郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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鶴岡市長選
佐藤聡氏、現職に1万票差で初当選
自公軸に無党派層取り込む

 任期満了に伴う鶴岡市長選挙の投開票が5日に行われ、前回120票差で敗れた新人で元県議の佐藤聡氏(57)=同市茨新田=が1万票以上の差をつけて、3選目を目指した現職の皆川治氏(51)=同市森片=を下した。新人で会社経営者の喜多恒介氏(36)=同市荒俣=は広がりを欠いた。選挙当日の有権者数は9万9071人、投票率は65・41%で前回選を0・29ポイント下回る過去最低だった。同日の市議会議員選挙の結果は表の通り。定数28人に現職16人、新人12人が当選した。(編集副主幹・戸屋桂、編集部次長・土田哲史)

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当選が決まり支持者と万歳をする佐藤氏(左から2人目)

政策論争は不調、現状批判が奏功

 佐藤氏と支援者は当日、同市大宝寺の選挙事務所で開票結果を見守った。午後9時ごろから支援者が集まりはじめ、同10時半には約100人が詰め掛けた。同11時時点の開票率94・43%で佐藤氏3万2800票、皆川氏2万2400票と伝わり、佐藤氏の当選が確実になると、集まった支援者からは大きな歓声と拍手が湧いた。

表

 佐藤氏は当確直後に姿を見せ、支援者と笑顔で握手や抱擁を交わした。万歳三唱後のあいさつで「大きな力を頂き当選を果たすことができた。今回の選挙は、鶴岡を変えてほしい、元気な鶴岡を作ってほしい、という市民の強い気持ちを感じた。皆さんの声を受け止めて真摯に市政を運営していく」などと述べた。
 今後取り組むこととして、市職員が働きやすい環境づくり、行財政改革、子育て支援、屋内遊戯施設の整備、安心して住めるまちづくりなどを挙げた。
 佐藤氏は、加藤鮎子衆議院議員、石塚慶、佐藤正胤両県議会議員の支援を受け、自民系と公明系の市議会議員選挙の候補者と連携した。鶴岡市元幹部職員や、前回選の皆川氏支援者の一部も支持に回った。
 分厚い組織をフル回転して票を掘り起こし、自公の関係者だけでなく、現職に批判的な無党派層にも支持を広げた。選挙戦終盤にかけて熱量を高め、前回選の120票差での惜敗から一転、皆川氏に1万票以上の大差をつけた。

皆川治陣営、大差に驚き

 皆川治陣営は鶴岡市新形町の選挙事務所に支援者が集まり、午後9時から「開票を見守る会」を開いた。同11時前に皆川氏が事務所に入ると、同11時の開票状況が報告され、「えーまさか」とどよめきと戸惑い、落胆が広がった。泣き声も聞こえてきた。
 皆川氏は「示されている結果の通りで力不足。市民に訴えが届かずこのようになり、お詫びを申し上げます。支援してくださった皆様には、考え方や政策の内容について理解して頂き尽力して頂いたが、思った以上に差が付き申し訳ない思いでいっぱい。大変お世話になり感謝とお詫びを申し上げます」と敗戦の弁を述べた。
 支援した県議などは「政治理念や政策は絶対のもので、そこに甘さが出てしまったか。2期目の初めから不当な攻撃を受けてきた積み重ねの影響がこの結果になった」「何が敗因だったのか。これから鶴岡市がどうなっていくのか心配」と話した。
 皆川氏は6月の鶴岡市定例市議会で、正式に出馬を表明した。市内約20の後援会支部組織を強化して、後援会本部と連携して動きを活発化した。
 9月7日に多様性や市民が主役など四つの基本理念と、食や観光を生かした経済政策、対話の市政など三つの重点政策、具体的な50の施策などを盛り込んだ公約「DEWAビジョン」を発表した。SNSも使って皆川氏の人柄や2期8年の実績、対話の市政を訴えた。
 告示前の9月25日に開いた総決起集会には、会場に入りきれないほどの支援者800人が集まった。選挙戦に入ってからの各地域での個人演説会、街頭演説、10月1日の同市文化会館での個人演説会も、支援者の熱気にあふれていた。
 しかし、前回選から得票を1万票余り落とす結果となり、皆川陣営では「相手陣営の現状批判やネガティブキャンペーンが、思った以上に市民に浸透していたのか、政策論争にならなかった」と話した。
 皆川氏は連合山形の推薦を受け、共産党が自主的に支援した。市議選候補者の非自公系6人と共産党4人が連動した。市議選では共産党の全員が当選したものの、非自公系は3人が落選した。
 喜多氏は5月に鶴岡市へ移住し、9月に立候補を表明した。無党派層の一部を取り込んだが、準備期間が短く広がりを欠いた。

市議選は現職16人、新人12人当選

 鶴岡市議会議員選挙は、定数28人に現職20人と新人19人が立候補し、現職16人と新人12人が当選した。

表

 現職で当選1期の中沢深雪氏が、前回に続いてトップ当選を果たした。2位の石井清則氏は現職1人の勇退によって羽黒地域唯一の候補者となり、地元を手堅くまとめた。3、4位は議長経験者の本間新兵衛、尾形昌彦両氏が続いた。5位は前回空白域の朝日地域から立候補した渡部智也氏が、新人ではトップで当選した。
 新人の鈴木聡氏は現職が勇退した松根地域を固め、現職の佐藤久樹氏は知名度を生かした。前回2位当選の佐藤麻里氏は地元の大山や女性の支持を集めた。
 共産党公認で現職の坂本昌栄、菅井巌、加藤鑛一、長谷川剛の4氏と、公明党公認で現職の黒井浩之氏と新人の今野祥子、大野誠一両氏は組織力を生かし、改選前の共産4、公明3の議席を守った。
 現職の草島進一氏は知名度を生かし、新人の五十嵐一明、金内理両氏は櫛引地域の票を固めた。新人の三原大輔氏は勇退した現職の地盤を引き継いだ。現職の田中宏、佐藤昌哉両氏は市街地で存在感を示し、現職の阿部寛氏は農村票を、五十嵐一彦氏は温海地域の票を固めた。
 新人の北山武徳、伊藤麻衣子、岡崎克己各氏は下位で滑り込んだ。
 3人の争いとなった市長選、定数28に39人が立候補した市議選だったが、投票率は前回を下回り、市民の盛り上がりは欠けていた。長くごたごたしてきた市政に、市民は嫌気がさしていたのではないかと指摘する声もあった。

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