郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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全文掲載

外航クルーズ船〔上〕
観光施設や飲食店などに波及
酒田港寄港 過去最多9回へ

 2025年度の外航クルーズ船の酒田港への寄港は過去最多の9回を予定し、3月に初寄港する2隻を残してこれまでに7回を数えた。各船の乗客定員は約460人~約2700人とさまざまだが、酒田市の観光施設や飲食店を中心に外国人客でにぎわい、売上増にも寄与していた。(本紙取材班)

初寄港増え下船観光が多様化

 県イン・アウトバウンド推進課によると、4〜10月に寄港した7回=表参照=のうち4回は初寄港で、乗客定員は千人未満が中心。ラグジュアリー(高級)客船も含まれていた。ほかの3回はダイヤモンド・プリンセス2回とウエステルダムで、乗客定員は約2千人以上の大型客船。各船ともおおよそ満席だった。

表
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 寄港後の動きには①コースを決めたバスでのオプショナルツアー②シャトルバスで酒田市街地に移動して自由散策③タクシーを使った自由行動④船にとどまる―の大きく4パターンがあるが、ほとんどの船で乗客の8~9割が下船している。
 ダイヤモンド・プリンセスの場合は、900~1000人がシャトルバスで中町に下車して市街地を観光、600~700人がオプショナルツアーに参加、少数はタクシーか徒歩で自由行動をした。
 ほとんどの船で、船会社とランドオペレーター(旅行会社から依頼を受けた手配業者)が、オプショナルツアーやシャトルバスを用意した。シャトルバスの発着地点はダイヤモンド・プリンセスと同様、中町とした船が多かったが、ノルウェージャン・スピリットはいろは蔵パーク、三井オーシャンフジはさかた海鮮市場だった。
 定員が少ない船ほどオプショナルツアーの比重が大きくなり、魅力的で手の込んだツアーを作る傾向が強い。セブンシーズ・エクスプローラーは、すべてオプショナルツアーで、シャトルバスを運行しなかった。
 セブンシーズのオプショナルツアーは酒田市と鶴岡市を観光するコースで▼本間美術館と山居倉庫を見て温海温泉の足湯とまち歩きを楽しむ▼善宝寺を拝観して初孫酒造を見学▼加茂水族館と温海温泉―など。温海温泉で鶴岡市が配った同市内観光地の写真入りポストカードが喜ばれた。
 同推進課では「温海温泉がコースに組み込まれたことで広域化したと実感した。庄内のことをより深く楽しめるコースを作る工夫をして、他船との差別化も図っているのでは」と分析した。

日本らしい観光資源人気

 酒田港への寄港が増えた要因は、初寄港が多かったことに加え、一度寄港した船が再来してくれている点。
 魅力となっているのは▼港から酒田市街地が近く、市街地の観光地がコンパクトにまとまっているため、周遊しやすいこと▼酒田舞娘や山王くらぶなど日本らしい観光素材があり、小さな日本を感じられること。
 岸壁での歓迎・見送りを含めたイベントや、街なかの市民の対応が親切なことも評価されている。
 県では観光パンフレットなどを持って毎年1~2回東京を訪れ、船会社と旅行会社を回りPR活動をしている。ほかに毎年、船会社と旅行会社各1社に来県してもらい、観光を体験してもらう。先方の来たいという声にも対応するなど、コロナ禍前から地道な誘致活動を続けてきた成果が出始めている、とみている。
 来年度はさらに外航クルーズ船の寄港が大幅に増える予定。酒田市街地により近い酒田本港に寄港したいという需要もあるため、港の整備も含め小型船の誘致も進めていく。
 県イン・アウトバウンド推進課では「いろは蔵パークでは、外航クルーズ船が寄港した日の売上が高い。酒田市中通り商店街でも迎え入れる機運が高く、飲食店も行列ができていると聞く。はっきりとした数字は無いが経済効果はあると感じている」と話した。

