱中症とその疑いによる搬送件数は5~7月に計50件と、前年同期比33件194・1%増へ3倍近くに増えた。猛暑の23年よりは4件7・4%減った。
50件の内訳を見ると、5月は2件だったが、6月に17件、7月に31件と急増した。年齢別の内訳は、高齢者が38件で全体の76・0%を占め、成人は11件で22・0%、少年は1件で2・0%だった。発生場所は屋内と屋外がそれぞれ25件。
8月は暑さがやや落ち着いたものの残暑は厳しく、9、10月も暑さが続くと予報されている。同本部では「屋内でも熱中症になる危険は高い。エアコンの使用と水分の補給に気を付けてほしい」と呼び掛けている。
酒田地区広域行政組合消防本部によると、熱中症の搬送人数は5~7月で77人と、前年同期比29人60・4%増となった。特に7月は46人と大幅に増えた。8月の状況はまだまとまっていないが、熱中症とみられる死者があった。
7月の高温と少雨で農作物の被害も心配されたが、8月に入りまとまった雨が降ったことで救われた模様。
庄内たがわ農協では、米は7月の出穂の前の水不足で生育の遅れや不稔などが心配されたが、8月上旬の雨で随分取り戻した。平地では用水が来ていたため、高温の影響は実って収穫してからでないと分からない。
温海や朝日、羽黒など山間地の自然水を引いている水田では、用水の確保が難しくなったが、ある程度の回復が見込まれる。
鶴岡市農協によると、だだちゃ豆は水不足で水がかけられない畑では少し収量が減ったが、多くの畑では水を掛けるように指導し、今のところ計画収量と大きな差は出ていない。
メロンは暑さで株が弱ったり、日焼け果などができたりして収量が少し減った。
庄内みどり農協では、パプリカやミニトマトなどの果菜類で実が柔らかくなるなどの高温障害が出た。ここ数年高温が続き、果菜類は計画の4~5割に収量が落ちている。露地のネギは暑いために生育が悪い。
メロンは良かった。梨は8月の雨で実が大きくなって例年並み。
夏から秋が一番野菜が採れる時期だが、気温30度以上が長く続くと、夏を越して収穫する野菜に影響が出てくる。ストックは発芽がそろわず、芽が出ても枯れるものがあった。
暑さで農家は作業が大変だった。その上、ハウスを遮光するなどの高温対策が必要となっているため、資材に今まで以上にお金がかかる。害虫も増えて防除作業も増えている。
湯野浜温泉観光協会によると、湯野浜海水浴場の海水浴客数は7月は晴れが続いて出だしは良好だったが、書き入れ時の8月に雨風が多くなり、過去最低だった昨年の11万7千人をやや上回る程度となる見込み。
今年は空梅雨だったため、海水浴場開きの7月18日より前から海で遊ぶ人が多かった。7月は天気が良かったものの暑すぎたためか、海水浴に来ても1時間ほどで帰る客もいた。
8月は一転して雨の日が多く、晴れていても波風が強く、海水浴には不向きな日が多かった。この時期には珍しく砂が舞うほど風が強い日もあった。
8月の遊泳禁止日数は21日までに8日。24年は2日、23年は2日だった。晴れていても遊泳禁止となったため、同観光協会では遊泳の可否を問う電話が鳴りっぱなしだった。
鶴岡市立加茂水族館の入館者数は、7月のピークは3連休中日の7月20日で3876人。昨年の7月14日より83人2・1%少なかった。
8月の盆休み期間は、8月9~17日で計3万1291人と、前年同期比2272人6・8%減。最多は11日で4236人。次いで10日3852人、12日3524人、14日3518人。3500人を上回ったのはこの4日間のみで、盆期間の後半は期待したほど入館者数が伸びなかった。
10~16日は営業時間を午前8時~午後6時に、前後1時間ずつ拡大したが、入館者は午前10時~午後2時の時間帯に集中したため、入館待ちの行列が最長で荒埼灯台付近まで伸びた。
酒田商業高校跡地に今春開業した大型商業施設いろは蔵パークの7月の総売上は2億6393万円で、レジ客数は11万5567人。8月1~17日は同1億3274万円で、同5万6101人だった。
伊藤真治いろは蔵パーク統括マネージャーによると、酒田観光物産協会の酒田夢の倶楽では、8月9~17日の盆休み期間の来館者数が大型連休を上回り、売り上げも好調に推移した。7月下旬に店内を一部改装し、新たにカウンター席を9席設け、商品の陳列を変えたことなども奏功した。
食品スーパート一屋いろは蔵パーク店も、同期間は盆の買い物客でにぎわい、特に12日は開業当初の来館者数と売り上げに近付いた。
駐車台数は304台を確保しているが、盆休み期間は午後1~2時に満車となり、夕方まで続いた。酒田夢の倶楽に立ち寄り、土産品などを購入して首都圏などに戻る帰省客が多かったため、とみている。全駐車台数の4割、約120台が庄内以外のナンバーだった。東日本を中心に全国各地のナンバーが見られたが、山形、秋田、宮城が多かった。
伊藤マネージャーは「7月から定期的な集客催事を始めた。各種の催事で来館を促し、観光客と地元の人が街中を訪れるきっかけを増やすために取り組んでいる」と話した。
グッドライフアイランド合同会社によると、飲食店6店(8月以降5店)が入る酒田本港東ふ頭交流施設サカタントの来館者数は、7月が2万3250人で前年同月から660人2・9%増えた。8月1~17日は2万3773人で同4274人21・9%増えた。このうち盆休み期間の8月9~17日の来館者数は1万7770人で、同2693人17・9%増えた。
