2025年度第1回庄内海岸林松くい虫被害対策強化プロジェクト会議が10月29日に遊佐町で開催され、25年の被害状況はこれから調査するが、写真で見る限り過去最も多かった24年を上回る予測と説明した。これまでの防除中心の対応は限界を超え、守るべきクロマツは薬剤注入や薬剤散布で守りながら、松くい虫に強い抵抗性クロマツや広葉樹林を植えて、海岸林の再生を図る方向をより進めていく。(編集副主幹・戸屋桂)
同プロジェクト会議では①24年の松くい虫被害の発生状況と防除対策の実施状況②25年の庄内海岸林の松枯れ状況が報告された。
24年の被害状況は国有林2万8667立方メートル、民有林7万5728立方メートルの計10万4395立方メートルで、前年比81・4%増。被害が初めて3万立方メートルを超えた16年と比べ234・3%増。
これまでも、春~夏の高温と少雨の年は被害が増える傾向にあったが、24年も同様に、高温と前年に発生した被害木の切り残しが多かったことが、被害の増加に拍車を掛けた。
市町別では、酒田市が12万1046本で前年比49・4%増、材積7万3212立方メートルで同101・7%増。同様に遊佐町が3万8068本で19・8%増、1万9899立方メートルで46・4%増。鶴岡市が2万3209本で20・9%増、1万1236立方メートルで50・4%増。庄内町は十数年ぶりに被害が確認され、84本、49立方メートルの皆増となった。
薬剤の地上散布と樹幹注入、伐採駆除などの防除対策の実施状況は、国有林が24年11月~25年3月の冬駆除で5449立方メートル、25年4~6月の春駆除で4968立方メートルの計1万417立方メートル。これは被害量2万8667立方メートルの36・3%にとどまった。
民有林は同じく冬駆除で5562立方メートル、春駆除で2万3804立方メートルの計2万9365立方メートル。被害量7万5729立方メートルの38・8%にとどまった。
国有林と民有林を合わせた処理量は3万9782立方メートルで、被害量10万4396立方メートルの38・1%だった。
民有林は対策状況を取りまとめた9月30日以降も、2次被害の恐れのある危険木の処理を進めている。
24年度に発注した被害対策事業費は、国が4億4459万8千円、県が4億5884万円、酒田市が1億6218万1千円、遊佐町が9811万6千円、鶴岡市が56874万5千円。
25年度の被害対策事業の実施状況は、9月末までに事業完了と発注済みを合わせて、国有林が3097立方メートル140ヘクタール、民有林が2万7449立方メートル219ヘクタールの計3万546立方メートル359ヘクタールとなっている。
25年の松枯れ状況は、ドローンで撮影した写真で説明した。県庄内総合支庁森林整備課では「写真で見る限りでは24年以上に被害が広がっている。海岸林は遊佐町吹浦から鶴岡市湯野浜まで南北33㌔にわたり、地域によって違いがあるものの、昨年まで松枯れがぽつぽつと点在していた地域でも、今年は一面赤くなっている」などと説明した。
被害を受けた海岸林の防除と再生の協議は、非公開で行った。同森林整備課によると、話し合ったことは大きく2点で、一つは新しい森の再生、もう一つは2次被害への対策。
昨年までは「クロマツを守りたい」という考えで、松枯れした木を伐採するなど防除が中心だったが、被害が大きく広がり防除が追い付いていないことや、伐採ではクロマツが無くなることから、昨年度示したゾーニング(区分け)に沿って森の再生を図る。
具体的にはクロマツ林を守りたい重点ゾーンのうち、特に海岸に近い場所と、文化的・歴史的背景のある場所は、薬剤の樹幹注入や薬剤散布など費用をかけて徹底的に守る。
松枯れが広がっている重点ゾーンで林の幅の広い所は、枯れたクロマツを海岸と並行に帯状に伐採し、松の根も掘り起こして取り除き、抵抗性クロマツと広葉樹を植える。既に試験的な取り組みが始まっている。
2次被害対策は、松枯れの中でも道路や農地に面した危険木を、優先的に伐採していく。緊急性の高くない場所では、枯れたままクロマツを残すこともある。