相馬樓7隻で1206人

 酒田市日吉町の相馬樓には7隻から、合わせて1206人が入館した。   入館者数をクルーズ船別に見ると、シーボーン・クエストが155人、ダイヤモンド・プリンセスが2回で計431人、三井オーシャンフジが32人、ノルウェージャン・スピリットが241人、ウエステルダムが148人、セブンシーズ・エクスプローラーが199人。
 佐藤智美女将によると、入館者から人気だったのが酒田舞娘の演舞鑑賞と記念撮影、そして館内も見学するコース。23年までは同コースを午前と午後の1日2回設定していたが、24年と今年はクルーズ船の入出発に合わせ、1日4回に増やして対応した。

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セブンシーズ・エクスプローラーの寄港(10月23日)

 クルーズ船の寄港当日は、市の協力を得て終日館内に常駐してくれた通訳ボランティア2人から、英語での案内や同館の歴史などを説明してもらった。昨年からは英語での対応が可能な従業員2人も新たに採用しており、よりスムーズな案内体制を整えている。
 一部入館者から24年に「館内の順路が分かりづらい」との意見があったことから、館内の案内表示を見直すとともに、英語、中国語、韓国語による館内案内図や説明資料を整備した。それ以降、入館者から改善などを求める意見や要望は届いておらず、佐藤女将は「安心して観覧してもらえる環境になっている」と言う。
 今後については「来館者数は、24年と同程度で推移している。今年度以降の新たな取り組みとして、抹茶と酒田舞娘の演舞鑑賞を楽しむプランの導入に向けて、前向きに検討していきたい」と話した。

いろは蔵は入館者、売上が増加

 山居倉庫の筋向い酒田商業高校跡地に今春開業した、大型商業施設いろは蔵パークでも、8月上旬以降に寄港した4隻による経済効果が相当程度に上った、と推測できる結果が出ている。
 伊藤真治いろは蔵パーク統括マネージャーのまとめによると、クルーズ船の寄港日別に見た同パーク全館の入館者数(日本人を含む)と総売上を、寄港日1週間前と比べると―
 ①三井オーシャンフジの8月2日は4864人、1088万8千円。1週間前の7月26日は4408人、1013万円。入館者数は456人10・3%増え、総売上は75万8千円7・5%増えた。
 ②ノルウェージャン・スピリットの8月3日は5510人、1305万9千円。1週間前の7月27日は4738人、1094万1千円。同じく772人16・3%増、211万8千円19・4%増。
 ③ウエステルダムの10月21日は3210人、752万4千円。1週間前の10月14日は3006人、689万4千円。同204人6・8%増、63万円9・1%増。
 ④セブンシーズ・エクスプローラーの10月23日は3292人、739万6千円。1週間前の10月16日は2711人、611万7千円。同581人21・4%増、127万9千円20・9%増だった。
 4度の寄港日とも1週間前の実績を大きく上回り「クルーズ船による効果が表れていたものと受け止めている」(伊藤統括マネージャー)と分析している。

セール衣料や食品売れる

 いろは蔵パーク内の、酒田観光物産協会が運営する酒田観光物産館酒田夢の倶楽で買い物をした客のクレジットカード利用状況を見ると、国外発行のカードでの支払いが8月2日は131件中10件7・6%、翌3日は172件中89件51・7%、10月21日は61件中20件32・8%、同月23日は66件中22件33・3%だった。
 ノルウェージャン・スピリットが寄港した8月3日は、県が酒田北港~いろは蔵パーク間にシャトルバスを午後2時半~7時に15分間隔で運行した。降車後、乗客はほぼ全員が同パーク内の臨時観光案内所に立ち寄り、約3分の1が同パークに、残りの約3分の2が山居倉庫か、みなとオアシス方面に向かった。
 日用品・衣料品の無印良品酒田では、免税客が同日1日の店舗売上の20%を占め、開店以来最高を記録した。セール品の夏物衣料のほか、船内で着用する長袖やインナー、キャリーバッグ、フレグランス、キッチン用品などがよく売れ、特に衣服は試着室前に行列ができるほど混雑した。
 食品スーパート一屋いろは蔵パーク店では、英語対応可能なセルフレジを利用している外国人の姿が見られ、菓子やカットフルーツなどが人気だった。
 コーヒー・輸入食品店のカルディコーヒーファームでも、外国人客の姿が目立った。
 眼鏡店のJINSでは眼鏡を、酒田地区薬剤師会のカイエイ薬局では薬を購入する外国人客が見られた。

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