郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
Community News Web Site
郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
Community News Web Site
全文掲載

遊佐町
規模縮小も町民の不信感強く
秋田の事業者 再び鳥海山麓で採石計画

 鳥海山麓の遊佐町吉出臂曲地内の所有地で岩石採取事業を計画し、町が制定する遊佐町の健全な水環境を保全するための条例(以下、水環境保全条例)に基づき、事業を実施できない「規制対象事業」に認定された建設・採石業者の川越工業(株)(秋田県にかほ市、川越恵次代表取締役)は9月30日、住民説明会を町生涯学習センターで開き、採掘の面積を縮小する新たな事業計画を示した。参加した町民など約60人からは、過去に行った採石のずさんさを指摘する意見や、同社への不信感を訴える声が相次いだ。(編集主幹・菅原宏之)

 住民説明会は、川越工業が9月25日付で事前協議書を遊佐町に提出したことから、町の水環境保全条例に基づき同社が開いた。

写真
条例に基づき住民説明会を開いた(9月30日)

 同社側は席上、湧水に影響が無いように配慮し▼標高390メートル地点の事業面積2万5646平方メートルのうち、採掘区域を約1千平方メートル縮小して7889平方メートルとする▼採掘区域は標高360メートル地点まで30メートル掘り下げるが、実際には地表から地下12~13メートルを掘削して岩石を採取する▼秋田大学の調査では標高319メートル地点に地下水脈があるが、同329メートルまでなら地下水へ影響を及ぼさずに掘削できると結論付けている▼岩石採取の開始予定日は2026年4月1日とする―などと、事業概要を説明した。
 町の水環境保全条例施行規則では、地表から地下2メートルの深さを超えた土石の採取、または地形を改変する事業や、過去に土石の採取が行われた区域での再採取事業などを規制している。
 同社は今年3月11日付で、今回と同じ地点の採掘区域8883平方メートルを最大30メートルの深さまで掘削し、岩石採取の開始予定日は同8月1日などとする事前協議書を町に提出した。
 これを受け、町は町環境審議会委員や農林水産業関係団体代表、学識経験者でつくる町水環境保全審議会(畠中裕之会長、委員8人)の意見を踏まえ、5月26日に同社が提出した事前協議書の対象事業は、事業を実施できない「規制対象事業に該当する」と認定した。

町は11月24日まで判断

 質疑応答では参加者から「地表から深さ2メートル以上掘ってはいけない、と最高裁判所で判決が出ている。今回、なぜ採掘区域を縮小したくらいで12~13メートルも掘るのか」との意見が出た。
 同社の菊地真治弁護士は「深さ2メートル以上かどうかは形式的な基準であり、仮にそれに当たったとしても水環境保全条例第16条第1号『森林等の水源涵養機能を著しく阻害するかどうか』『水源涵養量の減少をもたらすおそれがあるかどうか』というところで実質的に判断される」と説明した。
 そして「今回は、そうしたおそれが無い事業ということで計画している。町水環境保全審議会が今回の計画をどう判断するのか分からないが、規制対象事業と判断した場合は、その理由を見て、当方として訴訟にするのかどうかを考える」との方針を明らかにした。
 これに対し参加者からは「基準が2メートルであっても水源涵養機能に影響が無ければ良いのであれば、条例に何の意味も無くなる。例えば、ここの制限速度は時速40キロだが、安全に走れるのであれば、速度オーバーで走っても良いと言うのと同じように聞こえる。『秋田大学の先生が大丈夫と言っているからOKです』ということに、町民が納得する訳がない」と批判した。
 参加者からはほかに「これまで岩石採取した事業地跡地の緑化がなっていない。やることをやってから、次に進むのが当たり前ではないのか」「以前のずさんな採取の仕方に町民は怒っている。誠意を持って、信用されるような対応をしてほしい」といった声が相次いだ。
 町は11月24日までに、規制対象事業とするのかどうかを判断する予定。
 同社は16年にも今回計画した事業予定地の隣接地で採石を計画したが、町は同条例の規制対象事業に該当するとして認めなかった。同社はこれを不服として処分の取り消しを求めて提訴したが、最高裁は22年に同社の訴えを棄却している。

トップへ戻る