その要因を同社では①昨年は7月25日の豪雨災害で、7月25~31日の来館者数が大きく落ち込んだが、今年はその反動的な動きが見られた②6月から好天が続いて夏日が多くなるなど、早くから夏の状態が続いたため、人の動きが活発だった③盆休み期間に入館者数が1日2千人を超えた日が昨年は無かったが、今年は6日間と過去最多を記録した―ためと説明する。
来館した観光客は、県内陸のほかに秋田、新潟、宮城といった隣県が目立った。
来館者数は7、8月とも前年同期を上回ったことから、入居店の合計売上高も同10~20%伸びた。
遊佐町の道の駅鳥海ふらっとの入込客数(レジカウント数)は、7月が前年比20・0%増、8月は17日までで同13・7%増。客数増に伴い売り上げも伸びた。駐車場で車中泊をする人も多く、車のナンバーを見ても遠方から動いている様子だった。
盆は9連休の人も多かったのか、客足のピークが長かった。中でも8月14、15日は入込客数が3200人で最も多かった。海水浴客も多く、海水浴帰りの客で午後4~5時にアイスクリームコーナーがにぎわった。イワガキは6月1日~8月17日に毎日入荷できたことで売り上げが伸びた。
特産品売り場では、例年人気の山形のご当地サイダーパインサイダー、鶴岡の名産からからせんべいが人気で、高価な遊佐町産の月光川ウイスキーも売れた。
酒田市ホテル振興協議会によると、加盟する市内6ホテルの7月の宿泊客数は2万3185人と、前年同月の2万379人から2806人13・8%増えた。
同協議会では8月1~17日の宿泊客数をまとめていないため、会員のホテルリッチ&ガーデン酒田の宿泊客数で見ると、前年同期から15・0%減っている。
同ホテルの田代健之宿泊部支配人は、7月の宿泊客数が前年同月を上回ったのは①平日のビジネス需要が順調に推移②山形県中学校総合体育大会の各種競技が天候に恵まれて週末に相次ぎ開かれた③観光需要が好調―だったことで、稼働率が落ち込む日が少なかったことが要因と分析した。
8月は①16日の第32回赤川花火大会の予約状況が例年より低調に推移②昨年まで8月第1土曜に開いていた酒田の花火が9月13日にずれ込んだ―ことが響いたと説明した。
加盟6ホテルの売り上げは、同協議会で共有していないことから、ホテルリッチ&ガーデン酒田の7月の売上を見ると、前年同期から9・1%増えた。宿泊客数が前年同月を239人上回ったことなどによる。
8月も同3・0%増えた。宿泊客数は前年同期を下回ったものの、帰省客と観光客を中心に、2人利用の宿泊が例年より多く、客単価が上がったことが要因。宿泊料を土日や繁忙期は高くしていることも、売上高の伸びにつながった。
グッドライフアイランド合同会社によると、酒田本港に昨年9月に開業した宿泊用コンテナ施設キャンプスの客室稼働率は、7月、8月1~17日とも90%超と好調だった。県内陸と宮城県を中心に、海水浴客を含む家族連れが多かった。
本間当代表は「今年の夏はサカタントの来館者数、キャンプスの利用者数に加え、売上的にも思った以上の成果を上げることができた」と話した。
湯野浜温泉観光協会によると、同温泉街の各施設の宿泊者数は昨年並みの見込み。週末と盆休み期間は全館ほぼ満室だったが、平日は空いている日が多く、期待ほど伸びなかった。
新潟県などの豪雨被害や熱中症アラートの頻発などで、屋外のレジャーに出掛ける人が少なかった可能性がある。
生活協同組合共立社では、7月期(6月21日~7月20日)、8月期(7月21日~8月20日)ともに売り上げが前年同期を上回った。各種商品の単価が上がっていること、米の売上が数量・販売額ともに伸びたことも影響した。
1人当たりの売上点数は7月が前年比100%、8月は同98%だったが、客足が増えたことで売上増になった。最大9連休で帰省客も増え、盆用のオードブルや寿司、刺身盛り合わせなどが売れた。暑かったことでアイスクリームや飲料、カットスイカ、メロンなど、夏商品の売上も増えた。そうめんや冷や麦などの乾麺は、味付けや食べ方を工夫する商品が増えたこともあり売り上げが伸びた。
(株)庄交コーポレーション庄交トラベルの夏季繁忙期(7月1日~8月17日)の総取扱額は、前年同期から2・8%増えた。内訳は、7月が前年同期比1・4%減、8月1~17日は同7・1%増だった。
同社では、7月の取扱額が前年同月を割り込んだ要因を、物価高に加え、参院選の投開票日が3連休中日の20日だったこと、日米関税交渉の行方が不透明だったことなどと分析している。
国内旅行はこれまで同様、大半が個人客の航空券やJR切符の販売、ホテルや旅館の宿泊手配、航空券と宿泊がセットの手配などが占めた。行き先は北海道、東京、関西、沖縄などが多かった。交通付きパッケージ商品では北海道、東京、横浜、関西などがよく売れた。
今夏は、岡山県などで開かれた全国高等学校総合体育大会や、全国各地で開かれた各種スポーツイベントなどに参加する個人、グループの航空券の取り扱いが例年以上に多かった。
月別では、7月は催事への参加や親睦団体の取り扱いはあったが、件数は少なく動きも鈍かった。8月は3日にクルーズ船のノルウェージャン・スピリットが酒田港に初寄港し、古湊ふ頭〜いろは蔵パーク間にシャトルバスを運行した。同月の取扱額の伸びにつながる要因の一つになった。
海外旅行は、大手他社が主催したパッケージ商品の代理店業務で、シンガポール1組と英国1組のほか、国際航空券を扱った。