郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
Community News Web Site
郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
Community News Web Site
全文掲載

来春高卒者就職動向
県外希望者の割合増える
県内希望者は庄内全体で326人

 来春高校卒業予定者の就職活動は、希望企業を選んで応募書類を送り終え、企業の選考が16日から始まる段階を迎えた。7月末現在、庄内の高校卒業予定者は2137人で、前年同期比63人2・9%減。このうち就職希望者は556人で同5人0・9%増えたものの、このうち県外就職希望者が230人と同49人増えて全体の41・4%を占めた。前年同期の32・8%を8・6ポイントも上回った。地元企業には人手を確保しようと給与や休日を増やす動きがあるものの、県外企業との間には給与や福利厚生に差があり、求人情報を得る機会や選べる企業の幅が広がっている。(編集副主幹・戸屋桂)

鶴岡 県外希望の男子が急増

 鶴岡公共職業安定所管内では、来春高卒予定者が1184人で、前年同期比116人8・9%減。このうち就職希望者は294人で同12人3・9%減。高卒予定者に占める割合は24・8%と、同23・5%を1・3ポイント上回った。
 就職希望者を県内外別に見ると、県内希望者が173人で同46人21・0%減。県外希望者は121人で同34人39・1%増えた。特に男子が91人と36人も大きく増え、女子は逆に30人と2人減った。県内希望者の割合は58・8%で、同71・6%から12・8ポイント減った。県外希望者の割合は41・2%で、同28・4%から12・8ポイント増えた。
 県内求人数は697人で同52人6・9%減。求人倍率は4・03倍で同3・42倍を上回った。求人数の減少よりも県内希望者の減少が大きかったことによる。
 求人を産業別に見ると、最も多いのは製造業で253人同15人5・6%減、次いで建設業の183人同17人8・5%減、医療・福祉が57人同7人14・0%増、宿泊・飲食サービス業が55人同9人14・1%減、卸売・小売業が48人同15人23・8%減など。
 製造業の中では電子部品・デバイス等が56人で同6人9・7%減、食料品が28人同1人3・4%減、金属製品が27人同5人15・6%減、電気機械器具が24人同6人33・3%増、はん用機械器具が23人同2人9・5%増。
 求人のうち製造業と建設業の計436人で全体の62・6%を占めた。
 鶴岡職安では「管内求人は、どこかが大きく減った訳ではなく、求人を2人出していたところを1人にするなど、少しずつの減少が積み重なったもの。企業の人手不足感は強く、即戦力が欲しいと一般求人にターゲットを絞っている場合や、高卒は採れないという諦めムードもある」と指摘する。
 また「去年あたりから就業規則を変えるなど、働く条件を良くしている企業もあるが、県内他地区や県外と比べると給与が低い傾向がある。福利厚生や休みの取りやすさも重要。地域全体で地域に残ってくれる若い人を増やす取り組みができれば」と話した。

酒田 県内希望6割切る

 酒田公共職業安定所管内では、来春高卒予定者が953人で、前年同期比53人5・9%増。このうち就職希望者は262人で、同17人6・9%増。高卒予定者に占める割合は27・5%と、同27・2%を0・3ポイント上回った。
 就職希望者を県内外別に見ると、県内希望者が153人で同2人1・3%増。県外希望者は109人で同15人16・0%増えた。県内希望者の割合は58・4%で、61・6%から3・2ポイント減った。県外希望者の割合は41・6%で、38・4%から3・2ポイント増えた。
 県内求人数は663人で同16人2・4%減。求人倍率は4・33倍で同4・50倍を下回った。
 求人を産業別に見ると、最も多いのは建設業の227人で同10人4・2%減、次いで製造業216人で同3人1・4%増、サービス業の55人同1人1・9%増、卸売・小売業の47人同7人13・0%減、医療・福祉の45人同1人2・2%減など。
 製造業の中では、食料品が59人で同8人15・7%増、電子部品・デバイス等が30人で同増減なし、窯業・土石製品が26人で同2人8・3%増、金属製品が23人で同1人4・5%増など。
 建設業と製造業で計443人に上り、求人全体の66・8%を占めた。
 酒田職安では「建設業の求人が前年同期より10人減った。慢性的な人手不足だが、高卒求人を出しても充足しないため一般求人に切り替え、即戦力を求めている。食料品製造は人手不足で最近は外国人の雇用も増えている。
 高校生は賃金や休日数、有給休暇の取りやすさなどを求めている。県内求人は去年と比べ、年間休日数が増えている企業が散見され、最低賃金も上がっているので、賃金も上昇傾向にはある。しかし県外希望の割合は少しずつ増え、関東圏だけでなく、仙台や新潟にも流れている」と話した。

就職者の多い高校の話

 鶴岡工業高校は8月21日現在、卒業予定者154人のうち進学希望者は51人で32・5%、公務員を含む就職希望者は102人で67・5%を占める。就職希望者のうち県内希望者は50人で49・0%、県外希望者は52人で51・0%と、県内と県外の割合が逆転した。
 就職実績は2年前の2023年度が県内73・3%、県外26・7%。昨年の24年度は県内62・9%、県外37・1%で、「地元就職6割」を掲げてきたが、今年度は達成できない見通し。ここ10年を見ても県内を県外が上回ったことは無かった。機械科と電気電子科はもともと県外が多かったが、その傾向がさらに強まった。
 県内求人件数(求人票の枚数)は682件と、前年から20件ほど減ったがほぼ横ばい。県外求人は2289件と前年より150件余り増え、学校にあいさつ回りに来る動きも早かった。
 特にベースアップなどの情報が早めに入り、生徒とも情報を共有した。2年生が就職する来年度に向けてつながりを持ちたいと訪問してくる企業も多かった。特に県外の建設業の訪問が多かった。県内企業もベースアップしているが、県外企業の上げ幅が大きい。
 県外希望者が増えた理由には、同校に届いた求人票をスマートフォンやタブレットなどで、どこででも検索できる共有システムを導入した影響もある。給与や休日など自分が重要視する項目で求人を検索でき、家で保護者と一緒に見ることもできる。就職実績のない企業を見つけてきて応募したいという生徒も出てきた。
 酒田光陵高校は卒業予定者262人のうち進学希望者は137人。進学希望者は去年より増え、少しずつだが増加傾向が見られる。
 公務員を含む就職希望者は125人で、民間就職希望者112人のうち県内希望者は42人、県外希望者は66人、未定は4人となっている。県内は1学級分しかいない半面、県外はこれまでと比べても多くなった。2年生も同じ傾向。
 地元建設業でも初任給が20万円を超える企業があるなど給与は上がっているが、県外ではそれが普通で、給与の上げ幅が大きい。休日や福利厚生など条件が良いことも、県外企業の魅力となっている。
 求人数は県内433件、県外2650件で計3千件を超えた。特に県外求人が増えた。関東圏だけでなく、東海や関西、北海道など範囲も広くなった。県外企業はこれまで付き合いのない企業からの問い合わせや訪問もあった。
 生徒が希望する業種や職種は、工業科の就職希望者が多いため製造業が中心。商業科では事務系や製造業の事務職などで、求人も比較的あったために十分に選んで応募できた。県外は就職実績のある企業を中心に選んだが、全国の職業安定所の求人票を見ることができるため、学校に来ていない求人に応募する生徒が、10人は超えないがいた。
 酒田南高校では、卒業予定者206人のうち自営業や公務員を含めた就職希望者は75人と例年通り3分の1ほど。このうち県内希望者は47人62・7%を、県外希望者は28人37・3%を占め、例年並みの割合だった。
 生徒の多くは機械・精密部品・食品など製造業を希望し、建設・土木の希望者もいる。調理科の生徒は飲食店やホテルなどを希望し、地元だけでなく求人の多い県外にも応募した。
 企業は県内外とも、働きやすさを考えて待遇を良くしているところが増えた。
 羽黒高校では、卒業予定者261人のうち公務員や自営業・縁故を含む就職希望者が79人。就職希望者の割合は30・3%と昨年より増えたが、コロナ禍前より減ってきている。このうち学校あっせんの就職希望者は67人で県内41人、県外26人と例年並みとなっている。
 求人は昨年に増して増え、特に県外からが目立って多い。九州や関西など、これまで無かった新規企業からの求人も増えた。
 生徒は職種と就業場所を重視して企業を選び、その上で福利厚生を見ている。求人が多いこともあり製造業の希望が多い。職種によっては選択肢があるが、地元の事務職はまだ少ない。
 全国の高卒求人が見られるウェブサイトで情報が得られるため、そこから企業を探してきた生徒もいる。地元の職安で受け付けた求人に加え、付き合いのある企業も大事にしながら、幅広い情報にも対応する環境になってきた。
 こうした中で地元の企業を知ってもらうため、5月に山形労働局若年者地域連携事業で、2年生と地元企業50社との交流会を開いた。

トップへ戻る